馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

DCPには角度安定性がない

2017-11-10 | 整形外科

牛の骨折内固定の講習で話したことのひとつ。

骨折をプレートとスクリューで固定すると、しっかり固定できているように見える。

しかし、スクリューはプレートの孔に刺し込まれているだけで、お互いの角度は固定されていない。

ガシャガシャ揺れる。

スクリューはプレートを骨に押し付けることで固定を作り出している。

このようにガシャガシャ揺れると、少しずつ浮き上がって、さらに固定力がなくなってしまう。

だから、遊びがないように、プレートは骨に完全に沿っていた方が良いし、

スクリューは遊びなくプレートを骨に押し付けていることが望ましい。

 もうひとつは、骨折端どうしがしっかり密着していることが必要だ。

隙間があいている骨折部をささえる力はDCPにはない。

だから、compression をかけて骨折部を圧迫するのだ。

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ただ、子牛の骨折では4.5mmスクリューとDCPの固定力は十分に能力を発揮する。

LCPとLHSを使わなければならない症例はほとんどない。

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獣医学科へ入学したら、1年生のときから動物とその診療に触れる機会をもてるようにしてやってほしい。

馬に乗る機会も、授業の中でつくってやってほしい。

でないと、せっかく獣医学科へ入学しても、

高校の延長のような教養課程と、

どういう風に役に立つのかわからない基礎獣医学の講義と試験の連続で、

獣医科学生は夢や意欲を失ってしまう。

私は学生時代に馬に乗る機会があって、それも大動物臨床をやっている先生に馬乗りを教わることができて幸せだった。

タコの吸盤に戯れる経験がいろいろなものを育てるのだと思う。

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オラの小樽。

 


上川獣医師会新技術講習会

2017-11-10 | 講習会

上川獣医師会に呼んでいただいて、講師の子牛の骨折プレート固定について講演とデモンストレーションをやってきた。

2015年の札幌での麻酔外科学会以来、子牛骨折のプレート固定はすっかり持ちネタになった;笑

去年、宮崎大学へ呼んでいただいて実習した

今年は、上川、オホーツク、十勝へ行く。

牛の臨床へ私が残していける何かひとつのこと、だと思っている。

北海道のNOSAIに身をおいてきた者としても、各地の牛の獣医さんと交流して、その地域の事情やあれこれを聞けるのはとても楽しい。

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プレート固定は特殊な手術なので、基本知識を知っておくことはとても大切。

ほとんどの皆さんがプレート固定の経験もなく、症例について本や文献で読んだこともないので、実際の症例について知ることも大切。

そして、何よりどんな風にやるのか実際を観て、できれば手技を体験してみれば、どういうものなのか実感できるはず。

と思ってやった3時間半だった。

声枯れたゼ;笑

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「できそうな気がしました」

「ぜひやってみたいです」

という感想が聞けた。

上川は若い獣医さんも多く、講習会も活気があった。そのあとの懇親会も;笑

講習会の最初に断っておいた。

「何かひとつ覚えて帰ってもらえればという内容ではありません。

この地区で1頭でも、「骨折した牛がプレート固定で治った」、という声が聞こえてこなければ、今日わたしが話すことには何の意味もありません。」

一粒の種は蒔いた。

育つ土壌だったか、水やりをしてもらえるか、日当りはどうか、楽しみに待ちたい。

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講習前のわずかな時間。

あいにくの季節に、あいにくの天候だったけど散歩した。

巨木が見られて楽しかった。

美術館の展示もなかなかだった。