多聞寺境内には、六地蔵坐像が安置されています。立像と違って「坐像」は都内でも四例に
過ぎない貴重なものといわれます。欠損や修復の跡が見られますが、18世紀前半に制作され
たもので、墨田区登録文化財になっています。
また境内には「狸」と刻んだ石があります。伝説によれば昔、大きな松の木の根本に古狸の
夫婦が住んでいて、村人たちをおどしたり、いたずらをしたりしました。困った村人たちは住
職と相談して、松の木を切り倒しましたが狸のたいずらは益々ひどくなりました。困った住職
は、本尊の毘沙門天に祈りましたところ、毘沙門天の弟子が現れて棒で打ち据える夢を見たと
いいます。翌朝、庭に二匹の大狸が死んでいたといいます。驚いた住職は、この狸を弔って狸
塚を建てたというお話です。