マチンガのノート

読書、映画の感想など  

心理療法における「私」との出会い : 皆藤章 松下姫歌

2014-06-30 08:02:18 | 日記
第4章の松下姫歌氏の「器質性精神障害を抱える女性との出会い」の
産後まもなく髄膜脳炎と多発性硬化症に罹患した30代の女性で、
両下肢麻痺、言語性IQは60位、ほぼ寝たきりで、著しい記憶障害があり、
新しい体験の積み重ねが成立しづらく、自分の要求が通らないと大声で叫び続けたり、
常にイライラして叫び、煙草と電話を頻繁に要求する、主治医へも罵声を浴びせるという方との
心理検査から始まる関わりで、3回目の面接で、子供に好きなおかずが入ったお弁当を作ってやれるようになりたいから「頑張る」という所が印象に残った。
重い疾病体験と、その理不尽さに、心の次元の自分のまとまり感や
自分を支える基盤感覚が大きく揺らぎ、「わからなさ」「寄る辺なさ」を感じると
刹那的な拠り所として煙草や電話を要求して、叫ぶことで救助の欲求や怒りを伝えている
のだろうとのことだ。
こうしたクライエントとの関わりにおいては、一瞬一瞬その都度出会う未知性に対して
どんな事がどのように脅威でどんな事が安心につながるのかといった
「心の次元における生死」の感覚をキャッチすることが大切とのことだ。
そこから、ひとまずの「自分のまとまり感」が生まれて、心が心に関与し心的な
自分を生み出す「主体性」をつかむ第一歩になるとのことだ。
重い障害を持っている方を見ると、外見や雰囲気から、関われないだろう、
なんとなく恐い、と感じてしまうが、それを越えて関わるのが、医師や臨床心理士などの
専門性なのだというのがよく解った。

愚かな朝日新聞の記事

2014-06-22 15:35:37 | 日記
今日の朝日新聞の記事で、米国務省の人身売買をめぐる報告書を取り上げて
日本の「外国人研修生」は強制労働の事例も有る、「JKお散歩」は人身売買の疑い、
で、「人身売買の根絶のための最低基準」が進展している国は
米英独などとの記述を紹介しているが、メキシコ人などの不法移民を
最低賃金以下で働かして、家出少女が路上に立って体を売っている現状の
自国の事を、アメリカが一番ましな方にしているのを、何も考えずに引用しているのは、
本当にに愚かだと思う。

「大人の発達障害の見立てと心理療法」河合俊雄 田中康裕 こころの未来選書

2014-06-18 00:04:09 | 日記
発達障害の様々な特徴、症状について、「主体が成立していないので生じてくる」
ということで、発達障害の治療について、主体を生成させるために「融合と分離」が
必要と書いているが、そもそも、マイケル・バリントの「治療論からみた退行」を
「読んだが解らなかった」という精神科医師が普通に居る中で、
融合というものをどのように実践するか自体が解らない医師、心理士が
多いのでは無いのだろうか?
京大の心理臨床が行っている事を本で読んでも、多くの読者が理解できないのではないだろうか?
読者、関係者に理解できるように伝える方法を、何か考える必要が
在るのではないだろうか?
療育、治療と言っても、解りやすい「訓練」の様なことをして、主体が未成立な状態を
固定させる治療者が増えてくる事が懸念される。
6章の渡辺あさよ氏の書いた部分で、主体が未成立な為、
「断れないから閉じこもる」というのは軽度発達障害のケースに多いのだろう。
その様な相手と、手紙を使ってやりとりをして、主体が生成する方向にもっていく、
というのは、多くの人にとって、理解可能なやり方だろう。


「捕虜」 パウル・カレル著

2014-06-05 00:44:59 | 日記
第二次大戦で、ドイツが破れて、のちのユーゴで
ドイツ軍が大量に捕虜になった時に、その地域の各勢力は、
それぞれがお互いにやった虐殺、残虐行為などを、
ドイツ軍がやったことにするために、ドイツ軍の将校を拷問して
自分が部下に命じてやらせた、との調書にサインさせたそうだ。
サインを拒んでも、大量の将校の捕虜がいるので、
拷問して死んでも、いくらでも替えがいるので、
構わずに拷問していたとのことだ。
そのようにして、ユーゴとしてまとまって、ソ連に対抗したそうだ。
その様なやり方でまとまったということが、のちにソ連が無くなった時に
各民族間で反目しあいだして、ユーゴ紛争になった遠因ではないだろうか?
佐藤優氏が、ユーゴが社会主義の間に歴史教育をあまりしなかったことが、
ユーゴ紛争の原因の一つではないかと書いておられたが、
そのようにドイツがやったことにしてまとまった事が、
後の歴史教育をしにくくする原因の一つではなかったのではないのだろうか?