トレーニングセールを目指していた2歳馬が、後肢の踏み込みが悪く、「腰」が痛い、
X線撮影したら胸椎棘突起に” impingement 衝突”所見が見つかった、
局所麻酔したらそのときは症状が楽になり、翌日にはもとにもどっていた。
とのことで胸椎棘突起衝突の外科治療を相談された。
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たしかに棘突起間の4ヶ所が狭くなっていて、棘突起同士がぶつかる部分に硬化像、とその内部に吸収像がある。
この障害について、最新の文献は、棘突起間靭帯を切断し、その後リハビリをしたらかなりの馬が良くなった、という学術報告が出ている。
ただし、その症例集の対象馬は、乗馬が多く、サラブレッドは少ない。
そして、後肢の後ろにロープを回して、背中を少し丸め気味にする装具をつけてリハビリすることになっている。
サラブレッドの若馬では危険があるかもしれない。
さらには、サラブレッドの2歳馬だ。時間をかけてリハビリしている余裕はない。
考えた上で、私が今までやったことがあり好結果を得ている古典的な骨切り術をすることにした。
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手術台で寝かせてX線撮影すると、立って撮ったより棘突起間がひろがっている。
しかし、骨に硬化像(白い部分)があるのでぶつかっている部位がわかる。
手術はこんな感じ。
立って手術できる高さまで手術台を上げれば楽なのだが、麻酔が浅くなって馬が動くと手術台から馬が落ちることが絶対ないとは言えない。そのとき、危ないので手術台は高くしていない。
棘突起の形状から各棘突起の頭側を切り落とす作戦で行く。
BoneSawは借り物。
刃は新品で、とても良く切れる。
骨を切り落とした先(奥)は鋭匙で削っておく。
4カ所、骨切り術をした。
下向きの深い傷なので傷の治りに注意が必要だが、ひどいことになったことはない。
背中の痛みが取れて、立派な競走馬になってもらいたい。
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背中や両後肢の不調が続く若馬や競走馬が居たら、胸椎棘突起衝突を疑ってX線撮影してみていただきたい。
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山の桜も満開です。
オラはダニがいっぱいついてあちこち痒くて、とうちゃんにシャンプーされました。