ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J2リーグ第16節松本山雅vsギラヴァンツ北九州@アルウィン20160604

2016-06-05 18:36:41 | サッカー

6月とともに梅雨がやってきました。ジメジメして体調を崩しやすくなりますから、皆さまくれぐれもご注意ください。

ACLの傷を癒すために東京がお休みの週末、俺たちの中央線をスーパーあずさに揺られてやってまいりましたのは、毎年恒例にしています松本でございます。

これまではなにがしか観光を絡めていたのですけど、さすがに毎年訪れるとご近所感覚になります。同じ中央線沿線に住んでますし。まだ、おひさまの重要なシーンで一箇所行ってないロケ地があるので訪れてみたいのですけど、車がないと無理なのでまた今度。

と言いつつひとつ無念なことが。後で教えていただいたのですけど、ついこの4月に松本ブルワリーさんがオープンされたそうで、信州に新しいクラフトビールが誕生しました。生まれたてのお店でクラフトを楽しむ至福を味わうことができたのに(T_T)。

でもやっぱりメインは山雅。松本の奇跡を定点観察しに、今年もやってまいりました。アルウィンでございます。

ちょうど本日はEPSONスペシャルマッチということで、EPSONナカジマレーシングがいらしてました。残念ながら中嶋大祐選手とデモ走行を見ることはできなかったのですけど、スーパーGTファンとしては嬉しい、HONDA NSX CONCEPT-GTを観ることができました。

最初ガンズくんがひとりでPRしてたのですけど、しばらくしてEPSONナカジマレーシングレースクイーンの秋月さんと鈴木さんが華を添えてくれました。

本日の相手は北九州です。ひさしぶりに本山選手のプレーを観たいというのも、GTカーとレースクイーンを観たかったのに加わる、今日の試合を選んだ理由でございます。中央線♪FLAGS♪

山雅のすっかり様変わりしたサッカーに驚かされ、90分を堪能できました。最後北九州に追い立てられましたけど、山雅が逃げ切りました。

山雅はベストメンバーです。シフトは3-4-2-1。GKはシュミット・ダニエル。3CBは右から當間、飯田、喜山。ボランチは岩間と宮阪。WBは右にはゆま左に竜太朗。2シャドウは右にウィリアンス左に工藤。1トップは高崎です。

北九州も最近のメンバーを踏襲します。シフトは中盤ボックス型の4-4-2。GKは阿部。CBは前田と刀根。SBは右に星原左に石神。ボランチは加藤と風間。メイヤは右に小手川左に花井。2トップは一樹と塁です。

山雅は今年初観戦になるのですけど、シーズン前から心配がありました。ひとつはJ1を経験したことが負の要素として働くバーンアウトがないかということ。もう一つは岩上の移籍の影響です。ただ後者に関しては、とても良い補強をしたと思います。岩上がいなくなる影響としてもっとも大きいのは、なんと言ってもセットプレーです。山雅の攻撃における重要な得点源はセットプレーですので、直接間接問わず、岩上の右足が幾たびも山雅に歓喜をもたらしてきました。岩上ロスは簡単に埋まるものではないと思っていたら、クオリティにまったく遜色ない宮阪を獲得しました。このひとつをとっても山雅のフロントを含めたチーム力と、Jリーグのなかでのステータスが上がってきていることを感じます。

さらに山形からは當間も獲得していて、前線にも鹿島から高崎が加入しています。これまで山雅は、どちらかというとポリバレントな選手で編成していた印象がありますけど、高崎、宮阪、當間が加わることで純然たるスペシャリストが各ポジションに揃ってきました。これでコンビネーションの幅が広がる可能性が見えてきていると思います。

