ビルの屋上に木を植えたり畑を作ったりする屋上緑化が、環境に優しいと年々増加しています。
こうした中、屋上緑化を障害者の就労支援につなげようという動きが始まっています。
東京・銀座のビルの屋上で、有機栽培を学ぶ講習会が行われた。
太陽が輝く屋上で、畑を囲む主婦たち。
土まみれの手で、ハーブのにおいをかぐスーツ姿の男性。
有限会社アグリクリエイトの取締役・高安和夫さんは「有機農業の皆さんがやっている技術を、屋上でも体現できないかと」と語った。
都会で屋上農業の事業化を目指す高安さんは、今、指導者の育成に取り組んでいる。
その講習会参加者の中には、障害者の支援活動をする社会福祉法人の職員もいた。
この職員は「彼ら(障害者)が、いずれ就労をしなくちゃいけませんから。1つのメニューになれば、いずれなればいいかなと思ってます」と語った。
この参加者が勤める社会福祉法人「さわやかワーク中央」は、屋上緑化の専門家と力を合わせ、都会の屋上農園を障害者の農業への就労支援に役立てようという試みを始めている。
2008年度の障害者の求職申し込み件数は、およそ12万件。
しかし、そのうち職に就けたのは、およそ4万4,000件と、就職率はわずか4割弱。
この社会福祉法人で、障害者の就労支援に取り組む岸 雅典課長は、障害者が働く難しさの1つに、個々に違いがあるものを、障害とひとくくりにしている環境があるという。
岸課長は「この人はどこまでだったら頑張れるのかなっていう、その人の持っている可能性を最大化する取り組みですね」と語った。
1人ひとりが持つ能力を最大限引き出すことによって生まれる就職のチャンス。
この日行われた野菜の間引き作業には、都会育ちで今まで農業に触れる機会のなかった障害者も、興奮を隠せなかった。
岸課長は「実際やってみると、非常に皆さん、積極的に土に手突っ込んで、ちょっと意外なうれしい誤算。この辺に住んでる方なんで、都心でやれるってことが非常に貴重かなって」と語った。
都心の屋上を畑にすることによって、都会に住む障害者に農業への就労機会をつくりたい。
屋上での農業を事業化したい高安さんと、障害者の就労問題に取り組む岸課長。
2人の目的が合致してスタートしたこの取り組みは、大切な、そして意義ある一歩といえる。