先日つくばに行きましたら、銀杏がすっかり黄色で、秋の深まりを感じました。今週末、小金井公園も色づき始めました。
クリスマスマッチの会場がユアスタに決まって、天皇杯機運が高まるなか、そういえばリーグ戦もあったね、と思い出しましたw。湘南戦です。アウェイでは悔しい逆転負けを喫していますから、連敗するわけにはいきません。
すべては、ネマニャんによるネマニャんのための試合になりました。90分間の低調な試合内容に消沈していた青赤サポを、アディショナルタイムの一発でいっぺんに笑顔にしてくれました。
東京は、天皇杯大宮戦でよかったたまを今日もスターターで使います。代表遠征帰りの秀人のコンディションも考慮したんだと思います。ヨネの相棒はアーリア。前線は天皇杯と同じ布陣で、トップ下はルーカスです。
結論を言うと、同じ布陣が続けて通用するほどJリーグは甘くはないです。そもそも大宮と湘南は、戦い方が違いますから、この時期に選手のコンディションだけで布陣を選んだのだとしたら、ちょっとナンセンスだと思います。湘南はオーソドックスな3-4-3。オーソドックスとは、ポポさんが萌えるミシャ的な3バックではないという意味です。GKはアレックス・サンターナ。PKのパフォーマンスが楽しみでしたけど、今日は無し。3バックは、真ん中に大野で左右に鎌田と島村。ボランチはハン・グギョンと永木。WBは右に古林、左に高山。アタッカーは、右に武富、左に菊池。1トップはウェリントンです。
湘南の戦い方が、この試合を形作りました。湘南の立場は、まずは勝つしかない状況です。今日甲府が勝つか引き分け、もしくは湘南が負けるか引き分けで、湘南の降格が決まります。ようするに他力ですけど、勝つしかない。こういう状況下での作戦は、監督のキャラクターで両極端になると思います。曹さんの選択は、コンサバティブな作戦でした。湘南はリトリートします。キックオフには、WBを下げて5バックで入りました。ウェリントンだけ前に置き、5-4-1の3ラインを作ります。ただ、見た感じこの布陣に熟れているわけではないようでした。真ん中の4枚の距離が微妙に開き、両ボランチの脇にスペースがあります。東京にとって狙い目に見えましたけど、これが罠でした。湘南は東京をサイドにおびき寄せます。湘南がリトリートしますから、たまと慶悟にボールが入ります。でも、湘南の守備はここからが非常に堅かったです。東京はインサイドに基点を作る攻撃を得意としますけど、内側にボールが入ると、湘南の圧力が高まります。
東京は湘南がリトリートすることは予見していたようで、序盤はロングボールで打開しようとします。逆に湘南も、東京のロングボールを予見していたのでしょう。そのためのリトリートだと思います。ショートパスだろうがロングボールだろうが、引いた状態であればゴール前の状況は変わりませんから。結局、5枚で作る湘南の守備網を、ロングボールの手をかけない攻撃でも崩せません。もう一つ曹さんのリトリートの意図は、チームを落ち着かせたかったんじゃないでしょうか。勝たなければいけない状況では、どうしても攻撃に重点が置かれますけど、試合は90分間ですから。まして東京相手に90分間攻め続けられるチームであれば、今この順位にいませんから。逆に、ワンチャンスを狙う自信はあったんでしょう。サッカーとは得てしてそういうものですから。
曹さんの作戦がはまって、序盤から湘南の意図通りの試合展開になります。東京の攻撃を封じられることを確認した湘南は、15分を過ぎる頃から少しづつモードチェンジをします。本来湘南は、獰猛な攻撃的なチームです。隠していた牙を剥き始めます。狙いは、まずは宏介の背後です。顕著なのは、古林のポジショニングです。序盤の古林は最終ラインに張り付いていましたけど、東京の攻撃を測った後は、本来のアグレッシブな位置にポジショニングします。湘南の攻撃ルートは2つ。まずはウェリントンのポストです。序盤はこれが多かったです。東京に攻められますから、ゴールキックからのターンオーバーが多いのは必然です。ウェリントンのポストは、尽くモリゲに阻まれました。ひょっとすると、これは湘南としては折込み済みだったかもしれません。
