ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2017J2リーグ第25節アビスパ福岡vsモンテディオ山形@レベスタ20170729 -夏の夜の加賀さん-

2017-07-30 23:45:47 | 加賀さん

まだ雪の気配が残る春少し遠い3月末の山形。ホーム初戦以来の、4ヶ月ぶりの加賀さんとの再会です。独立系加賀さんファンとして最近のファンの空気感に戸惑いながらも、陰ながら応援し続けています。

口に出してははばかられることですので言わなかったのですけど、加賀さんが今年シーズン通して働けるとはあまり思ってませんでした。過去二年はブランクだったので試合体力をそう簡単には戻せないと思ってたからです。それになにしろ、強力だけど繊細な足とつきあってらっしゃいますから。加賀さんのプレーを観に行くならできるだけはやいほうが良いと思ってました。東京のスケジュールの綾でホーム初戦に行けたけど、その場でことし最初の足の違和感を目撃するとは思いもしませんでした。

四月に入ってすぐ、加賀さんは肉離れをきっかけに離脱します。公表はされてないけど、数週程度の肉離れだけでは無かったのでしょう。でもここからが加賀さんらしく、落ち着いていて賢明でした。チームに完全に貢献できるようなるまで、焦ることなくしっかりと治してくれました。ほぼ実戦の無かった浦和時代はともかく、東京で加賀さんと過ごした経験から、正直真夏くらいまでかかるかなと思っていたので、7月中の復帰は驚きました。怪我が比較的コントロール可能な程度でよかったし、加賀さん自身のケアとスタッフさんの仕事の成果でしょう。

復帰のタイミングも良かったです。離脱者が相次ぐ来るしいチーム状況がありましたから。さっそく守備の要としてフィットできたのは、離脱中もチームのなかで成すべきことを考えていたのだと思います。

前節、豪快な右足のドライブショットを決め、勝利に貢献しました。2011年7月27日以来、実にちょうど六年ぶりの公式戦ゴール。首位湘南を撃破する決勝ゴールでしたから、過去二年はファンとして観念的な進化を追ってきましたけど、今年は試合に出ることで、具体的な進化を確認できるのが嬉しいです。どちらかというと磐田で怪我する前をピークに下降線のイメージがあるけど、経験によって得たディフェンスの安定にかつての攻撃力が戻ることにより、停滞でもなく復活でもない、新章を観られるのかもしれないという期待を抱きました。

歓喜の前節から一転、今日は自らのミスで敗因のひとつを作ってしまいました。2失点目は、加賀さんのスピードであれば石津のフォームが整う前にアプローチできた気がします。石津のアタックに対して完全に受け身になっていて、局面のイニシアチブを握られていました。前半にイエローカードをもらっていたので選択肢が少なかったことも影響しました。すべて結果論だけれども、たとえ不可能だったとしても止められたんじゃないかという可能性を探し求め続けるのがプロ。試合直後に世界中でぼくだけが観た加賀さんの輝く目に、悔しさとともにもっと上手くなりたいという欲求を感じました。

加賀さんといえば夏。足の調子もあったかい間は大丈夫なのだろうと思います。今節で16位に沈んだモンテですけど、今年のJ2は群雄割拠の混戦です。プレーオフ圏内まで勝ち点4差。夏場の消耗戦で勝ち点を地味に拾うことが最終的な結果をもたらすと思います。

それよりも、エレベーターチームからの脱却を目指すモンテはプレーオフ争いに甘んじてはならないと思います。むしろ来年を見据えたチーム作りこそ大事かもしれません。加賀さんにとっても、一年間フルで闘えるからだを作る悲願を達成するために、今年はチャレンジしてほしいと思います。

せっかくなので試合のコメントも。基本ニュートラルなのですけど、加賀さんがいるのでモンテよりの書きっぷりになることをご容赦ください。

山形は4-2-3-1。GKは児玉。CBは加賀と菅沼。SBは右に茂木左に利弥。ボランチは本拓と安西。WGは右に雄斗左に汰木。トップ下は優平。1トップは阪野です。

福岡は4-4-2。GKは兼田。CBは岩下と冨安。ボランチは三門とウォン・ドゥジェ。メイヤは右にジウシーニョ左に山瀬。2トップはウェリントンとりきです。

山形にとっては前節湘南戦に続く首位と2位との連戦です。直接争う相手ではないけどプレーオフ圏を目指す上昇気流を生み出す絶好の機会です。まして、湘南に撃勝しましたから。

守備に関しては、山形と福岡で考えかたが異なります。福岡は、今日は攻撃が目立ちましたけど、本質的には守備に重心を置いたチームだと思います。守りかたの基本プランは、現代サッカーの王道に沿ったオーソドックスなスタイルです。ウェリントンとりきを中心にしたフォアチェックで相手の守備バランスを崩します。事後のカウンターを念頭にした、守備と攻撃を一体にした思考です。攻撃のタレントでは、J2では優位性があると思いますけど、ボールを持つことで試合を支配する発想はなく、あくまでも福岡らしい泥臭いスタイルを貫いているようです。

福岡の守備で特筆すべきなのはウェリントンです。ウェリントンは、フォアチェックの延長線上のプレーなのか、ときに中盤の底まで下りて、再三ピンチの芽を摘む仕事をしていました。さらにウェリントンの存在感が増しています。ウェリントン自身も、チームの要としての意識が強くなっているのでしょう。

山形は、守備偏重の考えかたです。もっとも現在2位の福岡に対して、しかもアウェイの状況で野望を抱く必要はないということなのかもしれません。なので、あえて守備偏重を選択したと言ったほうが良いかもしれませんね。前節それで成功していますし。山形は4+4のラインを維持することを優先します。

今日の山形の守備におけるポイントは言わずもがな。ウェリントン対策だったと思います。前半は菅沼がマッチアップしました。これが福岡のナチュラルなプランなのか、それとも意図した作戦だったのかわかりません。いずれにしろ、ウェリントンのポストのポジショニングが、前後半の戦況を分ける要因になりました。それにしても、前半の菅沼のファイトは素晴らしかったです。後ろにいらした福岡サポさんが、わざわざ菅沼とウェリントンのマッチアップ回数を数えてくれていて、都合5回だったと思います。菅沼は直接のマッチアップではウェリントンに完勝しました。

今日の福岡は、左サイドを主戦場に置いていたようです。これまた先に登場いただいた福岡サポさんによると、普段の福岡は右加重のチームなのだそうです。つまり、今日は意図的に左を狙ったということでしょう。

攻撃における山形の4バックは形成過程だと思います。なので、まだサイドの縦の連携が機能していません。左は汰木の攻撃力に委ね、利弥はバックアッパーに徹します。おそらく左は、そのため比較的安定していると思います。一方右は、茂木の攻撃参加が期待されてます。雄斗が内に絞り、インサイドでの攻撃のハブ的な役割を担いますから、純粋な右サイドの攻撃は茂木にかかります。なので、菅沼と加賀による中央の堅実さを前提に加えると、福岡にしてみれば左を狙うのが必定ということでしょう。

左サイドの福岡の攻撃はバリエーションが豊富です。山瀬、亀川、りきと、個性が異なるタレントが、それぞれの特長の活かしかたを組織的な攻撃のなかで知っているからこそできることなのでしょう。りきはさかんに茂木の背後を狙います。もっとも、りきとパス供給者の意図が合わず、りきの個人的な作戦は不発でした。山瀬と亀川はコンビネーションが確立されているようです。山瀬のポジショニングが絶妙で、サイドにはったり内に絞ったり、いずれにしろ亀川の攻撃力を補完するプレーだと思います。

福岡のサイド攻撃のユニークな点は、三門が加わることです。三門の運動量と攻撃参加のタイミングのセンスを全面に活かす作戦だと思います。これを成しているのは、三門に反し中央を動かない、パートナーのドゥジェの存在でしょう。中盤中央の攻守にわたる安定感はドゥジェによってもたらされていると思います。

左で攻めきれ無い福岡は、前半途中からジウシーニョの独力突破を軸にした右サイドアタックを織り交ぜるようになります。ただ前半は、左右いずれから攻め込んでも中央を打開できません。とりもなおさず、ウェリントンのポストで攻撃側優位の時間を作れなかったことが要因だと思います。

このように福岡の攻撃は、ウェリントンを軸に、衛星となるりき、独力突破できるジウシーニョ、クロッサーの亀川と、ゴールに直結するプレーを持つ武器を四枚持っています。それに比べて山形は、少なくとも今日に関しては、攻撃を組み立てるタレントと作戦こそあれ、フィニッシャーに欠けていました。

