我らがサムライブルーグループリーグ第3戦は、決勝トーナメント進出がかかる、4年間の真価が問われる一戦です。
対戦するコロンビアはすでに決勝トーナメント進出が決まっています。ギリシャvsコートジボワールの結果次第ではありますけど、まずはコロンビアに勝つ必要があります。
日本はまた少しアジャストしてきました。GKは川島。CBは今日も麻也と今野。SBは内田と長友。ボランチは今日の長谷部の相棒は青山です。WGは右に岡崎左に香川がスタメン復帰。トップ下に本田。1トップは今日は嘉人です。
コロンビアはなんとスターターを8人入れ替えてきました。シフトは4-2-3-1です。GKはオスピナ。CBはバランタとバルデス。SBは右にアリアス左にアルメロ。ボランチはグアリンとメヒア。WGは右にクアドラード左にラモス。トップ下にキンテロを置いて、1トップはジャクソン・マルティネスです。
試合はコロンビアの攻勢から始まります。ドリブルとショートパスで日本ゴールに迫ります。日本はこれを、体をはった守りで力強く跳ね返します。
立ち上がりの攻勢を凌ぎ、5分を過ぎると日本がイニシアチブを握ります。中盤を日本が支配します。日本のフォアチェックが機能し始め、中盤でターンオーバーできるようになります。イーブンボールも日本が拾うようになります。ボールを保持できるようになると、日本は縦パスが入るようになります。今日のポストは分散しています。真ん中の本田だけでなく、右の岡崎にもポストを入れます。ポスト役も粘り、アタッキングサードで日本らしいショートパスを繋いだ攻撃ができていました。振り返ると、この時間帯に先制できていれば、レギュラーメンバーを大量に下げ、コレクティブネスに問題があったかもしれないコロンビアに対し、試合の結果は変わったかもしれません。しかし無情にも、カウンター一発で、ある意味で試合の趨勢を決めるゴールが生まれます。
前半17分。岡崎がバランタにボールを奪われます。バランタには青山がアタックしますけど、こぼれ球をマルティネスに拾われます。アドバンテージ。マルティネスからラモスへのパスをカバーしようとした今野のプレーがPKとなります。これをクアドラードが決めました。日本0-1コロンビア。
コロンビアの初シュートがPKゴールでした。先制されても試合のイニシアチブは日本が握ります。今日は岡崎が岡崎らしいプレーを見せていました。日本の最大の得点源は岡崎です。岡崎の特長は、サイドからダイアゴナルにゴール前に飛び込んでピンポイントで合わせるシュートです。コートジボワール戦とギリシャ戦では、どのような意図があったのかわかりませんけど、岡崎の躍動感が失われていました。本田に収まり、左サイドで作り、右で仕留める。そんな日本のゴールの方程式を見せられなかったのは、ひとつには長友の対処を施されていたこともあると思いますけど、エース岡崎をエースと仕切れなかった日本の前線にも因があると思います。やっぱり1トップが最後まで定まらなかった影響は、とても大きかったと思います。
コロンビアのレギュラー温存のギャップがどのくらいの影響だったのかは、コロンビアの選手を全然知らないのでわかりませんけど、見た限りでは、前線のクオリティは、日本の弱点である最終ラインが十分に対処できる範囲だったと思います。これが日本にイニシアチブが来ていた最大の因だと思います。もうひとつは守備の高さです。日本は、グローバルな基準ではハイプレーに難があります。代表のメンバー選考で豊田を外しましたので、ハイプレーには挑まない覚悟をしていました。今日のコロンビアは、標準でした。高さに苦労することのプレッシャーがかなり軽減されています。日本が押し続けるなか、ついに同点ゴールが生まれます。
前半アディショナルタイム。コロンビアのアタックをペナルティエリアで防いだ日本は、内田がそこから長駆ドリブル。一気にコロンビア陣に入ります。コロンビアは前線の帰陣が遅く、内田に誰もマークに行きません。この時コロンビアは最終ライン4枚と両ボランチが4+2の2ラインを引いています。日本は中央に岡崎がいてバルデスが見ています。左アリアスの外側に嘉人、内田の隣に香川がフォローしていてグアリンが見ています。右ライン際の本田は、アルメロがラインに入ろうとしていてフリーです。内田の選択は本田でした。本田はパスを受けてライン際をドリブル。アタッキングサードに入ります。アルメロとメヒアを引きつけルックアップ。この時ゴール前は、ニアに香川、真ん中に岡崎、ファアに嘉人そのさらに外に内田が流れようとしています。コロンビアはそれぞれマンマークでマッチアップしていて、4on4。数的にはイーブンです。ただ、香川と岡崎は、相手DFの前を取れていました。これを見た本田は、岡崎の前方にクロスを送ります。岡崎は伝家の宝刀ダイビングヘッドでゴール右隅に押し込みました。日本1-1コロンビア。
このまま前半終了。
後半頭からペケルマンさんが動きます。2枚同時に代えます。クアドラードに代えてカルボネロが入り右WG。キンテーロに代えてハメス・ロドリゲスがトップ下に入ります。ハメス・ロドリゲスが入ることで攻撃ルートの目標ができ、前半とは一転コロンビアがイニシアチブを握ります。コロンビアの狙いは、日本の定番の攻め所、左右のSBの背後です。ほぼ一方的に押し込まれる展開のなか懸命に守っていましたけど、ついにゴールをこじ開けられてしまいます。
