ダブルタイフーンの直撃はなんとか回避され、荒れ模様は土曜日でおしまい。ホントは土曜日のさいたまクリテリウムに行きたかったのですけど、雨で断念しました。日曜日はようやく10月らしい好天がやって参りました。
アウェイ甲府戦。山の稜線がくっきり見えました。
甲府はボクらにとってサウダージを感じられる相手です。城福さんと羽生との再会です。契約で出られない羽生は、イベントで元気そうな様子を見せてくれました。
今日の山中スタジアムは、見渡す限り青赤でした。今日のYou'll Never Walk Alone。
甲府の素晴らしい守備に苦しみましたけど、徳永のゴラッソでなんとか追い付きました。
どうやらポポさんは、3バックに過剰反応するようです。てっきりミシャにだけ反応しているのかと思っていたのですけど。3バックの城福甲府に対し、がっぷり四つに組んできました。秀人を真ん中に置く3バックです。アーリアは一枚下げてボランチ。ルーカスと慶悟がシャドウに入る3-4-3です。このシフトは夏場にトライしていますから、戦いかたに迷いはなかったと思います。ただ、せっかくアーリアをトップ下に置く形が完成したのに、この時期になってチームを弄るのはいかにも得策じゃないなと思いました。ポポさんの作戦は基本的にコンサバティブですから、やっぱり3バックにだけ過剰反応なんでしょう。
案の定、東京は苦労します。トップ下アーリアの役割は、パスをさばくだけじゃなくパスを引っ張り出す動きで攻撃をオーガナイズすることです。強引な突破でファールを誘引するプレーも、トップ下アーリアならでは。夏以降、試合のなかでアーリアの存在感がどんどん大きくなっています。そんなアーリアを一枚下げることで失うメリットは、いまやチームの根幹に影響すると思います。
ルーカスは時間とチャンスを作り、シュートを打つ役割ですけど、オーガナイザーではありません。慶悟は、ポジショニングが秀逸でビッグチャンスのラストシーンに絡みますけど、シュートをもっていません。だからハブであってフィニッシャーではありません。さらに、千真と他のアターカーの距離感がズレます。千真が体をはってポストしても拾う選手がいません。千真がパスを受けに下がると、今度は最前線に選手がいません。
やがて慶悟がボランチの位置までパスを受けに下がるようになってました。これでは前線に受け手がいなくなり、ゴールに向かって前進するムーブメントが起こり得ません。何度か秀人とヨネがロングパスを送りますけど、裏に抜ける選手がいません。まさに、ポポ東京の悪循環モデルを見ているような展開でした。
と、前半の低調は東京の作戦に起因するのですけど、東京を低調成らしめたのは、他ならぬ甲府です。甲府のシフトは3-4-3。GKは河田。バックスは英臣を真ん中に、右に青山左に佐々木。ボランチは保坂とマルキーニョス・パラナ。WBは、右に柏左は福田。レギュラートップのパトリックがサスペンションで不在。今日はジウシーニョが代わりに入ります。ジウシーニョの代わりに平本がシャドウ。シャドウもう一枚は河本です。
甲府の守備の特長は集中力ではないでしょうか。守備の形としては、3ラインを低く設定し、一番後ろのラインに5枚を並べ、ゴール前を固めるオーソドックスな守備的構えです。仕組みも、まずゴール前のスペースを消して、サイドに誘い出してから、局面をタイトに守るスタイルです。これまたオーソドックス。これを実効成らしめたのは、個々の選手の集中力だと思います。恐らく今日の甲府を攻略するならこれしかないという形で失点しますけど、作戦上のタスクは、全員が90分完璧にこなしていたと思います。
甲府は、攻撃のストロングポイントを心得ているようです。しかもコンセンサスが十分とれていて、見ていて小気味いいです。甲府の基点は、まずはジウシーニョのポストです。ジウシーニョはボールを持てますから、サイズのミスマッチがあっても預けることができます。ジウシーニョが作った時間で、甲府が攻撃モードに移行します。シャドウがワイドに開きます。河本は深い位置を宏介、徳永と競り合います。平本はCBの間を狙うイメージでしょう。パスを供給するのは、保坂のタスクです。ジウシーニョのタメのおかげで、保坂がいい形でボールを持つ形を作れます。
甲府最大の武器は柏でしょう。もっと柏を使ってくるかと思ったんですけど、アタックパターンとしては、オプションのようです。数より質なんでしょうか。伝家のほうとう的な。柏が上がるタイミングは全員が心得ているようですね。シャドウがやや絞り、ビルドアップのルートは左で、東京を片寄せしておいて柏が一気に上がります。ただ、東京の守りも堅実でした。柏の怖さはクロスではなくシュートです。3バックの効能はここ。モリゲと宏介で柏を封じました。とくにモリゲは、柏の一発目のアタックで抜かれましたから、逆に火がついたんじゃないかと思います。
