事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

大分の事件 その4「澱んだ水」

2008-07-12 | 受験・学校

20080712k0000m040172000p_size5 その3「お仲間」はこちら

 さて、出身大学で採用試験において「不正」とは言わないまでも「不公平」を感じている人は多いと思う。特に国立大学教育学部は、その地方の教育を支配したがる傾向があり、おかげで採用される率が高いと言われている。全寮制で、先輩の命令には絶対服従を旨とした旧師範学校の校風を残しているため、とするのは大げさだろうが。

 山形を例に考えてみよう。昭和の末期にわたしが就職した頃は、山大教育学部出身者がゴロゴロしていた。山大教育学部同窓会関係の会議が出張扱いだったことでもその強さがおわかりいただけるだろう。

「じゃあ専修大学文学部同窓会もやっぱり出張?」
「なわけないだろ」

うーん山形はサンプルとしてあんまり適当じゃなかった。なぜなら、出身者の比率はどんどん下がり、それどころか教育学部がそのままでは存続できず、地域教育文化学部というわけのわからない名前になったぐらいだから。

 これは、山形県の場合、山大教育学部出身者にあまり恩恵を与えていなかった影響もあるだろう。具体的には言えないが、近くの某県や某県は、その○○大学教育学部出身者を優先して採用することが常識になっているのだとか。他の大学出身者からすれば、不公平きわまりない話。

 学閥がまたむずかしい。医科系に顕著だけれど、自分が関係する大学出身者のために、国家試験の問題をばらしてしまう教授の話はよく聞くじゃないですか。そこまでして“身内”を増やして影響力を保持したいか。

 大分の事件が教えてくれるのは、試験~採点~合否決定にいたるまですべて県教委内部で行う閉鎖体質や、これまで述べたようなお仲間意識こそが、問題をここまで醜悪にしたということだ。居心地がいいぬるま湯は、しかしいつか澱んだ汚水に変わる。だから常に、新しくて身体になじまない冷水を入れ続けなければならないのに。

 得点を受験者に情報公開するのはすでに世の流れ。ところが大分は年度末には文書管理規程まで無視して解答用紙を廃棄していた(ま、保存してちゃまずいよなここは)。試験を人事委員会に移管するのは最低条件。ほかにどんな新機軸を打ち出すのかと思ったら議員にいわれたからと「採用前研修」ですと。精神論じゃ何にも解決しないだろやっ!先は暗いなぁ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大分の事件 その3「お仲間」

2008-07-12 | 受験・学校

Seb200807100011 その2「昇任」はこちら

江藤被告が県警の調べに対し、08年度の小学校教員採用試験について、約15人の点数をかさ上げしたと供述していることも判明。1次と2次を合わせ1000点満点の試験で、最大で百数十点加点した受験者もいたという。江藤被告は上司から約20人を合格させるよう指示されたが、5人ほどは合格圏内だったため、残る約15人に加点。さらに合格ラインに達していた他の10人ほどについて、点数を減らし不合格にしたという。
 県教委義務教育課によると、江藤被告は1次試験の合格ラインの設定に中心となってかかわっており、事実上、合否リストを作成する立場だった。
 江藤被告は07年度の小学校教員については15人以上の点数をかさ上げし、2年間で30人を超える受験者が不正な操作によって合格したとみられる。
読売新聞7月9日

 この、人事事務のキーマンだった江藤被告になっていきなり不正が開始されたと考える人は少ないだろう。彼だけが“不正をやってくれそうだから”上司から声をかけられたはずがない。前任の“参事”や、前の前の“審議監”(大分には偉そうな職名が多いんだねえ)は確実に捜査対象になっているはず(実際、ボロボロ情報が流出している)。

 関係者のほとんどが、ある時期に同じ市で勤務していたり、あるいは同僚だった事実から考えると、話は人脈の問題になってくる。おそらく大分には古くから特定の人脈が存在し、権勢を誇っているのだろう。そして採用や昇任で影響力を発揮することで、その人脈はますます強固になっていくわけだ。

 加えて大分には【議員枠】なるものがあるそうで、複数の県議がはたらきかけを行ったことが報じられている(おまけに【県教組枠】まであるってよ!)。つまり、このグループが議員や組合に貸しをつくることで県教委はずいぶんと有利に施策をすすめることができたのだろう。だから江藤被告が「(不正操作を断ったら)出世コースからはずれてしまう」ことを怖れたのは理由のないことではない。汚水を拒否すれば、強固なお仲間グループからはじき飛ばされるわけだし。

 こうして、身内の、身内による、身内のための県教委が形成された結果、もしもスキャンダルが発覚しなくても、内部の腐敗は覆いがたいものになっていたはずだ。内部告発はたまたま噴出したきっかけにすぎない。

 さて、それでは大分以外にこんな事例はないのだろうか。以下次号「澱んだ水」につづく。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大分の事件~その2「昇任」

