ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

d47落語会第9回「山形県」@渋谷ヒカリエ20141211

2015-01-31 14:04:28 | アート・文化

師走の渋谷に我らが師匠走りきたる。

 

夏以来のd47落語冬の陣です。例によって落語親友と参加です。

今回は、いつものオープンスペースではなく、普段d47ミュージアムとして使っているほうでの開催です。理由は後ほど。

今回のテーマは、自分たち的には初めて九州を出まして、山形県です。

花緑師匠はここから出てきました。落語会では珍しい登場シーンw。

まずは古典から。今日の師匠のお衣装は、黒地に金のドットが散りばめられたお着物に、ベージュの羽織です。

高いですね。教祖になった気分ですね。後ろのほうのかた、見えますか?。下々よく来たw。こっちのミュージアムでやるのは初めてです。実はトラブルなんです。今回の日程が決まってからあっちが埋まっているって分かったんです。どっちがいいですか?。まあなんとも言えないですよね?。こっちは奥行きが無いので席の配置がワイドになります。演る側からすると、ワイドだと噺の展開がわかりやすくなるんですよ。かみしもを切るでしょ。かみとしもをこうやってしっかり振って区別するから誰が話してるかわかりやすいんです。壊れた扇風機みたいですね。身振りも自然に大きくなるから、宝塚みたいです。チケットにも会場はミュージアムって書いてあるんです。虫眼鏡で見るような小ちゃい字で。皆さんも8階に上がって来た時いつもの会場が別の展示になってて、おっと今日じゃなかったって汗をかいたんじゃないですか?。でも騙したわけじゃないですからね。

騙すといえば今ヒカリエでトリックアート展をやってます。地下3階で私も写真撮りました。不思議ですねー。どうなってるのかしら。皆さんもいかがですか?。渋谷に来たいい思い出になるんじゃないかしら?

 

騙す騙されるってありますね。今年最大の騙しは、佐村河内さんですね。あの人が素晴らしいんじゃなくて、派手さを無くしたテリー伊藤さんみたいな新垣さん、あの人がホントは人々を感動させていたという。

騙したほうが悪いって思いますよ。じゃないと都会は住み辛いじゃないですか。手品師はすごいですね。いい意味で騙されます。こないだYouTubeでセローさんってかたの手品を見たんです。すごいですよ。寄席の手品なんかとは違います。あれは非日常ですよね。ボンボンとか鳩とか出てきても日常にはないもの。セローさんは違います。街中の普通のハンバーガーショップでチーズテリヤキを食べたいと言って看板から取り出して食べるんです。違うのがいいと言って看板に戻すと絵が食べかけになっているんです。不思議ですねー。ミッキー・カーチスさんに聞いたんですけど、昔スプーン曲げのユリ・ゲラーさんが来日したときに車に同乗して目的地に向かったら大渋滞で、絶対間に合わないはずなんですけど、ユリ・ゲラーさんが俺に任せろって運転したら1時間かかるはずが15分で着いたそうです。異次元に迷い込んだ気分になったそうです。ミッキー・カーチスさんは談志師匠のB級コースの卒業生で、ロカビリー落語なんてやってらっしゃいます。

えー。年の瀬ですね。皆さん気をつけてくださいね。暮れと言えば宝くじですね。皆さん買いました?。あれ、ホントに当たるんですかねー?。6億当たった人見たことあります?。

二八蕎麦といいまして。二八の言われは16文だったからというのとつなぎの分量と、説が二つありますね。昔は店を構えない行商スタイルっていうのがあって、その日売りたいものを売るってシステムだったようですね。天秤棒の両端に大きな筒状の収納をつけて、そのなかに売り物を入れて歩くわけです。それで売るときは場所を決めて、看板を立ててお客さんを待つという。深川の江戸資料館に行くと、本物を見ることができます。私どんなもんかと思って担いでみたんですけど、重かったです。で、天秤棒の先に札がぶら下がってました。昔も風鈴とか札をぶら下げて売り歩いたようですね。資料館も粋なことをするねーと思ってひっくり返してみたら、担がないでくださいって。という流れから、「時そば」。

続いておなじみご当地落語です。師匠の衣装替えは、紺のラフなジャケット、ブルーの柄シャツ、白のコットンパンツ、グレーのコンバースローカットです。ちなみにお弟子さんもカジュアルでした。たぶん緑助さんじゃないかと思います。

はじめてご覧になるかたは、この衣装を見てびっくりされるなんていうのはもうすっかり聞き飽きましたよね。もうすっかり受け入れていただいています。ええそうなんです。私これご当地落語と言っているのですけど、洋服でやらせていただいています(あとでお聞きしたのですけど、すべて師匠ご自身のお洋服なんだそうです。ちなみに缶バッチを胸につけてらっしゃいまして、そちらも自作なんですって)。

今日は山形です。山形のイメージは顔ですね。山形県のかたちは横顔で、ちょうど新潟を噛んでる風に見えるっていう。山形と言えば芋煮ですね。山形は広いですから、ひと口に芋煮と言っても地域でぜんぜん違うんですって。内陸のほうは醤油ベースで、鶴岡とか庄内は味噌仕立てなんだとか。

鶴岡にまちなかキネマというのがありまして、リノベーションっていうんですか、糸工場を再利用したものだそうで、雰囲気がよくって、新しいものより贅沢だと思いますね。鶴岡にはやまのべ落語会というのをやってましてよく行くんです。落語の愛好家のかたが開いてくださってて、嬉しいんですけどキビシいんです。落語会が終わったら打ち上げがあるんですけど、今日のネタは珍しかったねとか今日はねとか言っていただいて。

山形はサクランボですね。6月にサクランボ狩りをやらせていただいたんです。普通のサクランボじゃないですよ。粒が大きくて立派なんです。まびいていいのだけ残すんだそうです。カメラのレフ板みたいなのを下に敷いて日が当たりやすくしてるんです。もうこうなったら作品ですね。普段はサクランボ狩りやってないんだそうです。大事に育ててますから。花緑が来るっていうんで特別にやらせてくれたんです。

酒田で落語会をやったんですけど、遠かったです。新庄まで山形新幹線で行って、新庄から在来線です。4時間くらいかかりました。昇太師匠とたい平くんの三人会で。昇太師匠はすごいですね。余力で芸やってますから。それで酒田のかたに鉄道で来たって言ったらエッて。酒田のかたはみんな東京は飛行機なんだそうですね。我々全員びっくりです。えー飛行機あるのかよって。酒田のかたに知らないんですか?なんて言われちゃっいました。帰りも新幹線だって言うもんだから、いや飛行機だと。高いですよなんつうか、いいよ俺が金出すから飛行機にしてください。絶対こっちがいいじゃない。庄内はおいしい庄内空港っていうんですね。機内でCAさんが投機はまもなくおいしい庄内空港に到着します、なんてアナウンスがあって。いかにもおいしそうですね。

庄内といえば藤沢周平ですね。庄内映画村というのがありまして、忘れもしない11月28日か29日に行きましたよ。忘れてるじゃないかと。オープンセットになってまして、ちょっと山の中だもんだから爆破シーンに適しているんだそうです。るろうに剣心と蝉しぐれとかおくりびととかタイムスクープハンターとか、有名な映画やテレビの撮影で使われてるんです。という流れから、「おしんの夢(仮)」。

仕事に身が入らない漬物屋の三代目が、映画スターになると言ってエキストラに参加した庄内映画村で、うだつが上がらない女優さんと出会い、お互いに勇気づけたら、若旦那はプロデュースした漬物が大当たりして、女優さんは世界的な大スターになって再開するってお噺。

花緑師匠、藤井青銅さん、ナガオカケンメイさんが登壇されての、お馴染みトークショーでございます。

放心状態ですねw。ええ疲れましたw。こっちでやるのは初めてです。なので今日間違わず来ていただけるか心配してたんですけど、満席です。ありがとうございます。さっきTwitterでお話してたんですけど、明日と間違えちゃったというかたがいらっしゃいましたよ。

本日は山形です。山形も、鶴岡のお噺です。青銅さんの奥様は鶴岡のご出身なのだそうですね。今日のご当地落語は「おしんの夢(仮)」といいます。三代目の若旦那のお噺ですけど、三代目にはちょっとうるさいですよ。三代目は日々辛いんです。山形は、全国でも家業を継ぐかたが多い県なんだそうです。そうなんですか、知らなかった。え?、青銅さんは知らずにこの噺を作ったんですか?w。タイトルに(仮)がついてるのは、「おしんの夢」がなんとなく落語のタイトルっぽくないからなんです。なんか違和感があるなあと思っていて、じゃあいっそまだ仮のタイトルでってことにして、(仮)をつけたんです。

