マチンガのノート

読書、映画の感想など  

ドローンの哲学ー遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争:グレゴワール・シャマユー

2018-12-30 10:49:41 | 日記
様々な国にドローンを飛ばし、テロに関係する容疑者らしい人物を監視して、
必要があるとなればミサイルを撃って、本人と周囲とを吹き飛ばし、
抹殺するのだが、上空から見ていても本人の特定は不確かなため、
様々な他の情報と照らし合わせて、決定するのだが、
戦争をしている相手国の軍人ではないため、戦争行為ではなく、
容疑の段階で抹殺するのだから、警察行為でもない。
それではドローンによる抹殺は、何に該当するのか、
どのように正当化されるのか、というのが問題として大きいそうだ。
しかしながら技術的に出来てしまうことから、広まって
続いているとのこと。

ビューティフル・デイ:監督 リン・ラムジー 出演 ホアキン・フェニックス

2018-12-25 21:17:50 | 日記

2017年第70回カンヌ映画祭の男優賞と脚本賞を受賞した映画。
戦争帰還兵のPTSD、児童虐待、DV、人身売買などの現代の問題を
散文的な説明なしに様々に散りばめて、ストーリーを展開していく。
説明的なセリフや描写を排し、映像と展開で登場人物たちの背景から物語までを
描いていく。
劇中、主人公のジョーのフラッシュバックのような映像で、主人公ジョーのトラウマを
少しずつ描いていく。
ジョーの仕事は、人探しのようで、上院議員から家出した十代の娘を連れ戻すことを
依頼される。
それまでの報酬の受け渡しの方法も、少し不審なことがあるとあっさり変更する。
物語ではすぐに娘の居場所がわかり、金づちをもって乗り込んで、見張りなどを倒し、
あっさり連れ戻すが、上院議員が不審な死を遂げ、ジョーも居場所に
サイレンサー付きの拳銃を持った2人の制服警官が押し入り、娘を連れ去る。
母親のいる自分の家に帰ると、母親は射殺されており、ジョーはそこにいたスーツを着た2人を射殺し、
母親の遺体を湖に沈める。スーツの片方も、自分のやっていることを嘆いている。
その娘を気に入っていた州知事が手をまわして、取り戻したことがわかり、
その州知事の屋敷にも金づちを持って入ってゆき、護衛を殴り倒して
州知事の部屋に行くが、州知事は娘に喉を切られて絶命していた。
そして娘を連れて田舎の食堂に行く。
ストーリーだけ文字にすると、単純だが、映画では主人公の疲れ切った様子、
無表情な上院議員の娘、周囲の人や景色の描かれ方から、前言語的なところに
訴えてくる。
スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクは、現代はこれまでにない概念の熟成期と
書いていたが、それを思い出した。

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戦争とトラウマ 不可視化された日本兵の戦争神経症:中村江里 吉川弘文社

2018-12-21 18:58:17 | 日記
当時のカルテなどさまざまな資料を調べ、日本兵の戦争神経症のみならず、
当時の価値観や文化的背景、歴史などもふまえ、幅広く調査、検証している。
日本兵に戦争神経症は少なかったなどの俗説が流布した背景の考察も深い。
日本兵の戦争神経症がほとんど無視されていたことにより、
その後の精神医学、心理学で個人の体験、成育歴が
ほとんど無視されていた側面は大きいと思う。
後発の先進国の方が、様々な点で無理をして追いつこうとしていたことが
様々に極端な体制に繋がったのだろう。
36歳でこれだけのことを調べ、まとめるというのはすごいと思う。
直ぐに金にならない文系学部は不要との意見が、いかに浅いものかがよく解る一冊。
当時の個人情報を含む記録を行政側がマスキングしたものを閲覧しても、
これだけの事が解るというのは、公的文書の保存の大切さがよく判る。
軍部による敗戦時の文書焼却がなければ、さらに様々な事が
解っただろう。
焼却を免れるために、ドラム缶に詰め地中に埋めて、
保存をした医師たちの功績は大きい。

戦争とトラウマ 不可視化された日本兵の戦争神経症:中村江里 吉川弘文社