<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

まつろわぬ青春の日の行方(3) <ウチアゲ>

2017-06-04 11:54:11 | 「学生時代」
 この講座は、とにかく「打ち上げ」が多かった。付属農場があったといっても、それは研究のための農場です。確かに、ハウスには大豆やら赤クローバーやらが植えられたポットがたくさん並べられてありました。何の研究かはわからなかったのですが、白いクローバーしか知らなかった私には赤クローバーを見て「研究」っぽい感じがしたのを覚えています。だけど、我々が行くのは露地の方で、そちらには普通の作物が栽培されていたように思います。というのは、ほとんど記憶がないのです。覚えているのは2つだけで、一つは耕運機を運転したこと。これは生まれて初めての体験でした。もう一つは農場の通路に芝生を植えたことだけです。この日のウチアゲは寿司でした。作業終了後、出浦先生がみんなに「何がいい」と聞いたとき、私が「寿司」と言ったそうで、私にはそんな記憶はないのですが、「お前が言った」という同期の伸明の話では、先生は「いいよ、いいよ」と言いながら少し焦りぎみだったということです。
 それはそうかもしれません。食べ盛りの学生が5,6人もいれば半端な額では収まらないでしょう。その割には、私は何度か寿司を食べた記憶があるのです。ウチアゲの後、寿司屋に行って、誰かの下宿で、みんなでごろ寝ということもありました。もちろん、お金を払った記憶はありません。誰かが払っていたのでしょう。おそらく院生がなけなしの金をはたいたのではないかと思います。
 収穫のあったときにはウチアゲがあります。収穫のないときでも「作業」をしたということでか、後はウチアゲです。当然のことながら準備は講座の4回生の仕事です。何をしたのか、今では忘れてしまいましたが、煮炊きを始めるとすぐに、研究室のドアがバタンと開き、津田先生が飛び込んでくるのです。津田先生の属する農薬の講座は土壌肥料の隣にあり、煮炊きと同時にその匂いが廊下伝いに漂い始めるようなのです。その匂いをキャッチすると先生はもう仕事どころではなくなるようでした。しかも、その速いこと、風の如し、ですが、匂いは廊下から階段を上り全館に広がって行ったはずなのに、やって来るのは津田先生ただ一人で、他には誰も来ません。学部内には、土壌肥料という講座は要らないんじゃないかということをいう人もいるようでした。
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