山形でやった時から時間が経ってまして(山形は10月31日)、一ヶ月以上経ってますから続きものって感覚がないんです。間に独演会があったりして、一回噺を体から抜いてますから。電話を深追いし過ぎました(おしんの夢(仮)の途中で客席の携帯が鳴りました。鳴らしちゃったかたは、ネタになったからって喜ばずに、十分に反省してくださいね)。そのせいで噺がどっかに行っちゃって、ホントに忘れちゃいました。タイムスクープハンターのところは台本にはなく、勝手にふくらませました。好きなんですよ、タイムスクープハンター。

ご当地落語は、ご当地に奉納してるんです。物好きなかたがいらっしゃるもんですねー。地元からご当地落語をかけていいかってオファーがあったんです。山口です(山口県のご当地落語は「維新穴」)。山口県立大学の落語会かなにかでかけるんですって。嬉しいですね。あと佐賀落語(「皿美人」)も、佐賀大の落研からオファーがあってやりたいと。あさって(13日)ですよ。嬉しいですねー。

ウチのメンバーが、CDのジャケットをダミーで作ったんです。いいじゃないですか。DVDとCDとどっちがいいですか?。CDがいいですね。姿見なくてすむじゃないですか。毎回スタンプ押してるんですけど、来れなかったってかたのために、CDにシールをつけとくとか。CDにするならお願いがあるんですけど。なんですか?。山梨のときにトチったところを編集して、間違いを無かったことにしてもらいたいんです。でも音源はひとつしかないですよ?。山梨と東京のいいとこどりにすればいいんですよ。東京でご覧になったかたで現地にも来たってかたはなかなかいらっしゃらないと思うんですけど、ふたつを聴き比べると面白いですよ。ウケる場所の違いがわかるんです。

庄内映画村には行ったことがあるんです。ウチの奥さんとふたりで行ったんですけど、なかに入ったら中途半端に侍の格好をしたおじさんがいましてね。羽織袴着て刀を差してるんですけど、胸のところに白いシャツが覗いてるんです。もう興ざめですよね。それで私のことをご存知で、花緑さんぜひ斬り合いをしましょうっていうんで、刀をもらって殺陣の真似事をやらされたんですけど、おじさんの腰が入ってなくてへっぴりなんです。まったくぼんやりしたおじさんでした。

ご当地落語は方言を使わないというポリシーにしています。方言を使うと現地のかたにはウケるんですけど、やっぱりイントネーションが難しいんです。演る側もそっちに気がいっちゃって噺に集中できないですし、お客さんもそうですから。ちゃんと話せるように、方言は使わないことにしています。

次回は大分県です。また九州ですね。狙ったわけじゃなく、たまたまです。北はねー、寒いところはあったかいときに行きたいですね。次回も手違いがあって、会場はこっちです。

大分の会は3月20日(金)。東京は3月31日(火)だそうです。楽しみですね。


d47落語会第8回「鹿児島県」@渋谷ヒカリエ20140905

2014-09-07 13:36:16 | アート・文化

秋の夜長は落語会ってことで、アギーレジャパン初テストマッチよりも山本昌今シーズン初先発よりも、落語。

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この夏二回目のd47落語会。今日は既刊の鹿児島でごわんど。

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今日のお召し物は、グレーのお着物に白の羽織です。
こんばんわ。今日は高座が高くなっています。前回はこのくらいでしたかね。後ろのかたがちょうどよくなったんじゃないかと思います。前のだと後ろのかたがちょっと辛いかなと。末広亭なんかだとこのくらいですかね。
今日で8回目です。d47とわたしたちの実験にようこそお越しくださいました。なにしろこの先どうなるのか、まるで決まってないんですよ。毎回スタンプ押してますけど、それくらい。スタンプは始まる前と終わった後に押しますから、スタンプの合間に落語がある感じです。スタンプがメインなんです。
デング熱でございますよ。うっかりすると大変です。ニュースなんかを見てると、地方のかたは東京中が危ないんじゃないかって思っちゃうんじゃないかって思いますね。東京って言っても広いんですけどね。われわれ東京に住んでる者にしてみれば代々木公園なんて東京のほんの一部なんですけど。先日福岡に独演会で行ってきたんです。「私東京から来たんですよ、皆さん大丈夫ですか?」なんて言ったら、会場がざわざわしはじめちゃったんです。そんなもんですよ。外からじゃあわからないことがあります。広島もね、大変なことになっていますけど、広島市と言っても広いんです。私、あの被害があった二日後に講演会で広島に行ったんです。そしたらみんなから電話がかかってきまして。おい花緑は大丈夫なのかと。ぜんぜんです。広島の市街地はぜんぜん平常通りです。被災したのは広島のごく一部なんですけど、外のひとはわかんないんですねー。だから、いま東京の人はみんなデング熱にかかってんじゃないかって思われてますよ、みなさん。まあでもデング熱ってのは、死ぬのなんのってそんなんじゃないみたいですからね。そりゃあ大変なときは死んじゃうかもしれませんけど、エボラとかああいうんじゃない。昔は流行ったらしいですね、九州とかで。どうします?、渋谷を閉鎖みたいなことになって。人がいなくなって蚊だけがぷーんって。
広島は初めて行きました。講演会だったんです。だいたい年に1回くらいやるんですけど、講演会はどうも具合がよろしくないですね。普段はこんな風に着物を来ているんですけど、講演会ですからスーツで行ったんです。一通りお話して質問コーナーになりましたら、おばあちゃんが、今日は落語があるって聞いて来たんですけどやらないんですかって涙ぐまれちゃって。落語しませんって意思表示でスーツ着てるんですけど。着物着てニカってするとあ、花緑だってわかっていただけるんですけど、スーツ着ると誰だかわかんない。8月23日にやったんですけど、念のため電話したんです。中止ですか?って。いやいや大丈夫ですから来てくださいって行きましたら、1,500人くらい集まっていただきまして。「なぜ笑う門には福が来るのか」ってテーマでお話しました。最初に質問したんです。「笑う門には福来るって信じてますか?」って。かなりのかたが手を上げてらっしゃいました。みなさん意味ご存知でした?。あれは「門には」と「福」の間に言葉が足りないんです。「自然に」が入るそうなんです。笑ってるとなにもしなくても福が来る。ホントですかねー。あらためて会場に質問したら手が上がりませんでした。聞きたいですか?。今日はしませんよ。
笑ってる状態には条件があります。安心してるってことですね。安心してないと笑えません。いまその通路にワニを3匹ばかし放したら、落語なんて聞いても笑えませんよね?。安心し過ぎて眠くなっちゃうということはあるかもしれませんけど。先日ある統計を見たんです。日本人は、まあ平均寿命が80だとして、80年の間でどのくらい笑っているかわかりますか?。22時間30分なんだそうですよ。1日にすると35秒。笑いの数だと6回。分けちゃうと細切れになっちゃいますね。だからね、落語をお聞きになる皆さんは22時間30分なんてもんじゃないですよ。ここにいらっしゃるかたは日本人の平均から漏れちゃった皆さんですね。日本人らしくない皆さんです。
今日はじめて落語を聴くってかたもいらっしゃると思いますけど、はじめての体験っておもしろいですよね。今日はそんなお話をするんですけど、いつもなら羽織をはらっと後ろに落とすんですけど、今日は高座が高いので落とすとみっともなくなりそうで。はじめて高座でたたみます。羽織のたたみかたには、本だたみと袖だたみというのがありまして、袖だたみだと下に置かずにこうやって高座でもたためます。おしゃべりクッキングみたいですね。という流れから、「明烏」。