もう一つのルートが、中盤でターンオーバーしてからのビルドアップです。古林は、この形が出来るようになって活きました。湘南は、リズムが安定してくると中盤の守備で仕掛けるようになります。東京が後方でボールを持つとグギョンと永木がセット。中央をしっかり固めて、東京をサイドにおびき寄せます。WGにボールが入ると、ダブルチーム、トリプルチームを仕掛けます。これでパスミスを誘引。ターンオーバーです。湘南の右サイドアタックは、古林をできるだけ高く位置取らせることを思考します。このため、サイドチェンジを使います。左で作っている間に東京を押し下げ、ボランチを経由して右に持ち出します。この時、永木もしくはグギョンが古林の後ろに寄り、基点になることで宏介を引き付け、古林を押し上げます。古林は長めのボールが蹴れるクロッサーです。もしもう少しクロスの威力が高く、中央のアタッカーが競合いに強かったら、湘南は十分J1で通用する攻撃力を持てたでしょう。
右の攻撃が活性化することで、東京の攻撃を幾分か抑制します。東京が受ける時間ができます。これを見て、湘南はまた一つギアを上げます。左の攻撃を開始します。左は高山です。高山はドリブラーです。徳永との1on1からマイナスのクロス。あるいは、ドリブルインしてからのシュート、ラストパスが魅力の選手です。古林とはテイストの違うアタックを左サイドで展開します。左右のサイドアタッカーを活かすため、永木、グギョン、菊池がフォローします。とくに、ボランチのコンビは面白いですね。永木とグギョンは動くボランチです。片方が動けばもう片方はバックアップします。この連携が高い精度で出来ることは、湘南の強みでしょう。あと少し、二人ともパスの威力が増せば、より危険な香りがする中盤に変わると思います。
東京はまったく打開策を見いだせないばかりか、時間を追うごとに状況は悪くなります。唯一の救いは、ルーカスのキープ力。ルーカスがボールを持つことで湘南を引き付け、さらにその囲みを突破してチャンスを作ってくれます。が、残念ながら活かせません。東京得意のアタックは、縦横柔軟なタベーラです。けして独力突破で打開するようなチームではありません。攻撃のバランスが崩れるんでしょうね。厳しいことを言えば、結局の所、2年かけても引いた相手を崩すだけの威力を持った攻撃を作れなかったことが、成績に覿面に現れているということです。足りないものは何か、来年に向けてしっかりと考え、議論して欲しいですね。
前半は完全に湘南にオーガナイズされてしまいました。スコアレスのまま前半終了。
前半があまりにも酷かったので、後半頭から何か手を打ってくるかと思ったのですけど、とくに動きはなし。戦い方も変わりません。湘南も、前半のような様子見はなく、よって湘南が攻めます。いっそう攻め手がダイナミックになったような印象です。曹さんは、ギアを一つ上げます。武富に代えて亀川を投入。湘南のなかで唯一機能し切れていなかったのは武富でした。亀川を左WGに持ってきて、好調の高山を一列上げます。菊池を右アタッカーに置きます。これが奏功します。東京に攻めさせてカウンターという形が取れるようになり、湘南は広いスペースを使って攻めるようになります。これで、高山の脅威が増します。そしてその流れのなか、先制されてしまいます。
後半21分。右サイドで永木のパスを受けたグギョンが、なぜかバイタルエリアにいた大野にパス。この時ゴール前にはウェリントン、高山がいて、モリゲ、ヒョンス、徳永が見ています。やや下がり目の菊池にはヨネ。グギョンにはアーリア。グギョンの前方タッチライン際には古林がいて、慶悟がつきます。大外に亀川がいて、これはフリーです。グギョンの後ろに永木がいて、ルーカスが見ています。東京は千真以外、全員が自陣にいる状態です。おそらく、古林が慶悟を引っ張り、グギョンがサイドに流れることでアーリアを引っ張ることで、バイタルエリアの東京の守備をルーズにしたんだと思います。そこにいたのが大野という意外性。余っていたのは宏介ですけど、ラインを崩して大野につくべきか、迷うところですね。グギョンのパスを受けた大野は、大きくインサイドにトラップ。これが効果的でした。宏介の寄せをこのトラップでかわし、前方の菊池とタベーラ。菊池の戻しを受けた大野は、ダイレクトスルー。そこに、アーリアを振り切ったグギョンが上がっていました。宏介が大野につき、ヨネも菊池に寄せ、モリゲは中央を守っていますから、宏介の背後はガラ空きです。そこに大野が入れたスルーをグギョンが受け、ダイレクトシュート。これは権田が弾きます。こぼれたボールが高山に。高山はダイレクトで叩き込みました。東京0-1湘南。