それを証明するかのように、山雅のサッカーは驚くべき進化を遂げていました。山雅を観るのは半年ぶりくらいなのですけど、わずかの期間に、まったく別のチームになったかのようです。それがバーンアウトを予防する反町さんのメソッドなのかもしれません。目標を失うことは組織にとって危険なことです。J1復帰と口では言ってもそれは目標になりません。復帰するための具体的な手段をチームで共有できなければ画餅になるだけです。その一つは、編成です。選手が手応えを感じられる編成を揃えることです。宮阪を加えた最大の効果はそこにあると思います。セットプレーでの優位性を保つという方向性にブレがないことを選手にメッセージすることができたと思います。

ただそれだけでは、もうひとつの選手が抱きやすい疑念を晴らすことができません。J1を降格するには理由が必ずあります。それはサッカーのアプローチです。おなじやり方をしていたら、たとえ再昇格できたとしてもエレベーターチームに甘んずることは明白です。このような立場のチームは必ず疲弊します。J1を見てしまった以上、そこに定着したいという意欲が生まれるのは必定でしょう。客観的に見ても、山雅のような地元との幸せなつながりを作ることができた、Jの理念を象徴するような奇跡を持つクラブは、この国の最高峰のリーグに居続けて欲しいと思います。そのためにも、新しいサッカーに取り組む必要があるのだと思います。

つまり、最も変わらなきゃいけなかったのが反町さん自身だったのでしょう。原則として独立事業主の監督が成功の方程式を自ら捨て、新たなチャレンジをすることはとてもとても勇気がいることだろうと思います。今日の山雅のサッカーを観て、まずそのことを感じました。

新潟と山雅で見て来た反町さんのサッカーは、とてもリアリスティックなものでした。限られた編成のなかですから、もちろん反町さんを象徴するスカウティングで上積みする部分はあろうかと思いますけど、選手のクオリティの差を埋める手段は、基本的にはガテン系であり続ける以外にはありません。たしかに岩上、喜山、はゆま、かつては船山など、J1でも差異になり得る選手が出てきましたけど、それは闘いのなかで生まれた副産物です。もちろんそのような選手たちの努力と責任感に敬意を思うのですけど、有体に言うと、J2のなかでもそれほど編成が充実しているほうではありません。今日の対戦相手の北九州と比較しても、とりたてて極端なクオリティの差を感じません。編成がそれほど変わらないなかでも一気にJ1まで昇り詰められたことは、ロマンチックに見ると奇跡なのですけど、その反面、とても異質なサッカーを強いられることでもあったと思います。それをやり遂げた選手たちですから、ひとつ間違うと簡単にバーンアウトする、とてもセンシティブな状況になっていたことは想像に難くはありません。

反町さんの答えは、ご自身のサッカーを変えることだったようです。つまり、ガテン系サッカーからモダンサッカーへの変質です。これは言葉で言うほど簡単なことではありません。変質といよりも変態に近いほどのドラスティックな改革です。それこそ監督、選手、スタッフのすべてを入れ替えたくらいのインパクトがあります。かつて、いくつものチームがガテン系からモダンに変わろうとして、そのほとんどが失敗、あるいは迷走をします。チームによっては、深い闇からいまだに抜け出せないところもあります。それほどの危険なチャレンジではあっても、山雅を迅速にふたたび上昇気流に乗せるためには不可欠な事業だったのでしょう。

決心を促した理由のひとつには、自信もあったと思います。それがJ1を経験した財産だと思います。昨年の山雅は、ある程度ポゼッションをすることができていました。このことで、J1のレベルであっても技術的な優位性を持つ時間帯を作ることができるという確信が得られたと思います。今日の山雅の選手のプレーで感じたのは、なによりも落ち着きです。これは自信の現れだと思います。落ち着きがあるので、プレーがとてもスムーズに見えます。止める蹴る寄せるなどの基本がきっちり淀みなくできるので、エレガントにすら感じます。

というわけで、山雅はすっかりモダンなサッカーに変わっています。そして、既に完成度が高いです。北九州を名実ともに圧倒します。まず守備が、そのコンセプトから180度変わっています。守備こそが山雅のガテン系を象徴していました。前線からのハードプッシュで全員がボールを追いかけ回す、フォアチェックを主体とするコンセプトでした。コンタクトは非常にタイトで、それによって相手のプレーの選択肢を狭め、中盤の高い位置でのトランジションから、シュートあるいはFKのチャンスを獲得するのが狙いです。