おそらく山形は、中盤の安西、トップ下の優平の二枚の中央のプレイヤーから前線にパスを供給してチャンスメークするプランだったと思います。パスに脅威を宿すためには福岡を下げさせる必要があります。そのためには阪野のポストが鍵になります。今日の阪野は冨安と岩下とのマッチアップに苦労していました。とくに冨安にパワー負けするシーンもあり、これからの課題になるでしょう。

優平と安西にボールを集めるが故、あるいは阪野のポストが機能しないがため、雄斗が存在感を無くします。最終局面のアクセントマンとして雄斗が機能すれば守備網をかき回すアタックができるのですけど、むしろ雄斗がフレキシブルに動くことによる右サイドのリスクを福岡に狙われた印象です。

というわけで、前半の山形は汰木の独力突破に委ねざるを得ない状況になります。そうであったとしても、汰木のニュルニュルした独特のドリブルは、チャンスメークを担ううえで機能していましたし、プレーそのものが楽しかったです。負傷離脱の多い山形の前線の状況は、汰木にとってはチャンスでもありますから、他にあまり類のないドリブルという武器を活かしてがんばってほしいです。

前半は、ほぼ一方的な福岡ペースになるも、山形の守備の頑張りでスコアレスのまま終了。

後半頭から井原さんが動きます。りきに代えて石津を左メイヤに投入します。山瀬が右メイヤ、ジウシーニョがトップにそれぞれ回ります。りきの空回りがありつつも、左サイドアタックが有効なことが確認できたのでしょう。ゴリ押しドリブラーを入れることで、左サイドの攻撃ギアをシフトアップする意図だと思います。

もうひとつ、福岡の作戦変更がありました。ジウシーニョが右トップに入ることでウェリントンのターゲットが加賀に変わります。菅沼を嫌がったのか加賀を組し易しとみたのかはわかりません。左サイドアタックを強化するためかもしれません。いずれ、ウェリントンのポストが安定してきます。そしてこれらの作戦変更がいきなり奏功します。

47分。本拓がディフェンシブサードからの出した縦パスを石津にカットされます。このミスから発した福岡のカウンターは守備網が防ぎますけど、クリアを受けた本拓がふたたび優平への縦パスをウェリントンにカットされ、ダブルカウンターになります。ウェリントンはそのままアタッキングサードに入り、右にパス。山瀬がスルーした先に三門がいました。三門は利弥を引きつけながら深く切れ込み、ゴールをまたぐクロスを逆サイドに送ります。この三門のワンプッシュが効きました。大外にいたジウシーニョは中央にフリックで折り返します。そこにいたのはウェリントンただひとり。守備ラインは三門のワンプッシュで全員下がり基調でした。ウェリントンは豪快に右足ダイレクトボレーを叩き込みました。福岡1-0山形。

前半は中盤のパスミスがほとんど無かった山形でしたけど、石津を加えてフォアチェックの強度を上げた福岡に面食らった感じだったかもしれません。言い換えると山形は、湘南に完勝したとはいえ、まだまだJ2上位の相手を御すほどの安定を持っていないということでしょう。

リードを許した木山さんが動きます。安西に代えて徹郎をトップ下に投入します。優平がボランチに回ります。多少強引にでも中央で基点を作る意図でしょう。山形の前線は、コンタクトを自ら仕掛ける選手は、阪野を除くとほとんどいません。そのことが中盤でパスを回せるけどアタッキングサードに入れない要因のひとつだったような気がします。

ところが山形の作戦変更の効果をはかる間も無く、福岡に追加点を許してしまいます。

63分。山形のCKからの一連の攻撃から、左サイドからの雄斗のクロスを岩下がクリア。これが右ライン際のジウシーニョに渡ります。カウンターの発動です。ジウシーニョはフォローしてきた山瀬にパス。山瀬はさらに前線を駆け上がる石津に送ります。これで加賀と石津の1on1になります。加賀は石津の仕掛けに柔軟に対応すべく、半身受けで少し距離を開けるコンサバティブな選択をします。石津はアタッキングサードに入り、この距離を利用して、もっともシンプルに縦に加速します。本来加賀が得意とするカバーリングですけど、加賀は一瞬レスポンスが遅れます。抜け出した石津は、児玉の股間を抜いて流し込みました。福岡2-0山形。

加賀のミスについては前述のとおり。攻めるしかない木山さんが動きます。阪野に代えて仁斗を同じく1トップに投入します。徹郎に加えて、コンタクトを辞さずアグレッシブな仁斗を投入することで、さらにゴリ押しの強度を上げる意図だと思います。

同時に井原さんが動きます。ジウシーニョに代えて仲川を同じくトップに投入します。山形が前がかりになるためカウンターが効くことが確認できたので、アジリティでカウンターの威力を増す意図でしょう。

この互いの作戦変更がはまり、ここから先は山形が押し込み福岡がカウンターを狙う流れに移ります。山形は、中央の高い位置で基点を作れるようになったので、鳴りを潜めていた茂木と利弥が攻撃参加するようになります。こうなると雄斗のアクセントが真ん中で効くようになります。ようやく山形のシュートが枠に飛ぶようになります。

そこで木山さんが動きます。本拓に代えて駿を同じくボランチに投入します。優平を前目で攻撃に絡ませるために、中盤の守備の強度を上げる意図だと思います。

最終盤に左からのクロスに雄斗が飛び込むシーンがありました。ようやく山形らしいフィニッシュのかたちを見ることができました。最初からこの作戦でいってたらと思う向きもあると思いますけど、サッカーはあくまでも相対的なスポーツです。福岡は2点リードしたが故の、言わば受け。トータルの実力差が如実に現れました。

井原さんが〆にかかります。山瀬に代えて城後を同じく右メイヤに投入します。右サイドの守備の安定を意図した作戦だと思います。

山形の猛攻も叶わず。このまま試合終了。福岡2-0山形。

4バック同士の相四つ対決は、攻撃の武器の物量の差が勝敗を決した印象です。言い換えると、守備に関しては山形も点差ほどのクオリティの差は無かったと思います。山形から見るとミスによる負け、福岡から見るとミスを誘引する作戦勝ち。いずれにしろ、これから山形が目指す方向を定めるために、福岡は良いベンチマークになったと思います。

東京での2バックのプレーに親しんだ身としては、加賀さんらしいプレーや仕草、表情が観られて嬉しかったし、サウダージでした。東京加賀さんファンだけの特権を満喫しました。今日は引き気味だったこともあり、ワンプレーで魅了する驚愕スプリントを観られるシーンはほとんど無かったけど、三年前より安定感や1on1の強さが増した気がします。加賀さんを狙って仲川がマッチアップしたときはドキドキしたけど、無難でした。

今年はもう会いに行く機会がないと思うので寂しいです。チームとしても加賀さん個人としても更に成長することを目指して頑張ってほしいです。山形の夏は暑いから、くれぐれも暑さには気をつけて。


ひよっこロケ地の旅 ―20170716 高萩・水戸―

2017-07-17 14:58:56 | 連続テレビ小説ひよっこ

もう梅雨明けしちゃっただろうと思うような連日の真夏日。

ひと月ぶりに奥茨城にやってまいりました。今回は、高萩と水戸でございます。

ひよっこも折り返し地点を迎えて、おもしろさが加速するばかり。毎日楽しみです。そして、いよいよ後半ですね。撮影もあと一か月くらいだと思います。暑いさかりですけど、キャストとスタッフの皆さんには、体調にくれぐれも気をつけてがんばってほしいです。

灰色の部分が茨城県の県北です。今のところロケが行われたのは、高萩市、常陸太田市、常陸大宮市、大子町、北茨城市と、県北のほぼ全域です。

県北には、ところどころにひよっこを応援するのぼりが立っています。

それではさっそくまいりましょう。まずは高萩市内。「さて、ここは茨城県の北部、山あいの小さな村、奥茨城村。1964年、昭和39年。こんな静かな村に暮らす、ごくごく普通の女の子、谷田部みね子が、この物語の主人公です」。牛が歩いてた小川です。

ひよっこに出演した牛だそうです。

「お父さん。お元気でお過ごしでしょうか? 私は高校生活最後の夏を迎えています。大して勉強もできねえし、本当なら、そんな余裕なんてないのに、高校に行かせて頂いて、みね子は、本当に本当に、心から感謝しています」。みね子の自転車の通学路にある橋です。

「お父ちゃん」「ああ」「頑張って下さい」「うん」「行ってきます!」「うん。みね子!」「ん?」「うりゃ~!」「何よ!」「別にいがっぺよ!」「やめてよ~!」「気ぃ付けてな」「はい。行ってきます! 行ってらっしゃい!」「おう」。