役割がおもしろいのはマルキーニョス・パラナです。保坂がアンカーとして刺さっているのに対し、パラナは、その動きで攻守に渡ってチームのダイナミズムを作ります。個性の違うタレントに適した役割を与えてチームと為す。城福さんは素敵なチームを作りました。
今日の河田は神でしたね。
甲府の今日のポイントは、誰が考えても平本でしょう。序盤の平本は積極的にアタックをしてはいましたけど、ヒョンスに止められていました。それでも平本の特長はスピードとパワーです。トップだとタスクが重すぎる感があるけど、シャドウならシンプルに長所を活かせますから、ちょっと怖いなと思っていました。そして試合は城福さんの思惑通りに動きます。
前半28分。ジウシーニョのCKは秀人がクリア。これが下がり目中央にいたパラナの前にこぼれます。パラナはコーナー付近に残っていたジウシーニョに。ジウシーニョは寄せてきたアーリアをステップでかわし、左足クロスをゴール前に送ります。ゴール前は、平本に秀人、柏にヨネ、青山にヒョンス、河本に宏介がつきます。やや下がり目の位置から佐々木が飛び込んできます。これにモリゲが対処しますけど、佐々木はモリゲの背後に入ります。一瞬モリゲの視界から消えた佐々木は、ゴールから離れる動き。これにジウシーニョが低いクロスで合わせます。佐々木がゴール前にフリックしたボールが、秀人とモリゲの間を抜け、ファアにいた平本に渡りました。あとは流し込むだけ。甲府1-0東京。
絵に描いたような流れに、たぶん城福さんも平本も驚いたんじゃないでしょうか。まさにドラマチック。これで平本の動きが活性化し、シュートを打つようになります。ますます面倒な展開です。甲府はまずはアドバンテージを維持しようという考えか、もう一度守備陣形を整えます。東京にとくに動きはなく、必然、前半はこのまま終了。
後半からポポさんは何かしてくると思っていました。やはりオリジナルの4-2-3-1に変えます。アーリアを前に置くことでCB間のバランスを崩す意図でしょう。東京の攻撃はようやく活性化します。一度戦いかたを整えてから、千真に代えて相太を投入します。
城福さんもすかさず対処します。平本に代えてバウルを左WBに入れます。福田を右シャドウ、河本を左に持ってきます。守備を強化する意図でしょう。
東京はシュートアテンプトを増やします。それでもゴールは遠く、シュート力を上乗せします。ルーカスに代えてネマニャんを投入。これにも甲府は周到に構え、河本に代えてテルを投入し、そのままシャドウに置きます。ジウシーニョ以外、全員守備重視の選手です。このまま守りきれたら甲府の完勝でした。ホームマリノス戦のようなしてやられた感を思っていたら、年に一度のゴールが飛び出ました。
後半35分。自陣左サイドでアーリアがカットしたボールをヨネが拾います。ヨネは大きくサイドチェンジし、徳永に。依然自陣でパスを受けた徳永は、そのままドリブルでアタッキングサードに侵入します。徳永は寄せてきたジウシーニョを振り切り、さらにバウルを引き付けて、慶悟にパス。慶悟をケアするためバウルが徳永から離れます。ジウシーニョは既に諦めて徳永を追ってません。慶悟はダイレクトで徳永に戻します。どフリーの徳永は、ワントラップして右足アウトサイドで巻いてきました。ゴラッソ。甲府1-1東京。
甲府は返す刀を持っていました。保坂に代えて晃樹を投入。城福さんは懐の深い備えをしていました。ただ、やっぱり急なモードチェンジは難しかったようです。東京も慶悟に代えて河野を投入しますけど、互いに決め手に欠きました。このまま試合終了。甲府1-1東京。
東京が試合の入りかたを誤ったとはいえ、城福甲府は素晴らしい内容でした。90分集中を切らさない見事な守備を見せてくれましたけど、サッカーの神様がタレントもサッカーの要素のひとつだよと言わんばかりの結果になりました。
シーズンも押し迫りましたけど、ACLを諦めるにはまだ早い状況です。流れに乗りたい時に戦いかたを変えるリスクはとるべきではなかったと思います。甲府がよかったことを差し引いても、やりようはあった気がして残念です。
ポポさん退任の発表がクラブからありました。事前にメディアに報道されたことはとても遺憾ですけど、メディアも仕事ですから。事情はわかりませんけど、もしリークだったのなら、情報統制の重要な課題と捉えてほしいです。この時期の公表は、ポポさん自身にはメリットがありますけど、選手とサポには何の価値もありません。クラブは猛省してください。なので、退任についてはシーズンが終わるまで触れません。
爽やかな秋のディマッチでしたけど、いろいろとモヤモヤする日曜になりました。とは言え、天皇杯を含めてまだACLのチャンスは十分あります。迷わず前を向いて、ひとつ一つ勝利を重ねてほしいです。