イタリアのユダヤ系作家プリーモ・レーヴィの「休戦」を映画化したものです。監督はフランチェスコ・ロージ、主演はジョン・タトゥーロです。アウシュビッツ強制収容所から解放された主人公がイタリアに帰国するまでの8か月間を描いた映画です。
元は化学を学んでいた学生で、ナチスドイツへの抵抗運動に参加し、囚われたのちアウシュビッツにいる間に、化学工場で働かされていた主人公は1945年1月にソ連軍に解放されます。各地の鉄道網が寸断されているため、ソ連領内まで迂回し列車で帰国することになります。
解放後も食料があまり配給されないため、ポーランドの闇市に行きますがユダヤ系の彼にはポーランド人達は相手をしません。大きな戦争が終わっても、ユダヤ系への差別は変わっていないのでした。
途中で会った老婆の一家はオーストリア人でしたが、ナチスの政策を批判したため彼女以外は殺害されたことを話します。いかにナチスドイツが敵味方問わず、反対勢力に対して過酷な弾圧をしていたかが解るところでした。
ミュンヘンの駅で捕虜になったドイツ兵たちに近づいて、彼が付けさせられていたダビデの星を見せると、ひざまずいて頭を下げるドイツ兵が出てくるシーンもありますが、戦争中は自分が周囲と違う考えを持っていても示すこともできなかったか、捕虜になってからユダヤ系への残虐行為をはっきりと知らされたので、そのような行為をしたのでしょう。政府の政策や軍の行動には、普段からの透明性が必要だと解るシーンでした。
重い内容の映画ですが、各所で美しい自然の風景が使われていました。とてもいい映画ですが、今のところDVD化はされていないのが残念です。