「いがったのに」「お父さんがバス停まで行げって」「そうが」「うん。ん…?」「どしたの?」「いがっぺ、別に」。東京に出かける実さんとバス停まで送る美代子さんが歩いてた道。

「東京には…。私なんかよりとでも綺麗な女の人、たくさんいんじゃねえの?」「いでも、関係ねえ」「いねえとは言わねんだね」。

「いねえ」「遅いよ」。


 
「帰ってこねえのがぁ、お姉ちゃん」「つまんねぇな」「正月まで、我慢だな」「んだな」「んだな」「何て書いてあったの?」「「たくさん遊べ」って。でも、「夏休みの宿題も頑張れ」だって。どっちなんだよ!」「そう」「私も…あどね、「ちゃんと、高校まで行ぐつもりで勉強しとげ」って。「お姉ちゃんが絶対行がせでやっから」って」「そうけ…」「あどね、お友達と海水浴行ぐって書いであった」「俺のにはねえど」「いいね、海水浴」「そうだねえ」「でもさ、海水浴行ぐって書いたあどに、「ごめんね」って書いてある。何で?」「それは、あんたらを連れてってやりたいけど、自分だけごめんねって意味じゃねえかな」「そんなの謝んなくていいのに」「そうだよね」「あど、「おねしょはしてねえか」って書いてあるよ」「正直に返事書かねばな」。

続いては、日立市との境近くの高萩市南部、中戸川地区です。日立電鉄交通サービスの田代バス停と下田代バス停のちょうど中間付近を目指します。田代バス停にちょうど良い駐車スペースがあります。

ここを左手の高萩市内方向に向かいます。

この先。田代バス停から歩いて2、3分です。

ちょうど上賀ロバス停の小屋があったあたりにのぼりが立っています。

「ほら早く!」「ちょっと待ってって」「走るよ!」。

「あっ、おはよう」「おはようございます」。

「こら三男! いい加減にしろ。こら、毎朝毎朝!」。みね子と時子と三男が合流する、毎朝の通学路の上賀ロバス停です。

「もう来っから、もう来る! これ乗んねえと1時間目終わっちまうんだから!」「いつもいつもこのごじゃっぺが!」。

「早く来お~!」「ごめん!」「早く! 毎朝毎朝何やってんだ。飯お代わりすんの我慢しろ」「えっ、何で? 見てたのけ? 三男」「見ねくてもわがるわ」。

「ありがと三男。停めててくれて」「おはよう」「おはようございます」「何だよ、その態度の違えは」。

バス停の小屋が設置されていたのはこのあたり。

「時子!」。

「う~ん! おめでとう! とう!」。

「ありがとう!」「じゃあな!」。

撮影時にはエイジングが施されていましたね。路面には砂がまかれていました。ガードレールと橋の欄干も木製になっていました。すでに撤去されていますけど、例によって跡形もありません。ロケ地に来るたびにNHKの撤収力に感嘆の想いです。

「お~みね子! 父ちゃん今日、帰ってくんのか?」。

「うん!」「ハハハハハ!」。

「来ねえな…」「来ねえな…」「遅いな…」「遅いな…」。

「座って待ってるか。まだ来ねえ」「まだ来ねえ」「しかたなかっぺ。ここに来るバスが少ねえんだから」。

「あっ!」「あっ!」。

「見える?」「見える」「来たんじゃない?」。

「お父ちゃん乗ってるかね?」「お父ちゃんだ!」「あ~ただいま!」「お帰り!」「お父ちゃん! お父ちゃん!」「ありがとな~。迎えに来てくれだのが。ありがとな!」「これプレゼントだ」「ああ、ありがとう」「お帰りなさい」「ただいま」。

「ではな、実!」「おう、ありがとな!」「二郎さん、ありがとう!」「おう! 発車オーライ!」。

「行ぐが」「1個持つ。1個持つ」「いや、いいって」「いいっていいって。持つ」「そうか? ありがとう。元気してたか?」「元気」「元気」。

「でっかくなって、2人とも。よし! じゃあ来い! ほれ、ぶら下がれ。お~重い重い! おっきくなったな! ハハハ!」「競争するかっぺ?」「うん、そうね。速くなったとこ見せっと」「気ぃ付けてよ」。

「どうだ? 高校は」「うん。楽しい。とっても楽しい毎日です」「そうが」「うん。ありがとう」「おう。秋だなぁ、もう」「そうだね」「何か大人としゃべってるみてえだな、みね子」「アハハハ! 大人だもん、もう」「そうかぁ?」「「そうかぁ」って!」「そうだよ」。

「お父ちゃん、どうだった?」「お父ちゃん、どうだった?」「お~速かった、速かった。驚いた~」。

実さんが稲刈りのために奥茨城に里帰りしたシーンは、一面の秋桜が綺麗でしたね。秋の花だと思っていたら、7月中旬にも見頃を迎えるのだそうです。ちょっと咲きはじめていました。

「ありがとう、次郎さん」「みね子、みね子、みね子! し~っな、し~っ!」「し~っ!」「ありがとう」「ありがとな」「し~っだ」「じゃあね、三男」「おう」。

「あっ、待って! 今のとごろ、まだ秘密にしておぐんだよね、誰にも」「んだな。もっとちゃんと計画立でられるまでな。あっ、うちの人にも、ちゃんと口止めしとげよ」「うん、わがった。あっ、あっ! お母ちゃんは大丈夫。あと、じいちゃんも…確認しとく」「おう。じゃあな」「遅くなって怒られんじゃないの?」「まぁな。気にしねえよ。早く帰ったって何だかんだ文句言われんだがら」「うん」「じゃあな。また明日!」「じゃあね」「うん!」。

「三男! う~ん…。頑張ろう! キラキラキラキラ~!」。

「オ~!」。

「時子は大丈夫? 遅くなったけど」「気にしねえよ。早く帰ったって何だかんだ文句言われんだがら」「うちの人まだ反対してんの? 東京行ぐこど」「うん」「そうかぁ」「うん。まっ、それはしかたないよね。心配なんでしょ、やっぱし。でも、ちょっと腹立つよ。感じ悪いし。誰も応援してくんないし」「私がするよ、応援!」「フフフ! ありがと」「うん」。

「でも、私より三男の方がしんどいんじゃないかな」「そうだね。みんながうちを出で行ぐって思ってんだもんね。三男は出ていきたいわげじゃないのにさ」「そだね」「だから三男のためにもさ、聖火リレー、実現させようね」。

「うん。フフフ。いいね、みね子んちは。仲いいし、上からさ、あぁしろこうしろってガミガミ言われないでしょ?」。

「それはお父ちゃんがいないからだよ」「えっ?」「いないからさ。だからどっかみんな無理してんだと思うんだ。わがまま言ったら、お父ちゃんに申し訳ないって。ちびたちもきっと思ってる。普通よりいい子だと思うよ、2人とも」「うん」。

「私もそうだし、たぶん、じいちゃんやお母ちゃんもさ、何だろ…たとえばさ、テレビとか見ててよ、笑っちゃう時とかあんでしょ? あのクレージーキャッツ出てる時とが」「うん」「そのあどでさ、何か申し訳ない気持ちになっちゃうんだ」「へぇ」「だから我が家は今、とっても清く正しい人たちになってしまってるのよ」。

「そうか…。みんなそれぞれいろいろあんだねえ」。

「えっ?」「ん? 何?」。

「えっ? 私には何もないと思ってたわげ?」「え…? そんなこと…」。

「そんなこど?」「そんなこど…。ちょっと思ってた」。

「んだか?」「んだ…ごめん」「あらぁ」。

「おう、美代子。どうした? 早えーな」「うん。よろしくね」「うん。乗れ乗れ」「おはよう」「おはよう」「どごさ行ぐんだ? こんな朝早ぐに」「うん、ちょっとね」「まさか実が恋しくて、東京さ会いに行ぐんでねえのが? ん? ん…?」「フフッ…。バカでねえか、本当に次郎は」「ハハハ! 実、元気でやってっか? 便りあっか?」「うん、元気だよ。実さんは…元気だよ」「そうが。駅までが?」「うん。6時39分発に乗りたいんだ。間に合うよね?」「おう。任しとげ。小太郎さん、ちょっとだげ」「んだ」。

「どうした? どごさ行ぐ?」。


 
「おう。どっからだっけが?」「バス停だ」「あぁ、そうだそうだ。でな、「どごさ行ぐんだ?」って聞いたら、「東京さ行ぐ。お父ちゃんのとごさ行くんだ」って言うわけだ」「やっぱし…」。