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仲入り後は、師匠はお馴染み、洋服で登場でございます。お召し物は、黄無地のラフな長袖シャツに白のパンツ、グレーのローカットスニーカーという出で立ち。相変わらず爽やかです。椅子に座っての高座です。
さすがに8回目となると、東京では説明がいらなくなりました。地元だと毎回説明しないといけません。こいつ帰り支度したんじゃないかってお帰りになるといけませんから。
今日は鹿児島です。鹿児島といいますと我々噺家の世界ではスターがおりまして。鹿児島が生んだスター三遊亭歌之介師匠ですね。鹿児島では、一家に一本歌之介師匠のカセットがあるらしいですよ。歌之介師匠は、三遊亭圓歌師匠のお弟子さんです。爆笑王ですよ。圓歌師匠は言わずもがなですけど凄いですよ。何ども高座を拝見しているのですけど、一度も外したことがない。そんな圓歌師匠と歌之介師匠が鹿児島で親子会をやったんですけど、歌之介師匠のほうがバカウケしちゃったんですね。あの圓歌師匠がってんで伝説になりまして、われわれ東京の噺家は鹿児島にはびびって近寄らないんです。そんな鹿児島に行くことになりまして。西日本新聞さんに呼んでいただいたご縁で独演会をやらせていただくことになりました。桜島がロビーから見渡せる素敵なホールでしたけど、鹿児島のかたがたはいいお客さんでした。正直伝説があるのでびびってたんですけど、普通にウケるんです。どうみたって東京代表選手って風情の私を受け入れてくれました。まあ、受け入れられない人は来ないだけかもしれないけど。3、400人くらい来ていただきました。今年の12月で10年目になります。
先日鹿児島の回を地元でやってきたんですけど、d47やっていると面白いですね。地元にしかわからない柔らかいところがあるんですね。鹿児島の天気予報は必ず風向きがあるんです。なにしろ桜島が噴火しますから。風向きがわからないと生活ができないんです。鹿児島の人が鹿児島を出て天気予報を見るとびっくりするらしいですね。風向きがないって不安になる。鹿児島出身の噺家さんもいらっしゃいまして、林家彦一師匠とか桂竹丸さんとか。でも鹿児島の全国区の有名人といえば、やっぱり西郷隆盛ですよ。幕末からずーと人気者ですからね。鹿児島ではせごどんと呼ばれてます。西郷さんと言えば上野の銅像ですね。あれ、はだかの大将じゃないですよ。一時武蔵丸に似てるって評判でしたね。最悪なのはバカボン。今でこそ綺麗ですけど、戦前は汚かったらしいですね。唾でくちゃくちゃに濡らした紙つぶてを投げるって風習があったそうなんです。西郷さんの鼻にあたったら
ご利益があるって言われていたんだそうです。こういう風習は昔からあって、仁王様に紙つぶてを投げたら当たったところの病気が治るっていうのがあったんだそうです。せごどんは人格者ですから、紙つぶてを投げられても鷹揚に動かなかったでしょうね。あの銅像は明治31年に作られたんですけど、除幕式に出席した奥様が、「ウチの人はこげんな人じゃなか」と言ったという話が伝わっています。二つ説があって、一つは顔が似ていないっていうこと。西郷さんは写真が嫌いで残ってないんですね。高村光雲が、似顔絵を参考に作ったんだそうです。もう一つがかっこうです。上野の西郷さんはラフな格好をしてますけど、政府の要人ですし、もっとちゃんとした格好にしてほしかったというのが奥様のお気持ちだったそうです。あの格好には理由があって、あれ、犬の散歩じゃないんですよ。そう見えますけど。あれは兎狩りをしているんだそうです。西郷さんは政府をやめて鹿児島に戻りますけど、その4年間、鹿児島のいろんなところで湯治と兎狩りをしていたんだそうです。上野のあの姿は、その頃をモチーフにしているのだとか。そういえば腰に兎狩りの罠をぶらさげています。連れている犬は、西郷さんの愛犬のツンです。いまでも西郷さんゆかりの宿っていうのが、鹿児島県内各地に残されているそうです。西郷さんはいまでこそ偉人ですけど、立場が変わると評価が変わるもので。これが兎の視点だったらどうだろうって。もう大悪人ですよ。という流れから、「うさいごう」。

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九うさ連の代表の宇佐のうさぶろうが城山の西郷隆盛像に積年の恨みを言いにいったら、お詫びに人間にしてもらって、近所のおじいさんにごちそうしてもらうというファンタジーです。ベースは、古典の「元犬」。

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花緑師匠、藤井青銅さん、ナガオカケンメイさんが登壇されての、お馴染みトークショーでございます。

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一部加えたんですか?。ええ、酒田の南洲神社の件を加えました。台本にすると半ページ分くらい。たった半ページなんですけど覚えられない。歴史に弱いってこともあるんですけど。うさぶろうとおじいさんのかけあいのところは1回読んだだけで頭に入るんですけど、歴史の部分は弱い。
あと11年39県もあります。毎回そうなんですけど、地元でウケて東京でウケないところがあります。その違いがおもしろいんですけど、今回は大久保利通のところはなんとなくわかってました。もう一箇所、意外なところが今日はウケなかったですね。
福岡で福岡県の回をやったときに、地元のかたに次は鹿児島なんですよねって言いましたら、鹿児島でウケるのは西郷さんと桜島と長渕剛って言われました。鹿児島三段活用ですって。それほど長渕さんの圧が強いってことですね。この噺は、城山に行かずに作ったんです、わざと。作ってから鹿児島の回のときに、回がおわって翌日に行きました。そしたら、ずっと晴天だったのに西郷さんの銅像に行ったら、一転にわかに曇天が来て急に土砂降りの雨になりまして。西郷さんの怒りに触れたのかなって。降りましたねー。わたしは青銅さんの前に行って、いったんホテルに戻って荷物持って鹿児島中央駅に向かってるところだったんです。そのまま広島入りの予定だったので。いきなり降り出したので大変でした。うわーって思って見上げたら、ちょうどそこに大久保利通の銅像がありました。怒りに触れたのかなって。鹿児島県の人は銅像が好きなんですかね?。銅像が多いんです。
この噺の元ネタは、「元犬」です。九うさ連とかうさぶろうはオリジナルですけど、自由に台本をふくらませられるのは、元があるからですね。落語の古典は笑いの公式の宝庫です。古典は凄いです。
今日は半分くらいがリピートのかたのようです(間)。。。だからなんなんですか?(今日一番の爆笑)。いや、凄いなって。同時代落語って言ってるんですけど、落語は着物に座布団じゃないといけないって思ってる人がいっぱいいます。新作をやられる噺家さんはいっぱいいますけど、みなさんやっぱり着物に座布団。もう皆さんは見慣れてきたと思いますけど。教育されてますね。宗教ですね。リピーターさんがどのくらいになったら説明がいらなくなりますかね?。紙に書いておくってどうでしょう?。家禄は洋服を着てますって。落語聴いてるとき腑におちなくても、帰って紙を読んで納得するという趣向。
この落語は毎回その県に奉納してるんです。佐賀県のときは落語好きの県知事さんがいらして奉納しました。だれか演ってるんですか?。いやまだいません。
ホームページ作ったらどうですかね?。それいいですね。ホームページで格好のことも説明しちゃえばいいじゃないですか。作りましょう、ホームページ。こんな感じでこの落語会は、ここでいろいろアイデアが出て決まるんです。突然激変するかしれません。スタンプも突然無くなったりして。スタンプもそんな感じでした。2回目か3回目か、スタンプあるといいよねって言うと次にスタンプシートが出来て。最初はラジオ体操のイメージだったんです。シートを首からぶら下げて、ペタって。シートももっとしょぼいのをイメージしてたんですけど。そこは、ウチはデザイン会社ですから。東京はね、毎回やりますから、皆さんスタンプ押されるんですけど、地方では微妙ですね。いちおうスタンプ押すんですけど、これどうしようかなって。スタンプ押すときに、次はどこそこですって言うと「フンっ」って鼻で笑われるんです。鹿児島でも次は山形ですって言っても「フンっ」って。地方の人はあれどうするんです?。記念です。

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よく大阪のかたに「大阪府のときは行くから行ってな」と言われるんですけど、いつやるかわからないんです。dさんも同じですよね?。はい。dも先のことはわかりません。現地のも見たほうがいいですよ。ぼくらは毎回、現地と東京の違いがわかっておもしろいです。d47トラベルは凄いですよね。2ヶ月くらい編集者さんが現地に滞在して、実際に足を運んで感動したところだけ載せているんですよね。雑誌を読んで、あのカフェ、ラーメン屋に行こうって旅行するのもいいですよ。雑誌に載ってるお店が、怪しい路地のわかりにくいところにあったりして、宝探ししてるみたいで楽しいです。
青銅さんはいつ頃から台本を作るんですか?。だいたい2週間前くらいからですね。師匠はいつくらいから稽古するんですか?。私はきっちり決めているんです。かならず3日前から稽古します。この回のときは、3日間は仕事を入れず、かならず稽古してます。記憶に焼き付ける作業です。3日ですから、一通り覚えて人前に出せるくらいなんです。できたての荒削りな噺です。これもいいんですけど、時間があったらもっとじっくり仕上げたいですね。ヤスリがけするような感じで、荒らさを丸くしてく作業をしますと、古典のようになめらかに話せるようになるんですけど。師匠の記憶力はすごいと思います。直前に台本を渡してもきっちり仕上てきますから。記憶のしかたは反復ですね。台本を1、2回通しで読んでから、少しずつ刻んで覚えたかどうか確認しながら、頭に焼き付けていきます。
質問券作っちゃいますか?。どう使うんですか?。質問券を渡された人は質問しなきゃいけないっていう。何が楽しいんですか?。それ以上つっこまないでください。思いつきなんだから。
夏に既刊の県をおっかけでやってます。今年は新刊3回で既刊が1回。来年の夏はわたしのスケジュールが合わないので3回ですけど。
次回は山形です。現地は10月31日。東京はちょっと離れて12月17日です。一ヶ月も離れると大変なんですよ。現地でネタを下ろすでしょ。その勢いのまま東京回をやりたいのに、一ヶ月開くとリセットになっちゃいます。次回は会場が違うんですよね。はい。隣のd47ミュージアムです。なんでここじゃないんですか?。うっかりしてたんです。うっかりって。ミュージアムはここより細長いですよね。後ろのほうどうしましょう。ヴィジョンつけますか?。落語会に来てるのに後ろのほうの人はテレビ見てる、みたいな。じゃあいっそのことワンセグ配信しますか?

