馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

Dr.Richardsonの予言、そして・・・

2017-01-20 | 整形外科

7月、1歳馬が跛行する、ということでX線画像を見せられた。

近位趾節関節の骨片を摘出できないか、という相談だった。

ペンシルヴァニア大学New Bolton Center のRichardson教授に相談したら、

「骨片を取るなどというのは時間の無駄に終わるだろう。

すでに、骨関節炎の所見があり、関節面は粗造で薄くなっている。

いずれ関節固定をしなければいけなくなる。」

と言うコメントだった。

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しかし、このX線画像で、「すぐに関節固定をしましょう」とはとても言えなかった。

約半年経って・・・・

Richardson教授の指摘どおり、この馬の近位趾節関節の変形性関節症DJDは進行した。

その間、馴致や調教を進めることはほとんどできなかったそうだ。

今日診たら、馬はかなり肢を痛がっており、鶏跛だった。

近位趾節関節のDJDではっきりした鶏跛を示すのは珍しい。

鶏跛は原因がわからないことがあるので、記憶しておきたい。

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で、ロッキングコンプレッションプレートLCPと5.5mm皮質骨スクリューを使って関節固定手術を行った。

例によってなかなかたいへんな手術だ。

私はこれで7例目。

繁殖雌馬より体重はずっと軽いし、大きい馬ではない。

関節を貫通するスクリューは、3本目をうまく入れるスペースがなかったので、2本で済ませた。

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来週あたり、もう1頭、この手術をすることになりそうだ。

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でっかいキツネ。