細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ガール・オン・ザ・トレイン』一時断片的記憶喪失の女性ミステリーの怪?。

2016年10月27日 | Weblog

10月18日(火)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-133『ガール・オン・ザ・トレイン』" The Girl on the Train " (2016) Universal Pictures / Dreamworks Pictures / Reliance Entertainment 

監督・テイト・テイラー 主演・エミリー・ブラント、ジャスティン・セロー <112分・ビスタサイズ> 配給・東宝東和

女性作家ポーラ・ホーキンズの書いた原作小説が、驚異的なベストセラーになって、45カ国で出版されたという、とんでもない元ネタの映画化というから期待した。

むかしからヒッチコックの「見知らぬ乗客」「バルカン超特急」や、アガサの「オリエント急行殺人事件」から、秀作「あの女を殺せ」,ジョニー・アリデー主演「列車に乗った男」などなど。

とにかく列車を絡めたミステリーには、わが松本清張の「砂の器」などまで、とにかく面白いテーマが多いので、このタイトルはミステリー・ファンの興味を大いにそそるのだ。

マンハッタンからロングアイランドに走る通勤列車は、よく映画のテーマになり、わたしもデ・ニーロとメリル・ストリープの「恋におちて」の、あの列車に乗ったことがある。

広いイーストリバーの上流に添って、あの「麗しのサブリナ」や「華麗なるギャッツビー」の豪邸が並ぶロングアイランドまでは、2時間足らずだが、マンハッタンへの通勤圏。

切符を前の座席の端に挟んでおくと、車掌が勝手にクリックしていくのは、あのグレゴリー・ペックの「灰色の服を着た男」と同様で、まさに通勤列車には<旅情>はない。

で、話は、離婚のショックでウツのようなメンタル危機状態のエミリーが、マンハッタンに向かう、その列車の車窓から、かつて自分が住んでいた家の辺りを眺めているが、あの家には別の女性の姿。

つい再婚した新しい元カレの家に、なぜか向かう途中から、どうも記憶を失った彼女は、あの過去の家の中で気がつくと、さっき列車から見た女性が、何と目の前で死んでいるのだ。

ミステリーなので、その真相はもちろんネタバレになるので書かないが、何が何やらわからないという状況から、いまのエミリーの置かれた異常な状況と、切れ切れの記憶が見え隠れする。

こうした記憶喪失のミステリーというのは、その精神状態の状況から、われわれには、まるでジグソーパズルのような状況なのだから、その空白を埋めて行く作業は面白い。

しかし原作の評判ほどに、この新作は、なぜか、さっぱり面白くならない・・・という乱脈なリズムは、演出の凡長さと同時に、エミリーのツマラナソーな表情と、周辺の容疑者たちの魅力の無さだろう。

むしろ傑作「ロスト・バケーション」のように、主演のエミリーの主観のみで映画を構成した方が面白くなったであろう、・・と愚痴も言いたくなる後半だった。

 

■当たりは痛烈だが、ショートの真っ正面。 ★★☆☆

●11月18日より、シャンテシネなどでロードショー