失点後、ポポさんがようやく動きます。たまに代えて秀人を投入。アーリアを一枚上げて、ルーカスを右サイドに持ってきます。先制されると目が覚める東京のイメージがあって、なんとなくすぐ追いつくような気がしていたら、直後に同点ゴールが生まれます。
後半23分。湘南陣に東京が攻め込みます。モリゲがオーバーラップした後のポジションにヒョンスが回り込み、中央の秀人からパスを受けます。ヒョンスはルックアップ。目の前に慶悟。左に宏介。最前線に千真とルーカス。バイタルエリアにアーリアがいます。秀人を入れると、ヒョンスのパスコースは6つ。ヒョンスの選択は、アーリアでした。ヒョンスはアーリアに預け、そのままオーバーラップします。アーリアはダイレクトに、ダイナミックなタベーラ。この時湘南は、バイタルエリアの守備網がガタガタです。永木とグギョンが縦に並んでいて、脇にギャップがあります。古林がヒョンスに寄せ、鎌田がやや中途半端に前に出ていて、結果、右サイドにスペースができます。そこをアーリアが狙います。アーリアがワンタッチで落としたパスはヒョンスに入り、ヒョンスはダイレクトショット。これが島村に当たり、サンターナの逆をつきます。やっぱり東京はタベーラですね。これほど縦に長いタベーラは初めてみました。ヒョンスならではのプレーです。東京1-1湘南。
中央に軸が欲しいなと思っていましたら、東京は千真に代えて相太を投入します。と同時に、3バック、2トップにします。アーリアをボランチに戻し、慶悟がトップ下。ルーカスと相太の2トップです。これで試合がダイナミックに動き、ノーガードの打ち合いの様相を呈してきます。
湘南も一度攻撃の火が入ってしまいましたら、なかなか消せるものではありません。守備陣と前線のコンセンサスにギャップが出来ても不思議ではありません。少し縦に間延びするようになります。曹さんはイケイケを選択です。2枚同時交代です。鎌田に代えて梶川、菊池に代えてステボを投入。ウェリントンとステボの2トップ。梶川がトップ下。亀川が3バックに下がります。高山のドリブルに加え、ステボの高さが加わりますので古林のクロスが脅威を増します。さらに梶川が中央でつなぎ、チャンスメークします。お互いにオープンな打ち合いになり、ようやく試合は面白くなってきました。
ポポさんがようやくようやく攻撃のスイッチを押します。ルーカスに代えて、必殺仕事人、あるいは藤枝梅安、リーサルウェポン、ようするにネマニャんを満を持して投入です。そして、つまんないミステリードラマは、最後に最後に大どんでん返しのクライマックスを迎えます。
後半アディショナルタイム。東京のカウンター。ヨネからのパスをバイタルエリアで受けたアーリアは、大野と梶川の寄せをワントラップでかわし、無理な体勢から左足で前方にロブ。このボールが、大野が飛び出した背後にポトリと落ちます。そこにネマニャんが走り込んでいました。さあお待ちかね。ネマニャん劇場ひとり舞台の開幕です。ネマニャんはトラップしつつの軽い右足裏ワンフェイクでボールをコントロールし、追ってきた古林を転倒させます。サンターナと1on1になったネマニャんは、サンターナの動きを見て、冷静にゴール右側に流し込みました。スーペルゴラッソ。東京2-1湘南。
出場してわずか3分でゴールしたネマニャンは、まるでウルトラマンみたいですねw。千両役者が値千金の必殺ゴールを上げ、味スタは瞬時にお祭りになりました。クライマックスから一気にグランドフィナーレ。このまま試合終了。東京2-1湘南。
それにしても教訓の多い試合でした。勝ってこそ教訓も意味がありますから、勝ってホントに良かったです。これから先、リトリートが予想されるのは、天皇杯ベスト8の仙台です。今日の湘南は、ある意味我慢しきれず攻勢に出てくれましたから、時間はかかりましたけど逆転の要素は見えていたかもしれません。仙台は幾分試合巧者です。スコアレスというギャンブルも選択肢として有り得ますし。引いた相手を崩す術を、もう一度再考してほしいです。
苦しんだ分だけ、ジリジリした分だけ、つまんなかった分だけ、勝利の喜びが大きい試合でした。ネマニャんにすべてを救われた試合でした。これでサポも選手も笑顔になれるんですから、それでいいんです。あらためて、ネマニャんの威力を確認できましたから、天皇杯に向かって弾みになります。
元旦のアディショナルタイムにネマニャんが決勝ゴールを決め、東京全員で泣き笑うシーンを想像したかたも多いんじゃないでしょうか。この選手、スタッフで、一緒にタイトルを取りましょう。