後半10分。アリアスが右ライン際からドリブルで中央に侵入。アタッキングサードに入ります。これに香川と長谷部がつき、中央がぽっかり空きます。そこにロドリゲスがいました。アリアスは十分に引きつけ、ロドリゲスにパス。青山が寄せますけど、ロドリゲスはワンタッチで青山をかわし、ペナルティエリアに侵入。吉田と内田がこれを見ていて、内田の背後からゴール前に出ようとしているマルティネスをマークできていません。ロドリゲスはこれを見逃しません。マルティネスにパス。マルティネスはワントラップして左足で流し込みました。日本1-2コロンビア。
日本は反攻に出ます。ロングボールで一気にアタッキングサードに入り、状況を打開します。重心が高くなったところで、得意のショートパスを繋いだ攻撃でゴールに迫ります。ザックさんが動きます。青山に代えて蛍を投入。さらに岡崎に代えて曜一朗を投入し、トップに入れます。嘉人が右WGに回ります。日本が攻め込む時間が続きますけど、ペナルティエリアに入る手前のパスがコロンビア最終ラインに弾き返されます。
後半37分。コロンビア陣のイーブンボールの競り合いからこぼれたボールがカルボネロに渡ります。ルックアップしたカルボネロは、寄せてきた長谷部をトラップでかわし、右サイドを駆け上がるロドリゲスにロングパス。ロドリゲスはそのままドリブルでアタッキングサードに入ります。日本1-3コロンビア。
このゴールは日本を消沈させるのに十分な威力がありました。コロンビアはGKを代えるセレモニー状態です。オスピナに代えてモンドラゴンが入ります。ザックさんが最後のカードを切ります。香川に代えて清武が今大会ようやく初出場。そのまま左WGに入ります。今日の香川はようやくコンディションが戻っていたようです。ドリブルで再三チャンスを作っていましたし、なにより香川の長所であるシュートを打てていました。でも、結局ノーゴール。そして、日本の息の根をとめるゴールが生まれます。
後半45分。自陣でパスを回すコロンビアは、グアリンに渡ったところで攻撃モードに入ります。前方のカルボネロに縦パス。カルボネロはドリブルで日本陣に。蛍と清武を引きつけ、トップのラモスに付けます。ラモスはターンして今野と対峙しながらキープし時間を作ります。その間、左サイド内田の外側をロドリゲスが駆け上がっていました。それを見たラモスは、麻也の背後を抜けるスルー。麻也より先に追い付いたロドリゲスが麻也をかわして左足で流しこみます。ロドリゲスは3試合連続ゴール。ルックスもいいですし、隠れていたニューヒーローの登場です。日本1-4コロンビア。
このまま試合終了。日本1-4コロンビア。
結局、最後までエース本田のコンディションは上がりきりませんでした。前回大会で日本をベスト16に導いたセットプレー、とくにFKは、今大会は不発に終わりました。前回は本田と遠藤の左右のキッカーが揃っていましたけど、遠藤の出場機会が少なく、ほとんど本田が蹴っていました。本田のコンディションは、流れのなかのポジショニング、視野、パス感覚は徐々に上がっていたと思うのですけど、セットプレーの精度は低いままでした。繊細な感覚が戻らなかったんだと思います。
本田、香川、岡崎。日本が誇るエースのコンディションの調整が、初戦に間に合わなかったことが、日本が後手に回った一番の原因だろうと思います。コロンビア戦を見る限り、やっぱり日本の攻撃は十分にコンペティティブです。でも、攻撃陣全員のコンディションが整わないと、コンペティティブ足りえません。本田と香川は所属クラブの問題、岡崎は疲れがあったのでしょう。主力選手が普通に海外でプレーするようになりましたから、主力選手にワールドカップイヤーをどう過ごしてもらうのか、有力国が常に直面する難しい課題に日本も取り組む必要ができてきました。
全体の戦力としては、FWとCBのクオリティが課題です。CBに関しては、育成方針のある意味重要な岐路かもしれません。もちろんデカくて強くて速くて上手いCBを育てられればそれにこしたことはないのですけど、なかなか日本人の特質を考えると難しいでしょう。麻也の挑戦は素晴らしいものだし敬意を感じます。方向性的には、小さくてもいかにコレクティブに守るかになると思います。
やっぱり一番の課題はFWでしょう。代表のことを考えたら、有力な選手はどんどんヨーロッパの第一線に出るべきです。幾多の挑戦のなかで、ワールドカップで普通にマルチな点がとれるFWが出てくるでしょう。
残念な結果ではありましたけど、総括するとザックジャパンは素晴らしいチームだったと思います。グローバルななかで初めて日本のポジションを明確にできたような気がします。南ア大会までは、世界への挑戦という言葉で片付けられていたと思うのですけど、日本のスタイルがおぼろげに見えてきた今大会は、アイデンティティを示すことができたと思います。日本のスタイルが結果に結びつくかどうかは、スタイルの核となる選手のコンディション次第ということ。言い換えると、コンディションが整いさえすれば、日本は決勝トーナメント上位に行くだけの資質をもうすでに持っていると思います。日本独自のスタイルというものは、五里霧中のなか、ジーコさんがグローバル標準で挑んでダメだったことを反面教師にし、オシムさんがキーワードを示してくれたけどまだ具体的なイメージには至らず、岡田さんが具体化に挑戦したけど一度挫折して、ようやくザックさんが定義してくれました。このザックさんの功労は、先人の挑戦の系譜の上とは言え、クラマーさんにも匹敵すると思います。
4年後、2018年はロシアです。いまの主力は、まさにいま成熟期なのですが、4年後には円熟しているでしょう。いまの方向性を失わず、そのまま正常進化していけば、日本はきっと大活躍すると思います。ブラジル大会は、そのための試金石でした。課題も明確ですし、確実に前進していってくれると思います。
最後に、退任されたザックさんの感謝の言葉を送りたいと思います。ありがとう、アルベルト・ザッケローニ監督!