ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2018FIFAワールドカップロシアラウンド16ベルギーvs日本@ロストフアリーナ20180702

2018-07-03 22:23:20 | サッカー

台風7号が西日本にきました。被害がないことを願います。

ワールドカップはノックアウトステージに入りました。サムライブルーにとっては3度目の決勝トーナメントです。ベスト16の相手はベルギー。

戦前のドタバタや一部メディアのネガティヴキャンペーンを考えたら、ここまできただけで奇跡だと思います。国民的には大満足なのですけど、当のサムライブルーはまだまだ貪欲でした。ヨーロッパでプレーする選手が代表の主流になったので、彼我の差異の少なさを肌身で感じているからなのでしょう。

日本はお休みしていたレギュラーが戻ります。シフトは4-2-3-1。GKは川島。CBは麻也と昌子。SBは右に宏樹左に長友。CMは長谷部と岳。WGは右に元気左に乾。トップ下は真司。1トップは大迫です。

ベルギーもレギュラーが戻ります。シフトは3-4-2-1。GKはクロトワ。3CBは右からアルデルウェイレルト、コンパニー、ウェルトンゲン。WBは右にムニェ左にカラスコ。CMはデブルイネとウィツェル。2シャドウは右にメルテンス左にアザール。1トップはルカクです。

今大会のベルギーはこれが初見なのですけど、とてもユニークなチームですね。現代サッカーにもまだこんな闘いかたをするチームが存在できて、かつ評価も高いのかと、たまげました。極端に攻撃に特化した非常に楽しいチームです。

ベルギーの3バックは、攻撃過重のための選択です。WBはともに攻撃力が高く、シャドウと絡んでサイドの数的優位作りに寄与します。ただ、さすがにいくぶんかセーフティネットを用意していると思います。ベルギーの3バックは個性的です。攻撃時には必ず左側に片寄ります。その分ムニェが下がってバランスを見るので、攻撃時は4-2-3-1のようなかたちに見えます。ベルギーは左右バランスよく使うチームですけど、いくぶん左を多目に使っているように見えるのはこのためだと思います。もちろん、アザールとカラスコのコンビネーションを活かす意図だと思います。そしてベルギーの攻撃が多彩なのは、もちろん真ん中にルカクがいるから。ルカクにボールが入るだけでヒヤヒヤさせてくれました。なにしろ脅威。

攻撃こそすべてなベルギーを、日本は65分まで止め続けます。日本の守備が機能した理由は三つ。ひとつは中盤でボールホルダーに対するリスクヘッジが、非常に献身的で的確だったこと。今大会のサムライブルーが爽やかで国民が感情移入できた一番の理由は、選手の走量にほかなりません。二つ目は、トランジションが安定していたこと。ベルギーの攻撃ルートのパターンを読めていたのか、インターセプトの成功率がいつになく高かったように感じました。それからフィジカルで圧倒するベルギーに対し、中盤のコンタクトではむしろ優位に立っていました。この四年間にワールドカップで闘える体力を、スペシャルチームを作ることなく日本全体で鍛えてきた成果だと思います。三つ目は、キーマンのケアです。ルカクには麻也、アザールには長谷部がマンマーク気味について自由を奪っていました。これにより、ベルギーのアタッキングサードでの攻撃を散発にとどめることに成功しました。

一方、ベルギーの守備はコレクティブではなく、古式ゆかしい個の守備力を基軸にしたやりかたです。プレスはあまりなく、基本的に個々の選手が受け持つゾーンをケアしています。日本はこれを狙います。まず特筆したいのは大迫です。日本はバイタルエリアのスペースメイクを有効にできるのですけど、それを実行せしめたのは、大迫があえて最前線でコンタクトを挑んでポストを受けたことです。これにより攻撃の重心を高く保つことが可能になりました。大迫が開けたスペースを真司が活用します。真司は試合を重ねるごとにプレーの精度が向上しました。ていうか、復活しました。西野日本は、真司システムと圭佑システムのツープラトンで臨んだのですけど、西野さんが主戦として採用したのは真司。真司の復活なくしてこの成果はあり得ません。スタッフが復活を予測できていたのだったらすごいことだと思います。

とはいえ、試合の入りかたはさすがに慎重でした。長友がオーバーラップを自重してましたから。バイタルエリアを支配できることがわかって、長友も少しずつペースアップしていきます。前半20分ころにベルギーの猛攻を受け続ける時間がありました。いわゆる喉元。ここを耐えきったこと。それから攻撃権を取り戻したときに確実にチャンスまで持ち込めたことが、以降のシーソーゲームの流れを作りました。前半はスコアレスのまま終了。

さて、後半開始早々試合が動きます。48分。自陣で乾からのパスを受けた岳がウェルトンゲンの脇を抜く、絶妙なロングスルーを送ります。これを元気が受け、そのままゴールに流し込みました。ゴラッソ。ベルギー0-1日本。守備での貢献度は非常に高かった元気ですけど、ついに覚醒です。今日は宏樹も積極的に攻撃に絡んでいましたから、眠れる右が目覚めました。今日は過去四戦のなかでもっとも左右のバランスが良かったです。

さらに、続けざまに追加点をあげます。52分。コンパニーのクリアをゴール正面で拾った真司が乾に落とします。フリーの乾は、ペナルティエリア外でしたけど迷わず右足を振り抜きます。これがゴール右隅に決まりました。スーペルゴラッソ!。ベルギー0-2日本。ひとが大きなブレイクスルーを果たす瞬間に、ワールドカップ四戦でぼくら国民は立ち会うことができました。ブレイクスルーは大なり小なり誰にでもどこにでも起こることですけど、いつもそのきっかけが不思議でなりません。おそらく乾自身もよくわからないのでしょうけど、突然脳がイメージするアクションを身体が表現できるようになったのでしょう。思えばテストマッチのパラグアイ戦とコロンビア戦の前半は散々でしたから、わずかな期間でスーパーな選手になるとは想像もしませんでした。大会前は一般の知名度がなかった、ニューヒーローの誕生です。

これを受け、マルティネスさんが動きます。二枚同時代えのスクランブルです。カラスコに代えてチャドリを同じく左WBに投入します。メルテンスに代えてフェライニを同じく右シャドウに投入します。ここからが変態攻撃マニアベルギーチームの真骨頂でした。ルカクとフェライニのツインピークスを前線に配置して、日本守備陣を神経質にします。これによりアザールがフリーになり、バイタルエリアを自由に動きまわるようになります。ベルギーの攻撃がにわかに機能し、赤い悪魔がついに魔界の扉を開く呪文を唱えます。69分。フェルトンゲンのロブヘッドが川島の頭上を越えます。ベルギー1-2日本。さらに74分。アザールのクロスをフェライニが頭で合わせます。ベルギー2-2日本。あっという間に同点。