今の山雅の守備コンセプトは、リトリートスタイルです。一言でいうとリトリートですけど、モダンリトリートです。狙いは基本的には変わらず、中盤高い位置でのトランジションで、守備と攻撃を連動させることです。ですが、ボールを奪うプロセスが昨年までとはまったく異なります。そもそもボールの奪いかたがとてもエレガントになっています。まず、基礎として、中盤の選手の守備技術が向上しています。とくに岩間。J1でプレーしても遜色ないほど、守備エリアが広くなっていますし、コンタクトの雑さと荒っぽさがなくなっています。それでいてタイトな状況でもボールをサラッと奪い取るシーンが再三見られました。もしかしたら、無理なくボールを奪うコツをつかんだのかもしれません。もともとフィジカルに恵まれていますからそこに優位性を置いていたのだと思いますけど、今の岩間は、むしろテクニックが優位性の源泉になりつつあると思います。完全にブレイクスルーした印象ですし、もっと上を目指せすこともできるかもしれません。

岩間を中盤を構築する際にアイデアの軸とすることで、他の中盤の選手の動きがシンプルになり、故にチームとして守備の連動が洗練されているのだと思います。山雅は守備の際は、5+4の2ラインを敷きます。中盤は、右にウィリアンス左に工藤が入ります。昨年同様守備網はとてもコンパクトで、ボールサイドに寄せて守備網を前後左右に動かします。トランジションポイントは、中盤のサイドエリアです。高崎のチェックで方向付けをして、北九州が左右のメイヤに入れるかたちを促します。ここが山雅が最も変わった最重要ポイントです。モダンサッカーはとてもロジカルかつタクティカルなもので、そのコンセプトは美しくかつ省エネであること。守備におけるそれは、相手にクモの糸をかけ、トランジションポイントに誘引することです。山雅のエサ取り場はトライアングルを作る中盤のサイドです。そこに相手のパスを誘い込むように、守備の初動から罠を仕掛けます。高崎の方向付けもそうですけど、中央の配置をタイトにしてその分サイドをあえてフリーにすることや、相手にボールを回させつつジャブのような細かなチェックでパスコースを限定させるなどの罠を仕掛けることができるようになっています。アルウィンで、山雅が綺麗な中盤のトランジションを見せた時拍手が起こるようになっています。チームだけでなくサポも変質しようとし、今のサッカーを望んでいることの現れのような気がします。山雅に山雅イズムが生まれる前兆のような気がして、さらなる山雅の奇跡を想わざるを得ません。

攻撃も進化しています。見た目には攻撃のほうが進化が分かり易いです。ガテン系時代の攻撃は、もっぱらショートカウンターでした。ただそこにもアイデンティティがあって、ショートカウンターながら、トップとシャドウだけでなく、ボランチとWBも果敢に攻撃に絡む、豊富な運動量なればこそ成し得るスタイルでした。それに対し今のスタイルは、これまた美しくかつ効率的です。ポイントとなるのは工藤です。昨年までのシャドウは、主体的に仕掛けができる選手がチョイスされていました。岩上しかり直輝しかり。工藤の役割は、バイタルエリアで基点となることです。前半はライン際に流れることが多かったと思います。これは山雅の攻撃でのストロングポイントとして竜太朗が期待されている現れだと思います。中盤の左にいる宮阪も絡み、左サイドの局面で数的優位を作ります。

変わって右サイドは、ホントはウィリアンスを走らせたいのだと思います。でもまだ、後方のパスの出し手、あるいはハブとなるはゆまとの意思疎通が合ってないようです。飯田、岩間、當間からの右奥への長いボールがミスのように見えたのは、ウィリアンスが走り込むことをイメージしたものだと思います。呼吸が合うようになれば、左右違うパターンのサイドアタックが成立しますから、山雅の攻撃はさらにバリエーション豊かにパワーアップするでしょう。ウィリアンスは案外守備もうまく、ホスピタルパスを狙ったインターセプトもできます。今日は二度も自ら作ったビッグチャンスがありました。