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今日の花緑師匠は、古典が絶好調でした。新作のほうは急遽追加した部分にひっかかってましたけど、それもまたd47落語会のライブ感で面白いです。

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次回は山形県。大好きな山形なので、とっても楽しみです。


d47落語会第7回「福岡県」@渋谷ヒカリエ20140711

2014-07-12 14:50:13 | アート・文化

ひさびさに落友といっしょに落語会でございます。

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前回佐賀県に続き、d47落語会第7回「福岡県」。すっかりファンになってしまった、柳家花緑師匠の高座でございます。

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こんばんわ。
今回が7回目でございます。今回は福岡県です。さきほど着物に着替える前にスタンプを押させていただきましたけど、あ、いま不安に思ったかたがいらっしゃると思いますけど、安心してください。スタンプは始まる前と終わったあとに押してます。1回目は最後に押してたんですけど、あんまり時間がかかっちゃって皆さんに押せなかったんです。この会は、スタンプショーです。スタンプとスタンプの間に落語がちょこっとあるという。スタンプがメインです。どうぞごゆっくりなさってくださいという。

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それで、スタンプを押していると、今日この会場にいらしてる皆さんは、今日がd47落語会が初めてというかたもいらっしゃれば、7回全部来ていただいているってかたもいらっしゃって、どうしようか悩んじゃいます。毎回この会の説明をするんですけど、毎回同じことで聞き飽きたってかたもいらっしゃいますし、ぜんぜんわかんないってかたもいらっしゃいます。どう説明しようかしら。なにしろ普通の落語会とは違うんです。どんなところが違うかって?。それはおいおい分かります。分かんなくっても自分を責めないでください。

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d47というのはトラベル誌を中心としたプロジェクトなんですけど、私も拝見するんですけど、素敵なところがいっぱい載ってます。カフェとかレストランとか施設とか。本を見て、こんなとこに行きたいって思って飛行機とか電車に乗って行かれるかたもいるそうなんです。私も行ってみたいなと思います。考えてみれば、本に乗ってるカフェですよ。カフェに行くためにわざわざ飛行機に乗って行くっていう。私もありました。素敵なカフェがあったんで行ってみたら、お休みでした。

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7回目ということは、残り40回です。さっきも言ったんですけど、この会はスタンプショーです。スタンプにぺたっと落語がついてる。そんな会です。問題はスタンプです。47回やるとだいたい12年かかるらしいんですけど、スタンプカードがボロボロになるんじゃないかって。

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ありがたいことに私の落語会によくいらしていただいているかたのなかに、頑なにこの会だけは来ないってかたがいるんです。毎回県がテーマになってますけど、どうもその県の人しか聴いちゃいけないって秘密クラブかなにかと思ってらっしゃるようです。そんなことないですよ。この会はそんな宣伝をしてないんですけど、皆さんちゃんと調べていらっしゃいます。d47はアンテナが高くって、デザインのいい素敵なものを紹介してくれますけど、d47の読者のかたも知らない素敵なことを見つけたいアンテナが高いんでしょうね。d47は、Long Life Designってコンセプトで、古いものにも新しいものにも素敵なものがあるっていう。そんななかに、今まで自分が知らなかったことを知ることができるのが魅力ですね。

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落語には古典と新作があります。これは好き好きですね。毎回本が出るときにやらせていただいていて、1回目は東京なんですけど、途中参加なんです。本のほうが何県か先に出来てまして。北海道とか。次回はもう決まってまして、鹿児島です。あちらに灰色のポスターが貼ってあります。もう既刊の本の落語会は消化試合なんて言うひとがいるんですけど、そんなことないですよ。

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今日は190人くらいお集まりだそうです。満席なんですって。あと40回ありますけど、このまま順調に行けば、この会場が手狭になっちゃいますね。そうしたら上のホールでやろうと思います。キャパは2,000人だそうですよ。スタンプが大変ですね。朝からやんなきゃみんな押せない。そういう時はもう考えてるんです。ウチの弟子に私のお面を被せて、もちろん私もお面を被ってみんな花緑だって。12年後どうなってるでしょうね。この会場でこのくらいのお客さんでやってるかもしれませんね。でも、そのまんまってどうなんです?。人間は成長するもんじゃないですか。いま190人でも、皆さんがお友達を一人連れてくれば380人です。12年あるんですから、えーと。それが12年後も190人でこの会場でって。そんな時は絶対私に何かあったんですよ。謝罪会見をしないといけないようなことが。「申し訳ございませーん」。

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ま、会場のことはdさんの考えがありますから。わからないということは素敵なことですね。わからないからこそ知ることが楽しくなる。今日は福岡の落語です。私が話しきれるか不安です。福岡と申しましても北九州の話です。博多のかた、申し訳ございません。なぜ北九州かというと、先日福岡でこの会の1回目をやったんですけど、会場が北九州だったんです。福岡の人によると、他県の人はわかんないと思いますけど、博多と北九州って違うんですってね。だから、北九州で博多の話をするわけにはいきません。dさんに会場は北九州だからって聞いて、藤井さんと私二人して「えーー?」って。なんで北九州が会場かっていうと、dの福岡の本で劇場を紹介してて、それで。今日の話は、北九州の人しかわかんない、マニアックになってると思います。それを東京のかたにもわかるように私が話さなければならないという。というわけで、話しきれるのか?

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なぜ今日はこんなに気弱かといいますと、新作は、最初にやるのをネタおろしといいます。もちろんネタおろしは、ウケるかウケないかわからないので難しいんですけど、二度目も大変なんです。我々の業界では二落ちという言葉がありまして、1回目が良くても2回目に失敗するってジンクスですね。気弱なんです。山梨の回の時のことです。最初に山梨でやったんですけど、2回目の東京で失敗しました。お父さんと息子と番頭さんの話なんですけど、お父さんが息子に大事な話をするのをすっ飛ばしちゃいまして、もう大変。アドリブでなんとか無理矢理話を繋げて、もう汗ダラダラ。実は山梨で別のところを間違えてまして、そこを間違えないようにってそこばかり思っていたら、一番大事なところを間違えちゃった。

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これからお話するのは、古典です。古典はまあたぶん大丈夫です。9歳からやってますから。今日のお話は季節のお話です。ジメジメする梅雨時のちょうどこんな時期。台風が来てて心配したんですけど、おかげさまで今日は開催することができました。中止になると払い戻しとかどうするんだろうってヤキモキしてたんです。昔は冷蔵庫なんてないですから、夏の時期の食べ物の扱いは大変でした。という流れから、「ちりとてちん」。

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仲入り後は、師匠はお馴染み、洋服で登場でございます。お召し物は、白無地のラフな長袖シャツにブルーの七分丈のパンツ、グレーのローカットコンバースという出で立ち。相変わらず爽やかです。椅子に座っての高座です。

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初めてお越しのかたはびっくりされたと思います。いつもお越しのかたは、またか、と。これはもう、慣れでございます。慣れていただくしかないと。衣装が気になるとお話が耳に入りません。まあ聞き飛ばしていただいても良いわけですけど。落語家は東西で737人おりますが、こういう格好をする噺家はあんまりおりません。異端です。現代もの、つまり新作をやられる噺家さんもお衣装は和装です。私は、現代ものを演るときは洋服を着たいという、そういうことです。

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福岡と言えば、私のイメージはラーメン。うまいもんとか。そういうかたも多いと思います。やっぱり食べ物のイメージは強いですね。福岡は芸能の街とも言われています。日本の芸能の発祥は福岡だって、現地の人は思っているそうです。私、20代の頃、祖父(五代目小さん師匠)の付き人で博多の料亭についていったもんです。博多のいわゆる名士の方々がウチの祖父をご贔屓していただいて、毎年一流料亭で集まって落語を聴こうなんて、そういう趣旨の会でございました。世話役の方々が、私が真打になりましたら、じゃあ孫の話も聴こうって、料亭落語会を開いてくださっています。もう大変なもんです。話終わって一席って時に世話役のかたから、「今日の噺は、いったいどんなつもりで決めやがったんだい?」って。22の時に真打になって、30になるくらいまで、そんな感じで洗礼を受けていたのが、私の博多の印象です。