われらが代表が、今大会を通じて闘いのうえでもっとも誇らしいのはここから。西野さんが動きます。二枚同時代えです。岳に代えて蛍を同じくCMに投入します。元気に代えて圭佑を同じく右WGに投入します。これで、完全にベルギーのオーガナイズになりきったかに思われた流れを断ち切り、さらに日本のリズムを取り戻します。ベルギーにしてみれば、以降のスケジュールを考えても良い流れのうちに一気に追い越したいところだったでしょう。日本はその期待をあっさり砕きます。圭佑を中央に固定してボールの預けところとして、真司を前線のリベロとします。二枚ポストでふたたびパス回しを活性化し、イニシアチブを握り直します。

アディショナルタイムに入って日本がイニシアチブを握るなか、最後に左CKの機会を得ます。日本は延長も視野に、ストーン二枚アタッカー三枚のセーフティサイズで臨みます。ショートにして時間を使いタイミングをずらしてもよかったのですけど、圭佑のCKはまともにチャンスメークでした。そして悪魔の雄叫びが一閃の稲光を呼びます。アディショナルタイム+4分。圭佑の左CKをキャッチしたクロトワがデブルイネにパス。デブルイネは自陣ペナルティエリアからまっすぐに長駆ドリブルを開始し、一気に日本陣へ。ロングカウンターの発動です。デブルイネは並走するムニェにパス。ムニェは、ルカクの前を抜けダイアゴナルに逆サイドに渡るスルーをチャドリに渡します。フリーのチャドリは合わせるだけでした。ベルギー3-2日本。直後に試合終了。ベルギー3-2日本。

今大会のサムライブルーの冒険はおわりました。新体制結成以降はホントにどうなることかと思っていましたけど、終わってみれば三回目のベスト16進出でした。1勝1分2敗。6得点7失点。議論を呼んだときもあったし、最後までアンチがつきまとっていたけど、大会のなかでこれほど成長する代表は、ワールドカップ初出場以来、はじめてのような気がします。試合内容も、今大会のトレンドとして目立った極端なリトリートによる超リアリズムではなく、今回のチームの良さを真っ向からぶつける、潔くてオープンだったと思います。

ただ、短期的な最大限の結果を得るために犠牲をはらったのもまた、事実。バイッドさんが積み上げようとした世代交代の機会を確実に断絶しました。この四年間の最大の問題である、いつまでも圭佑や真司や長友だけが一般に認知される状態は、日本のサッカーの停滞を意味するのかもしれません。今回のチームで、若手として数少ない出場機会を得たよっちや宇佐美は、結果を残せなかった悔しさを糧に次ぎの四年間を過ごしてほしいです。そしてその間には東京オリンピックがひかえています。オリンピック世代の突き上げにも期待したいと思います。

なにはともあれ、西野日本2018、ありがとうございました。おつかれさまでした。


2018FIFAワールドカップロシアグループH日本vsセネガル@エカテリンブルグアリーナ20180625

2018-06-30 23:06:01 | サッカー

サムライブルーがグループステージを突破するとともに、東京に夏がやってきました。梅雨明けです。

日本のグループステージ三戦を〆る終戦のありかたが議論を起こしました。それについては次回。今日は、今大会これまでのベストマッチといってもいいくらいの秀戦となったセネガル戦です。

日本は結果が出た前節を踏襲します。シフトは4-2-3-1。GKは川島。CBは麻也と昌子。SBは右に宏樹左に長友。CMは長谷部と岳。WGは右に元気左に乾。トップ下は真司。1トップは大迫です。

セネガルは戦いかたをアジャストします。これが試合に影響します。シフトは4-1-4-1。GKはカディム・エンディアエ。CBはサネとクリバリ。SBは右にワゲ左にサバリ。アンカーはアルフレッド・エンディアエ。IHは右にパパ・エンディアエ左にゲイェ。WGは右にサール左にマネ。1トップはニアンです。

サッカーの戦術上の優位性は、タレントの能力差に勝るものはありません。これは、サッカーに科学が入りこんでもなお、いまだに原始性を保ち続ける重要な要素のひとつです。

この試合のボールポゼッションは、日本53%に対しセネガル47%。このメルクマール上のイニシアチブはほぼイーブンと言っていいと思います。でもディテールの数値を見ると、シュート数、ショッツオンゴール、オポチュニティのすべてにおいて、セネガルが日本を倍しています。つまり攻撃力はセネガルが圧倒していたということを示しています。ところが、結果においては、ボールポゼッションが珍しく忠実で、ドロー。サッカーの奥深さというか、面白さを如実に表している試合だったと思います。

セネガルの攻撃の優位性は、いうまでもなく圧倒的なスピードです。セネガルがポーランド戦とは異なる布陣で臨んだのは、まずは攻撃力を前面に押し出そうという意図だったと思います。ご存じの通り、4-1-4-1は攻守どちらにもスムーズに片寄せることができる布陣で、先行逃げ切りを狙うセネガルにしてみれば、極めて合理的な作戦だったろうと思います。

攻撃のセネガルに対する日本という構図は、サッカーが持つ普遍的な魅力を濃厚に凝縮するものです。柔よく剛を制すは、なにも日本人のスポーツに対する好みを表わすものではありません。サッカーにおいて、万国共通のコンテンツなのだろうと思います。今大会は、戦術においては、守備に極端に偏重するチームが目立つ大会です。イラン、アイスランド、コスタリカ、スウェーデンなど、ある局面では11人全員が自陣に布陣する作戦を臆面もなく遂行していました。この作戦を否定するものではありませんし、遂行したとしても有効性を持つまでのクオリティを保つのは極めて難しいことですから、勇気と忍耐とディシプリンに感銘を受けました。でも一方で、観ていて爽快感がないものまた事実。サムライブルーのポーランド戦ラスト10分の過ごしかたに、本質的に等しいものがあります。あの選択を批判する人がブラジルーコスタリカにおけるコスタリカの闘いかたを称賛するとしたら、それは自己矛盾だと思います。

それはさておき、日本は結局、グループステージにおいては一度も守備的な作戦を施しませんでした。だからこそ、コロンビア戦の神風を呼び、セネガル戦の粘りの接戦があり、最終的なステージ突破を獲得できたのだと思います。ワールドカップというサッカーのトレンドのショーケースのような舞台で、無邪気に真っ向からアンチトレンドに挑むサムライブルーは、まさしくその名の通り、幕末の侍を彷彿させていたと思います。このような代表の姿は、称賛と批判を起こしてしかるべきだと思います。ひとつの目標を達成したからこそ、ここまでの過程で起こった問題点に目をつぶることなく、真摯に向き合うべきだと思いますし、一方で、今代表が勝ち得た成果にもまた、批判する側は真摯に向き合ってほしいと思います。