「でな、「お母ちゃん、知ってんのか?」って聞いだら、黙ってよ。「乗せるわげにはいがねえ」っつったら、「んじゃ歩いていぐ」って言うがらよ。そんんこどさせられるわけなかっぺ。だから、バス乗っけてよ。うちのバスはほれ、巡回バスだから、一周して。その間に、寝でしまった。泣きながら」「そうけ」「うん」「悪がったな、次郎」。

「あとちょっとで来る」。

「楽しみだね」「んだね」「あれ? ほら見て」。

「あっ!」「来たよ! 来た来た来た!」。

「来た…」「向こうで待とう!」。

「みね子、悪いな。今年最後のバスだ」「次郎さん、謝るこどないよ。よいお年を!」「よいお年を!」「小太郎さんも、よいお年を」「おう」。

「帰ろっか」「うん」「お父ちゃん、帰ってこねえの?」「うん…仕事が忙しいんだね、きっと」「うん」。

「ほら、帰って「紅白歌合戦」見っぺ!」「んだな」「うん」。

「待って!」「進~!」。

「そうかぁ、みね子。東京行くこどにしたのが」「そうなんだよ。ハハハハ!」「そうかぁ」「えっ? 何? 何なの、あんたら! 私が一緒なの、うれしくないの?」「いや、それはうれしいけどよ」「じゃあ何?」。

「いや、今からそんなこど言っても、難しいんじゃねえのか? なっ、時子」「えっ? 何で?」「いや、だってよ、みね子。就職の季節はとっくに終わってっと」「え…?」「もう募集してるとこなんかなかっぺよ」「あ~そうかぁ…。やだ、私、全然そんなこど考えもしねえで、みんなに前言しちゃったよ…。ねぇ、どうしよう…。どうしよう…。どうする?」。

「おっ、早えな!」。

「三男!」「おはよう!」「何だ? わっ! 何だよ?」。

「おはようのポーズ!」「おはようのポーズは?」。

「せ~の! おはよう!」「よう!」「えっ、えっ? どういうこどだよ?」。

「全然ダメ。もう! もっと! いくよ!」「もっと?」「せ~の! 」「おは…」。

「おはよう、次郎さん、小太郎さん」「おはよう、三男」。

「おう」「早ぐ乗れ! 出発すっと!」「ごめん、もう来っから! ね?」「またか、お前らは毎朝毎朝! 本当、このごじゃっぺが!」。

「遅えよ、早ぐしろ!」。

「おはようございます!」「はい、おはよう」。

「おはようございます」「おはよう! 早ぐ乗れ!」。

「三男、腹壊すなよ」「真面目に、働くんだぞ」「うん」。

「時子、体気ぃ付けてな」。「うん」。

「発車、オーライ!」。

「三男~!」「行ってきます」「行ってきます!」。

「お姉ちゃん!」「ちよ子、頑張ろうね。頑張ろうね! ちよ子、頑張ろうね!」「お姉ちゃん…」。

「頑張ろうね!」。

「お姉ちゃ~ん!」。

今回の茨城ロケ地めぐり、最後に訪れましたは、水戸。望郷編から一気に向島編にワープします。

「あぁ、気持ちいい! 足の疲れもとれた」「んだねぇ。あれ? ちょっと! 澄子! もう~遅い!」「すまねえす~」「澄子、銭湯好きだね」「はい。でっけえお風呂はいいです。大好きだ…フフ…」「確かに、銭湯はいいね。みんなで一緒に行げてさ」「うん」「あっ! どうだったのよ? 時子。テレビ局とが」「そうだよ、そうだよ、その話」「で、そのあど、幸子さんの喧嘩話」「えっ?」「聞きたい、聞きたい!」「聞きてえです」「はい、時子」「あっ! ねえ、その前に。飲みたぐない?」「あ~!」「このころ、ラムネの値段は15円でした。ちなみに、銭湯は28円。ラーメン一杯75円。映画館入場料は、400円でした。お給料の安いみね子たちは、3人で1本を分けることにしました」。時子が見学に行った、NHK放送会館です。

「うめえ!」「一人で飲み過ぎだ」「で? それで?」「それでね、すごいきれいな人とか、おしゃれな人とか、どんどん出たり入ったりしてさ」。

 「すみません。ちょっとごめんなさい。すみません。すみません。すみません」。

「キョウ様よ!」。

「あれま、大丈夫だったの?」「うん。逆にさ、このまま帰れるかって気持ちになってさ」。

「あの!」「ん? どうしました?」「私、女優になりたいんですけど!」。

「えっ? で?」「女優さんにしてくれるって?」「そんな簡単にいかないよ。でも、来月ドラマのオーディションあるから、申し込んでごらんって。これくれた!」「いよいよだねぇ、時子」「うん」。

「怪しい人ではねえですよね? その人。名刺とかもらわねかったですか?」「え…? あ…」「もらうようにしねと。悪い人もいますから」「あっ、なるほど。はい、気を付けます…」。水戸市役所三の丸庁舎です。

「あっ、キョウ様よ!」「キャ~!」。

「何かすごいね」「うん」「時子は、こごにいづも来るようになんだよ」「うん…」。

「有名になっても友達でいてよ」「バカ」。

「フフフ! 行くか」。

「うん」。

「え~次、13番、ニシモトシュウコさん」。

「時子?」「ヘヘヘ! 帰ろっか」。

「帰んの?」。

「うん。帰っていいって。お疲れさまでしたって。あっ、何か食べて帰ろうか? おなかすいた! ね?」。

「うん」。

「お父さん…。私と時子は、帰りにあんみつを食べて帰りました。おいしかったです。時子は全然、オーディションの話をしませんでした。そして、私も聞きませんでした。話したくないんだろうなぁと思って、聞きませんでした」。

みね子の実家、谷田部家も訪ねました。

田んぼの脇の、谷田部家の自家用の畑。

奥茨城は、時が止まったような静かな時間が流れる素敵なところです。ひよっこに登場するキャラクターの素朴さは、奥茨城の空気が宿っているんだなあと思いました。

さあ、いよいよ後半戦です。楽しみです。


2017J1リーグ第18節FC東京vs鹿島アントラーズ@味スタ20170708

2017-07-09 18:37:37 | FC東京

願い事は叶うかな。

梅雨明けしたかのような、真夏がやってきました。からっと晴れるのは良いのですけど、連日の猛暑ですので、皆さまくれぐれも体調には気をつけましょう。

J1は折り返しです。本日から後半戦がはじまります。即戦力の主力級が大挙して加入して、今年こそはと期待しましたけど、チームのかたちが整わず、前半を終えて例年通りに中位に沈んでいます。巻き返しというよりかは、とにかくモヤモヤを晴らすサッカーが観たいところです。本日のYou'll Never Walk ALone♪。煽ってくれたナオへの感謝のチャント♪キャンドルサービス

オープンファイトの、胸のすく熱いどつき合いは、シーソーゲームの末、痛み分けとなりました。

東京はモリゲが怪我のため長期離脱です。もしかすると今シーズンはモリゲ不在のまま闘い抜かなければなりません。モリゲ加入以降、はじめての体験です。シフトは4-4-2。GKは彰洋。CBはカズとまる。SBは室屋と宏介。ボランチは洋次郎と今年初スターターのヨネ。メイヤは右に拳人左に慶悟。2トップはウタカと永井です。

首位鹿島は、ミッドウィークを消化しての中二日。でもほぼ同じ布陣で臨みます。シフトは4-4-2。GKは曽ヶ端。CBは昌子と健斗。SBは右に大伍左に修斗。ボランチはレオ・シルバと永木。メイヤは右に康左にレアンドロ。2トップはPJと夢生です。

東京にとって大黒柱の離脱は、メンタルと守備の仕組みに大きな影響を及ぼすこと必定。とりもなおさず今シーズン残りの試合は、モリゲのバックアップに焦点が当たります。その初戦となった今日の相手は、いきなり首位、好調の鹿島です。ハードなテストですけど、考えようによっては最高のスパーリングパートナーかもしれません。

東京はおそらく、ここまでの基本プランである守備重視の闘いかたは機能しないと考えたと思います。モリゲがいてこその作戦。そこで東京はいきなりラッシュを仕掛けます。鹿島に圧をかけて、押し込みます。そこからCKを二本獲得します。結果的にゴールには至らなかったけど、早々、ポストモリゲの姿勢を見せてくれました。東京が施した工夫は二つ。詳しくは順に後述しますけど、大前提となる思想というかポリシーは、東京のサッカーを取り戻す、だと思います。そのために具体的に施した打ち手は、ヨネのスターター復帰とカウンターでした。