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今日の噺は北九州が舞台です。次回鹿児島で、前回が佐賀。長崎、大分、熊本いつやるかわかりませんけど、九州制覇中ってことで。北九州もよく行きます。ウチの祖父の代からかれこれ30年。北九州に劇場(北九州芸術劇場)がございまして(ここで、会場に貼ってあった今日のポスターが剥がれ落ちます)。縁起が悪いですね。いまので半分やる気が無くなりました。まくらが長いってことですかね?。

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私はその劇場で落語会を毎年演るんですけど、あと「江戸の青空」って演劇もやってまして、そっちは中ホールで、落語会は小ホール。先日(7月3日)北九州でやってまいりましたけど、前売りが40枚しか売れてなくて、それを聞いたとき私、何を思ったかというと、「ああ、スタンプ押すの少なくて済む」。楽かもって。当日は、朝から九州北部は大雨でして、高速道路が通行止めになっていたりして、こりゃ無理かなあって思っていたら、130人くらい集まっていただきました。奇跡ですね。今日も奇跡ですけど。奇跡に感謝して、ポスターが落ちてもやらせていただきます。

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人力車の噺でございます。人力車というと観光地のイメージですね。あれ乗ると、見える景色が変わりますね。東京でも浅草とか。若い衆ばかりかなと思っていたら、最近は若い女性の漕ぎ手さんもいらっしゃるんですね。浅草周辺を説明してますよ。渋谷に人力車のイメージはあんまりないですね。渋谷は坂が多うございますでしょ?。大変ですよ。道後、湯布院、萩なんか。関東ですと、先日羽生に行きまして。藍染の師匠さんがいらっしゃいまして、私もそのかたに手ぬぐいとか作っていただいてお世話になってます。それで、初めて工房にお邪魔したんですけど、わざわざ羽生の駅で人力車を用意してくださってました。お師匠さんの工房まで40分くらい、ゆっくりゆっくりかかったんですけど、次タクシーで行ったら10分でつきました。という流れから、「めんたい俥」。

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門司港駅前で乗った人力車が実はタイムマシーンで、北九州市合併から長州戦争、巌流島、はては壇之浦合戦まで、800年の時を遡るSFファンタジーです。ベースは、古典の「反対俥」。

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花緑師匠、藤井青銅さん、ナガオカケンメイさんが登壇されての、お馴染みトークショーでございます。

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藤井さん。
クラウンライターライオンズってお分かりになりましたかね?。とくに今日は女性のかたが多いので、太平洋クラブとかクラウンライターとか、お分かりにならないんじゃないかと思いました。でも、ウケてて安心しました。面白いのは、現地と東京ではウケるポイントが違うんです。現地では、太平洋クラブとかクラウンライターでウケてたんですけど、こっちではさいたまでウケてました。笑いは身近なところにあるってことです。
今日の噺のベースは「反対俥」です。そこからとって「めんたい俥」。門司港駅ってお分かりにならないかた、どのくらいいらっしゃいます?。最初に会場を聞いたとき、わたしも師匠もびっくりしました。福岡って聞いてたんで、ひよこのお菓子の噺でもしようかなと思っていたんです。東京のお菓子のように勘違いされてるかたも多いですけど、あれ、博多のお菓子なんです。東京のは東京支店で作ってる。それがいまでは東京のお菓子みたいになってて、そのギャップが面白いかなって。あと、ちょうど福岡の回は博多山笠の最中なんで、お祭りの噺もいいかなと思って作っていました。それが、北九州になって全部パー。我々二人は被害者です。北九州で博多の話はNGなんですね。これはもう博多は捨てるしかない。他県の人にはわかり辛いんですけど、小田原で小田原城も出てこず横浜の話をするようなもんです。
今日の噺は、師匠のアドリブがあります。タイムマシンのシュシュシュって演出は、師匠のアドリブです。台本に書きようがないですしね。アレ、素晴らしいです。北九州でもウケてました。なんで今日はもうちょっと長めにしましょうってお願いしました。
反対俥は、遅い俥と速い俥が出てきてそのギャップが楽しいんですけど、いま人力車に乗ることがないですから、そういう共通認識をいまの時代は出来ないんですね。噺自体は面白いわけですから、ストーリーや言葉を代えて現代でもっと楽しめるような工夫をしています。
泥露里庵、わかりました?。バック・トゥ・ザ・フューチャーを観たことがないって人も、いまはいるんですね。源氏物語みたいなもんです。作品は観たことがないけど、ポイントだけ常識になってて知ってる、みたいな。デロリアンもそんな感じ。福岡では、師匠はもっと長めに泥露里庵を説明してたんだけど、ちょっと長過ぎて笑うポイントがずれちゃっていたんです。なんで今日は、短めにお願いしました。
北九州はバナナの叩き売りの発祥の地なんです。街中に碑があるんです。渥美清さんが寅さんをやるとき、あれは佐賀なんですけど、バナナの叩き売りのプロの話を聞いたんだそうですね。最初、会場が北九州って聞いて、それにしようかと思ったんです。小倉の寅さんって有名な人がいて、変な歌を歌うんです。それを師匠にやってもらおうかと思ったんですけど、あまりにもかわいそうで。
次回は鹿児島ですけど、次回の噺はまだ1mmも考えてません。鹿児島のかたに、県民にウケるキーワードを聞いたら、桜島、西郷さん、長渕剛なんだそうです。鹿児島三点セット。この辺りですかね。
噺を作るポイントは、キーワードです。博多ラーメンって誰でも知ってるじゃないですか。これはダメ。北九州は焼きうどん発祥の地なんですけど、あまり知られてないでしょ?。これもダメ。真ん中を狙うんです。真ん中に説得力があるんです。

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花緑師匠。
門司港駅の「ハッハッハッ」のシーンは、福岡ではトチったんです。あそこは「ハッハッハッ」が蘇るところが面白いので、トチったところを同じようにトチらないと面白くない。それが上手くいかなくて、失敗しました。
今日は疲れたというか、椅子でやったのは、人力車の表現がしやすいかと思ったんですけど、座布団のほうがいいですね。体が動かし易いですから。
今日、となりのトトロを放送してるんです。噺に出てきたレトロ?トトロ?と繋がってて偶然にびっくり。
いろんな県の噺をするんですけど、やってるほうは楽しいです。知らないことを知れますから。島根、鳥取、青森、秋田、福井は行く機会がなくて、楽しみです。福岡県は北九州だったので、北海道をやるときはどこの街が会場なんでしょうね。札幌?函館?網走?室蘭?。
私的にこの会をやろうと思ったのは、東京の落語を全国の皆さまにお届けしたいって気持ちからなんです。古典のことばってとっつきにくくて難しいけど、ことばを現代風に代えてストーリーだけもってきたら、面白い噺ができると思うんです。

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次回は鹿児島です。鹿児島開催は8月21日(木)。東京開催は9月5日(金)。もうチケット買っちゃいましたw。こじんまりとした会場で、雰囲気もとてもゆるくてリラックスできます。落語初体験のかたにとっての壁みたいなものが低い会だと思います。楽しい落語会ですので、ぜひ。


柳家花緑独演会@三鷹市芸術文化センター20140321

2014-03-23 12:42:26 | アート・文化

早咲きの桜が綺麗でございます。染井吉野のつぼみも膨らんできて、もう春です。

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ひさしぶりに落語です。ご近所で聴ける落語会。三鷹市芸術文化センターです。

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柳家花緑師匠の独演会です。d47でお聴きしてからすっかりファンでございます。

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開演前に主催のセンターのほうからアテンションがありました。落語の最中に小さな声で会話したり、ビニール袋の音をさせると周りに迷惑なのでとのこと。他所では聞かないアテンションなのでセンターさんの対応は面白かったんですけど、そもそも落語は喧騒のなかでやっていた芸ですから、クレームをつけた人はちょっと細か過ぎんじゃないって思いました。いいじゃん別に。落語は気軽にワイワイ聴こうよ。

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前座は、花緑師匠のお弟子さん、柳家緑助さんです。花緑の十番弟子の緑助のほうでお付き合いを。落語にはクマさん八っつぁんなんてのが出てきますけど、あたまに呼び名がついてて、ガラッパチの八なんて。クマ八とご隠居さんがやりあうって話がありまして。という流れから、「道灌」。

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一回、ご隠居さんが掛け軸を講釈する件で台詞を忘れちゃいました(^^ゞ。えーとえーとってなったけど、すぐに思い出しました。結構長い噺なんですけど、しっかり覚えてらっしゃいました。姿形も噺家さんっぽくてスッキリしているので、上手になるかもしれませんね。がんばってほしいです。

