<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

なめくじ飛ばし

2022-03-29 10:27:59 | 「遊来遊去の雑記帳」
なめくじ飛ばし     <2003.11.3>
 梅雨あたりから秋雨のころまで台所の流しのあたりにナメクジが出て来ます。これにはほとほと困っています。何処から来るのか分かりません。下水の出口から入ってくるのかも知れないと思い、前にそのまわりに塩を一面に撒いたことがありましたが、一向に効き目はありませんでした。
 ナメクジは明るいうちは出てきません。台所に電気が点いているときにも出てきません。電気を消して何時間かして、それからぱっと電気を点けるといるのです。それを、専用のスプーンですくい取り、隣の部屋の窓を開け、そこから畑に投げ捨てるのですが、これがそんなに簡単ではないのです。
 ナメクジの粘液はねばねばしているのに、それに水がつくと急につるつるになるのです。それで、スプーンに乗せて隣の部屋まで移動する間もスプーンを水平に保たなければなりません。ちょっと傾けるとつるりと床に落ちてしまうので気を付けましょう。下に落としたら大変です。まあ、このあたりは大丈夫なのですが、一番危険なのは窓を開けるときなのです。目はスプーンのナメクジから離さないようにしながら片方の手で窓の戸を横に滑らせるのですが、古い家なのでちょっと力がいるのです。それでスプーンを持った手に力みがいかないように注意しながら窓を引くのですが、時々引っかかることがあるのです。その瞬間に反動がスプーンにくるとナメクジを部屋の中にはじき飛ばすことになるのでよくよく注意しなければなりません。
 窓を開けてからは手早くしないと蚊が入ってきますが、できるだけ遠くに飛ばすにはどうしてもゆっくりしたモーションが必要なのです。あわてるとスプーンだけ振ってしまい、肝心のナメクジは真下に滑って落ちてしまうのです。それで弧を描くように前後に3度ほど大きくゆっくり振って、その間に、オーバースローでいくかアンダースローでいくかを決めなければなりません。それで3度目にナメクジの体重をスプーンで受け止めながら速やかに加速してから急停止します。するとナメクジだけが夜の闇に吸い込まれていくというわけです。
 決して好きでこんなことをしているわけではありません。殺すよりは新生活のチャンスを与えたいと思うからなのです。ナメクジもこれまでのしがらみと縁を切って、きっとせいせいしていることでしょう。

★コメント
 今の家では3月の初めにナメクジが出てきたこともあります。台所だけではなく風呂の横の脱衣場にも出てきます。そこは洗面所にもなっているので気を付けていないと踏んでしまうことがあります。スリッパを履いているとはいえ、踏み潰すのは嫌な気分で、あとの処置も厄介です。
 危ないのは夜と朝なので、見つけると、今は割り箸をナメクジ専用に常置してあるのでそれでつまんで外に捨てます。ところがこれもスプーンのときと同じで、挟むとナメクジは体から水分を出すようで、つるつるになり滑って下に落としやすいのです。それでそっと挟んで箸に乗せるようにするところがコツになります。
 朝は最初にまな板を確認します。どういうわけかナメクジはまな板が好きなようで、流し台に直接当たらないようにして置いていても何処からか回りに回ってやってくるようです。前にナメクジが3cmほど背伸びをしてまな板に上ろうとしているところを目撃したこともあります。それで今では諦めて、朝はまず、また板を調べ、跡があればタワシでこすって洗うことにしています。

 共生するということは何にしても大変です。最近、畑に鹿が来るようになりました。畑は家の横なのに、足跡がいっぱいついています。動物や植物のとの共生が大変なことは知っていましたが、言葉を使って話のできる人間どうしの方が桁違いに深刻だということを、今回のロシアのウクライナ侵攻で知りました。人類の歴史の中では数限りないプロパガンダがなされてきましたが、常に自己を正当化せずにはいられないところが異様です。人類の歴史の至ったこの現実。何とかできないのか。心が潰れます。
2022年3月29日


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