細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『家族はつらいよ・2』またもや大悲劇に、大爆笑の家庭内戦争。

2017年04月23日 | Weblog

4月14日(金)13-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-046『家族はつらいよ・2』(2017)松竹映画<家族はつらいよ・2>製作委員会、住友商事、テレビ朝日、木下グループ、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ

監督・山田洋次 主演・橋爪 功、吉行和子・・<113分・シネマスコープ> 配給・松竹株式会社

昨年公開された「家族はつらいよ」は、ごく平均的にありがちな、東京郊外の沿線住宅地区の家族の3世代トラブルを、実に面白おかしく描いていたホームドラマで、好感を持った。

ひとつ間違えると、とんでもない家庭争議のもとになるような家内トラブルを、さすが「男はつらいよ」で驚異的なヒットシリーズを放った山田洋次監督は、さすがの人情手腕を発揮。

むかしなら同じ松竹映画の、あの小津安二郎作品にもよく見られた、ごく些細な夫婦や、その家族のそれぞれの感情のモツれを、暖かい視線で見つめた演出は、大ヒットとなったのだった。

で、まったく同じメンバーの家族構成による<パート・2>は、あの老夫婦の離婚騒動から、どうにか逃れて、ひとまずは家庭の平和を取り戻したかに見えた、また別のトラブルを描くのだ。

だから、あの前作を見ていないひとには、連続テレビ・ドラマのように、すぐにはフォローしきれないであろう<ボタンのかけ違い>はあるかもしれないが、ま、そこは勝手知ったる家庭の事情。

つまりは、もうみなさんご存知の前提で、この家庭内トラブルは発生し、海外旅行に出ている老夫人は別として、同居している長男夫婦とその子供達や、長女の婿養子のような関係は持続していく。

だからこそ、第一作を見ていると、見ていないでは、残念ながら、この作品の面白さと愉しさと、哀しみの度合いは、当然ながら、かなり違ってくるであろう・・・というのが老婆心。

後期高齢者の主人の橋爪は、傷だらけの自家用車の買い替えと、運転免許証の更新時期を迎えて、この最寄り駅からは遠い新興住宅地の地理的な命題で、どうしても愛車のトラブルは避けられない。

しかし家族は、その更新には怪訝な気持ちなのだが、たまたまドライブ中に、大昔の学生時代の同級生を見かけて、食事に誘い、昔話に花を咲かせるものの、その男は過去を語ろうとしないのだ。

よくある同窓生のクラス会というのは、自分に不利な事情の少ないメンバーが集まるわけで、人生行路を踏み外した同級生というのは、学生時代の後の話には、もう触れたくないもの。

そのもどかしさが、このパート・2のテーマでは敢えて持ち出して、その人生のギャップに苦笑するのだが、小津作品などでは、その<気まずさ>には、あまり触れなかった。

しかし残酷にも、山田洋次監督は、あの車寅次郎の毒舌と皮肉を、あえて<笑点>にしてしまうことで、ちょっとブラックなホームドラマとしてのおかしさと残酷さを見せつけるのだ。

 

■またしてもレフトオーバーの飛球だが、野手が返球で暴投してツーベース。 ★★★☆☆+

●5月27日より、全国松竹系で公開。


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