この試合のポイントを、日本とセネガルの両面から観ていきます。まずセネガル。データが示す通り、セネガルは勝ってしかるべき試合でした。でもそれを落としてしまい、結果的にステージ敗退に繋がったのは、4-1-4-1の布陣が持つ魔力だと思います。序盤のセネガルは超攻撃的に臨みます。狙うはもちろん、長友の背後。圧倒的なスピードの優位性を根拠に、サールとパパがダイアゴナルに長友の背後のスペースに入ります。これによって長友が守備に専念することを強いられます。必然的に乾もカバーを強いられます。これにより日本の重心が下がります。セネガルが日本を押し込んだ理由は、SBを攻撃的に布陣すること。とくにワゲ。これは、日本のストロングポイントが唯一左サイドだからであり、攻撃こそ最大の防御という意図が含まれています。結局11分に、川島が弾いたボールをマネに押し込まれるかたちで先制を許しますけど、ここまではセネガルが思い描いたシナリオ通りに進みます。日本0-1セネガル。

さて、ここからが、ある意味真実のサッカーです。セネガルは、引きます。これこそ4-1-4-1の魔力です。もちろん90分通じて序盤のようなアグレッシブな攻撃サッカーが続けられるわけがないのは、人種が変わっても万国共通なのでしょう。それにしても、セネガルが極端にリトリートしたのは、セネガルのなかに、長くアフリカに欠けると言われるディシプリンに対する憧憬があったためではないかと思います。すでにヨーロッパナイズされてひさしいアフリカのチームですから、政治的またはマネジメント能力の条件が整いさえすれば、ディシプリンに基づく作戦を遂行する能力は疑うべくもありません。4-1-4-1は、IHをアンカーと並列させることで、中盤の守備に厚みを加えることができます。ただし、おもいのほか中盤三人のコンビネーションは易しくはありません。ポーランド戦で臨んだ4-4-2のほうが、真骨頂とする中盤でパスコースを消すプレスの効きがよかった印象です。その意味で、セネガルは自ら中盤の守備バランスを壊す選択をしたことになります。

この試合のポイントを日本サイドから観ると、日本の作戦が、セネガルの選択に対する見事な対抗になったことを上げることができます。日本の狙いは、言うまでもなく左サイド。長友と乾を高い位置で絡ませることです。そのためには重心を高く保つ必要があります。なので、中盤のボール保持は生命線です。この役を担ったのが真司。真司をバイタルエリアでフリーにしポストを安定させることが、対セネガルの基本的なバロメーターです。日本は、大迫と元気が右サイドでフリーランすることで、セネガルの中盤の重心を移動させます。3センターのウィークポイントはもちろんアンカーのサイド。日本は、アルフレッドの右脇スペースを巡る攻防戦を征します。

さらに、空いたサイドのスペースを使うには、卓越した二次元の俯瞰力を持ち、リズミカルかつ正確にチャンスを生み出すコンダクターも不可欠です。岳は、コロンビア戦の後半に続き、好調でした。岳は、タレント豊富な日本の中盤において、この大会で現役選手の頂点に立ったと言っていいと思います。個々のタレント能力の総和で圧倒的なセネガルに対し、日本がこの作戦を遂行することはけして簡単なことではありません。日本人の優位点とされるアジリティを作戦遂行の基軸とした、とても良い例だったと思います。乾のゴールで試合を振り出しに戻します。34分。日本1-1セネガル。

後半頭からシセさんが動きます。シフトを4-2-3-1に変更します。CMにはゲイェとアルフレッドが並びます。パパがトップ下に入ります。ポーランド戦の安定感を取り戻す意図だと思います。シセさんは、言動からもうかがえますけど、とてもジェントルなかたなのでしょう。この作戦変更は、サムライブルーの前半に対する敬意を表わすものだと思います。さりとて、日本のイニシアチブは変わりません。身体的な優位性が絶対的なものであれば、日本がいかに上手く闘おうとも、セネガルが流れを取り戻し、オーガナイズすることは容易です。つまり、セネガルのスピードは、疲労を含め、それほど絶対的なものではなかったということでしょう。セネガルがギアを上げようとしても、長友サイドの攻防戦で二度と優位を取り得なかったことをみると、トータルのサッカー能力では、日本がセネガルに勝っているということができると思います。ところが、このまま同点、もしくは逆転する流れを感じていた雰囲気に反し、セネガルが追加点を上げます。71分。日本1-2セネガル。

これを受け西野さんが動きます。真司に代えて圭佑を同じくトップ下に投入します。コロンビア戦同様、右サイドで攻撃のかたちを作ることで、左サイドの優位性をより顕著にする作戦です。さらに西野さんが続けます。元気に代えて岡崎を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。右メイヤは圭佑。岡崎は大迫と並んでトップに入ります。攻撃の枚数を増やし、ゴールチャンスを呼び起こそうという作戦です。78分。これがすぐに奏功し、圭佑の同点ゴールが生まれます。右サイドで作ってからの左サイドの仕掛けから岡崎が潰れ、圭佑をアシストしました。日本2-2セネガル。西野さんの作戦がこわいほどはまりました。

残り時間は、西野さんが宇佐美を投入し、シセさんも攻撃的な選手を入れる、ガチのどつきあいになります。互いに勝ち点3が欲しい、ノーエクスキューズの状況だったからこそでもありますけど、出し惜しみなんか一切考えない、西野さんとシセさんの激突だったからこそ演出された、極上エンターテイメントだったと思います。このまま試合終了。日本2-2セネガル。

ここで勝ち点1を拾えたからこそ、グループステージ突破に繋がりました。ここで勝ち点3を得られなかったからこそ、ポーランド戦のラスト10分に繋がりました。いずれにしろ、二戦経過して負け無しの勝ち点4はとても誇らしいと思います。タレントもマネジメントも大会までのプロセスについても、日本にはまったく勝算無しと思われていたし、恥ずかしながら自分もそう思っていました。とりたてて特別なモチベ―ションアップもなく、粛々と、でもとても高度なスカウティングと作戦、そして実行能力を遂行した成果だと思います。グループステージ第三戦は、日本、セネガル、コロンビアを取り巻く結末にいろんなバリエーションが有り得る、大混戦で迎えることになりました。


2018FIFAワールドカップロシアグループHコロンビアvs日本@モルドヴィアアリーナ20180619

2018-06-23 17:19:09 | サッカー

大阪北部地震で犠牲になった方々に哀悼を捧げます。徐々にライフラインが復旧しているようですけど、被災されたかたはまだまだ不自由な生活が続いていると思います。一日もはやく、普段の生活が戻りますことを願います。