一方北九州は、成績がかんばしくない割にはおっとりしたサッカーをしています。まだチームを構築している段階で、慌てることはないということなのかもしれません。新スタジアムが出来上がるので、そうも言ってられないとは思いますけど。闘いかたはとてもオーソドックスです。スクエアな4-4-2のシフトが示す通り、守備も攻撃も奇異なところがありません。それゆえに、ストロングポイントをどこに置いているのか、見出し難いサッカーでもあります。

守備もとてもオーソドックスで、4+4の守備網をコンパクトにしたリトリートスタイルです。ただ、その前提である選手間のゾーンの連携がまだ未整備です。このプランにありがちな、ポジショニングを意識することを優先してフリースペースが見えない状態になっているようです。山雅の攻撃で工藤が躍動した理由のひとつはそこにあります。北九州は、とくにバイタルエリア中央のゾーンがルーズです。リトリートスタイルは、試合序盤の連携に難があるのが特長で、故に試合のなかで選手自身がアジャストする必要があるのですけど、北九州にはまだそのような戦術眼が備わってないように見えます。

攻撃もこれまたオーソドックスです。サイドアタックを基調とするビルドアップスタイルです。右は小手川左は花井が基点となって、全体を押し上げようとします。前線の二人は役割分担があるようです。塁は中央にデンと居て、アタッキングサードでの二次基点を担います。一樹は塁を軸に左右にダイアゴナルに動き、裏を狙い続けます。これに、メイヤを基点にSBのオーバーラップと逆サイドのメイヤが加わり、クロスに対しゴール前に2、3人を備えるプランだと思います。

序盤のジャブの打ち合いでは、北九州の重心もそれなりに高かったのですけど、次第に山雅にイニシアチブが傾きます。それを成したのは、中盤のエレガントなトランジションと工藤の安定感です。そして、流れを完全に山雅にもたらす先制ゴールが生まれます。

14分。宮阪の右CK。ゴール中央に落としたクロスは阿部が弾きます。カウンターをケアしていた岩間が拾います。岩間は花井の緩い寄せを見て、大きく前に蹴り出します。花井を一気に抜き去り、ペナルティエリア角に至りますけど、北九州はクロスと読み、誰も岩間をケアしません。ゴール前は逆に、工藤、當間、飯田、高崎がいますけど、ラインが五枚揃っていて、4on5の数的不利です。北九州はストーンも三枚あり、万全です。ルックアップしてこれを確認した岩間は、クロスを諦めます。右に持ち替えシュート体勢に入ります。慌てて北九州が寄せますけど、時既に遅し。おそらく本人も含めてアルウィン全体がまさかと思ったシュートは、阿部の手をかすめて決まります。山雅1-0北九州。

ここではやばやと柱谷さんが動きます。星原に代えて寺岡を同じく右SBに投入します。星原は何度か攻撃参加をしていましたけど、それよりも工藤を軸とした山雅のサイドアタックに手を焼いていたので、守備を安定化するためにCBタイプの寺岡にチェンジしたのでしょう。でもこれで山雅の攻勢が止まることはありませんでした。右SB単独の問題というよりかは、北九州の守備網の連携の問題に見えたので、簡単に対処できるものではなかったでしょう。

ただ、山雅のほうにも不安材料があったような気がします。ピッチ内でも再三はゆまとウィリアンスが動きを確認してましたし、飯田と當間もウィリアンスに要求している様子が見えました。反町さんからも何度かウィリアンスにポジショニングの指示が出ていて、もしかするとまだウィリアンスはフィットし切れていないのかもしれません。たしかに守備モードに切り替えるときに中盤の右に入るのが遅れるシーンが度々見られました。攻撃の際も、前述の通りパスの出し手とウィリアンスの意図が合わないことがありました。言い換えるとそれは山雅の伸び代だと思います。

