マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「家族という病巣」 星野仁彦

2015-10-25 00:37:54 | 日記
著者による「星野式・根掘り葉掘り」方式で、
患者の現在の状態、症状が、家族関係などの生育過程で如何に形成されてきたかを
理解して治療に当たるというのは、一般的な治療者の、現在の症状のみを取り上げて、
治療、投薬すると言う、一般的な治療よりはるかに進展していると思う。
しかしながら、親について聞いて、その親も「○○障害だった」
と言うのは、問題を単純化しすぎていると思う。
小林隆児氏も書いているように、親も養育者に安心して甘えられなかった、
養育者に欠けている部分を補ってくれる対象が不在だった等により、親もその様な
性質を身に付けた、との世代を超えた視点を欠いていると思う。
愛着に基づいた関係を発達させることにつまづいているところを、
脳の機能障害として片付けるのは、物事の単純化のしすぎだろう。
個人を見て関係を見ない、というのは精神科医の悪い癖なのではないだろうか?
その親の過ごした時代、歴史、社会状況、そして患者の育った社会状況
なども考察する必要があると思う。
患者の祖父母や親の時代の戦争と戦後の混乱、そして経済最優先の
社会というものが、子供に集約されて、今の状況につながって
いるのだと思う。
当然、多忙な医師にとっては多大な要求だろうから、これからは
臨床心理士、PSW等もさらに治療に関わることが必要だと思う。
また、現在、発達障害と看做される子供の割合が増えていることも、
地域の関わりが少なくなり、各家庭が孤立化してきたことの
影響も大きいのではないだろうか。
地域の絆を作り、おせっかいな近所のおとなが増えることも
大事な点ではないだろうか。

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深田祐介の「日本人すごい」的な文章について

2015-10-22 07:48:08 | 日記
昔の文藝春秋で深田祐介が、ハイジャックに遭った時に
日本人乗客があまり動揺しないことに、欧米人が驚いている、
と言うようなことを書いていた。
はらが据わっているのではなくて、撃たれたりして殺されることに対する、
現実的感覚の無さ、体験の無さがその基にあったのだろう。
今の難民に対する態度も、そこに由来するのだろう。
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「人間という症候」 藤田博史

2015-10-11 01:43:24 | 日記
様々なところで引用され、主体の生成について書いてあっても、
何かと読みにくいクリステヴァの著作だが、
こちら著者は、図解しながら、アブジェクション(棄却)などから
どのように構造が生成していくかをクリステヴァより解りやすく
解説していく。
ユング派は、神話や昔話でいろいろ書いているが、こちらの方が
ドライで読み易い。
1993年に出版された本書だが、当時は臨床家が読んでも
解らなかっただろうと思う。
その基になる偶然についてだが、クリステヴァの場合、
留学先の恵まれたフランスと、ソ連に支配された貧しいブルガリアで
ユダヤ系として産まれて育つことの違いが大きかったので
主体の生成の基から考えることになったのだろう。

偶然に関わった事によりもたらされる事柄が、人により違うために、
世界の切り分け方、分節化が違うので、世界の見方、感じ方が
人によって違うのは当然というのは、似たような育ち方、暮らし方を
することの多い日本の臨床家には解りづらいのだろう。


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