 

今年の梅雨は梅雨らしくて、連日ジメジメした日が続きます。そんな不快さを吹き飛ばすように、遠くロシアの地で行われているワールドカップは、戦前の低調に反し、とても盛り上がっています。

それもこれも、わがサムライブルーの活躍でしょう。ワールドカップは、普段サッカーに興味が無い一般のかたも注目するようになりますから、Jリーグファンとしては、嬉しいようなそれでいてちょっとくすぐったいような気分になります。いずれ、サムライブルーの今大会のさらなる活躍を祈念します。

本日は初戦コロンビア戦です。前回大会で苦渋をなめた相手ですから、リベンジの機会です。そして、見事リベンジを果たしました。

注目の日本の大会スターティングオーダーは4-2-3-1。GKは川島。CBは麻也と昌子。SBは右に宏樹左に長友。CMは長谷部と岳。WGは右に元気左に乾。トップ下は真司。1トップは大迫です。

コロンビアはエースがオプションスタートです。シフトは同じく4-2-3-1。GKはオスビナ。CBはダビンソン・サンチェスとムリージョ。SBは右にアリアス左にモヒカ。CMはレルマとカルロス・サンチェス。WGは右にクアドラード左にイスキエルド。トップ下はキンテーロ。1トップはファルカオです。

試合は予想もしなかったスタートとなります。いきなりの3分。ペナルティエリア内で真司を倒したカルロス・サンチェスが退場となります。

6分。プレッシャーのなか、真司自らPKを決めます。コロンビア0-1日本。

作戦変更を余儀なくされたぺケルマンさんはシフトを4-4-1に変更します。キンテーロがボランチにスライドします。

イーブンな状態はわずかに3分間のみ。今となってみれば、日本とコロンビア、それぞれの戦前のプランは知る由もありません。四年前の記憶を呼び起こしてみると、ぺケルマンさんの狙いは長友の背後を狙うという、プランとしてはナチュラルな選択でした。ただし、日本へのそして長友へのリスペクトを含んでいて、日本にイニシアチブを渡しながら、高速サイドアタック一閃で仕留めるというプランだったと記憶しています。

今年のコロンビアは、当時は怪我で不在だったエースファルカオが最前線にいますから、また少しテイストが異なるのかなと思いますけど、基本的なポリシーは変わらないでしょう。それゆえ、クアドラードとイスキエルドという、高速両ウイングを揃え、かつSBもスピードマンを据えています。

日本は、どうやら戦前にハメス欠場をスカウトできていたようです。それゆえの布陣のチョイスです。とくに真司と岳。割合は定かならずとも、いずれハメスケアのための守備の加重は減らすことができます。なので中盤のスウィープは長谷部一人で十分ケアできるという、ある種の掛けだったろうと思います。つまり、テストマッチのパラグアイ戦でテストしたプランをベースとし、ワールドカップ初戦に臨んだのだろうと思います。

日本が勝利するためにチョイスした要素は四つ。四年前と同様、イニシアチブは日本が取れる、あるいは取らせてもらえることを前提とします。ちなみに四年前の日本のボールポゼッションは61%。まず岳を中心としたパスの散らし。つぎに大迫の裏を狙う動き。そして大迫が引っ張って開けたスペースを乾が使い、フィニッシャーを担うこと。そして、この作成を成立するベースラインとして、10人全員が献身的に守備に走ること。先制に繋がるPKを取得したシーンは、両チームの思惑が凝縮しています。モヒカからファルカオへのアーリークロスを長友がクリアしたボールを、真司がシンプルにワンタッチで、大迫を走らせるイメージで前線に送ります。大迫はCBの間を抜け出し、一気にペナルティエリアに侵入していました。

四年前との相違は、中盤の重要性が増していることです。そのためコロンビアは、中盤のプレッシングを幾分高めようとしていたことでしょう。日本も前線からのリードプレスを起点とした中盤のハイプレスを基軸としていますから、前半から激しい中盤の攻防が見られたことだろうと思います。コロンビアがやろうとしていた攻撃はハメス不在でも同じで、キンテーロをフリーにし両ウイングを自在に操り、アタッキングサードでの超高速アタックで日本を後手後手に回そうというものだったと思います。その意味では、最終兵器ファルカオとスピードという明確なストロングポイントがあり、それ軸に継続し、闘いかたを整理できているコロンビアが、どうひいき目にみても優位だったことは否めません。

日本には、神風があります。右翼的な思想を意味しているのではなく、時として、勝負の局面で勝利を呼び込む運を味方にすることがある国です。もちろん、それを作戦に織り込めるほど確率は高くなく、むしろ神風が伝聞や記憶に残るほど、レアです。ただし、強烈な印象を残します。カルロス・サンチェスにして、あの場面で手を出してしまったことは、自分でも説明ができないのではないかと思います。まことにバカバカしい初歩的なミスなのだけど、やりたくてやったとは思えません。魔がさしたという、つまり神風。

ただし、サッカーにおいては、数的優位はかならずしも結果優位をもたらしません。統計を見たことはないのですけど、おそらく数的優位側が勝利する比率のほうが圧倒的に高いと思います。でも、一定数、数的不利側が勝利することもあることも、これまた事実。これは割と論理的に説明できます。まず、守備システムが崩壊するほどの退場、つまり三人以上の退場でもない限り、守備網に影響はありません。ただし守備網の安定を前提とするリトリートシステムを持ち合わせている場合に限ります。退場があったとしてもセキュリティホールに直結するわけではありませんから、数的優位側にとってみれば、むしろ引いた相手に苦労を強いられることになる場合があります。

次に攻撃。これも運動総量とスピードのある選手が前線に揃っている場合に限りますけど、攻撃の絶対人数が少なくなることによって、一人が使えるスペースがむしろ増えます。数的優位側が攻撃加重になりがちですから、この状況は起こりやすくなります。さらに、スペースメイクをしないと攻撃が機能しませんから、攻撃方法が整理され、コンセンサスができます。ようするに、コロンビアはこの条件がすべて整っていました。少なくともハメス・ロドリゲスを投入するまでは。守備においては、もともと4+4の2ラインをベースとしたゾーンディフェンスを基本プランとしていますから、リトリートはお手のもの。攻撃においても、両サイドを形成する四人はいずれも超高速のスピードマンです。攻撃のタクトを振るコンダクターも中央にいます。そして、最前線には世界最高のゴールハンターが控えています。

