マチンガのノート

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「自明性の喪失」 W.ブランケンブルク

2016-12-30 09:50:42 | 日記
最近は、精神科医の杉山登志郎氏などが、「アンネ・ラウは統合失調症だったのか、
発達障碍だったのか」などと取り上げているが、そもそも母親が証言するように、
「父親からはボロ布のように扱われていて」という、極端に普通でない状況で暮らしてきて、
それを止めさせたりする親族も居ず、引き離す人も居ないという事であれば、
アンネにとっては普通でない暮らしが日常生活ということになるので、
アンネが「普通ということがわからない」「当たり前ということが解らない」と言うのは
当然なのではないのだろうか?
異常な親と暮らす子供のことについて考えたり想像するような能力が、
ほとんどの医師には欠け過ぎているのではないのだろうか。
家庭の中と外とがかけ離れていると、「当たり前」「普通」ということが
解らないというのは当然だろう。
自分の親が周囲の親のように子供をちゃんと世話をする、日常的な様々な事を教えるというのが
無ければ、「当たり前」「普通」などは解らないだろう。
様々な病理現象に関する研究や考察は在っても、それの基となる
生育歴、生育環境に関する知識が、医師には少なすぎるのだろう。
この著書の中で異常な父親に関する記述が殆ど無く、両親がどのような人物で、
どのような生育歴だったのかも触れられていないという事が、
著者の社会に関する知識や関心の無さや、想像力の無さを示していると思う。