ただ、よっちモデル以来、東京にDNAとして染み込んでいる慣れしたしんだ作戦であっても、昨年から今年の前半にかけて、ヒロシと篠田さんが取り組んだニュースタイルからいきなり舵を切り直すことはなかなか難しい取り組みだったと思います。事実、30分くらいまでは苦しい展開が続きます。

鹿島は中二日のエクスキューズがあります。なので、今日の鹿島がニュー大岩鹿島をストレートに表現していたのかは確認できません。ただ、確実に、大岩鹿島は、新しいスタイルで臨んでいます。

鹿島は、いわゆる鹿島るを象徴とする常勝メソッドがそのレゾンデートルです。分かり易く言うと、勝利こそすべて。美しさやフェアーや楽しさは、あえて言うと優先しません。事実、Jリーグ最強の実績を残していますから、自他ともに鹿島ることの価値は認めてしかるべしと思います。ただ、なんとなく、ですけど、鹿島内部のチームスタッフとサポーターのなかでは、少しずつ違和感のようなものが芽生えていたのかもしれません。鹿島ることは、突出した実績とストイックさゆえに、外部から見ると鹿島という組織に秘密結社のようなある種の閉鎖性を想起させます。鹿島が外からの声に影響されるとは思えないのだけれど、石井体制下で起きた様々な事件を経て、変革に対する欲求が起こってきているのかもしれません。チーム内部には、闘いかたへのフラストレーションからの不況和音があり、サポーターにとっては時として守備加重な姿勢への不満となったのだろうと思います。大岩さんが就任時に、より攻撃的な楽しいサッカーを見せるという主旨の発言をされていて、外の者の感覚として違和感があったのだけど、対戦してみてなんとなく意図が理解できたような気がします。

東京のファーストアタックが実を結びません。鹿島に主導権が渡るとキビシイなあと思っていました。そして案の定、鹿島が完全に試合を支配します。ニュー大岩鹿島の特長は、さっそく攻撃面で観ることができました。鹿島の伝統的な攻撃スタイルと言えば、言わずとしれたダイナミックなサイドアタックです。今日はそれが封印されていました。極端なほどのポゼッションです。ミッドウィークを消化したコンディションを考慮したのか、それともこれが大岩鹿島の基本スタイルなのかはわかりません。それでも完成度が高かったのは事実。特長は偏りがないこと、左右中央、すべてがバランスが整っていて、どこからでも攻められる雰囲気を持っています。ポゼッションの仕組みは細かいスペースメイクを基調としたショートパスの連携です。鹿島の上手さを表出しているのは、運動量の少なさです。スペースメイクといっても浦和のような運動量を前提にしたものではなく、どちらかというと川崎のスタイルに近いです。川崎よりももっとスタンディングサッカーです。これが極端だったので、伝統的な鹿島のイメージとかけ離れ過ぎています。なので、コンディションの問題は多分にあったろうと思います。

ともかくも、スタンディングサッカーにもかかわらずパスがつながります。これこそ鹿島の上手さの象徴だろうと思います。効率的に動くことと、タイトなスペースでのパスの授受を正確かつ高速で行えること。これが出来るのは、もちろん個々の選手の技術の高さが理由です。もうひとつ、闘いかたに工夫があります。それはサイドのポジションの流動性です。右は康と大伍、左はレアンドロと修斗。どちらも内と外の入れ替えを柔軟かつ頻繁に行います。つまり、パス回しにかける人数を増やし、かつ細かいのだけどダイアゴナルな動きを組み入れることで、プレッシングを仕掛けるポイントを分散させているのだろうと思います。そして鹿島がオーガナイズするなか、先制点が生まれます。

16分。東京のアタックを自陣深くで修斗がトランジションした時点から。こぼれ球を拾ったレアンドロはレオに渡します。カウンターの発動です。レオは左サイドに流れていた夢生にパスしますけど、これをカズがカット。でもこぼれたボールがレアンドロに渡ります。レアンドロはドリブルで東京陣に進入。中央に移動して、右ライン際の康に渡します。アタッキングサードに入ります。康はそこでためを作り、宏介を引きつけつつ、その背後を狙って上がってくる大伍にスルーを送ります。東京はずっと下がり基調を強いられます。それでも大伍には慶悟、中央のニアの夢生にはまるがつきます。大伍はスライディングしながらギリギリのクロスを夢生には送ります。夢生はまるの前を取って、ダイビングヘッド。これは彰洋がはじきますけど、ゴール前につめていたPJの目の前に渡りました。PJは流し込むだけ。東京0-1鹿島。

東京は出鼻をくじかれました。正直、こころが折れることを心配しました。守備陣は相当な覚悟で今日に臨んでいたでしょうし、状況ごとのマークの確認も綿密に準備していたと思います。それでも、実質鹿島のファーストアタックでさっそく失点して、疑念が生まれても不思議ではない雰囲気でした。攻撃でもウタカのポストが収まらないし、パスミスも目立っていて、とてもじゃないけど攻撃のかたちなど作る見込みすら感じませんでした。鹿島の完成度に比べて、正直見劣り感がハンパなかったです。とにかくなんとか最小失点で耐えて、ゴレアーダだけは食らわないようにしてほしいなと、がっかりを通り越して、もはや観念すらしていました。

ところが状況が一変します。突然、攻撃が機能しはじめます。理由は二つ。まず中盤の守備が機能します。鹿島のポゼッションに慣れてきたのだと思います。鹿島のパス回しはとても巧みなのですけど、基本的にスタンディングだし、それほど積極的ではありません。PJ、夢生、レアンドロが入れ替わるようにバイタルエリアに下りてきてそれなりに流動性があるのですけど、パターンのようなものがあるのだと思います。とくに夢生とレアンドロ。夢生とレアンドロに対して、最終ラインではカズ、中盤ではヨネがタイトにマークします。

鹿島の攻撃スイッチは夢生です。夢生が前を向いてプレーできる状況を作ったとき、鹿島はシュートアテンプトまで持っていくことができます。今日のカズのミッションは夢生を全消しすること。ほぼ90分間、夢生のみならずPJ、レアンドロに対してポストを許しませんでした。ほぼ唯一、夢生をフリーにしたのは二失点目のシーンだけ。結果的にワンチャンスをモノにされてしまったことは、東京と鹿島の現在地を象徴しているのかもしれません。

とは言え、今日の守備はホントにタイトでした。カズとヨネを中心に危険の芽を摘み続けます。そう。ヨネ。おかえりヨネ。今日の東京にぼくらの東京が戻ってきた感があるのは、ヨネのおかげだと思います。鹿島を向こうにまわして、中盤での圧倒的なボール奪取能力を見せつけます。泥臭いけどクリーンなかつての東京の守備のイメージはヨネがその主役を担ってきました。ヨネが持つ躍動感と安心感こそが東京の中盤をありかたを示してくれています。ヨネがスイーパーとなることで洋次郎の負担が確実に減ります。洋次郎がコンダクターとなることで、アタッカーが安心して裏を狙えるようになります。とくに永井が右サイドで長い距離を走れるようになります。これが、東京に攻撃姿勢を取り戻させる原動力となります。

もうひとつの理由は鹿島にあります。先制した鹿島は、コンディションのこともありますからてっきりリトリートすると思っていました。ところが鹿島は、まったくスタンスを変えません。変わらず攻撃姿勢を崩しません。ポゼッションを高めながら攻撃網を押し上げます。当然、SBも高い位置を取ります。時として、レオもしくは永木が前線に顔を出し、後方は三枚で守るシーンもありました。中盤にレオが君臨し、かつ昌子と健斗が広く守れることを前提としているのだと思います。それにしても伝統的な鹿島に反し、攻撃的です。そして、鹿島の攻撃網の背後には広大なスペースができます。永井が狙わないはずがありません。

こうして、鹿島がポゼッションし東京がカウンターを返す流れが生まれます。このため、まったく、これが鹿島戦とは思えないほど、試合が徐々にオープンファイトの様相をていするようになります。それとともに、ジワジワとワクワク感が漂うようになります。そして、前半終了間際に、奇跡の同点ゴラッソが飛び出します。

44分。康のクロスをキャッチした彰洋起点のカウンターは、ウタカから永井へのクロスをカットされ不発に終わります。でもクリアボールをウタカが保持。ウタカから洋次郎、ヨネを経由して宏介に渡ります。まだアタッキングサードに入る手前でしたけど、宏介はルックアップ。この時ゴール前の鹿島は昌子、健斗、大伍の三枚。東京はウタカと拳人の二枚。拳人が昌子と健斗の間を抜けようとしているのを見た宏介は、健斗の頭を越すイメージのクロスを送ります。これが、昌子と競る拳人にピタリと合いました。ゴラッソ。東京1-1鹿島。