2008-07-12 | 受験・学校

3025_1 その1「採用」はこちら

大分県教委汚職、起訴の参事に別の校長・教頭も商品券
 大分県の教員採用を巡る汚職事件で、県教委義務教育課参事・江藤勝由被告(52)(収賄罪で起訴)に対し、同県佐伯市内の小学校の男性教頭(50歳代)に加え、同市内の別の小学校の女性校長(同)と女性教頭(40歳代)も商品券を贈っていたことが分かった。
 江藤被告は大分県警の調べに対して、2008年度の管理職任用試験でも便宜を図った謝礼として商品券を受け取ったと供述しており、3人は同年4月1日付で、それぞれ別々の学校の校長と教頭に昇進していた。3人は7日夜、市教委に事実関係を報告。8日午前、佐伯署に出向き、事情を説明した。
 男性教頭は、7日の読売新聞の取材に対し、江藤被告に商品券を贈ったことを認め、「警察に自首する」などと話していた。
 市教委によると、教頭2人は、昇進に便宜を図ってもらった見返りとして贈ったことを認めているが、校長は「あくまで(江藤被告の)昇進祝い。10万円のうち自分が出したのは7万~8万円。残りは矢野被告から借りていたお金で、連名で渡した」と説明しているという。江藤被告も4月1日付で義務教育課の課長補佐から参事に昇進しており、3人は異動内示後の3月末、同県別府市のホテルで開かれた江藤被告の昇進祝いに出席。その場で教頭2人が額面各50万円、校長が同10万円の商品券を江藤被告に渡したという。3人に、この宴席への出席を案内したのは、同課参事・矢野哲郎被告(52)(贈賄罪で起訴)で、当日も江藤被告と3人を引き合わせていた。
 県教委によると、08年度の管理職任用試験は校長344人、教頭501人が受験し、それぞれ74人、64人が新たに任用された。
(2008年7月8日  読売新聞)

 子どもの「採用」に現金や商品券で200万とか300万円が飛びかい、教頭昇任50万、校長は10万などと報じられている。これが突発的なものではなく、恒常的に行われているのだとすれば、ひょっとしてこれは大分の「相場」なのか?微妙に「恩恵」(生涯賃金における)に比例していて気持ちが悪い。やけに洗練されていると感じるのは考えすぎなんだろうか。

 しかし、額はどうあれ、ただ単にカネをつんだだけで採用されたり昇任したりするものだろうか。まさかね。要するにクローズドサークルのなかにいるメンバーでだけ通用する理屈であり、金額なのだろう。“お仲間”でもないかぎり、こんな不正は声もかかるまい。記事をよく読んでほしい。こいつらは昇進祝いにホテルでパーティを開き、カネの貸し借りまでやっているのだ。このお仲間意識こそが今回の不正の温床であることはまちがいない。以下次号「お仲間」につづく。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大分の事件 その1~採用

2008-07-12 | 受験・学校

Fe_080711_01 最初は、しょうもない事件だと思っていた。

<大分・教員採用汚職>教員採用「カネとコネ」とうわさ絶えず 暗部に踏み込む
 「教員と教委幹部の間で不自然なカネの動きがある」--県警が事件の端緒をつかみ、流れを追うと、受け取ったのは教員採用試験の実務を取り仕切る人事班の幹部で、贈った校長の子供2人は今年、いずれも教員採用試験に合格していたことが分かった。
 県警は6月14日、贈賄容疑で小学校長の浅利幾美容疑者(52)を、収賄容疑で県教委義務教育課参事、江藤勝由容疑者(52)を逮捕した。両者を仲介したとされるのが、共通の知人で江藤容疑者の同僚、矢野哲郎容疑者(52)と、その妻で小学校教頭の矢野かおる容疑者(50)。県警は矢野夫妻も贈賄の共犯容疑で逮捕した。江藤容疑者には浅利容疑者から、現金300万円と金券100万円が渡ったとされる。
 関係者によると、江藤容疑者は合格点に達していなかった浅利容疑者の長男の点数を改ざんしていたという。
毎日新聞7月6日

親バカな校長がわが子可愛さに暴走し、やっと見つけたつながりを使って県教委の知人経由で人事班をとりしきる参事に金を送った……先月はこう考えていた。マスコミの論調も個人レベルの犯罪ととらえ、長女は合格点に達していたけれど長男はボーダーラインだったとか、やけに細かな情報をたれ流していたし。

ところが、その仲介役だった県教委職員の子どもも前年に教員として採用されており、警察が調べた結果、当時の上司、県教委審議監だった現・由布市教育長まで収賄容疑で逮捕。こりゃどう考えても組織ぐるみ、恒常的に行われていた不正であったと知れ渡った。

現職教育長の逮捕。これがいかにでかい話か業界の人なら感じとることができるだろう。でも、このニュースにいちばん怒っているのは採用試験で不合格になった連中。コネ組は1000点満点で400点台でも強引に合格させていたというから、これではチャンチャラおかしくてまともに勉強する意欲もなくそうというものだ。
おまけに、水増し採用ならまだしも(よくはないけどね)、他の受験者の点数をけずってまで操作していたのだから……

同じように、コネとカネなしに合格した教員たちも「ふざけんじゃねーっ!」と思っているはず。しかし、ことはそんな個人の怒りレベルではなくなってきている。以下次号「昇任」につづく。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする