金環日食がございました。5月21日のことでございます。手ブレもまたおかしw。
翌22日にはスカイツリー開業。
念願のボストン美術館展に行ってまいりました。東京国立博物館でございます。楽しみな展覧会に二の足を踏むのは、人が多過ぎるから。自分もその群集のひとりですから、仕方ないですけどねw。
ものすごーく楽しみにしていたので、曽我蕭白を除くと、見始めはちょっとだけ「アレ? こんなものか」と感じてしまいました。繰り返しますけど、曽我蕭白を除くと。もう一回、曽我蕭白を除き。ただ、考えてみれば基本的に個人収集ですから、そういう目線でもう一度振り返ってみると、やっぱり凄いです。トーハクにゴロゴロある国宝を見慣れていると、そう思ってしまうのかも。おそらく、自分など美術を見る真眼がない者にとっては、国宝や重文という肩書きが大きな基準になります。海外にある日本の美術品は、国指定の対象外なんでしょうね。指定の価値基準はよくわかりませんけど、出品されている美術品のなかには、国宝級がゴロゴロあるんだと思います。唯一の基準は、作者名。バーチャルでもいいので、基準が設定してあるならわかりやすかったかな。トーハクには、ゆる過ぎ?
展覧会は7つのパートで構成されてます。
(1)プロローグ
収集者である、フェロノサ、ビゲロー、岡倉天心の紹介です。
(2)仏のかたち 神のすがた
奈良や鎌倉時代の仏画、仏像です。
(3)海を渡った二大絵巻
「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」
(4)静寂と輝き
室町時代の水墨画や仏画、扇画。
(5)アメリカ人を魅了した日本のわざ
刀と衣装。
(6)華ひらく近世絵画
江戸時代を中心とした屏風画です。
(7)奇才
曽我蕭白コーナー。
ポスターなどでも紹介されている通り、見どころは(3)、(6)、(7)です。推測ですけど、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」がこの時期に開催した鍵なんじゃないかと思います。平清盛が武家政権を確立するターニングポイントのひとつ、平治物語を題材にした鎌倉時代の作品です。なにしろ描写が細かい。素人目にも、当時の戦の様子がよくわかります。源平時代の戦の作法というと、「やぁやぁ我こそは」ですけど、実際の戦闘は歩兵が集団になった乱戦なんですね。一対一を基本としているところが近世の戦と違うところでしょう。平治の乱の主役である皇族、貴族、武家だけじゃなく、お坊さんや庶民、はては野良犬にいたるまで書き込まれていて、なんとなく雰囲気がわかります。火に包まれる三条殿や、首を取られる武者も描いてあり、迫力満点です。興味深いのは表情の描き方。階級によって表現方法が違うのです。皇族の顔は書かれてません。これはお約束。公家は、源氏物語絵巻などでお馴染みのうりざね顔。個性なんてまったくありません。みんな同じ。武家が一番個性的です。ひとり一人顔立ちや表情が違います。騎馬武者は男っぽくゴツイです。郎党のなかでも身分の低い足軽(当時、そういう呼び方があったかは不明ですけど)は適当に書いてあります。庶民に至ると、これはもう点と棒w。ちなみに、トーハクの本館で「平治物語絵巻 六波羅行幸巻」も出展されていますから、現存する平治物語絵巻3巻のうち、2巻を同時に見られます。そちらもぜひ。
「吉備大臣入唐絵巻」が思いの外、面白かったです。吉備真備が入唐したときの逸話が描かれています。唐の役人に試験されるのですけど、幽鬼(じつは阿部仲麻呂先輩の化身)の助力で乗り切ります。乗り切り方がけっこうずるっこいw。漢文の試験では、幽鬼と一緒に幽閉された楼閣から抜け出し、試験問題を盗み見します。役人は日本に伝わってない囲碁で試験しようとしますけど、これも事前に情報収集し、幽鬼と練習して突破します。たくましいぞ、日本人w。
近世絵画は、有名な作者のオンパレード。これは凄いコレクションです。いきなり出し惜しみなく、狩野永徳と長谷川等伯がどーん。等伯の龍虎図屏風の龍を蕭白の龍と比べると、描き方がよく似ていて、様式があるのかな、なんて感じました。芥子図屏風は、緑、白、赤3色の濃淡だけで芥子をリアルに描いてあり、びっくりします。尾形光琳の松島図屏風は、夏の松島の緑がくっきり描いてあり、洋画のようでした。伊藤若沖を二つも見られたのは嬉しかったです。鸚鵡図は、若沖の代名詞、博物図鑑のよう。アート志向より実物に可能な限り近づけたいという欲求なんじゃないかなと思います。水墨画のほうは真逆で、アート。顔だけ薄い墨を使っているのが印象的でした。
そして、この展覧会の主役は、曽我蕭白。独立したコーナーに、作品がたっぷり展示してあり、堪能できます。「楼閣山水図屏風」は、色を使うリアル表現とはまったく異なる、モノトーンの風景表現の極地ではないかと思います。山水画というと無駄を省いた様式美の印象がありますけど、この屏風は密度が高く、濃厚です。人物の表情がかわいく、赤塚不二夫や川崎のぼるの絵みたいな屏風画もあり、現代の漫画に通じるものを何か感じました。ハイライトは、なんと言っても「雲龍図」。ばばーんと大迫力なんですけど、龍の顔をみてるだけで、肩のちからが抜けてきます。蕭白のコーナーは、ニコニコしながら楽しんでほしいです。美術品を観るというより、漫画を見る気持ちで。観てると自然にニヤニヤします。自分のような素人でも楽しめるって、絵のちからが強いんだと思います。蕭白、いっぺんに大好きになりました。
平日に行ったにもかかわらずお客さんがいっぱい。人疲れしてしまいますけど、あまりあるほど素晴らしいコレクションです。ぜひ本館も観てほしいです。国宝、重文がゴロゴロしてますし、お客さんも少なく、ゆっくり観られます。特別展は6月10日まで開催中。オススメです。