マチンガのノート

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「12人の怒れる男」 監督:ニキータ・ミハルコフ

2013-11-05 01:07:01 | 日記
ネタバレ有
アメリカ人のルメット版の、ロシア人のミハルコフによるリメイク。
退役ロシア軍将校が殺され、その養子のチェチェン出身の少年が
容疑者として裁判にかけられて、それを12人の陪審員が審理する
という展開。
雑談交じりに、審理が始まるのだが、陪審員たちが
自分の人生を語りながら、事件を検証していく。
各自の人生話を通じて、ロシアの様々な社会情勢、文化、歴史などが語られていく。
アメリカのルメット版ならば、正しい事実認定と法の適用をすれば
よかったのだが、マフィアなどが力を持っていて、法の支配が
余り行き届いていないロシアなので、裁判の後まで、陪審員が考えざるを得ない。
事件を検証していくにつれ、どうも地上げ絡みの犯罪だとわかってきて、
容疑者の少年を無罪にして釈放すると、地上げ屋、マフィアに消されそうだ、
ということになってきて、それではどうするのか?ということになる。
ミハルコフ演じる、元将校の陪審員が少年を引き取るのだが、軍人ネットワークに
属する人間などでないと、マフィアから守れないのだろう。
少年に「犯人の顔を覚えているか?」と聞くと、「一生忘れない」
と言っていたので、何らかの報復を示唆する結末で終わる。
軍人ネットワークなら、内務省、治安部隊、軍などに
コネがあるだろうから、それらを通じて、ある程度、マフィアに報復して
それから手打ちで、慰謝料などを払わせるのだろう。
民主主義、法の支配などをするには、社会的インフラがない、予算が無い、国土が広すぎる、
様々な民族問題がある、など、一部の恵まれた先進国以外の抱える問題なのだろう。
その様な多くの国で、あてになるのは、身内によるパターナリズムなのだろう。
ルメット版は名作とされるが、公正な裁判と、その後の安全が保障されるのは、
社会が豊かで安定していることが必須条件なのだろう。
ミハルコフ監督は、「太陽に灼かれて」の続編で、「戦火のナージャ」という
戦争映画を撮ったのだから、この映画の続編で、軍人ネットワーク対マフィアという
クライム・アクション映画を撮ったら面白いと思う。