マチンガのノート

読書、映画の感想など  

心理療法の想像力 織田尚生 誠信書房

2016-06-28 14:26:25 | 日記
箱庭や絵画を用いた治療や、プレイセラピーに関する著作では
主に患者側の情動やイメージに関して書かれているので、
患者ー治療者間で、どのような情動や想像、イメージなどが動き、
それがどのように治療につながっていくのかが解りにくい事が多い。
しかしながら本書では、治療者側の情動、想像が治療に関してどのように動き、
それがいかに患者側に返されて共有され、そのことがどのように治療に繋がるかが
詳しく書かれている。
本書の著者の名付けた「変容性逆転移」、つまり、患者が一人では担えないものを
治療者が代わりに担い、それを治療者が自ら生き抜いて処理して、患者に返すことで、
治療が進展する、ということに関して、ユングの錬金術研究が役に立つことが
例示されている。
分析的、解釈的にのみ終始するのは論外としても、それではどの様に
治療者側が様々な事を受け取り、自らの内面で処理して、患者に返すのか、
そして患者ー治療者関係が破壊的にならないようにするには
どのような構造を考え、どのような事に気を付ければいいのかについて、
ユング派の様々な概念や、錬金術研究が参考に取り上げられている。
ウィニコットの「抱える環境」の、面接室版という感じの一冊である。