マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「甘えたくても甘えられない: 母子関係のゆくえ、発達障碍のいま 」 小林 隆児

2014-12-28 01:00:55 | 日記
東海大学医学部で行われた、SSPという方法で
自閉的傾向を持つ子供の母子関係をビデオ録画を使い観察した結果、
いかに乳幼児の時から、子どもが母親に対して甘えたいのに甘えられないので
フラストレーションを募らせて、自閉的に見える行動をしていくのかが
解り易く紹介されている。
甘えらえないことからくるフラストレーションが高まることで
更に自閉的に見える行動をし、そのことによって感覚過敏になり、
周囲の刺激が侵襲的に感じられて、「自閉症児の症状」と見られるものが
形成されるとのことだ。
一般に「脳の機能不全」から生じるものとされる症状が
そのようなプロセスから見ていくと、普通に理解できるものとなるという。
しかしながら、「甘える」「拗ねる」などのとらえ方は
「甘える」という言葉の無い日本語以外を母語とする研究者からは
そもそも見えないとの事だ。
言語が物事を分節化し規定するという、ものの見方の根本に関わる事なので
これまで、理解する研究者自体がほとんど居なかったのだろう。
何かを伝えたい相手がいるからこそ、言葉に繋がるため、
療育、治療は関わりたい関係作りから始める必要があるのだと主張している。
社会適応に重点を置いた療育、支援は表面的な関わり合いになる事が多いので
反治療的になる事も多いとの事だ。
そのため、現在行われている療育、支援は、社会適応重視というのを
見直した方が良いのではと著者は提言している。


「自閉症の関係発達臨床」 小林隆児 鯨岡峻

2014-12-16 00:21:04 | 日記
本書で取り上げられている、成人した自閉症の方の
強度行動障害に関しての関わりを読むと、
いかにそのような方が、周囲からの叱責、指示する声などを
内面化しているかがよく解る。
そのことによって、食事や排泄などの本能的な事を果たすことにまで
困難をきたしている事が、解り易く書かれている。
主体が無いため、何かをしようとすると、過去にそれについて
叱責、指示されたことも同時に思い出されて、行動が困難になることが
よく解る。
周りの指示などがいかに本人に侵入的に捉えられて、それにより
動かされてしまう事が、関係と行動の流れの中に固定化されている事で
その後にもいかに本人に困難をもたらす事かが、解り易く描写されている。
甘えたくても甘えられないという事がいかに本人の
行動の余裕と柔軟性を成立させず、自分の衝動と過去の叱責、指示との間で
混乱した状態に陥るかがよく解る。
程度こそ違え、それほど重度ではない発達障害でも、甘えて余裕を持つことが
状況に適した行動をとる事の基礎にあるのだろう。

アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー) 米田衆介

2014-12-15 23:09:36 | 日記
アスペルガー障害について、特徴などを様々な面から書いている。
アマゾンのレビューなどでも評価は高い。
しかしながら、それでは本質的な治療はどうするのか、となると、
特にあげていない。
障害があっても、周囲の様々な対処で、本人が適応しやすくするのも大切だが、
関わりにくい人に関わろうとするというスタンスも大切ではないのだろうか。
京大や慶応大の心理臨床の方々が行っているような
間主観的なところや、相手の在り方そのものに関わるような
対応についても検討すべきだろう。

「自閉症の関係発達臨床」のQ&Aで小林隆児氏がTEACCHプログラムについて
述べているように、当事者が解りやすいようにするところで済ますのではなく、
関わりにくい当事者と、関係をいかに築くのか、というのが
最も大切なところだと思う。