マチンガのノート

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症例でたどる子どもの心理療法―情緒的通いあいを求めて 森さち子 金剛出版

2014-09-24 01:23:29 | 日記
著者は「けい君」という、複数の医師から自閉症と診断された
言語的交流の持てない7歳の少年との5年にわたる心理療法について一冊を使い
紹介している。

基本的にそっと寄り添いながら、邪魔をせず、相手の行動について思ったことを
「~かな?」と、解らない事を前提に相手の成育歴、境遇に思いを馳せながら、
相手に寄り添う態度で接していく。

自閉症、発達障害に関して、心理療法、遊戯療法は無効であるとの主張をする
臨床家は多いが、このように治療者が控えめに寄り添いながら
長期に亘りともに居続けるという事が出来ない、する余裕が治療者自身に無い方が多い
からではないのだろうか?

クライエントの少年の様々な曖昧な言葉の様なものや絵に対して全体の状況を考えながら
思いを巡らせて控えめに言葉をかけていくなどのことは、治療者自身が、
安定して、余裕を持っていなければ不可能ではないだろうか?
治療者による、様々なそっとした関わりについても、スターン、ウィニコット
などや様々な乳幼児研究の知見を提示しながら解説している。

そして治療的に関わった最後のほうには、少しではあるが、「けい君」との言葉を介した交流を少し持てるようになる。
自閉症、発達障害の治療には、治療者自身の余裕と安定が必要な事が伝わってくる。
医師、心理臨床家が余裕を持てるように、大学、病院を変えていくことが
まず大切なのではないだろうか?

自閉症、発達障害と診断される方が、先天的素質と仮定した場合と比べると
遥かに増えていることは、子供を取り巻く状況に余裕が無くなっていることが
大きいのではないのだろうか?