<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

ゴマスリッキー

2021-12-24 09:24:11 | 「遊来遊去の雑記帳」
ゴマスリッキー     <2003.9.19>
 これは、プラスチック製の胡麻(ごま)を擂(す)るための台所用品の名前です。そのものずばりのネーミングですが、カタカナにすると、胡麻という伝統食品的なイメージが払拭され、容器がプラスチック製ということもあってか、ちょっとモダンな健康食品という感じになるのはおもしろいと思います。個人的には伝統的な雰囲気の方が好きなのですが、何しろとても便利です。胡麻をするとき、前は、すり鉢は大きすぎるので代わりに乳鉢を使っていたのですが、手軽さの点からも軍配はスリッキーに上がるでしょう。それで乳鉢はというと、今は玄米に混じっているモミを剥がすのに使っています。
 スリッキーは、おそらく、100円くらいのものだと思いますが、ずいぶん昔からあるので自分で買ったのか誰かにもらったのか覚えていません。形は、ちょうど、大阪万博の会場にあった「太陽の塔」に似ていて、その胴に当たるところに胡麻を入れて、丸い顔のところで胡麻を擂るようになっています。高さは12cmくらいでしょうか。きちんと専用のキャップも付いているので、必要なときキャップを外して顔の部分をカリカリッと回すと簡単に胡麻が擂れるというわけです。
 この前、胡麻を擂ろうと手にとってカリッカリッとやっていたときのことでした。私は思わず手を止めて胴の部分を覗き込みました。胡麻の入った胴の中に小さな蛾がいるのです。よほど驚いたのでしょう、3匹がばたばたと飛び回ってます。今まで静かだったところがいきなり動き出しただけでなく、胡麻が弾丸のように空間を飛び回るのですから地震どころの騒ぎではありません。蛾にとってもそうでしょうが、私にとってもこれは大変なショックでした。こんなに大騒ぎをしてしまっては狭い容器の中は蛾の鱗粉だらけでしょう。2,3日前にも私は胡麻を食べました。だから、大丈夫であることは間違いありませんが、これを見てしまってはもう食べる気にはなれませんでした。
 中身を庭に捨ててゴマスリッキーを洗いながら私は不思議でなりませんでした。いったいどうして殆んど密閉してある容器の中に蛾がはいることができるのか。生物の能力の凄さは想像を超えていると思います。
1) 容器に蛾の体が入る隙間はない。
2) 蛾がいることは事実なのだから容器の中に卵があったと考えられるが、卵を産むためには親の蛾が容器の中に入らなければならない。
3) 初めから胡麻といっしょに蛾の卵が入っていたとしても、炒り胡麻なので卵には熱が通っているはずだ。
4) とすると、胡麻工場で熱処理が終わった後、袋詰するまでの間に蛾が飛んできて胡麻に卵を産みつけたのか。
 この謎を解けばきっと最先端技術のヒントになるだろうと思います。どなたか挑戦されては如何でしょうか。
 それにしても栄養のある胡麻をたっぷり食べて成長はしたものの蛾は容器の外に出ることはできません。これではまるで飼い殺しです。やはり蛾の知恵はこの程度のものなのかと考えていたとき、突如として頭に閃いたのは、『蛾は生きているぞ』ということでした。私は、容器の中身をすっぽり庭に捨てたので蛾は容器の外に出ることができたのです。もしかすると、蛾はこのことを見越していたのかも知れません。生物の世界では生き物どうしがお互いに利用し合うということは珍しいことではありません。恐るべき生物の知恵に脱帽です。
 とは言うものの、この行動が本能として遺伝子に組み込まれているとすれば、脱出した蛾は、これから次の卵を産むために胡麻工場を目指してはるばる旅をすることになるのでしょうか。

★コメント
 この謎は今も分かりませんが、蛾というのは米などにつくノシメマダラメイガです。これは夏場にはいつも発生するので、そうすると、あと考えられるのは、卵から孵ったばかりの小さな幼虫がゴマの匂いに導かれてゴマスリッキーに辿り着き、もそもそ探りながら隙間を見つけて中に入り込むということです。それならゴマスリッキーを厚手のポリエチレンの袋に入れて口を閉めておけば侵入を防げるかも知れません。
 この件以来、ゴマスリッキーは使わなくなったのですが、先日納屋で見かけました。この際、試しに復活させてみようかなと思います。こういうことがあるので、ガラクタは置いておくと楽しいのです。ガラクタでいっぱいの納屋には、母屋とはまた違った心地良さがあります。子供の頃に納屋で遊んでいたときの心象風景が重なるのでしょうか。とはいうものの、少しずつ片付けなければいけないことは分かっています。
2021年12月24日


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