細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ブルーム・オブ・イエスタデイ』で未だに拘るナチスの戦争犯罪。

2017年09月16日 | Weblog

9月6日(水)13-00 六本木<キノフィルム3F試写室>

M-103『ブルーム・オブ・イエスタデイ』" The Bloom of Yesterday " ( Die Blumen Von Gestern) (2016) Dor Film-west Production, Four Minutes Film

監督・脚本・クリス・クラウス 主演・ラース・アイティンガー、アデル・エネル <126分・シネマスコープ> 配給・キノフィルムズ

<昨日咲いた花>というようなタイトルの意味だが、これまた、あの第二次世界大戦でのナチスの行った地獄の虐殺時代の、あの悪夢の後遺症を、80年後の現代への投影として描いている。 

ナチスの戦犯を祖父に持った青年ラースは、いまもホロコーストの研究に熱心だが、同じ時代に被害者となった祖母をもつ若いインターンの女性に出会ってしまう、という皮肉。

一応は被害者と加害者の孫同士という不遇な関係なのだが、この二人の若い男女は、皮肉にも過去の悲劇の事実を研究するという過程で、運命的に出会って恋をしてしまう、というドラマだ。

それこそ、そのむかし、ジョシュア・ローガン監督の「サヨナラ」という日本を舞台にした奇妙なラブストーリーがあって、アメリカ軍の兵士が戦後の京都で芸者と恋をしたっけ・・・。

基本的には、まったくタイプの違った作品が、主人公の男女の置かれた敵対国だった不思議な関係は、ちょっと似ている・・かな・・と思いつつ見ていたが、こちらはドライで辛辣なコメディだ。

監督は、あの「4分間のピアニスト」という、実にシャープでドラスティックな映画を撮ったクリス・クラウス監督だが、この作品でも皮肉な歴史と人間の出会いを描いていて飽きさせない。

最近は「アイヒマンの後継者」とか、「アイヒマンを追え」、「ヒトラーの忘れもの」などなど、いまだにあのナチスやヒトラーをテーマにした作品が多いのは、それだけあの時代に拘りがあるのだろう。

しかしここでは、その歴史的悲劇の孫たちの運命的な恋ものがたりとしている部分がユニークでもあり、かなり皮肉をこめた大戦後の<ロミオとジュリエット>、的な関係にしたのだろう。

ま、それは面白いレトリックだし、運命的な悲喜劇として興味はあるものの、どうも主演の二人に、あまり魅力を感じない・・のは、わたしの<美男美女的趣味>のせいだろうか。

とくに中年男風のラースは、どうもヌーボーとしたダサ男で魅力がなくカッタルイという印象で、これも監督の狙いなのかもしれないが、2時間以上もつきあわされるのにはマイッた。

ちょっと、オフビートで、執拗な過去の戦争犯罪にこだわりのあるテーマがお好きな方は、ぜひ、どうぞ。

 

■ショートのエラーでボールが転々する間にセカンドを狙ってタッチアウト。 ★★★

●9月30日より、Bunkamuraル・シネマなどでロードショー