コロンビアは、数的不利を優位に変えるプロセスを、安定したデシプリンに基づき遂行します。超高速サイドアタック基調のカウンターを使うことで、中盤の攻防を回避することに成功します。これにより日本は、数的優位にもかかわらずトランジションポイントを奪われ、むしろイニシアチブをコロンビアに渡してしまう状況に陥ります。これを誘引したのはコロンビアの作戦だけではありません。日本にも要因があります。それはパス回しの質です。日本は定石通り、ボールを回してコロンビアを揺さぶる作戦を取ります。でも、残念ながらそこに縦が含まれていません。いたずらに横に回すのみ。本来は、アタッカーのスペースメイクでバイタルエリアを支配することで、パス回しに前後左右のバリエーションを作ります。日本は、縦へのチャレンジを失念していました。おそらく大迫が裏を狙うのに真司がフォローを重視していたことと、元気と乾がサイドにはっていたこと。加えて中盤から前線に顔を出す選手がいなかったことが原因だと思います。日本は、リズムができないまま無理矢理サイドアタックをしかけるパスをウイングに送ろうとしてコロンビアにボールを奪われます。この自滅に近いポゼッションを繰り返すうちに、コロンビアに高速カウンターを狙われるようになり、デフレスパイラルに陥っていきます。

これを受け、ぺケルマンさんが動きます。クアドラードに代えてバリオスをボランチに投入します。キンテーロが右メイヤに回ります。片翼を失うリスクテイクをしつつも、攻撃のマネジメントができるキンテーロを前線に置く意図だと思います。これが奏功したのかはわかりませんけど、同点ゴールが生まれます。

39分。キンテーロが、ファルカオが得たFKを直接ゴロで決めました。コロンビア1-1日本。

もちろんファルカオに対する長谷部のプレーはアピールの余地が多いにあると思いますけど、アタッキングサードでファルカオに思うようなプレーをさせる状況を作ったのは日本自身ですから、試合運びという意味で、再考を必要とする良い機会になったと思います。結果的には。前半はイーブンのまま終了。

後半に入り、さっそく西野さんが動きます。後方から、裏に走る大迫に積極的なロングフィードを送るようになります。おそらくは、苦肉の策であり、他に有効な策もなかったことだと思います。当初からフィードの基点を担っていた岳だけでなく、後方の選手がみなフィードを出すようになったことでそれが伺えます。麻也や昌子からのフィードは、むしろコロンビアの恰好の餌食になりかねないシーンもありました。一方、岳から散らせる場合は真逆で、極めて有効な攻撃を形成できるようになります。結局、岳の攻撃力が、コロンビアをして数的不利を思い出させることになり、日本の重心が上がることで、イニシアチブを奪還することに成功します。

さて、日本にリズムを奪われたぺケルマンさんが動きます。キンテーロに代えてハメス・ロドリゲスを同じく右メイヤに投入します。ここにおいてのエースの投入は、結果から見ると謎です。ハメスのコンディションは上がっておらず、数的不利側の攻撃に必要な条件である、運動総量とスピードが欠落することになります。それでもハメスを使ったのは、勝ち点3を得られなかった場合のエクスキューズなのか、二戦目以降のハメスのコンディションアップに向けた調整だったのか。

ただし、日本もコンディションを落とします。とくに真司が消えます。真司はバイタルエリア中央でボールを受けようとしますけど、アジリティが落ちた影響か、ボールを呼び込めません。これによって、再び日本のポゼッションが機能不全になっていきます。そこで西野さんが動きます。真司に代えて圭佑を同じくトップ下に投入します。圭佑はバイタルエリアの右寄りに固定し、ボールを受けます。これにより、ボールの納まり処ができます。元気と宏樹の攻撃参加が安定するようになることで、右サイドが活性化します。これを起因として、再度日本がイニシアチブを取ります。

ぺケルマンさんも動きます。イスキエルドに代えてバッカを右メイヤに投入します。ハメスが左に回ります。圭佑が作るサイドではなく、逆サイドを狙う意図です。これはやはり、長友の背後にターゲットを定める作戦だと思います。両チームが相四つでファイティングポーズを取る、アウトボックスのどつきあいは、はやばや西野さんに軍配が上がります。

73分。圭佑の左CKを、ひと際高く跳んだ大迫が合わせました。コロンビア1-2日本。

これを受け、西野さんが動きます。岳に代えて蛍を同じくボランチに投入します。それでもやっぱりフリーにすると怖いハメスのケアでもあり、チーム全体のリスクコントロールの意図、ようするにクローザー投入だと思います。

さらに西野さんが〆ます。大迫に代えて岡崎を同じくトップに投入します。前半から献身的に攻守に走り回っていた大迫のコンディションを考慮して、前線の運動量をリフレッシュする意図だと思います。

ハメスとバッカにゴールに迫られる大ピンチもあり、ワールドカップの日本戦らしいハラハラドキドキの時間となりましたけど、無事西野さんの思惑通りに逃げ切りました。このまま試合終了。コロンビア1-2日本。

日本にとっては、カルロス・サンチェスが退場したことと、苦肉の策であるロングボール大作戦がなぜか奏功するという、二つの大きな神風によって、グループ最強のコロンビアを撃破しました。アジア勢が南米勢に初めて勝った快挙なのだそうです。運もさることながら、選手たちが地味なオペレーションを高いディシプリンと意欲で遂行したからこそ、運を引き寄せ、結果に結びつけることができたのだと思います。

正直、大会前のゴタゴタやテストマッチの成績で、あまり期待されていなかったサムライブルーでしたけど、初戦の金星で一気に国内の雰囲気が上がりました。これでバイッドさんおよびバイッドさん信者の残念は消えることでしょう。とはいえまだ一勝しただけ。まさかまさかのグループステージ突破に向け、奇跡を起こしてほしいと思います。次は実質的にグループ最強なのではないかと思う、セネガルです。


2018J2リーグ第12節アビスパ福岡vsモンテディオ山形@レベスタ20180503

2018-05-06 16:19:27 | サッカー

雨天の予報が二転三転。で、晴れました。

さらに西にきて、福岡です。

加賀さんに逢いにきたのだけども、残念ながら今日はおやすみです。今年はたぶんもうモンテの試合を観にこられないので、しかたないけど残念です。

というわけで、加賀さんのルーツを巡る旅の予定が、普通のサッカー観戦になりました。

終了間際のサヨナラゴールで福岡が勝ちました。

山形のシフトは3-4-2-1。GKは児玉。3CBは右から熊本、栗山、坂井。ボランチは本拓と駿。WBは右に山拓左に北川。2シャドウは右に瀬沼左にアルヴァロ・ロドリゲス。1トップは中山です。

福岡のシフトはスクウェア型の4-4-2。GKは圍。CBは岩下と篠原。SBは右に實藤左に輪湖。ボランチは淳と田村。メイヤは右にインス左にエウレー。2トップはドゥドゥと石津です。

