事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「アグネス・ラムのいた時代」長友健二+長田美穂

2008-07-11 | 本と雑誌

12150238 長友健二、といえば男性誌のグラビアで必ずお目にかかった名前。アイドルの撮影なら篠山紀信か沢渡朔か十文字美信か長友じゃないですか(十文字はアート寄りすぎるか)。グラビアの撮影とくれば生意気そうなカメラマンが(たまに役得なんかもあったりして)「いいねー○○ちゃん!」とやっているイメージだったけれど、長友は50年以上ものキャリアがあるおじいちゃんであり、しかも昨年亡くなっていたなんて初めて知った。今回のテキストはその長友にルポライターの長田美穂が聞き書きをした芸能裏面史。

◎アグネス・ラムの発掘はひとりの慧眼の士による。現在スペースクラフト(神田うのや栗山千明が所属)の社長をつとめる大西一興が28才のとき、当時所属していた芸能事務所の自社モデルを使って撮影された資生堂のCMポジに、背景の「その他大勢」として写り込んでいた少女を見て……「近くの公園で撮ったような写真がきて、それを見てから会いに行きました。この目で見るまでは不安でしたよ。写真はよくても、会ってダメな娘もいる」待ち合わせ場所はオアフ島のシェラトン・プリンセスイカイウラニのロビー。朝11時。すらりと伸びた肢体。小さな顔。ああ、よかった……大西は肩で息をついた。

◎日活アクション路線が全盛の頃、大学を出たばかりで衣装係の助手のような仕事をしていた女性がいた。北原三枝はいつも彼女のところで衣装をつくっていた……彼女の名は森英恵

◎講談社が男性向け週刊誌を発行するにあたり、「週刊現代」よりも「週刊日本」「週刊富士」という名前の方が有望だった。光文社の「女性自身」も創刊前は「美しい人」に決まりかけていた。

◎日本初の芸能学校「東京音楽学院」は、学院生のなかから優秀な生徒を集めて「スクールメイツ」をつくり、デビューへの道筋とした。なんと森進一や布施明もスクールメイツ出身。そしてキャンディーズも。

キャンディーズは当初、スクールメイツのラン、ミキと太田裕美のトリオで考えられていたが、太田裕美の声は高くてソロ向きで、ほかの二人との調和がとれなかった。

200804260024a2 ……アグネス・ラムの人気の秘密は、自己主張しない、母性的な顔と胸。しかし彼女の時代は76年から77年の短い間にすぎなかった。彼女自身がハワイから離れたがらなかったことと、マスコミと大衆があっという間に“消費”したからだ。この傾向は、今も変わっていない。

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「愚者の旅」 倉本聰著

2008-07-11 | 本と雑誌

080425garden01 今回のテキストは、脚本家倉本聰の自伝とも言える「愚者の旅」。彼のエッセイ集は常に爆笑できるネタが満載。東大→ニッポン放送を経て、脚本家として第一線に立ち続けたことを考えても、まわりにおかしな人間が集まりすぎる。これは彼の人柄であると同時に、どんなことも面白がることができる倉本の性格に由来しているのだと思う。お得な性分である。でも、鬱病に悩んだ結果としての北海道移住であったことも語られているので「北の国から」執筆が、実は彼にとって一種の救いだった、という意外な一面も。

◎倉本聰の東大時代の同級生、中島貞夫はかすかなコネを頼りに羊かん一箱持って東映の大川博社長に逢い、なんとかもぐりこむ。
「こいつ、左翼ですよ」と紹介者がばらすと
「儲けてくれりゃあそれでええんや」

◎TBSの赤いシリーズに出演していた八千草薫。山口百恵のスケジュールが取れず、そこに百恵がいるかのごとく一方的にセリフをしゃべり、後で編集でつなぎ合わせるという理不尽な撮影に業を煮やし、遂に役を降りてしまった。

◎北海道に移り住んだ倉本聰は、地元テレビ局でドキュメンタリーを撮る。編集作業を行っていた富良野の小屋へ、ディレクターがひとりの青年を連れてきた。足寄出身の新人歌手。名を松山千春。彼が歌った主題歌が「季節の中で」。

◎ハワイのレストランにて。
石原裕次郎夫妻と夕食をとっているとき、まき子夫人と夫婦の寝室の話に。いずれはどちらかが先に旅立つ。そのときもしも同じ寝室に空になったベッドが残されたらたまらない。そのため、馴れるために寝室を分けた……と倉本が告白すると、しばらくしてまき子夫人は凄まじい声で囁いた。
「ここ何年も……先生、私、そのことばかり考えて生きています」
裕次郎が他界するのはまもなく。

勝新太郎に強引に連れられて山口組三代目の片腕S親分のところへ。
三の宮駅前にはヤアサマの軍団が二列縦隊で勝新のクルマをお出迎え。親分さんたちのクラブでの宴に付き合わされる。「仁義なき戦い」の話になり、誰がいちばんやくざをうまく演じているかでもめる。
「文太?カッコよすぎるわ」
「欣也?カタギや」
「うーん……おった!」
「誰や」
「松方や!松方弘樹や!」
「それや!あいつはまさしくやくざそのものや!」
「洋服のけったいな趣味な」
「軽薄でおっちょこちょいなとこ」
「そうやそうや、ヒロキがおったなあ」

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