北京オリンピック篇その2「緑のライン」はこちら。
オリンピックの醍醐味は、『4年に1回しか観ることのできない競技を楽しむ』ことにある。違います?すくなくともわたしはそうです。こんなときでもなければアーチェリーやフェンシング、カヌーやエアピストルを“ライブで”観ることなんてないでしょう?
特にわたしが夢中になったのはアーチェリー。70m(!)離れた的に、10点満点で12射。考えてみればシンプルきわまりない競技。しかしおもしろかったー。対戦相手と交互に放つ矢が、怖いぐらいに的の中心を射抜きつづける神業の凄みは、ディスプレイからも十分に伝わってきた。メンタルな競技なので、解説者も「いかに平常心を維持するか」をクールに語っていた。参考にするにはあまりにも神業なのだけれど。
この競技に弱点があるとすれば、“とんでもない世界新記録が生まれる余地がない”ってところだろうか。すでに10点×12射=120点のパーフェクトゲームは達成されているんですって。
フェンシングにしても、金メダルを争う決勝戦で、アナウンサーと解説者は、ひたすらルールの解説につとめていたのはマイナースポーツの置かれた立場をよくあらわしている。
メダルラッシュなものだから誤解されがちだけど、レスリングだって事情は同じ。解説の元金メダリスト高田裕司が「もうすぐ世界選手権が」とか「(メダリストたちを)ちょっとは休ませてあげたいんですけど世界選手権が」と連呼していたのは微笑ましかった。そっちもちゃんと観てよ、ってことだろう。
メディアへの露出が少ないアマチュアスポーツにとって、五輪は最高のプレゼンの場。ここでの活躍が将来の競技人口に露骨に反映するわけだ。だから競技が終わった途端に解説者が「業界の人」と化してしまうのは仕方のないところかな。え?伊調姉妹は引退するかも?高田さんたいへんだ、世界選手権がぁ!
次回は「場末のスナックにて」