山形の基本プランは、積極的にイニシアチブを取りに行くことだと思います。基本的にラインの位置は非常に高く、相手のビルドアップ時はセンターライン付近まであげようとします。これにより、プレーエリアを可能な限り相手陣で過ごそうという意図だと思います。

攻撃はパスをつなぐポゼッションスタイルを志向します。生命線はリズム。おそらく相手の如何を問わず、まず自分たちのリズムを刻むことを優先していると思います。リズムの作りかたは、長短のパスをワンタッチで上下に交換することです。

短いパスはボールを動かすことでスペースギャップを作るための誘導です。なのでリズムはゆったりしています。主には最終ラインと三列目でパスを回しますけど、時折シャドウが降りてきて加わることでアクセントをつけます。

攻撃ルートは、なのでとくに決まっていません。優先するのは、このスタイルの常套通り、中央だと思います。パス交換のなかで、攻撃ルートを確保できない場合はサイドを変えてリトライします。この繰り返しができることを狙います。なので山形のバロメーターは、ポゼッション率に他ならないでしょう。

短いパス交換のリズムがスローなのに対し、攻撃スイッチを押してからのリズムはとてもクイックです。攻撃全体の構成は、スロースロークイックスロー。ダンスのようです。攻撃スイッチを押すときに、はじめて長いパスを使います。パスの出し手はマルチです。長いと言っても直接裏を狙うのではなく、トップもしくはシャドウに当ててから、ワンタッチの連鎖で一気にゴールに向かって加速するイメージです。

守備は、攻撃がポゼッションスタイルなのでかならずしもフォアチェックを旨とはしません。それよりも5+4の守備網を維持することを優先します。山形の守備強度は、ペナルティエリア内で発揮されます。中央にCBを三枚並べるうえボランチも加わりますから、攻め込まれたとしても最終局面ではシュートへの厚い壁となります。サイドもシャドウが入り、数的優位を作ります。ただし、ラインをきわめて高く設定していますから、その分高いリスクを受けます。今年の山形の意思を感じます。

福岡はずいぶん印象が変わりました。以前は人を動かす忙しいサッカーのイメージがありましたけど、今年はスタンダードなサッカーに取り組んでいるようです。ここ数年、J1昇格候補として一定の地位を得るほどに復活していることもあり、戦力が充実してきているのかもしれません。さらには、J1を経験した編成が基本的に残っていますから、現場を含めて、次の次元にステップアップするために必要なチームコンセプトを作ろうとしている気がします。

山形にとっては、自発的にJ1をイメージすることだけではなく、対戦相手を通じた仮想J1を肌身で感じられることは、とても大切なことだと思います。客観的に見て、福岡にはJ1で闘っている姿が想像できます。それは現場だけでなく運営にも覚悟があり、そんなクラブの意思がプレーしているチームにも現れるのだと思います。山形はもちろん長くJ1を維持してきたチームですけど、当時から体制がずいぶん変わりましたから、ベンチマークができる遠征は貴重な機会だと思います。

あらためて今年の福岡は、カウンターを主体とするチームです。アタッカーにスプリントを得意とする選手が揃っているので、スペースを広く使ったほうが特長を活かせるからだと思います。山形のラインが高いので、今日の福岡のスタイルははまります。

というわけで、試合は福岡のリズムで進行します。ただ、互いにいえることなのですけど、パスミスがリズムを寸断します。出し手のミスもさることながら、受け手がパスの意図を理解しないことも少なくありません。両チームとも年数の違いこそあれ、継続性のあるチームですから、ちょっと意外です。J2は長く、まだ序盤ですから、これからなのかもしれませんね。前半はスコアレスのまま終了。

後半も展開は変わりません。てかますます膠着します。両チームともセットプレーを武器としますから、動くとしたらセットプレーかと思っていました。とくに福岡のお団子はおもしろいですし、パターンがギリギリまで読めませんから、相手にとってはやっかいでしょう。ところが試合は、ミスで動きます。

53分。岩下のフィードを処理しようとした坂井にドゥドゥがアプローチ。ゴールライン際でボールを奪います。ドゥドゥはそのままクロス。ゴール前にいたのは石津だけでした。福岡1-0山形。

これで淀んでいた展開が流れはじめます。そこで井原さんが先に動きます。作戦というよりかはコンディションです。足を傷めたドゥドゥに代えて森本を同じくトップに投入します。

直後に木山さんが動きます。瀬沼に代えてフェリペ・アウベスをトップに投入します。中山が右シャドウに下がります。

そらに木山さんが加えます。北川に代えて汰木を同じく左WBに投入します。そして直後にフェリペ投入があたります。

74分。山拓がミッドサードから長いフィードをゴール前に送ります。ファアポスト付近でアルヴァロが中央にフリック。そこに入ってきたフェリペが合わせました。福岡1-1山形。

これを受け、井原さんが動きます。石津に代えて力を同じくトップに投入します。

木山さんが最後のカードを切ります。中山に代えて阪野を同じく右シャドウに投入します。試合が動いたこともあり、互いに勝ち点3を望みます。

井原さんも応じます。エウレーに代えて枝村を同じく左メイヤに投入します。ただ井原さんの場合は、作戦というよりかコンディションの色合いが濃かったと思います。終了間際に山形がビッグチャンスをものにできず、このままドローで終わるかなと思っていたら、最後の最後に決着が訪れます。

後半アディショナルタイム+4分。淳がペナルティエリアに向けて上げたフィードをニア側で田村がゴール前にフリック。そこに枝村がいました。枝村は頭で合わせます。福岡2-1山形。

代わったばかりの枝村が4分で大仕事をしました。こういうドラマもあるのですね。このまま試合終了。福岡2-1山形。

しばらくフル出場が続いていましたし、例年この時期は試合に出るので、すっかり逢えると思ってました。加賀さん道は奥が深いです。とにもかくにも、加賀さんができる限り一年通じて働けることを願うばかりです。2012年以来ないことですから。ひとやすみして、また元気に出場してほしいです。


第96回天皇杯決勝鹿島アントラーズvs川崎フロンターレ@吹スタ20170101

2017-01-04 21:15:34 | サッカー

新年明けましておめでとうございます。

サッカーマンにとって元日は、行くシーズンと来るシーズンのスクランブル。

第96回全日本サッカー選手権大会天皇杯決勝。

合いまみえるは、鹿島アントラーズと川崎フロンターレの神仏集合決戦となりました。

われらが小金井のスーパースター中村憲剛選手にとって、人世初の元日決勝。しっかり見届けたいと思います。憲剛さんの初の戴冠を願って。

万全の川崎対策で臨んだ鹿島を川崎も変態して迎え討ちましたけど、心理戦を絡めた鹿島の巧妙が勝りました。

鹿島はベスト4とほぼ同じ布陣で臨みます。シフトは4-2-3-1。GKは曽ヶ端。CBは昌子と直通。SBは今日は右に大伍左に修斗。ボランチは満男と永木。WGは右に康左に岳。トップ下は聖真。1トップは赤崎です。