柱谷さんの打ち手も奏功せず、山雅がイニシアチブを持ち続けた前半は山雅リードのまま終了。

後半頭から柱谷さんがアジャストします。一樹と花井のポジションを入れ替え、花井をトップに回します。花井がある程度ボールを持てていたので、より高い位置で基点役を担わせようとしたのだと思います。さらにドリブルもある一樹をサイドに出し、独力でアタッキングサードまで運ぶことを期待したのでしょう。でも相変わらず山雅が中盤を支配していて、北九州の重心が上がらないので、このプランも効果を見ません。

ここで北九州にアクシデントが起きます。前田が負傷で下がります。代わって本山が右メイヤに入ります。寺岡がCBに入り、小手川が右SBに回ります。前田の退場は計算外だろうと思いますけど、本山投入は既定の通りなので、守備バランスの不安がありつつも、チーム全体に大きな影響があろうとは思いませんでした。すでに寺岡が試合に入っていたこともあって、北九州に幸いなことに、バランスは崩れません。

ボールを持てる本山が入ることで、右サイドで基点が作れるようになると思いました。でも、北九州のアタッカーは動きに連動性が感じられず、選手間の距離も遠いので、中盤サイドにボールが入っても前方に運べません。山雅のコレクティブな守備がますます冴えるなと思っていると、それを後押しする追加点が生まれます。

61分。ふたたび宮阪の右CKから。山雅はゴール前に縦陣を作ります。ゴールに近いところから高崎、當間、ウィリアンス、飯田、喜山。ニアに竜太朗、ゴール前に工藤を置きます。北九州はストーンをニアに一枚置いて、フルマンマークです。宮阪のキックモーションと同時に、山雅がブレイクします。喜山がニアに走ります。高崎は中央に飛び込み、ウィリアンスが後ろからフォロー。ファアも縦二枚で、前に當間後ろに飯田。宮阪の狙いはファアでした。山雅の罠は、喜山のニアをブラフに使い、中央の四枚のどこが狙いなのかを北九州に絞らせないことだろうと思います。北九州はこれに対しフルマンマークを敷くので、プラン通りなら問題ありません。ただこの時、當間のマーカーの加藤だけが當間を一瞬見失います。當間が特別な動きをしているわけではなく、スクリーンもいないので、もしかしたら加藤は手前の高崎に釣られたかもしれません。いずれ謎です。そして北九州にはまんが悪いことに、山雅にとってはラッキーなことに、よりによって加藤が見失った當間が宮阪のターゲットマンでした。當間はやや遠目の宮阪のクロスに美しいダイビングヘッドで合わせ、J2リーグ通算100試合出場を自ら祝うとともに、奥様への素敵なプレゼントになりました。山雅2-0北九州。

これを受け、柱谷さんが動きます。左右のメイヤ、本山と一樹を攻撃時にバイタルエリア中央に絞らせ、並べます。あまり見ない奇異なかたちをとります。意図はちょっと読み解けなかったのですけど、これで北九州の攻撃が活性化して、アタッキングサードで過ごす時間が増えます。メイヤをサイドに張らせると孤立感があったので、無理矢理にでも距離を縮めようとしたのかもしれません。あるいは、山雅の中盤の守備陣に中央を意識させ、小手川と石神の攻撃参加を促そうとしてのかもしれません。

直接的な効果は分かりませんけど、塁と花井のポストが安定してきます。追加点が入った山雅が守りの体勢に入ろうとしていたので、リトリートによって重心を下げ過ぎたようにも見えました。このためそこまでのような中盤の支配力が弱まります。

