細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『抵抗/死刑囚の日記より』の普遍的な映像と音響効果のシャープさ。

2009年12月01日 | Weblog
●11月30日(月)13-00 京橋<映画美学校/第一試写室>
M-128 『抵抗・死刑囚の手記より』un condamne a mort ......(1956) 仏
監督/ロベール・ブレッソン 主演/フランソワ・ルテリエ ★★★★
50年以上も前の公開時に見た時の印象は、非常にタイトで地味なレジスタンス映画だと思った。
しかし今回久しぶりに見ると、それ以上にエンターテイメントとしても、非常にユニークな個性と新鮮さを維持していることに恐れ入ってしまった。面白いのである。
大戦中にナチスに逮捕され、反逆の罪で死刑宣告を受けたフランス青年が、厳重な監獄の独房を破り、脱獄に成功するまでの子細な行動を、まるでドキュメンタリー映画のような視点で描いている。
狭い牢獄にたったひとり。それでも聞こえて来る音の効果を活かして、実に奇跡的な<抵抗>の記録を再現している。その作業は彼にとっては夢を実現するための仕事なのだ。
出来すぎたような話だが、実話だというのだから、またしても恐れ入った。
ブレッソンの実直な演出は、まさにその脱獄計画と実行に似てクールで、その後の多くの脱獄映画やヌーヴェルヴァーグ作品にも影響したが、映画の面白さとは、知的な映像と音響によるものだということを、この映画は歴史的にも証明して見せている。

●2010年、3月20日より、岩波ホールでロードショー