川崎はエドゥアルド・ネットがサスペンションで不在です。シフトは今日も3-4-2-1。GKはチョン・ソンリョン。3バックは右から田坂、エドゥアルド、谷口。ボランチは今日の憲剛の相棒は僚太。WBは右にエウシーニョ左に車屋。2シャドウは右に悠左に登里。1トップはこれがおそらく川崎ラストマッチとなった大エース嘉人。

先月から観続けてきた風間川崎の集大成の形態は、ポゼッションスタイルの極みの先にある、高速アタックです。鹿島の川崎対策はここに打ち手を施してきました。

鹿島の基本的な守りかたはフォアチェックを基調としたプロアクティブなものだと思います。今日は、非常に静的でした。4+4+2の3ラインを整えることを最優先します。これはもとより、川崎のアタッカー四人が欲するスペースを完全に消す意図です。

これに対し川崎は、試合に入った時点では、鹿島のリトリートの威力を確認するためか、通常モードのスタイルで攻撃します。このため、川崎の弱点である両サイドにスペースができやすくなります。

鹿島はやはり、ここを狙います。試合開始からワンプッシュをかけるのは鹿島の常套。今日見せたサイドアタックもまた、見慣れた鹿島のオリジナルスタイルです。鹿島の攻撃は、右加重気味です。康にボールを集めて基点として、大伍と聖真のサポートを得て崩していきます。大伍の場合は縦に深い仕掛けからのクロスに、逆サイドから入ってくる赤崎、学、修斗が合わせます。聖真はインサイドのサポート役です。

鹿島の作戦を確認して、川崎がアジャストします。さすがに川崎ですから、鹿島のワンプッシュで動じることはありません。おそらく鹿島も織り込み済だったでしょう。この試合の流れは、川崎の対応を受け、決定します。

川崎は、決勝まで上り詰めたスタイルをあっさりと捨てます。遅攻モードに入ります。CBの間に入った僚太を含めた後ろの三人でゆったりボールを回して、攻撃ルートを伺います。遅攻モードの川崎は、外側を鍋のように囲い、なかを流動的にします。高めに置いた憲剛を軸にして、嘉人、悠、登里がスペースメイクを繰り返します。

遅攻であっても、縦を狙うこととサイドを基点にする、川崎の基本的な攻撃方法は変わりません。なので、エウシーニョと車屋の位置取りはとても高いです。鹿島を左右に揺さぶるなかでサイドに効果的な基点ができた場合は、ゴールの匂いが漂います。遅攻に入った川崎は、クロスをCBの裏に送り、そこに飛び込むアタッカーに合わせるフィニッシュパターンに活路を見出します。

鹿島の川崎対策はもう一つ。鹿島らしく中盤のコンタクトがとてもタイトです。ハードコンタクトは、鹿島が目の前にタイトルがぶら下がった試合で無類の強さを発揮する理由で、通常の試合よりも数段ハードだと思います。とくに嘉人に対して永木、僚太に対して満男のマークの強さが目立ちました。

川崎も一歩も引きません。鹿島は比較的長めのボールを前線のサイドに当てにきますので、川崎は起点を消す守りかたをします。このため川崎のコンタクトポイントは大伍や永木です。

中盤の競り合いが激しくなったところを利用して、鹿島が心理戦を仕掛けます。憲剛をターゲットにした満男のブラフは、もちろんインプレーではありません。でも、キャプテン対決は、平安の世の一騎打ちを想わせる古風な演出であるとともに、川崎の選手に囲まれながらも獅子奮迅する猛々しい姿を鹿島の選手に魅せたことでしょう。同時に、川崎の選手に対しても、勝利の哲学の象徴として、その壁の高さを感じさせたことだと思います。

さすがに川崎はいささかも怯みません。逆に幾分ヒートアップしたように見えました。少しプレーを急いだ感があって、それが川崎らしからぬクロスやシュートの精度に現れたと思います。むしろ満男が狙ったのはそっちかもしれませんけど。

リトリートする鹿島に川崎が攻めあぐねる展開のなか、試合は膠着します。そこに一閃を投じた先制ゴールが生まれます。

42分。康の右CK。鹿島はユニークな配置です。斜めに2列三枚ずつの平行陣を組みます。斜角は、キッカーの康に対しオープンです。ニア側は手前から大伍、昌子、直通。ファア側は手前から聖真、赤崎、修斗。川崎はハイブリッドです。マーカーは田坂、谷口、エドゥ、僚太、エウシーニョ、車屋です。ストーンはニアに憲剛と悠の二枚。康のキックモーションと同時に、赤崎、大伍がニアに飛び込みます。これでエウシーニョ、田坂が引っ張られます。さらに昌子をスクリーンに使って直通もニアに入ります。これでエドゥが置いてけぼりにされ、谷口が直通を見ます。なのでファアに下がった昌子がまずフリー。この時中央では、やはり康の蹴り出しのタイミングで、修斗が一度ファア側に体重移動するフェイク一発で車屋を置いてけぼりにします。これで修斗もフリー。三つ同時進行のサインプレーで康の選択肢は三つ。選んだのは修斗でした。どフリーの修斗は難なく当てるだけ。鹿島1-0川崎。

付ききれなかった車屋は悔やんでも悔やみきれないミスになりました。前半は鹿島リードで終了。

後半頭から、石井さんと風間さんが同時に動きます。まず石井さんは、先制ゴールの修斗に代えてファン・ソッコを同じく左SBに投入します。意図はちょっとわかりません。修斗にコンディションの問題があったのか、エウシーニョ対策か、はたまた右サイドに比して左からの攻撃が不足気味だったためか。

次に風間さんは、登里に代えて三好を同じく左シャドウに投入します。アタッキングサードでボールを持って仕掛けられるタイプのアクセントマンを入れて、攻撃の基軸としたかったのだと思います。

この同じタイミングでの作戦変更は風間さんに軍配が上がります。

54分。ハーフウェイを過ぎたあたりの右サイドでボールを持った僚太が、受けに来た悠にパス。満男と永木を省略して、局面は一気にアタッキングサードでの最終ライン対決になります。悠は昌子を引っ張り出し、このパスをスルー。これがとても効きました。悠がスルーした先にいたのは三好です。左足で受けた三好は、直通が寄せてきたのを感じて、一度左アウトで体勢を立て直し、直通に正対します。これがまた効きました。これで直通が三好に引きつけられます。三好は、そうしておいてペナルティエリアに入りこむ悠にリターン。悠はソッコの寄せをものともせず、右足でゴール左隅に流し込みました。鹿島1-1川崎。