先制された直後は絶望感すら漂っていた内容でしたから、まさか追いつくとは思いもしませんでした。リスクテイクしていたとはいえ、鹿島の守備はカウンターに十分に対応していましたし、同点ゴールも鹿島の守備に問題があるわけではないので、まさに奇跡。でもこれが、東京の背中を押します。サポとして反省しなければなりません。選手はまったく自信を失ってはいませんでした。前半は同点のまま終了。

後半から東京はより攻撃を整理します。カウンターのかたちを整えます。4+4の2ラインのゾーンをコンパクトに保ち、中盤でトランジションからのカウンターです。それから、鹿島のセットプレーも、逆にチャンスのように感じました。ある意味、東京にとって美味しいスペースが最も広大に用意されているのが鹿島のセットプレーだからです。実際に東京は、鹿島のセットプレーの時、永井かウタカを前残りさせる場合があります。一撃必殺のカウンターをイメージした作戦だと思います。そして、逆転ゴールが生まれます。

47分。鹿島陣でレアンドロがレオになにげに渡したパスが乱れ、レオがコントロールミスします。永木が受けそびれたボールはウタカへのパスとなります。カウンターの発動です。ウタカは永井とのタベーラで一気にアタッキングサードに入ります。マークしてきた昌子を引きつけます。この時、拳人が誰よりもはやくフォローしてました。ウタカは丁寧に拳人にスルー。拳人はダイレクトで流し込みました。東京2-1鹿島。

パス回しが巧みな鹿島にして珍しいコントロールミスを逃さない、カウンターの炸裂でした。おそらく鹿島は、ウタカと永井と拳人がおりなすカウンターに、背後のスペースの脅威を相当感じたことでしょう。それでもなお、鹿島は引くことを選びません。ここではリードを許したので当然ですけど、鹿島の攻撃姿勢は試合を通じて変わりませんでした。このニュー鹿島のスタンスは大歓迎です。とくに後半のワクワクが止まらない極上エンターテイメントな展開の半分は、相手がニュー鹿島だったからだということは間違いないと思います。もしかすると、この闘いかただと優勝は望めないかもしれないけど、Jリーグを面白くするためにぜひこれからもこのスタンスを継続してほしいと思います。

そして大岩さんが動きます。永木に代えて伊東を右SBに投入します。大伍が一枚上がって右メイヤ。康がボランチに回ります。宏介が高い位置を取って攻撃の良いアクセントになっていたので、そのケアとして、大伍に宏介の背後を狙わせる意図だと思います。それから、右サイドのパターンを少しアジャストします。オールラウンダー同士の組み合わせから、純粋なサイドアタッカーの伊東を組み込む役割分担に変更するイメージだと思います。

東京は、シンプルに東京のストロングポイント活かす、原始的なサッカーを貫きます。逆転してからはさらにシフトアップします。ウタカを基点にして、人数と手数をかけず、ダイナミックな縦に長いパス交換で推進力を生み出し、一気にゴールに迫ります。もしくは宏介にボールを集め、クロスをゴール前に供給します。それを支えるのが守備陣。まだまだ時間が十分残っていたので耐えきれるか心配だったのですけど、ここからますます東京守備陣の集中が高まります。カズとヨネを中心に、室屋、まる、宏介、洋次郎もタイトマークでピンチの芽を摘み続けます。モリゲをロストした危機感は、守備陣にとってやるべきことの整理につながったのかもしれません。東京の守備の集中は傍目にもヒシヒシと伝わってきました。ただひたすらに勝ちたいという強い想いを感じて、思わず涙が出てきました。

時間を追うごとに安定感が増してきて、これはもしかしたらこのまま乗り切れるかもと思いはじめた矢先、同点ゴールを奪われます。

76分。曽ヶ端のGKからの東京のクリアから。ボールを持ったレオがロングフィードを夢生につけます。東京のハードチェックに苦しんでいた夢生が、この時はフリーでポストします。鹿島は、夢生を軸に右サイドで攻撃を作ります。この間にアタッカーが前線に揃います。そのまま、鹿島らしいショートパスの連携でスペースを伺います。この時、レオも攻撃に参加して、中盤は康だけ。大伍も修斗も上がり、超攻撃的シフトです。左サイドでボールを持ったレオは、下がってきたPJに渡してそのまま最前線へ。PJはライン際の修斗に渡します。修斗はダイレクトでライン際にスルー。そこにレオが入ります。その間にPJが上がります。レオはPJに戻します。東京は、レオに室屋が引っ張られます。PJは一度下がってからの上下の動きなのでマークがつけません。それでもペナルティエリアには6人が並び、スペースを消しています。ルックアップしたPJはシュートを選択します。これがゴール右隅に突き刺さりました。ゴラッソ。東京2-2鹿島。

直後に大岩さんが動きます。康に代えて聖真を同じくボランチに投入します。同点ゴールの直前に用意していたので、攻撃的なアジャストです。追いついても作戦を変えなかったので、この交代もニュー鹿島を表現していると思います。それから、満男を休ませる意図もあったと思います。

篠田さんも動きます。永井に代えて翔哉を投入します。同時にシフトを4-2-3-1に変更します。翔哉はトップ下に入ります。左サイドを軸にしたロングカウンターが機能していたので、基本的に流れを維持しつつ、シュート力をアップさせる作戦だと思います。それに、翔哉を軸にする攻撃は、篠田東京の原点ですから。問題は、今年の翔哉がタスクを消化するためにシュートに対し消極的になっていることです。カウンタースタイルでの翔哉の役割はフィニッシャー。感覚的なところも大事だと思うので、にわかに積極性が戻るのか、心配でした。

後半の熱い闘いを目にして、東京ゴール裏もヒートアップします。今日は、ナオの煽りを含め、選手の頑張りに引っ張られた印象です。ひさびさに、ホントにひさびさに味スタに一体感が戻ってきました。大型補強はチームもサポもなんだか頭でっかちにさせてしまったけど、嘉人とモリゲのロストは、かえってぼくらの脳をクリアにすることに繋がったのかもしれませんね。味スタがうねるような、地底から沸き起こるようなチャントは、確実に選手の背中を押していたことでしょう。それから、今日いっぱい集まってくれた子どもたちも、東京の楽しさを感じてくれたと思います。

篠田さんが動きます。ウタカに代えて遼一を同じく1トップに投入します。ウタカのコンディションを考慮したのだと思います。遼一のポストの安定感はカウンターの期待感をそのまま作り出します。遼一と翔哉は昨年からの名コンビですから、クオリティに心配はありませんでした。実際、アタッキングサードに入ってからの翔哉の積極性は、遼一が入ってからのほうがアップしていたと思います。

同時に大岩さんが動きます。夢生に代えて優磨を同じくトップに投入します。夢生のコンディションを考慮したのだと思います。それから夢生は警告を一枚受けていたので、心配もあったと思います。スタンディング基調の鹿島のなかに、流動性のある優磨を入れることで、ポジティブな違和感をもたらそうとしたのでしょう。

篠田さんが続けます。慶悟に代えて草民をボランチに投入します。ヨネが左メイヤに回ります。慶悟のコンディションを考慮したのだと思います。それから、最終盤になるに従ってヨネの存在感が増し、インターセプトのみならずカウンターの起点にもなっていたので、左サイドからのカウンターの威力を高めたかったのかもしれません。そして、草民のあっと驚く決定力。

追いつかれても東京の集中と躍動は途絶えません。対する鹿島も攻撃姿勢を貫きます。味スタは、選手たちが織り成す熱いエンターテイメントに導かれるように最高潮にヒートアップします。それでも、これ以上のゴールは双方とも生まれませんでした。このまま試合終了。東京2-2鹿島。

100%のエネルギー量が一瞬でゼロになる試合終了の時のはざまは、最高に面白い試合ならではの余韻です。勝ちたかったし勝たせてあげたかったですね。くやしさが残るけど、なんとなく心地よいくやしさです。ゴール裏からの感謝とエール

嘉人とモリゲを批判するつもりは毛頭なく、変わらずリスペクトするし、東京がレベルアップするために絶対に中心になる選手だと思います。でも、なんだかまだ消化不良なんでしょう。あらためて東京らしいサッカーにシンプルに向き合えば、楽しくてワクワクするサッカーを表現する力をこのチームは持っているのです。やっぱり、難しく考えず、このサッカーの延長線上でレベルアップするために嘉人とモリゲを活かすほうが正解だと思うし、ぼくらが望むことのような気がします。

