◎胸を張らずしてダルマのように胸を落とす
昨日のコラムで、実業之日本社編の『岡田式静座法』(実業之日本社、一九一二)から、諸井恒平の「岡田式静座法」体験記を紹介した。
本日はその続きで、同書から、相原一郎介という人の体験記「他の呼吸法になき妙処と感じた静坐の姿勢」の一部を紹介してみよう。
肩の凝りは余が呼吸法の大欠点に原因せり
岡田〔虎三郎〕先生が坐つて見なさいと言はれるから、平生〈ヘイゼイ〉呼吸をするやうに端坐して見た。岡田氏は一見して、体格は太つてゐるが、自己流だから肝腎の点を失つて居るといつて呼吸法と姿勢を直された。殊に余の姿勢中最大欠点と認められたのは、腹に力を入れる時、水落〈ミズオチ〉の処を凹ます〈ヘコマス〉、即ち胸を張らずして達磨〈ダルマ〉のやうに胸を落さなければならぬといふ事を知らずに居たことであつた。
余はそれ迄は胸を張つて坐つて居た。腹へ力を入れる時に胸を張つて居た。岡田氏の言はれるには、その姿勢では心臓が樂に働けない。血の循環が悪くなる。故に肩が凝るのである。手先足先は冷めたいであらうといはれた。他の人と比較して見ると果して冷たかつた。なる程血の循環といふ事には気が付かなかつた。若し水落の処を落して坐つて居て、肩の凝りが除れた〈トレタ〉ならば有り難いと思つて、帰つて遣つて〈ヤッテ〉見た。
教へられし翌日肩の凝は去れり
果せる哉、その翌日になつて肩の凝りは忘れた如く消えて仕舞つた。それ以来静坐を継続して居るが、肩の凝りはそれ限り起らない。此経験から考へて見ると、以前肩の凝つたのは全く余が端坐の姿勢の悪かつた事、即ち下腹部に力を入れる時に、水落の処を落さず胸を張つて居た為であつた事が分つた。是れが従来どの呼吸法でも遣つて居ない妙処であつて、岡田式呼吸法の特色であると思ふ。是れ余が静坐実行に於て最も痛切に感じた一事である。【以下略】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます