<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

ケロちゃん

2018-06-30 09:02:52 | 「遊来遊去の雑記帳」
ケロちゃんの大ピンチ!      <2002.9.1>
 小雨の中を車で走っていると、いきなりフロントガラスの上にアマガエルが飛び出しました。これはよくあることです。家に車を止めておくと庭にいるアマガエルが車のいろんな隙間に潜り込んで、そこでただじっとしているのです。何をしているのかわかりませんが、中には体の色まで変えているものさえいます。虫が近くに来るのを待っているのかも知れません。
 車を運転しているとそのアマガエルがぴょんと飛び出すことがあります。そんなときは車から落ちないかはらはらしますが、当のアマガエルは平気でツンと澄ましています。実際、自分でジャンプしない限り落ちることはまずありません。
 今回はフロントガラスにピタリと張り付いていたので心配はありませんでした。ところがそこにいきなりワイパーが動いてきたのです。小雨だったので間欠ワイパー(時々動く状態)にしてあったのでした。あっと思ったがもう遅かった。下から上がってきたワイパーはアマガエルを巻き込んで一気に元の位置に戻ってしまいました。見ると、あわれにも白い腹をこちらに向け、足と顎が巻き込まれて後ろに反り返り、まるで逆エビ固めの状態です。ぴくりとも動けず、もちろんギブアップもできません。恐るべきワイパーの早業でした。
 私はとっさにワイパーのスイッチを切りましたが、このままでは拷問です。すぐに車を止めたかったのですが、そこは旧街道で道が狭くしかも車の通りも多いので止めるわけにはいきません。とにかく家並みを抜けなければなりませんでした。2,3分の辛抱ですが、これはアマガエルにとっては永遠の長さに感じられたかも知れません。とにかく急いで抜けて車を路肩の空き地に止めました。
 私は、もしかするともう背骨が折れているかも知れないと思いながら車から降りて前に回りワイパーを持ち上げました。すると次の瞬間、アマガエルの体がくねくねと動くが速いか、もう蛙特有のおすわりポーズを決めているのです。まるで形状記憶合金です。私があきれて指でアマガエルを軽く突っつくとぴょんと飛んで草むらに消えました。

★コメント
 ちょうど去年の今頃のことですが、この話に音楽をつけてギター朗読作品に仕上げようと考えました。すぐにできると思ったのですが、いまだに全く進んでいません。何故だかわかりませんが、できるときには先に先にできていくような気がします。そしていったん止まるとテコでも動きません。そういうときには『まだ時が満ちていない』と考えるようにしているので、忘れたり思い出したりしながら力を抜いて保持し、時が満ちるのを待つことにしています。そのうちに多くは忘れ去ってしまうのですが、何かの拍子に見つかることがあります。多くは片付けや捜しものをしているときなどに出くわすのですが、そんなときにはつい読んでしまうので作業はそこで中断となります。不思議なもので、そこから一気に動き出して仕上がる場合も珍しくなく、先日も「ラグリマ事件」というものを仕上げたのですが、これは技術的にも発想的にも今でなければ書き上げられないものでした。15年ほど前に書こうとして一歩も動かなかったものが今回はあっという間にできたのです。
 「ケロちゃん」もそうならないかなぁと期待しているのですが、今のところ動きはありません。
2018.6.30

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オンブバッタ

2018-06-02 09:12:01 | 「遊来遊去の雑記帳」
 <2002年9月30日に投稿>
 稲の刈り入れの終わった今はあっちでもこっちでもバッタをたくさん見かけます。農道を歩いていくとたいていは飛んで逃げますが、バッタの飛び方はどうも不器用に見えます。羽を広げて飛ぶところまではいいのですが、行く先も本当に自分で行きたかった方に向いて飛んでいるのかあやしい気がします。とりあえず飛んではみたもののバランスを取ろうしてもがいているうちにもう地面が迫ってきたという感じです。だから着地のとき失敗して横向きに転がったり、ときには頭から落ちるのを見ることさえあります。そのたびにずいぶん身体が頑丈にできているんだなあと感心しています。
 先日、すごいバッタを見ました。土手の道の真中は轍の間になるので草が生えているのですが、そこのところに背中に2匹をおんぶしたトノサマバッタがいたのです。一番下は身体の大きな頑丈そうなバッタでした。その上に1匹乗り、さらにその上にもう一匹が乗っていたのです。私も三段になっているのを見るのはこれが初めてでした。いかにも物々しく、まるで軍艦のようでした。
 私がゆっくりそちらに近づいていくと、バッタはじわじわと身体を動かし、それから一気にジャンプしました。3匹は一体になったまま50cmくらいの高さまで飛び上がり、それからぐるりと回転して背中から地面に落ちました。一番上に乗っていたバッタはかわいそうに地面に叩きつけられたばかりでなく他の2匹のクッションにもなったわけで、人間なら内臓破裂というところでしょう。それなのにそのバッタは平気な顔でしがみついています。そのとき一番上で逆さまになっている大きなバッタが足をもぞもぞとさせました。すると全体はごろんと転んで一番はじめの状態に戻ったのです。
3匹は3段になったまま何事もなかったかのような顔をしています。やはり重過ぎたのだなあと思いましたが、それにしてもたいしたものです。近づくとまたジャンプしそうな気配だったので私はそこで引き返すことにしました。

★コメント
 子供の頃にはよくバッタを捕まえて遊びました。米つきバッタは大きな長い足の先を2本揃えて掴みます。するとバッタは胴体を上下させるので、杵で米や餅を搗いているように見えるのです。子供はそれを見ておもしろがっているだけですが、バッタはどうだったのでしょうか。子供にはそれがわかりません。そんなことをしなくなるときがヒトに目覚めるときかなと思います。そのとき初めてその残虐性に気付くわけですが、そこを通過した時点でないと気付けないというのは意味深長です。悔悟の念を伴わない教養は時に脆く感じます。
2018年6月2日

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