<遊去の話>

「遊去の部屋」「遊来遊去の雑記帳」に掲載した記事と過去の出来事についての話です。「遊去のブログ」は現在進行形で記します。

オンブバッタ

2018-06-02 09:12:01 | 「遊来遊去の雑記帳」
 <2002年9月30日に投稿>
 稲の刈り入れの終わった今はあっちでもこっちでもバッタをたくさん見かけます。農道を歩いていくとたいていは飛んで逃げますが、バッタの飛び方はどうも不器用に見えます。羽を広げて飛ぶところまではいいのですが、行く先も本当に自分で行きたかった方に向いて飛んでいるのかあやしい気がします。とりあえず飛んではみたもののバランスを取ろうしてもがいているうちにもう地面が迫ってきたという感じです。だから着地のとき失敗して横向きに転がったり、ときには頭から落ちるのを見ることさえあります。そのたびにずいぶん身体が頑丈にできているんだなあと感心しています。
 先日、すごいバッタを見ました。土手の道の真中は轍の間になるので草が生えているのですが、そこのところに背中に2匹をおんぶしたトノサマバッタがいたのです。一番下は身体の大きな頑丈そうなバッタでした。その上に1匹乗り、さらにその上にもう一匹が乗っていたのです。私も三段になっているのを見るのはこれが初めてでした。いかにも物々しく、まるで軍艦のようでした。
 私がゆっくりそちらに近づいていくと、バッタはじわじわと身体を動かし、それから一気にジャンプしました。3匹は一体になったまま50cmくらいの高さまで飛び上がり、それからぐるりと回転して背中から地面に落ちました。一番上に乗っていたバッタはかわいそうに地面に叩きつけられたばかりでなく他の2匹のクッションにもなったわけで、人間なら内臓破裂というところでしょう。それなのにそのバッタは平気な顔でしがみついています。そのとき一番上で逆さまになっている大きなバッタが足をもぞもぞとさせました。すると全体はごろんと転んで一番はじめの状態に戻ったのです。
3匹は3段になったまま何事もなかったかのような顔をしています。やはり重過ぎたのだなあと思いましたが、それにしてもたいしたものです。近づくとまたジャンプしそうな気配だったので私はそこで引き返すことにしました。

★コメント
 子供の頃にはよくバッタを捕まえて遊びました。米つきバッタは大きな長い足の先を2本揃えて掴みます。するとバッタは胴体を上下させるので、杵で米や餅を搗いているように見えるのです。子供はそれを見ておもしろがっているだけですが、バッタはどうだったのでしょうか。子供にはそれがわかりません。そんなことをしなくなるときがヒトに目覚めるときかなと思います。そのとき初めてその残虐性に気付くわけですが、そこを通過した時点でないと気付けないというのは意味深長です。悔悟の念を伴わない教養は時に脆く感じます。
2018年6月2日
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