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さて、師匠の登場です。ピンクの着流しに紺色の羽織と袴です。弟子の発表会にお付き合いいただいてありがとうございます。今回が4回目の高座です。3回目が一番良かったです。稽古サボってやがったな。我々の職業は、こうやって高座に上がらせていただいてその回数でだんだん育つものです。私なんかも前座のとき、そりゃあ酷かったですよ。緑助くんは入門して1年。高校卒業してすぐ入門しまして、いま19です。浜松の出なんですけど、生まれてからずーと浜松にいたのに、東京に出てきて1年後に三鷹にいるなんてねえ。入門されるかたでも30代はまあ初高座でも落ち着いているもんですけど、彼、まだ19ですからね。袖から見ていてドキドキしました。もう出て行ってかわりにやっちゃおうかと思いました。あの隠居なんですか。ボケてるんですかね。でもね。真打になっても詰まっちゃうもんです。私も、あれは池袋でやったときガマの油をかけましてね。ガマの油の講釈の同じところで台詞が出てこないんです。頭からなんべんやり直してもだめ。しょうがないんで、もう一ぺん出直しましてね。お囃子もやってもらって。それで初天神やりましたw。なんだよ花緑は意気地がないねって思うでしょ?。そうなんですよ。あれは25、6のことだったですかね。落語っていうのは記憶するもんです。いろいろ言いますけどまずは記憶しないと始まんない。最初は朗読みたいなもんです。小三治師匠、落語協会の会長ですね、なんて、落語が朗読なら、俺はいまでも300くらいは話せるよって言ってます。記憶力選手権でも優勝しちゃいますね。慣れてくるとアドリブを使うんです。プロは、詰まっても違う言葉でつないでいるとそのうち思い出すんです。私のピアノの10年来の師匠、国府弘子さんが言ってたんですけど、師匠つっても10年でレッスンは2回しか受けてないんですけど、やっぱりミスするんだそうですね。ペンペロペーペーペーなんてやっててペーのところを弾き間違えたら、ペーを3べんくらいやるんだそうです。「私間違えたわよー」って気付いてもらうために。3べんくらいやったらお客さんが、「わかったから、もういいから」って頷いてくれるんだそうです。ミスは誰でもするもんですけど、リカバリーができてこそプロですね。私どもの職業は喋りだけですから、喋りでカバーしなきゃいけません。ミスすると表情で筒抜けなんですね。すぐわかっちゃう。眠いときは寝たいんですけどね。皆さんが寝たら私も寝られる。今日は昼夜です。私はどちらかというと後半に強いほうなんです。だから夜のほうがいいかもしれませんよ。今日は春分の日。ここにお集まりの皆さんは、お昼間はなにをされてたんでしょうね。寝てたかたもいらっしゃるでしょうし、用事を済ませてこられたかたもいらっしゃると思います。今日は昼夜三席ずつ。六席やります。大変ですよ。えー、三鷹市芸術文化センター。立派ですね。駅から半端に遠いという。皆さんで不便を共有しようっていう。歩いて15分から20分ですか。ご不自由なかただともっとかかりますね。ここまで来るのに疲れちゃう。寝てもいいですよ。寝てても起こさないですから。毎年三鷹でやらせていただいているんですけど、いつもお越しのかたも、今日初めていらしたかたもいらっしゃると思います。落語が初めてってかたもいらっしゃいますよね。さん喬とか喬太郎とか三三じゃなくって私でいいんですか?。あれもこれもってお聴きになるかたより、同じ噺家を聴くというかたのほうが多いようですね。ときどき例えば志の輔を聴いてるかたがちょっと河岸を変えてって私を聴きにこられて、おやなんか違うと首をかしげられたりするんです。落語の上手下手を仰るかたがいらっしゃいますけど、私に言わせれば落語なんて好き嫌いなんです。もちろん前座のころは上手下手がありますけど、真打になったらこれはもう好き嫌いです。今日おいでの皆さんは私のファンだと思っております。まったくどこまでが芸でどこまでが無駄話か、自分でもわからなかくなっています。初めてこられたかた、落語ってこんなに明るいところでやるんだってビックリされているかたもいらっしゃると思います。普通、演劇や歌なんて客席が暗いですよね。落語は明るいんですよ。私の顔を皆さんにさらけ出していますけど、皆さんの顔も逆に私に筒抜けですからね。私に見られているわけです。ときどき見つめ合っちゃったりして。よくいらしてるかたのお顔はだいたい覚えています。忘れろって言ったって無理ですからね。えー。今日はとても大きなテーマをやります。男と女です。この世で普遍的なことは、男は女にはかなわないということです。母なる大地なんて言いますけど、女性のほうが強いんです。だいたい女性はフェアじゃないですよね。誰もがお母さんから生まれるじゃないですか。お母さんの産道を通ってきますよね。そりゃあ、母にはかないませんよ。お父さんから生まれるって人なんていないですよね。もしここにいらしたら、落語なんてやめます。対談しちゃいます。そのほうが皆さんのためになりますから。これからお話するのは、そんな男女の問題作です。という流れから、「宮戸川」。

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師匠、一席終わっても降りずにそのまま続けます。この噺には後半がありまして、お花を半七はすごいことになるんです。二人は夫婦になるんですけど、お花さんは殺されちゃうんです。で、半七は仇討ちの旅に出るんですけど、たまたま同じ船に仇が乗り合わせるんです。いざ仇討ちってときにお店の小僧さんに起こされて、全部夢でしたってオチです。昔、夢は小僧の使いって言いましてね。それとかけているわけです。長い噺なんで、今日みたいに前半だけが独立した噺になることもあります。「お花半七馴れ初めの一席」なんて呼ばれたりします。旅はいいですね。昔の旅は歩いていたわけですから、大変でしょうね。旅は憧れだったんです。いまは、そうだ京都に行こうなんて新幹線でぴゅーって行けちゃいますけど、昔は不自由でした。歩く旅ですから、そこから文化が生まれるんですね。宿場町が出来て、旅行く人が江戸や上方の文化を伝えて、逆にその町の文化が江戸や上方に伝わって。盗賊も出るし病もありますから、旅は命懸けなんです。この噺は、江戸っ子が京都に行って遊ぼうって噺です。旦那と太鼓持ちが出てきます。男芸者。私たち噺家もそうですね。昔噺家は、酒席に呼ばれたりなんかしたら、ちょっとエッチな噺をしたりするんです。どんな噺かは言いませんよ。今日はお子さんもいらっしゃいますから。さっきのお花半七みたいに、男女がひとつ布団で寝たらアレがアレしてこうなるんです。ウチの祖父もやってたそうですね。ほっぺからお味噌汁が出てきそうな顔してねえ。という流れから、「愛宕山」。

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仲入りがありまして、もう一度師匠が上がります。衣装替えされてます。白い着流しに萌黄色の羽織です。CSに落語小僧って番組がありましてね。私もよく見るんですけど、おもしろいんです。子供に大人が落語を教えるんです。教えてるほうも素人。素人が素人に教えるっていう。これが結構勉強になるんです。もちろんプロならもっと上手に教えるっていうところもあるんですけど、教育って難しいっていうことを教えて貰えます。私は中学から入門して、22で真打になりました。戦後最年少、31人抜きなんて言われましてね。なんで22で真打になれたかって言いますと、秘密があるんです。私には当時の落語協会会長と太ーいパイプがあったんです。偽装工作をしたわけです。なんでこんなことを言うかっていうと、私は正直なんです。正直と素直って違いますね。正直は、はじめのうちコミュニケーションがゴツゴツします。正直はどうかすると思ったことを言いますからね。昔から正直者は変わり者って言います。だから正直はおもしろいです。そんな正直が何人か集まると、おかしなことになるんです。この噺も正直者の噺です。清兵衛という屑屋が出てきます。たそがれじゃないですよ。屑屋っていまでいうリサイクル業者ですね。という流れから、「井戸の茶碗」。

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端っこでしたけど最前列で観ました。師匠の表情もしっかりわかりました。師匠の噺は歯切れがよくって疾走感があってスッとします。大笑いできて気持ちよかったです。

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d47落語会第6回「佐賀県」@渋谷ヒカリエ20140221

2014-02-22 16:19:06 | アート・文化

2週続けて大雪の荒天でしたけど、ようやく穏やかな1週間を過ごせました。ようやく鉄道と高速道路は復旧しましたけど、山梨をはじめ、いまも各所でまだまだご苦労が続いています。ヴァンフォーレの開幕戦小瀬開催は中止となり、霞ヶ丘になったようです。1日も早く平穏な暮らしに戻られますことをお祈りします。

