事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「K-20 怪人二十面相・伝」 (日本テレビ=東宝)

2008-12-20 | 邦画

K20_center2 極端な格差社会の架空の都市“帝都”では、富裕層のみを狙い、美術品や骨董品を鮮やかに盗み出す“K-20”こと怪人二十面相が世間を騒がせていた。ある日、サーカスの曲芸師・遠藤平吉(金城武)は、財閥令嬢・葉子(松たか子)と名探偵・明智小五郎(仲村トオル)との結納の儀に潜入して写真を撮ってくる依頼を引き受ける……

 江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを子ども時代に読んだことのない男性はいない(勝手に断定)。小学校の図書館にあのおどろおどろしい表紙が存在しないとしたら、その図書館はオトナの勝手な偏見によって漂白されすぎている。生活のために乱歩が気が進まないまま書いたのだとしても、あれほど興奮させる作品はめったにありゃしない。わたしも「青銅の魔人」や「大金塊」などに熱中したっけなあ。あれ?「大金塊」には怪人二十面相は出てこないんだっけか。

 第二次世界大戦が回避された世界ということで、「三丁目の夕日」のスタッフは“破壊されなかった東京”を、帝都として見応えたっぷりに描いている(帝都ですもの、嶋田久作はとんでもない役でちゃんと出てきますよ)。

 少年探偵団にかぎらず、活劇の基本は“お宝の争奪戦”。別にそのお宝には価値がなくてもかまわない、と喝破したのはヒッチコック。ところがこの「K-20」はその争奪戦に入る前が長すぎてちょっと退屈。でも、二十面相と遠藤平吉の追いかけっこが始まってからは、金城武の体技の鋭さもあってどんどん面白くなる。

 確かに欠点は多いですよ。いくらなんでも「スパイダーマン」や「ダークナイト」、それにジブリの諸作をパクリすぎじゃないかとか(「リターナー」のときの「マトリックス」そのまんま、ってのよりはマシ)、「アンフェア」の劇場版と同じように佐藤嗣麻子は子どもにこだわって時間を無駄にしているとか(「パッチギ!LOVE&PEACE」)のガキンチョはかわいいけど)、権力志向の強い小林少年の邪悪さをもっと掘り下げるべきじゃなかったかとか(笑)。

でも、金城武、仲村トオル、要潤といった美男たちに“お姫さま”松たか子をからませ、鹿賀丈史、木野花などの渋い演劇人をまわりに配して重量感も……正月作品らしい娯楽作。國村隼と高島礼子の夫婦が妙にいやらしくていい味出してます。テーマ曲はなんとオアシス!ぜひ。

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「ハイスクール1968」 四方田犬彦著 新潮文庫

2008-12-20 | 本と雑誌

Highschool1968 中流家庭に生まれた秀才の青春物語。超エリート校である東京教育大附属駒場高校に通う生意気な学生のノンフィクションとしても抜群に面白い。

田舎に生まれ育った身としては“あの頃”の東京で十代を過ごした四方田がうらやましくて仕方がない。学生運動と高校時代から切り結んだ世代でもある。同じ立場にいたとして、結局わたしは多数派のノンポリ高校生でいたに違いないのだが。四方田の断定ぶりに、同級生の金子(アンチ竹中)勝と、二年先輩の矢作俊彦は「ウソつくな」と激怒しているそうですが(笑)

だって断定癖は四方田の得意技なんだし☆☆☆★★★

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「東京バンドワゴン スタンド・バイ・ミー」 小路幸也著 集英社刊

2008-12-20 | ミステリ

Standbyme  シリーズ第三作。年に一度の小路からの贈り物って感じ。死んだばあさんの独白体なのであいかわらずちょっと息苦しいけどね。でも、こんな感じで書き進めると、小路の将来って実はあやういのでは?なんか出版社に便利に使われてない?そしてそのことに小路は満足しちゃってない?

どんなにマンネリだって、そのこと自体が往時のホームドラマへのオマージュなんだと計算しているんだとすれば、そりゃたいしたものだけどさ。

確かに今回も泣かせはしますが☆☆☆★★★

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「ヴァン・ショーをあなたに」 近藤史恵著 東京創元社刊

2008-12-20 | ミステリ

Fumiekonndoh01 こういう軽く読めるミステリっていいなあ。しかもフレンチのうんちくてんこ盛り。「サクリファイス」で自転車レースの裏側を徹底的に描いたように、対象に深く耽溺する近藤らしい作風。こんなシリーズがあったなんて知らなかったな。かなり強引な推理の展開なんですけどね。フレンチ版「美味しんぼ」。テレビ化できそう。

主演の切れ者シェフはごひいき西島秀俊でお願いします☆☆☆★★

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