そこで反町さんが動きます。ウィリアンスに代えて武井をボランチに投入します。宮阪が右シャドウに回ります。右サイドの守備力を強化しようとしたのだと思います。

ところが山雅はこの交代による守備バランスのアジャストに少し時間がかかります。北九州にサイド深くに侵入されるようになります。そしてその流れから失点します。

79分。風間の右CK。北九州のセットプレーは独特です。ゴールエリアの狭いスペース内に六人を入れるごちゃごちゃ大作戦です。当然山雅も六人をゴールエリアに揃える必要があります。さらに山雅はニアにストーンを一枚置くので、ゴールエリアは計14人の超過密状態。山雅はニアがゾーンでファアがマンマークのハイブリッドシステムです。北九州の狙いは、基本的には放り込んだらままよどうにかなりまっしゃろでしょう。これを90分間数回あるCKの度にやられたらちょっと嫌ですね。ただし、北九州にはちゃんとパターンがありました。ターゲットは一番ファアにいる一樹です。その手前にいる刀根、小手川、塁、花井、本山は全員ブラフ。風間はゴール中央にポトリと落とすクロスを送ります。このスペースを空けるべく、北九州のアタッカーが山雅の守備陣を引き付けてボールから離れる動きをします。そこに、喜山を細かいフェイクで引きはがした一樹が入り込みます。一樹は半ば強引に右足で押し込みました。山雅2-1北九州。

これを受け反町さんが動きます。宮阪に代えて大貴を右シャドウに投入します。これは宮阪のコンディションを考慮したのだと思いますけど、セットプレーのキッカーを失うことですから、逃げ切りを考えてのことでしょう。その上でアタッカーを選んだことは、攻守のバランスを守備過重にし過ぎないように注意を促すメッセージだと思います。

同時に柱谷さんが動きます。花井に代えて池元を左メイヤに投入します。ふたたび一樹がトップに回ります。ドリブルでの単独突破を前線に味付けする意図だと思います。さらに中央に絞ったメイヤがダイアゴナルに逆サイドに飛び出す動きを見せはじめます。山雅の守備網をかく乱しようとしたのでしょう。

以降は、山雅が北九州の攻勢を受け続けます。サッカーを変質しようとしている代償とまではいきませんけど、不可避な課題のひとつは、試合の終わらせかただと思います。今日のように逃げ切りを図る試合はこれからも何度もあるでしょうけど、中途半端に受け過ぎないような注意が必要になると思います。守り切るならもっと守備網をコレクティブにする必要がありますし、セットプレーの安定性もまだ課題だと思います。

最後に反町さんが動きます。工藤に代えて石原を同じくトップ下に投入します。これは工藤のコンディションを考慮したのでしょう。前線に走れる選手を置いて、カウンターの脅威を北九州に感じさせる意図だと思います。

北九州に押し込まれはしましたけど、山雅は流れのなかでは集中を切らすことはありませんでした。このまま試合終了。山雅2-1北九州。アルプス一万尺♪

山雅のモダンスタイルへの変質は、山雅の過去の闘いかたと現在の編成のなかでは、とても現実的で合理的な変わりかたを選んだと思います。本格的なビルドアップスタイルに変えるとなると、攻撃での連動性がもっと複雑なものが求められます。スモールスペースにどんどん選手が入っていく、これまでの山雅のポゼッションのやりかたをそのままに、ボールを持って支配するかたちにマイナーチェンジするアプローチです。なので、攻撃に関しては混乱はまったく見られません。もしかするとシーズン序盤で苦しんだ時期があったかもしれませんけど、よくぞこの短期間でここまで仕上げたものです。

この闘いかたなら一定の安定感を持てると思います。ただ、コアな部分がわかり易い仕組みでもあるので、工藤、宮阪、竜太朗をピンポイントで抑えに来られた場合、攻撃が湿っぽくなる可能性はあります。やはりまずは、守備のルールをしっかり作って、チームを安定させることが肝要だろうと思います。

それにしても山雅の進化は、いちサッカーファンとして楽しみでなりません。毎年のようになにがしか変化を見せてくれますから、今度観るときは、もっと変わっているかもしれません。さらに驚かせてくれることを期待します。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