●7月24日(月)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-084『ベイビー・ドライバー』" Baby Driver " (2017) Tristar Pictures / Walking Title / Big Talk Pictures / Sony Pictures
監督・エドガー・ライト 主演・アンセル・エルゴート,ケヴィン・スペイシー <113分・シネマスコープ>配給・ソニーピクチャーズ・エンターテイメント
タイトルから、また「赤ちゃん教育」とか、「可愛い配当」のような、赤ちゃんをテーマにしたホーム・コメディかと早とちりしていたが、意外と評判がいいので最終試写に駆けつけた。
やっぱり、勝手に自分で作品を予想してしまうのは、よろしくないなーーーと、つくづく反省させられたが、これはタイトルからは想像を絶するギャング・アクション映画だった。
たしかに、昔は「ベビーフェイス・ネルソン」という、かなりタフな実在ギャングのハードボイルド活動写真があったが、これも<ベビー・フェイス>という異名を持つ凄腕逃走ドライバーの話。
話は、2010年に公開された、ライアン・ゴズリング主演の「ドライヴ」と同じような、とにかくドライブ・テクニックが凄腕で、ギャングの逃走カーの臨時運転をする若者が主演。
甘いマスクで、とくに取り柄もないような新人優男のアンセルを、ここでスターにしようとしたのか、まさに異例のキャスティングで組織の親玉のケヴィン・スペイシーが、ドライバーに抜擢だ。
ま、あのロバート・デ・ニーロだって、「タクシー・ドラーバー」でブレイクしたのだから、ここでアンセルがビッグ・スターに成長するかどうか・・・は、また別のはなし。
とにかくベビーフェイスのくせに、やたらクールで、アカデミー主演男優賞受賞のケヴィンと、ジェイミー・フォックスという名優ふたりが目の前で凄んでも、このアンセルは平然としている。
というのも生来の聴覚傷害の持病で耳が悪く、つねにビートのきいたロックンロールをイヤホーンで聞いていないと、精神バランスの取れないという、今風のキャラなのが個性的。
つまりこの、よくあるギャングの使い走りドライバーなのに、まったく銃器は持たないで悪事は先輩に任せて、ただただ好きなロックを聞いている・・というポーカーフェイスなのだ。
だから映画はかなり肝いりハードボイルドなギャング・アクション映画なのに、この若造ドライバーは善悪のモラルもないように、平然としてロックンロールで逃走ドライブをするという変人。
ドラマは、やたら凄む両オスカー俳優のハードボイルドな怒号で、昨今のギャング映画でも、ま、上等なサスペンスなのだが、この若造の聞いているロックが作品のBGMとなって暴走する。
シネコンの大きなスクリーンで、また大音響で見たら・・・快感だろうな、と思いつつ、これも2016年の映画としては、実に<ゲット・オン>している快作だと認めざるをえないだろう。
■痛烈なライナーが後退するセンターの頭上を越えて、悠々のスリーベース。 ★★★☆☆☆+
●8月19日より、新宿バルト9などでロードショー