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落友(落語友達)の「落語聴かね?」の誘いで、久しぶりに落語会でございます。ずっとお聴きしたかった花禄師匠の落語会にお邪魔することにしました。

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d47落語会第6回「佐賀県」でございます。

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d47は、D&DEPARTMENTさんが主催する、47都道府県にフィーチャーしたイベントプロジェクトの一環です。d design travelという旅行誌を軸に、展示会と落語会で構成されます。落語会は、藤井青銅さんが作るその県にフィーチャーした新作を柳家花禄師匠が板にかける形です。これまで、東京都、山口県、沖縄県、山梨県、富山県で開催され、今回の佐賀県で第6回です。毎回東京と地元の2回開催で、今日は東京回@ヒカリエです。

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ヒカリエ8回フロアのど真ん中にイベントスペースがあります。普段はオープンなのですけど、有料イベントの時はカーテンで仕切られるようです。末広亭をもうちょっと小さくした落語小屋くらいのサイズ。客席はフラットですけど、高座の位置が高いので後ろからでもずいぶん見やすいです。表情が楽しみのひとつである落語は、やっぱりこのくらいのサイズがいいです。

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二番太鼓が鳴り、司会のかたの挨拶のあと、師匠登壇です。

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今回が6回目で、今日がお客さんが一番多いんだそうです(そういえばほぼ満席でした)。最初の回(東京回)は、この辺り(高座の前)のブロックくらいしかお客さんがいなかったんです。60人くらいかな。それもdの職員さんが混ざっているって後で聞いたんです。だいたいそういうことは後で聞かされるんですね。先に話しちゃうと花禄のモチベーションが下がっちゃったらいけねーってんで。尻上りにお客さんが増えてきてまして、47都道府県をクリアするのにだいたい12年くらいかかるんですけど、最後はこの上のOrbでやって2,000人くらい入る予定なんです。毎回スタンプラリーやってるんですけど、今日初めてのかたがいらしたら、スタンプ押しますから、たぶん、後ろにカードありますから貰ってくださいね。2,000人もいると押すだけでいつまでも終わんない。お客さんは果たしていつ帰れるのかなと。私、弟子が10人くらいいるんで、私のお面を被らせてスタンプ押すか、いっそスタンプをどっかにぶらさげといて自分で押してもらおうかと考えています。
今日の会場を見渡すと、とってもカラフルですね。普段落語会に来ないかたもお見えだと思います。だいたい落語会っていうと、こう高座から見るとグレーなんですね。佃煮みたいな色なんです。年上の人ばっかり。今日は年下のかたもいらっしゃいますね。落語のイメージって、どこかとっつきづらいというか古臭いというか。この落語会はD&DEPARTMENTの企画なんですけど、そんな垣根を越えて、まだバレていない人たちに落語って面白いって幻想を植えつけちゃおうって主旨なんです。さっきそこで出番を待ってましたら、コクヨのほうに行く女性連れがね、「落語って何だろう?」って言うんです。私の前でですよ。同じ日本人かと思いました。さっきの人がこの会場を見たらびっくりするでしょうね。こんなに人がいるのかって。秘密クラブじゃないかって怖がるかもしれませんね。
なんつったって、真央ちゃんですよ。この会のお稽古とかなんとかありまして、リアルタイムでは見れなかったんですけど、朝見ましてね。初日はびっくりしました。でも仕様がないんですよ。心が揺れるって誰でもあること。揺れるほど心がピュアってことですよ(会場大拍手)。私もこんな気持ちで話す落語って職業をしてますから、わかるんです。ノーミスなんて無いんです。初日の真央ちゃん、滑走順が一番最後でしたでしょ。あれ、大変なんです。リンクも傷だらけでしょ。私も落語会でトリを勤めることがあるんですけど、荒くれ者の品のない芸人が暴れまわって、お客さんどっかどっか大爆笑でもう笑い疲れてお腹いっぱいって時に、花禄の落語にお付き合いをって、もう辞めてと。そりゃあ受けませんよ。平常心で出ろってできないですよ。ロシアの選手でしたっけ、会場がワーワー言って大変なときに出るのはしんどいと思いますよ。
そこへ行くと今日の落語会は楽なんです。皆さんピュアでしょ。誰にも荒らされてない高座って、皆さん聴き疲れてないから。えー、今日は古典を一席と仲入りがあって新作をやって、その後トークショーという構成です。落語落語でちょっと頑張って、トークショーはもうダラダラと。皆さんもうつらうつらしてていいんですよ。今日は、d47今年最初です。ようこそのお越し。
真央ちゃんを見てると、the日本人ですね。とっても謙虚。好きですねー。メダルがすべてじゃないじゃないですか。メダルなんてどうでもいいんです。楽しそうに頑張ってやってる姿を見られたらそれでいいんです(大拍手)。メディアが騒ぐじゃないですか。あれもthe日本人ですね。日本人はスポーツ選手に技術と人格の両方を求めるんです。相撲なんてそうじゃないですか。モンゴル人やアメリカ人に品格って、日本の価値観の無理強いですよ。
落語の世界も、江戸の頃から今とではだいぶ違っているんです。恋愛なんかも、昔は家柄が一番大事でした。それから奉公というのがあって、小僧さんがお店で下働きをするんですね。年季が明けても御恩奉公っていうのがあって。奉公してる小僧さんの楽しみって、1年に1度だけ実家に帰ることなんだそうです。むかしもいまも、仕来りや規則って大事にされます。という流れから、「おせつ徳三郎」から「花見小僧」。
(定吉が主人に花見でおせつと徳三郎が逢引したいきさつを白状したところで)、ここから徳三郎が追い出され、おせつが無理やりお見合いさせられ結婚するってことになり、それを聞いた徳三郎がおせつとその相手を斬って自分も死ぬって言い出すってこれから面白くなるとこで、今日はおしまいっ。会場から「えー(´Д`)」の声がw。

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仲入り後、ふたたび登場した花禄師匠は、うってかわって珍しい洋装です。白とライトブルーのストライプのシャツに白のネクタイ。鮮やかなブルーのカーデガンとチノパンです。爽やかです。

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えーこんな格好です。新作です。私、同時代落語と呼んでおりまして、何度かお見えのかたはご存知だと思いますけご、もうかれこれ5年くらい、現代物の新作をやるときはこの格好でやってます。最初は戸惑っていましたけど、5年もやるとお客さんのほうが慣れるもんですね。慣れなんです何でも。よく聞かれるんですけど、衣装にテーマはないです。青を来てますけど、佐賀をイメージしたわけじゃない。さきほどピンクの羽織でしたけど桜をモチーフにしたわけじゃなく。ただなんとなく爽やかに出たかったんです。
佐賀県です。私、九州に行くことが多いんです。佐賀は行かないですねー。旅行すればいいんですけど、自分からは行きづらいんですよ。なんか切ない。やっぱり落語家はお呼ばれして行かないと。自分から行って落語さしてくださいなんつっても、何しに来たのって。九州は福岡が一番多いですね。円楽師匠が主催されている博多天神落語会っていうのがあって、私も何度かやらせてもらいました。福岡は北九州にもよく行きます。私の祖父の五代目小さんに縁があるんです。鹿児島も行きます。鹿児島は東京の芸人がビビる場所なんです。ご存知三遊亭歌之介師匠のさつま弁落語が強烈ですから、鹿児島であれをやるとどっかんどっかんなんです。鹿児島の人の基準があれになっていると思うと、とてもじゃないけど東京の落語なんて怖くてかけられない。10年前に南日本新聞さんに呼ばれていったら、意外なことにウェルカムな雰囲気なんです。花禄でも聴いてくれました。スイッチを切り替えてくれるんですかね。まあ歌之介師匠と一緒に出たらどうかわかりませんけど。熊本は昇太師匠との二人会をずっとやっていて、今は
それぞれの独演会がいまも続いてます。宮崎もちょろちょろ行きます。大分は亀の井さんでやります。長崎は、落語好きのおっちゃんが「もってこ~い寄席」ってのをやっていて呼ばれます。もってこいっていうのはもっと持ってこいって意味なんですね。もってこいって言われたら、落語をもっと聴きたいってこと。でも、いっぺんも言われたことないですね。
佐賀県。佐賀は通るだけなんです。ところがこのd47のイベントが決まると、申し合わせたように佐賀からお話をいただくんです。武雄と鳥栖で落語会やりました。どちらも500人くらい。dの佐賀の回が3月27日にあります。その前、ちょうど来週27日に佐賀市で独演会やります。中学校でも落語会やります。スタンプは押さないけど。真打になって20年ですけど、ずーと佐賀とは縁がなかったのに、dをやると連鎖するんですね。富山でもそうだったんです。dの一ヶ月前に米団治師匠、正蔵師匠と三人会やりました。700人くらい来ていただきました。富山では奇跡的なことなんだそうですね。たしかに通りを見たら人っ子一人いない。佐賀はねえ、新幹線通りましたでしょ。佐賀は通過するだけだったんですね。手を降るだけ。むかしから佐賀は、交通の要所だったそうですね。西は長崎、南は熊本、鹿児島。だから佐賀は、旅人が立ち寄る場所で、旅館が多いんだそうです。今日はそんな旅館のお話です。という流れから、「皿美人」。

