馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

輸入馬の結腸捻転

2006-06-04 | 急性腹症

朝、診療所へ行ったら重症馬の診療中。子宮穿孔のようだと言う。午前中の他の診療をキャンセルしてもらう。

 一段落ついたと思ったら、繁殖牝馬のはらいたの連絡。皆で急いで昼食をすまそうとするが、そろわないうちに患畜が着いた。

痛さのあまりトラックの中で立てない。なんとか立たせて、診察もそこそこに開腹手術を始める。

この時季、繁殖牝馬がひどいはらいたをして、血液検査でPCVが高ければ結腸捻転だと思って間違いない。ひどく捻れていることが多いので、ぐずぐずしない方がいい。

ひどく捻れている場合は、結腸は数時間で虚血性壊死を起こしてしまう。極端な場合は、朝死んでいるのを発見し、解剖してみると結腸捻転だったりする。

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 今日の馬は、この冬輸入されたばかりの馬だった。以前から輸入馬は結腸捻転が多いのではないかと思っている。

率は・・・・・正確に計算して比較するのは難しい。誰か、日高にいる繁殖牝馬のうち輸入馬の占める率をおしえてくれないだろうか。

食べる草の種類が変わるのが要因ではないかと考えている。こんなにチモシーなどのイネ科牧草ばかりなのは日本だけではないかと思うのだが、どうだろうか。

チモシーの畑のような放牧地によく食う馬を放すのは、プロレスラーを焼肉食い放題の店に連れて行くとか、相撲取りを寿司屋へ連れて行くようなもので、何か工夫をしないと食いすぎて体を壊してしまうのではないか。

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P6040079 ちょうど半分の月。

半人前でも、満ちて行くものには希望がある。


子馬のRhodoococcus equi 感染症

2006-06-04 | 新生児学・小児科

 今年はRhodococcus equi の抗体検査の件数が多いようだ。肺炎の子馬で調べることが多いので、暑い年に多発すると考えていたが、今年はどうも事情が違うようだ。

 ロドコッカスによる病変をもつ解剖例も多いようだ。

十数年前、ロド病変を持った剖検子馬の材料を集め始めた頃、毎年20頭近くを採材していた。それが近年は10頭に満たなくなった。

生産頭数が減ったとか、忙しくて解剖する子馬が減ったということもあるが、ロドコッカス感染症で死ぬ子馬は半減したと思っている。

早期発見と治療の技術が進歩したせいだろう。

Photo_98 左は私が今まで見た中で一番見事な肺膿瘍の写真。

ロドコッカス感染症の感染様式とか、診断方法とか、治療方法とか、予防方法とか、その他書き始めるときりがない。

とりあえず、大事なことは早く発見して、治療するということだ。

膿瘍の中には抗生物質が届きにくいので、大きな膿瘍ができてしまうと治療は長期化する。

腹腔内にも膿瘍ができることがあるが、ロドコッカス肺炎の子馬は菌を含んだ喀痰を多量に分泌し、それを飲み込んでいるので、それが腸の粘膜のリンパ組織を通って腹腔内のリンパ節を化膿させると考えている。

そして、ロドコッカス肺炎の子馬の糞便には、多量のロドコッカス強毒株が含まれている。感染した子馬の喀痰や糞便は、厩舎やパドックを汚し、同居している子馬、次の年生まれる子馬への感染源になる。

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Callthis 左は、馬がひどい状態になる前に獣医さんに診せれば、馬がひどい状態になってから獣医さんにかかることを防げる。という海外のCM。

---上のようにもっと呼べば、下のように呼ぶのを防げる---

現在では、子馬がロドコッカスに感染するのは、ほとんどが生後1ヶ月以内だと考えられている。

多くの子馬が30-45日齢で発症するので、その頃の子馬を詳細に観察し、あるいは血液検査すれば、感染している子馬を早期発見できる可能性が大きくなる。

感染した子馬を放っておくと、被害はその子馬だけではすまなくなる。結局、治療費を含めた被害額は大きくなる。

今年、ロドコッカス感染症が多いのは、「放置」されているせいでなければ良いが・・・・・・

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P6030077 P6030078 植えたわけではないのに、家の周りに勝手に咲いた。

なんという花だろう?

 花壇の花より、野に咲く花のほうが美しいと思うのはなぜだろう。

本で調べて花の名が判明した。ミヤマオダマキ。だそうだ。