細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『マイ・インターン』の往年のマンハッタン・コメディの残香。

2015年09月08日 | Weblog

9月3日(木)10-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-111『マイ・インターン』" My Intern " (2015) Warner Brothers / Waybarry Films.

監督・ナンシー・マイヤーズ 主演・アン・ハサウェイ 共演・ロバート・デ・ニーロ <120分> 配給・ワーナー・ブラザース

実に懐かしくも、あの60年代のドリス・デイ都会喜劇映画が復活したような調子のいい本格ハリウッド・コメディで、オールドファンには嬉しい新作。

ニューヨークで引退していた元ベテランのサラリーマン、70才になったデ・ニーロは、カミさんに先立たれて退屈な隠居生活だったが、ふと、求人の広告を見る。

大体、停年退職した元サラリーマンは、もう同じ職場で働く気がないのは、もとは部下だった若造にこき使われるのが、どうもプライドが許さない。

わたしも60才で停年を迎えたとき、同じ企業でのステイ・ジョブも考えたが、まったくの別のセクションで、一から見習いをするのは、どうも抵抗があった。

しかし、いまでは、そんなエラソーな話しは通用しない。働ける体力があれば、夜勤ガードマンでも、コンビニの深夜店番でも、タクシー・ドライバーでも仕事はある。 

要するにそれは経済的な理由よりも、むしろ人格の問題だろう。この作品のデ・ニーロが偉いのは、過去の業績やプライドを完全に60才で捨てきったことだ。

だからこそ無欲に、老練デ・ニーロはマンハッタンのアパレルメイカーの<インターン>の受験に受かり、とりあえず雑用でスタッフのヘルパーとして働くことになった。

彼は現役時代のエリート・エグゼクティブだったので、相変わらず昔の体型を保ち、まさに60年代のロック・ハドソンのようなスーツ・スタイルで出勤する。

周囲の若造は、まさに自由な学生風のファッションだが、社長のアン・ハサウェイのアドヴァイスをしているうちに、見習いインターンの筈が、まるで知的ボディガードのように出世。

というのも、この新興メイカーは若い連中ばかりで、シニア・エグゼクティブがいないので、業界でも浮いていて、しかも多忙のために彼女のダンナは家事の専業主夫状態。

そこで<インターン>の筈のデ・ニーロは何かと社長の補佐として君臨して、ポジションも一気に上がり、とうとう社長の出張にもアシスタントとして同行するという出世街道なのだ。

さすがナンシー監督は、往年のケイリー・グラントのコメディのように、テンポよくおしゃれなマンハッタン・コメディとしての風味は見せるが、どうもハシャギ過ぎ。かな。

多分、ウディ・アレンが見たら苦笑して退席するだろうが、とりあえず、「プラダを着た悪魔」のレベルはクリアした味わいはあり、浮気騒動はともかくとして、大いに愉しめた。

パラマウント・コメディの秀作「先生のお気に入り」には及ばないが、久しぶりのマンハッタン・タッチは嬉しい。

出張先のホテルのベッドで、仕事疲れのふたりがジーン・ケリーの「雨に唄えば」のテレビを見ているシーンには、なぜか、ホロリ。

 

■左中間をゴロで抜けた当たりが、そのままフェンスへのツーベース。 ★★★☆☆

●10月10日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 


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