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「皿美人」は、「左甚五郎」などのパターンをモチーフにした落語です。人気のない旅館に長逗留する風采のあがらない老人に主人が宿代を請求すると、実は酒井田栗衛門って有田焼の絵付け師で、宿代のかわりに有田焼の皿に卑弥呼の絵を書きます。この卑弥呼、夜な夜な丑三つ刻になると皿から出てきます。実は吉野ヶ里にあった邪馬台国から呼んできちゃったとか。これが評判になり旅館は大賑わい。卑弥呼もまんざらではなく、佐賀牛や小城羊羹やブラックモンブランなどの佐賀名物につられて、夜10時と丑三つ刻の2回講演になります。これを妬んだのが、もう一つの邪馬台国伝説を持つ奈良県です。奈良県は卑弥呼に刺客を送ります。刺客はお客を装って旅館に泊まり隙を見て絵に細工をして卑弥呼を皿に閉じ込めます。卑弥呼を出したい佐賀の宿と出したくない奈良の刺客の戦い。勝利の女神はどちらに微笑む?、というあらすじ。

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第三部のトークショーです。花禄師匠に加え、脚本家でd47で県の落語を書いている藤井青銅さんを迎え、ホストはD&DEPARTMENT主催のデザイナー ナガオカケンメイさん。

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d47は東京と地元の2回開催ですけど、それぞれウケかたが違って面白いそうです。地元のほうは割合「ウケ」を取りやすくって、地元のひとしか知らない特産(今日もブラックモンブランが出てました)や、下手な方言(今日も、地元ではないけど超適当な奈良弁が大ウケしてました)を入れたらウケるんだそうです。でも、あんまりやり過ぎると今度は東京でウケないので、汎用性を持たせているそうです。実は佐賀回は一箇所だけ東京回に無いところがあって、台本に赤字で書かれているそうです。舞台は小旅館ですけど、台詞のなかに老舗旅館のあけぼのが登場するんだとか。
毎回県の落語は県に奉納されるそうです。Wikipediaの県のページに、県の花とか鳥とかを紹介するフレームがあるけど、そこに県の落語を入れるのが夢なんだそうです。奉納された落語は、その県のなかだったら誰でも自由にかけられるのだとか。奉納と言っても勝手やっているだけだったのですけど、今回初めて佐賀県に正式に奉納されることになりました。な、なんと、古川佐賀県知事がお見えです。落語を観賞されていた知事の感想は、佐賀をどんな風に紹介してもらえるのか、子供の学芸会を見るようでハラハラドキドキしたそうです。佐賀は合衆国のような県で、佐賀、唐津、鳥栖、有田、伊万里、武雄など歴史と特長を持った自治体が集まったお国柄なので、ひとつでも欠けると困っちゃうんだそうです。藤井さんもそこを配慮され、いちおう満遍なく紹介したつもりだとか。ここで目録が用意されます。奉納されるのは県の落語の台本とDVDと花禄師匠のてぬぐい4枚。DVD用に映像を録画していました。もちろん中身はまだなく、目録だけ。佐賀回で佐賀県に手渡されるそうです。ただ、タダでは渡せないと、なぞかけをして答えがよかったら奉納するってルールになりました。お題は事前に知らせてあって、佐賀県では、なぞかけ会議を開いて日夜議論を重ねたそうです。その模様が5枚くらいのパネルで紹介されてましたw。当然、その間の公務は停止w。なぞかけ会議の結果10本くらい候補ができて、そのうちの最優秀作を披露していただきます。
佐賀県とかけて
パンパースと解く
そのこころは
九州で一番でしょう
見事合格。ちなみにパンパースを日本で最初に販売されたのが佐賀県なんだそうです。
会場のお客さんから、奉納式をフォトセッションにしようって提案がありました。みんなでSNSで奉納式の様子を伝えたら、d47と佐賀県のいいPRになるってことで。花禄師匠、藤井さん、ナガオカさん、古川知事が快く応じてくださいました。普通著作権が壁でなかなか無いことなんですけど、アットホームな落語会ならではですね。

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奉納式が終わると、ナガオカさんが急に静かになってしまいました。大仕事を終えて虚脱感が出たそうですw。奉納された県の落語は、ぜひ県民の皆さんに忘年会の余興とかで使って欲しいとのことです。

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質問コーナーになりました。d47で採用される県の順番は、メディア向けに答えるとランダムなんだけど、実は大人の事情があって、d design travelに予算をいただけることになった自治体が優先なんだとか。そりゃあそうですよねw。自治体さんの惜しみないご協力をお願いしますとスタッフのかたが仰ってました。
佐賀県が用意したなぞかけの答えの残りを聞きたいというオファーは、主催者側がやんわりと配慮されていました。
県の落語を他のプロの噺家さんが地元でかけてもいいのかという所は、事前に花禄師匠に一言くださいとのことです。藤井さんはd design travelの内容を予備知識にしないで県の落語を作るんだそうです。D&DEPARTMENT側も同じで、どんな話になるかは板にかけるまでわからないんだとか。新作落語は初演の噺家さんから離れることがあんまり無いんだそうです。どうしても初演の噺家さんと比べることになってしまうから。新作は初演のひとが作ることが多く、イメージが張り付いてしまっていて、他の噺家さんはやり難いんだそうです。まあでも県の落語は奉納したので自由にやってもらっていいけど、あんまり人気が出るようなら、誰のおかげでって言い出すよ、ですってw。
自分たちも同じなのですけど、初めてd47に来たお客さんから、過去の県の落語を聴くにはどうしたらいいのかと質問がありました。何かの形で発表する計画はあるそうです。その場でいろいろ企画が上がりました。数回分まとめてDVDかブルーレイにすれば、自分の県だけじゃなく他の県のことも知れるから、他の県に興味を持つ機会になるんじゃないかとか、iTunesみたいなダウンロードサイトで一回分だけダウンロードできるようにするとか。スタンプラリーどうするって話になり、DVDを会場に持ってきたら過去のを押すとか、DVDにシールをつけて自分で貼ってもらうとか。いまのところ、スタンプラリーが全部揃ったらどうなるのかは考えてないんだそうですw。30分延長とか(何を?)ヤクルトあげるとか。その前に、12年も経ったらカードなくしたりボロボロになったりするけど、どうする?って問題も見つかりましたw。スタンプは最後に押すんだけど事情で途中で帰った人はどうするってことになり、今日聞き逃した人いますか?ってナガオカさんから質問があったのだけど、いまその場にいる人に聞かれてもねえw。
さっきも話題にありましたけど、東京と地元でウケかたが違うのでDVDが出たらチェックすると面白いかもとのことです。あと、山梨の回は、東京と山梨で師匠はどっちも間違えているんだけど、間違えた箇所がそれぞれ違い、2回で一人前なんだそうです。いっそ背景をブルーバックにして、後で編集でごまかせるようにするかって。
d47は、同時にd design travelをベースにした展示会を併催しています。おなじくヒカリエ8階です。d design travelのページに沿った展示で、面白いです。なにしろ展示されている品のデザインが、新旧いずれもキュートなんです。
最後に次回の告知がありました。次回は福岡県。福岡開催は7月3日(木)、東京開催は7月11日(金)です。

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楽屋はありません。幕を下がると廊下です。

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なんとなーく閉幕しました。花禄師匠はそのままスタンプを押すため会場の後ろに行きます。藤井さんもナゴオカさんもお客さんと話をしていて、いい感じにゆるいですw。お客さんとの距離が近いというか、ほぼありませんw。スタンプカードを貰い、師匠に押していただきました。「つぎの落語会もお邪魔します」とお声がけしましたら、「ありがとうございます。お待ちしてます」と握手していただきましたー!。

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ほんわかとアットホームで、とっても楽しい落語会です。それでいて馴染みの無い県のことを落語で楽しみながら勉強できますから、大満足です。佐賀は毎年鳥栖にお邪魔していてまったく馴染みが無いわけではありませんけど、サッカー旅だけで佐賀のすべてを知れるわけではないです。d47は、地元に密着した魅力を伝えてくれるので、幅も奥行も拡がります。12年間、通い詰めたいと思います。素敵な出会いでした。

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