ここからしばらくの間、このゴールを象徴するように三好が攻撃を引っ張ります。登里にしろ悠にしろ、ラインの裏で勝負するタイプです。ラインに向かって仕掛けられるのは嘉人だけです。結果的には、このことが川崎の敗戦につながった理由のひとつだと思います。言い換えると、嘉人を隠せてリーサルウェポンとして使えた、三好が活きていたこの時間帯こそ、川崎の勝機だったと思います。

そこで石井さんが動きます。赤崎に代えて優磨を左WGに投入します。岳が1トップに入ります。夢生が体調不良で離脱してから組織で勝負することが基本的な攻撃プランとなっているなか、唯一個で勝負できるのが優磨です。CWCで自信をつけた感のある優磨のスピードとパワーに期待して、鹿島はボールを集めます。

川崎も同調するように、前線にはやめのボールをつけるようになります。川崎の敗因がもうひとつ。エース嘉人のシュートは120分間を通じて結果的に前半の二本だけでした。観た目の印象も、ペナルティエリアに仕掛ける選手が直接シュートすることが多く、ゴール前でチャンスを待つ嘉人にパスが入りません。誰でもゴールできるのが川崎最大のストロングポイントではありますけど、やはり二人でリーグ戦合計30ゴールの嘉人と悠に最終的にシュートさせることがもっとも合理的だと思います。ゴールのすぐ脇で観ていても、嘉人が呼んでいるにもかかわらずで、シュートが外れたあとに寂しそうな嘉人が印象的でした。たぶんアタッカーは周囲が見えていなかったのではないかと思います。川崎はきっと、あの川崎にして攻め急いだのでしょう。

ロングカウンターの出し合いの果ては、コンサバティブです。鹿島は戦いかたのスタイルもあって当初から延長も視野にしていたと思います。その点川崎は90分で勝負をつけたかったでしょう。でも攻め手が次第に閉ざされるなか、矛先を緩めます。両チームとも延長やむなしのムードになります。これも川崎の敗因のひとつ。

そこで石井さんが動きます。満男に代えてファブリシオを投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。ファブリシオは優磨と並んで2トップです。ボランチには岳が回ります。ロングカウンター要員を増やすことがひとつ。もうひとつは、中盤の攻防が少なくなったので、満男のコンディションを考慮できると踏んだところだと思います。

ある意味鹿島の思惑通りに、試合は最終決戦、延長に入ります。

延長に入り、やおら鹿島が攻撃のギアをトップに入れます。優磨とファブリシオがかわる変わるゴールを目指します。これで川崎も攻め手に出られるようになりますので、試合がオープンファイトの様相を呈します。そして、いきなり決勝ゴールが生まれます。

94分。康の右CK。大伍のヘッドはクロスバーに当たって、跳ね返りを頭で拾った車屋が憲剛に渡し、憲剛がクリアします。ロブとなったクリアボールの落下点にいた永木は、頭で前線に戻しますけど、これも高いロブになります。ボールの落下点にいたのは川崎の四人だけでしたけど、左側から優磨が勢いをつけて落下点に入り、誰よりも高くはやくボールに辿りつきます。優磨が前方にフリックしたボールは、谷口の脇をすり抜けます。そこに大伍がいました。大伍は拾おうとしますけど、これは谷口が阻みます。でもこぼれたボールがファブリシオの目の前に転がります。ファブリシオは右足ダイレクトで叩き込みました。鹿島2-1川崎。

これを受け、風間さんが動きます。田坂に代えて森谷を投入します。同時にシフトを4-2-3-1に変更します。森谷はボランチに入ります。トップ下は憲剛。悠が右三好が左のWGに回ります。憲剛を上げて高めの位置で基点を作る意図だと思います。

これで鹿島はふたたびリトリートモードに移行します。延長に入ってすぐの失点ですからまだ時間はあり、川崎は焦る必要はないのですけど、やはり最後の局面でシュートを急いでいた印象です。時間がジリジリ過ぎていきます。

そこで風間さんが動きます。僚太に代えて森本をトップに投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。森本は嘉人と並んで2トップ。前線にアタッカーを増やして、シュートアテンプトの可能性を広げる意図だと思います。ただ、森本と右WBに入った悠にボールが集まるため、ますます嘉人が影を薄くします。

今日は悠にシュート意欲がありました。実際に結果も残しましたし。でもクロスバーに嫌われるシーンなど、サッカーの女神に微笑まれた印象はありません。調子が良かっただけに、自分が決めたい気持ちが優っていたのでしょう。

最終盤は、風間さんも美しさと強さの同居を捨てます。エドゥを前線に上げてパワープレーにでます。致しかたないなと思いました。結果は、エドゥがやはり自分でなんとかしようという意思が勝り、孤立気味になってしまいました。

そして、歓喜と無情が交錯する、ノックアウトでもっとも美しいときが訪れます。このまま試合終了。鹿島2-1川崎。

鹿島アントラーズが第96回天皇杯を征しました。鹿島サポのみなさまおめでとうございます!。

鹿島に、とりたてて顕著な勝負強さの象徴を感じませんでした。でもそれこそが鹿島の強さなのかもしれません。決勝のために仕掛けたスペシャルプランは、アクシデントを含めて三つ。それを躊躇なく試合中に繰り出すことができ、かつチームのコンセンサスがオートマチックにできることこそ、鹿島が積み重ねた時間の成果なのかもしれませんね。

風間川崎はとても楽しいサッカーを魅せてくれる魅惑的なチームです。プロスポーツとして極上のエンターテイメントを提供してくれます。今日の決勝はJリーグを象徴する組み合わせでした。川崎あっての鹿島、鹿島あっての川崎。リスペクトというのはまた違うかもしれないけど、互いの存在意義を分かち合えることは、将来を通じてJリーグの美徳としてあり続けて欲しいと思います。

中村憲剛とチームは、まだ無冠です。表彰式の間中ずっと俯いたままだった憲剛が、一度だけ空を仰いで大きくため息をつきました。悔しさにあふれる姿がとても寂しかったです。でも、たび重ねる試練は最上の喜びの過程。新しい2017年シーズンは、川崎にとってリビルドとなる難しいシーズンです。プレイヤーとしてマネージャーとして、憲剛の肩にかかる荷はますます大きくなります。どうか、憲剛らしくサッカーを楽しんでくれることを願います。

今年もぽちごやブログをよろしくお願いします。すべてのサッカーを愛するみなさんにとって幸福な一年になりますように。