マチンガのノート

読書、映画の感想など  

美と深層心理学 :東畑開人 京都大学学術出版会 3

2019-03-30 21:53:46 | 日記

臨床心理学などの深層心理学は表面の美しさがいかにして形成されたかについて知ろうとしたり、

箱庭などでも何かを作るプロセスにあるていど関わろうとするので、

単に表面の美しさに留まり、それを見るのみにするというのとは相性が悪かったとのことだ。

しかしながら、表紙の絵にある、桜を眺める骸骨のような状態には

治療者が表面を見るに留まり、骸骨の外側に肉が付いていき、

美しい表面が生成されるものを見る必要があるのではないか、

とのことで、そのことが今後の臨床心理の課題だろうとのことだ。

 マイケル・バリントの書くように、地下風水として在るしか、思いつかないのだろう。

そこから考えると、竹中菜苗氏の「暗闇との同化」という考えは、

大きな一歩ではないだろうか。


美と深層心理学 :東畑開人 京都大学学術出版会 2

2019-03-29 08:50:49 | 日記

重い症例では、深層まで直結してしまうので、妄想・分裂ポジションでの問題につながり、

被害的、妄想的になるので、表面を作る、整える、などが必要とのこと。

表面的な美しさはそのようなことで必要とされるとのことだ。

そのような美しさは早期母子関係から形成されるということだが、そこで上手くいかなかったことなどが

その後に大きな影響を与えているとのことである。

そのようなことは中井久夫の言っている、重症例での拒否能力の低さとも

関連しているのだろう。


野の医者は笑う: 心の治療とは何か? :東畑開人

2019-03-27 21:51:23 | 日記

沖縄でさまざまなヒーラーたちに関わったことから始めて、

それに対する突っ込みとして、臨床心理の歴史の説明も展開するが、

最後にヒーラーたちの集まりで、アンケートを回収したところで、

経済的な貧しさというものに気が付くという落ち。

けっこうそのようなことに気づかない人は多いのだろう。

著者はその後、一回一万円の世界に戻ったようだが、

定期的に沖縄に行っているようなので、片足を残している感じだろうか。


美と深層心理学 :東畑開人 京都大学学術出版会

2019-03-26 23:00:52 | 日記

美も醜も、それぞれともに、対象から距離を置いたところからの認識であり、

対象と未分化ならばそこまで明確な認識は生じない。

本書ではクリステヴァの「恐怖の権力」などで触れられている未分化の状態から

考察している。

何かを認識するには、北山修が「共視論」で取り上げている「共に並んで眺める」ことなどで

別の対象を共に感じることにより、言語や象徴の基盤となるものを共有して、

内的基盤を生成することがまず必要なのだが、最近はそのような内的基盤自体が無いために、

語ること自体が困難なケースも多いようである。

 当事者の語りや表現を重視する態度は、土台のない人に飛ぶように促してしまうことが

あるのかもしれない。

「恐怖の権力」ジュリア・クリステヴァ

「共視論」北山修


臨床心理プロムナード-こころをめぐる13の対話 :山中康裕 遠見書房

2019-03-21 23:41:39 | 日記

前半部分は、2010年代以降の京都ヘルメス研究所での、関係者を招いての、教え子や同僚医師との対談で、

京都大学退官後の、山中氏の様々な考えが収録されている。

後半部分はこれまでの、様々な研究者との対談が収録されている。

山中氏によると、現在の認知行動療法や、投薬などの、精神医療は、30年は持たないだろうとのこと。

個別の素因と、成育歴、乳幼児の時期からの体験を考えて、個別に対応する以外に、

有効な治療、対応は不可能だろうとの事である。

小倉清医師や柴山雅俊医師の考えと近いようである。

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