ここで三週間の中断があります。今日は、後半戦に臨むための良いベンチマークになったと思います。あらためて東京が目指すサッカーとはなにかを意識して、チーム作りに取り組んで欲しいと思います。


2017J1リーグ第17節セレッソ大阪vsFC東京@キンチョー20170702

2017-07-03 21:37:32 | FC東京

梅雨明け間近ながら、雨が心配だった関西。

ひさしぶりの阪神甲子園球場でございます。甲子園でタイガースを観るのは、甲子園でバイトしてた学生時代以来。

ルーキー大山のプロ初ヒットにして初ホームランで、さらにプロ初決勝打に沸いた甲子園から、大阪長居。

本日は、好調セレッソとの対戦でございます。You'll Never Walk Alone♪

先制するも、モリゲの負傷退場の影響で、悔しい後半の逆転劇でした。

東京はエース嘉人が怪我のため離脱です。シフトは4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲとカズ。SBは室屋と宏介。ボランチは洋次郎と拳人。メイヤは右に慶悟左に翔哉。2トップはウタカと永井です。

セレッソはキヨが怪我のため長期離脱です。シフトは4-4-2。GKはキム・ジンヒョン。CBは山下とヨニッチ。SBは右に陸左に丸橋。ボランチは蛍とソウザ。メイヤは右に宏太左に曜一朗。2トップは健勇と山村です。

好調セレッソは、鹿島とガンバと川崎がひと試合消化が少ない事情がありながらも柏についで2位。ゴールデンウィークあたりから、敗戦数が少ないガンバ、川崎そしてセレッソが上位に来そうと思ってましたけど、やっぱりそのようです。

今日が前半戦のラストマッチです。興味深い闘いかたをする上位との対戦はいつも楽しみで、前半戦の最後を飾るのが、いま最も興味深いセレッソとなり、とても楽しみにしていました。

自分的に、ことしのセレッソ最大の謎は、山村。鹿島時代は、世代別代表のころのイメージを引き継ぎ、足元の技術がありながらも肝心の守備の強度に難点があった印象です。セレッソの加入はことしで2年めです。ユンさんが山村のタレントの意外な可能性をいつ見つけたのかわかりませんけど、その慧眼に感服です。

新生ユンセレッソは、コレクティブな守備を前提とします。まず驚いたのは守備の仕組みです。ユンさんといえば、タイトなフォアチェックを基調としたショートカウンター一本槍なイメージがあり、その固定された作戦ゆえ、鳥栖時代の最後は不協和音をかこいました。技術の高いタレントをクラブとしての前提としているセレッソに、いくらクラブのレジェンドとはいえユンさんのサッカーがはまるのか、少なからず心配していました。

でもまったくの杞憂です。ユンセレッソは、実にセレッソらしいポゼッションスタイルを確立しています。守備に関しては、4+4の2ラインをコンパクトに保つゾーンスタイルで、フォアチェックはほとんどしかけてきません。ゆえにトランジションポイントはバイタルエリア付近に設定しているのだと思います。

後述しますけど、セレッソの強さのヒミツのひとつは、闘いかたに攻守ともいくつかのモードを用意していることだと思います。しかもその完成度はいずれも高く、洗練されています。今日は攻守とも2パターンを用意していました。展開の綾だと思います。もしかするとフォアチェックモードも持っていて、たまたま今日は披露しなかっただけかもしれません。

その意味では、チームとしての懐の深さは、経験豊富な鹿島やガンバはともかくとして、上位では柏や川崎よりもセレッソのほうが高いと感じました。実際、キヨが離脱してもクオリティは落ちていません。この安定感は、シーズン終盤を迎えたときに大きなストロングポイントになりそうな予感がします。

さて、試合は中盤の主導権争いではじまります。互いに守備の考えかたが相似しているためです。これを制したのはセレッソです。非我の差を分けたのは、守備ではなく攻撃。トランジションしたあとのポゼッションのクオリティの差です。セレッソは淀みのない流れるようなパス回しでアタッキングサードまで確実にボールを運びます。対する東京は、今日はウタカのポストが比較的安定していたのですけど、ウタカから先への展開がサイドに偏ります。

セレッソの攻撃のモード1はポゼッションスタイルです。山村と健勇を軸に、曜一朗と宏太が絡み、さらに蛍とソウザが前線と距離を狭めることで、アタッキングサードの狭いエリアでパスをつないでいくための環境を作り出します。さらに陸と丸橋がとても高く位置取って、中央からの展開に備えます。

セレッソのポゼッション作戦を機能させるのは、言うまでもなく個々の選手の高い技術です。いま上げた選手は、いずれも足元に安定感があります。これはセレッソの伝統であり、つまり降格したときも素地として当然持っていたのですけど、それを活かすチームとしての闘いかたが整理できていなかったのでしょう。ユンセレッソのポゼッションは基本的にワンタッチです。狭いエリアでも、選手が細やかなスペースメイクをしていて、それがパスが繋がる主因です。ここにこそユンさんが自身のディシプリンサッカーをセレッソ仕様に進化させた最大の特長が現れていると思います。

ところが、東京のゾーンは、セレッソの高技術のポゼッションを上回ります。東京はペナルティエリアに堅城を築きます。今日は試合序盤から集中が高く、セレッソのペナルティエリア内への進入を拒みます。セレッソのポゼッションの特長のひとつは、ポストプレイヤーが決まっていないことです。高い技術を活かすため、と同時にコンタクトの弱さを補完するため、スペースメイクをポストの前提とします。とくに健勇はバイタルエリアのやや下がりめでポストを受けることが多い印象です。

さすがにこれでは、ややもするといたずらにパス回しが上手いだけのチームになってしまいます。なので、縦への推進力を作り出すためにはやっぱりターゲットが必要です。それが、ユンさんが山村を前線に据えた理由でしょう。東京は、これを予見していました。山村に対しモリゲを当て、ポストを機能不全にします。前半、山村がほとんどパス回しに関与できなかったのはそれゆえ。セレッソがペナルティエリアに入れなかったのもこのためです。

東京は、中盤の主導権をセレッソに受けわたすことはある程度織り込み済みだったと思います。むしろセレッソに攻めさせる状況を作り出しそうとしたのでしょう。セレッソは守備が堅実なチームですけど、けしてコンサバティブではありません。それはSBに現れます。ときに陸、丸橋とも攻撃参加していることがあります。当然のことながらこの超攻撃仕様は高いリスクを負います。ポゼッションでリスクヘッジしつつも、最終的にはヨニッチと山下でフォローしてね、ということだと思います。そしてそのリスクが表面化します。

21分。アタッキングサードで健勇からパスを受けた蛍が前線の曜一朗につけようとします。このパスがズレ、室屋がクリア。このクリアは、最前線で裏を伺う永井を意識したメッセージパスでした。永井は一瞬で山下の裏をとり、置き去りにします。永井はヨニッチもかわし、1on1となったジンヒョンを引きつけ、並走してきたウタカに丁寧に渡します。ウタカは流し込むだけ。セレッソ0-1東京。

さて、ここからユンセレッソの華麗なモードチェンジの流れがはじまります。先制されたわけですからプランを代えつつも攻撃モードは維持すると思ってました。ところがセレッソは、リトリートします。セレッソの攻守のモードをはかるバロメーターは曜一朗のポジショニングです。守備モード時の曜一朗は、左サイドから動きません。ゾーンのバランスを配慮してのことでしょう。曜一朗は、守備でもうひとつタスクを担います。ファーストディフェンスで、守備の方向を生み出す役割です。ですので、前線のなかでは曜一朗の運動量はかなり高めでしょう。

東京は、セレッソに引っ張り出される格好で攻撃モードに入ります。ウタカと洋次郎の安定したセンターラインを軸に、左右のサイドチェンジを繰り返しながらセレッソを揺さぶります。このときセレッソは少しばかりミスがありました。序盤の攻勢を決めきれなかったときに一度リトリートして落ち着かせるのは最近の常套なのだそうです。でも、ちょっとゾーンを意識して引き過ぎます。もう少し東京のボール回しの基点にプレスをかけたほうが良かったのでしょう。セレッソに引っ張り出されたとはいえ、もし東京が前半のうちに追加点をあげていれば、たとえモリゲにアクシデントがあったとしても、試合の結果は真逆になっていたかもしれません。

東京がセレッソを左右に揺さぶるのは、左サイドで仕掛ける状況を作り出すためです。翔哉と宏介、それにウタカも流れて絡むことで、ドリブル、スルーパスからの抜け出し、クロスとバリエーション豊富な攻め手を持つことができます。それに加えて、右からのダイアゴナルな永井のゴール前参戦と、それによって生まれたスペースに入る慶悟も選択肢に加わります。攻撃プランの練度は以前よりずいぶん整理されています。皮肉なことに嘉人がいるときよりも攻撃はスムーズに進行できています。嘉人不在は、チームがまだ嘉人を使いきれていないことを証明している印象です。

チャンスメークはできつつも決めきれない状況が続くなか、後半に向けて雰囲気は悪くないと思っていたら、前半アディショナルタイムに、この試合の流れを決定付けるアクシデントが起こります。モリゲがコンタクトが原因で負傷して下がります。代わりにまるが同じくCBに入ります。

やるかたなく、東京は守備をアジャストするために、引きます。やおら、一気にセレッソが攻めたてる状況に、必然的に移行します。前半は残り時間もなく、なんとかリードのまま終了。

引いたセレッソがなにしろ不気味で、次にどんなモードを持ちだして状況を変えるのか楽しみにしていたのですけど、今日はセレッソの能動的なプラン変更は見られませんでした。後半頭も、東京は守備の安定を優先します。リトリートしますから、セレッソもまた引っ張り出されることになります。

後半からセレッソは攻撃モードをアジャストします。中央突破をやめ、サイドアタックに移行します。このときポイントになるのが曜一朗のポジショニングです。曜一朗は中央にスライドしてトップ下のようなポジションに入ります。中央に経由点と二次攻撃の基点を作る意図だと思います。

同時に丸橋の攻撃力を活かす作戦でもあります。セレッソのサイドアタックは左右アンシンメトリーです。右は宏太と陸を絡めるコレクティブなかたちを取るのに対し、左は丸橋のタレントを最大限活かしています。今日の右のセットは、東京にとっては既知です。宏太、陸とも特長的な個性を持っているのですけど、同時にウィークポイントも明確。東京は宏太と陸の封じかたを熟知していたのでしょう。その意味で、セレッソの攻撃にダイナミックさを作り出していたのは右サイドではなく丸橋でした。

東京が10分耐えたら、なんとかグダグダな泥仕合にセレッソを引きづり込めると思っていて、その10分が経過して安心しはじめた矢先、同点ゴールが生まれてしまいます。

57分。セレッソの自陣からのビルドアップ。左サイドでボールを持った丸橋がドリブルで上がり東京陣に入ります。丸橋から中央の健勇、ソウザと経由してふたたび健勇に渡ります。このとき曜一朗が中央真ん中にはり、山村も中央にしぼります。セレッソの中央が厚くなったため、東京守備網もうちにしぼります。このとき右サイドでは、宏太がただひとりライン際にフリーではっていました。左寄りにいた健勇はこれを見逃さず、宏太にサイドチェンジで展開。宏太はルックアップ。このときゴール前は4on1。東京は四枚揃っています。セレッソはゴール前中央に曜一朗が入ってきていて、これはカズがマーク。山村は宏太のパスを受けに下がります。ただ、少しゴールから離れたところに健勇がいます。宏太はこれを狙います。宏太は室屋につけるイメージでクロスを上げます。室屋はクリアできると見たでしょうし、当然ボールを意識しています。そこに、背後から健勇が迫ります。健勇は室屋にボールが入る一瞬前に、室屋の前に顔を出してクロスに合わせました。セレッソ1-1東京。

このゴールはホントに大きかったです。これで東京の守備陣のココロがぽっきり折れてしまいました。モリゲの交代で混乱したというよりかは、最終ラインのコンセンサスを急に変更できるはずもなく、時間を追うにしたがって集中が増しアドホックに神がかることを願っていたのに、期待通りにいかなかったと言ったほうが良いでしょう。ココロが折れたというのはそういうこと。

やはり守備のコンビネーションをリビルドできないことを露呈した東京に対し、セレッソは、サイドアタックへの作戦変更がはまったこともあり、ここぞとシフトアップします。ところが、このことが試合を意外な方向に動かします。東京がふたたびファイティングポーズを取り戻します。失点して、過剰に守備に意識が傾いていたことに気づいたためでしょう。リスクテイクするセレッソの両サイドの背後を狙ってカウンターを繰り出します。東京、セレッソともショートカウンターの出し合いの様相になり、試合はオープンファイトに入っていきます。

良い流れになったと思いました。セレッソに試合をコントロールされると2点目は望み薄だと思っていたので、ガチファイトは、可能性を広げる意味で歓迎でした。点の取り合いになったら、まだまだ試合の結果はわかんないと思って期待感がわきました。でもオープンファイトはセレッソに軍配が上がります。

63分。宏介のCKから。ウタカのショートコーナーが流れて、曜一朗がクリアしたボールが山下に渡ります。山下は左サイドを上がり、センターライン付近で攻撃参加を待ちます。カウンターの発動です。山下は中央を駆け上がるソウザに。ソウザはそのままドリブルで一気にアタッキングサードに入ります。東京は守備網を作ることに必死で、とにかく中央を固めます。ソウザは右サイドに展開。ボールは宏太に渡ります。フリーでボールを持った宏太は状況をウォッチ。守備網ができていないことを確認して、マーカーの翔哉の背後に走り込む陸にスルーを送ります。抜け出した陸のシュートは彰洋の脇を抜きました。セレッソ2-1東京。

これを受け、篠田さんが動きます。翔哉に代えて拓馬を同じく左メイヤに投入します。左サイドに基点を作る意図だと思います。

さすがにセレッソはリトリートして落ち着きます。東京に攻撃権が渡ります。そこで篠田さんが動きます。慶悟に代えて遼一をトップに投入します。拓馬を右、永井を左メイヤに回します。最前線の基点を二枚にして攻撃ルートを増やすとともに、長いフィードによる攻撃への対応を意図したのだと思います。

これを受け、ユンさんが動きます。健勇に代えて澤上を投入します。同時にシフトを5-4-1に変更します。最終守備モードです。山村が右CBに下がります。ヨニッチがリベロ、山下が左CBです。メイヤは右に宏太左に曜一朗。澤上は1トップです。山村の究極のマルチロールプレイヤーっぷりを見せつけられた印象です。逆パターンのCBが前線に上がるパワープレーは良く見かけますけど、CFがCBに入るポジション変更なんて、スクランブル以外で見たことがありません。腰が抜けました。

シフトそのものを変えるドラスティックなモード変更であっても移行はとてもスムーズでした。セレッソの安定感が増すばかり。そして試合を決める一発が生まれます。

83分。宏介のCK崩れを拾った丸橋が自陣から長駆ドリブル。そのまま曜一朗と絡んでシュートに持ち込みます。これは永井がかき出します。クリアボールを陸が拾い、中央のソウザに渡します。ソウザはタッチしながらルックアップ。コースが見えたのでしょう。ミドルを豪快にたたきこみました。セレッソ3-1東京。

ここでユンさんが動きます。足をつった曜一朗に代えて関口を同じく左メイヤに投入します。

さらにユンさんが〆ます。宏太に代えて福満を同じく右メイヤに投入します。これもコンディションを考慮したのだと思います。セレッソはソウザも足をつっていました。先に鳥栖とセレッソの守備陣違いを述べましたけど、運動量こそ守備の基礎であるというユンさんの思想はセレッソの守備にも植え込まれているようですね。

東京は宏介を最前線に据える珍しいパワープレーを見せますけどセレッソの堅城は崩せず。このまま試合終了。セレッソ3-1東京。

モリゲ交代の影響は計り知れないので、後半の東京にはエクスキューズがあります。今日は前後半でまったく違う試合になったと思います。モリゲが90分いたら、そして前半のうちに追加点を取れていたらというたられば上等。

それでもやっぱり、セレッソの完成度の高さは賞賛に値します。短期間でこれだけのチームを作れることを示してくれていて、悔しいけど良いモデルを体感できたと思います。もちろんユンさんメソッドが優れていることはもはや確信。そして、いやそれ以上に、それを活かす素地がセレッソにあることも忘れてはなりませんし、簡単に手に入れられることではありません。短期的な結果ではなく、クラブがどんなサッカーを表現したいのか、ポリシーが問われるからです。東京に永年欠如しているのは、まさにそこ。

東京が目指さなければならない何かに気づく機会をセレッソがくれたので、いつも以上に相手を賛美しました。そもそもサッカーは相対的なスポーツですから、相手はぼくらの今と未来を写す鏡です。批判は明確な基準があって成立するものです。ぼくらには残念ながら、めざすべきベストなサッカーのスタイルがありません。

たぶん優勝の夢はついえました。次節から後半戦。嘉人に続いてモリゲの怪我も心配です。こんなときだからこそ、チームをしっかり保って欲しいと思います。