「ん?」
振り返った黒木典が見たのは、糸井直美の後ろ姿だった。
キョロキョロと、辺りを窺うような仕草をしている。
何してんだろ?
直美は人目が無いことを確認し、図書館の方へと歩いて行った。
典は彼女に見つからないように、少し離れて直美の後をつけて行く。
図書館の裏で、直美は立ち止まった。
そしてそこに置かれているゴミ箱の前で、自身の鞄をゴソゴソする。
すると直美は、鞄から何かを取り出した。
典が目を凝らして見たところ、それはプリントのようだ。
典は直美に向かって声を掛けようと、一歩踏み出した。
「え?直美さ‥」
その時だった。
ビリッ!ビリッ!
直美は持っていたプリントをビリビリと破くと、そのままゴミ箱に全て捨てた。
そして足早にそこを去ったのだ。
直美の姿が見えなくなるのを確認してから、典はゴミ箱の方へと駆け寄った。
大量のゴミの上に、先ほど直美が捨てたプリントが乗っている。
典はその中の一片を取り出し、そこに書かれた文章を読んでみた。
そこには「決定変数」や「生産調整」など、どこかで目にした言葉が並んでいる。
思わず典の片眉が上がった。
「これは‥?」
このプリントにまつわる記憶が脳裏に浮かぶ。
あたし達が蛍光ペンでチェックした過去問じゃない?海が居た時の‥
どうして直美さんが自分のコピーを持ってるの‥?
まず感じたのは、そんな違和感だった。
しかしそのプリントの紙片を見れば見るほど、別の違和感が広がって行く。
「あれ‥?これって‥」
典はゴミ箱に手を入れ、別の紙片を何枚か取り出し、その全てに目を通した。
感じた違和感が、だんだんとある確証へと変わって行く。
「やっぱり、直美さんの字じゃない!」
それが違和感の根源だった。
これは、直美さんの字じゃない。
となると、別の人間が持っていた物ということになる。
「え、どういうこと?ありえないんだけど」
紙片をめくる手が、微かに震えていた。
心の中にある直美の姿が、だんだんとぼやけていく。
「そんな人だったの?」
ビリビリに破かれたプリントのように、直美への信頼が千切れて行く。
そして今まさに起こったこの出来事は、雪が仕掛けた勝負の結末だった。
時々ジャックポット‥大当たりが出ることもある。
勿論、それが全ての人に該当するわけじゃない。
同じ頃、河村亮は電話を受けているところだった。
社長吉川は、濁声を響かせながら亮に向かって釘を刺す。
「コンクールの準備は順調か?つーかその賞金って鼻クソ程度なんだってなぁ。
あぁ、冗談だよ。俺ぁお前と一緒に行くことにしたからよ、お前の金には手は出さねぇよ」
私達はいつも
亮の視線の先には、ピアノの鍵盤があった。
昔は夢も希望もその全てがそこにあり、その先に未来が広がっていた。
「お前が一体どうやって金稼げるってんだよ?俺と一緒に行くしかねぇだろ?
ヒッヒッヒッ‥」
無謀な勝負をしたことを後悔する時があり、
挑戦すらせずに未練が残る場合もあるから
低い声が、ビリビリとノイズを鳴らす。
亮は電話を切ると、ただその場で沈黙した。
「‥‥‥‥」
同じくあの人も、あの時は‥
現れたジャックポット。
笑うのは、一体誰?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<Jackpot>でした。
遂に犯人が明らかに‥!
そして直美はなぜ学校で捨てたのか‥。ツメが甘すぎますね
次回は<無茶な要求>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
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振り返った黒木典が見たのは、糸井直美の後ろ姿だった。
キョロキョロと、辺りを窺うような仕草をしている。
何してんだろ?
直美は人目が無いことを確認し、図書館の方へと歩いて行った。
典は彼女に見つからないように、少し離れて直美の後をつけて行く。
図書館の裏で、直美は立ち止まった。
そしてそこに置かれているゴミ箱の前で、自身の鞄をゴソゴソする。
すると直美は、鞄から何かを取り出した。
典が目を凝らして見たところ、それはプリントのようだ。
典は直美に向かって声を掛けようと、一歩踏み出した。
「え?直美さ‥」
その時だった。
ビリッ!ビリッ!
直美は持っていたプリントをビリビリと破くと、そのままゴミ箱に全て捨てた。
そして足早にそこを去ったのだ。
直美の姿が見えなくなるのを確認してから、典はゴミ箱の方へと駆け寄った。
大量のゴミの上に、先ほど直美が捨てたプリントが乗っている。
典はその中の一片を取り出し、そこに書かれた文章を読んでみた。
そこには「決定変数」や「生産調整」など、どこかで目にした言葉が並んでいる。
思わず典の片眉が上がった。
「これは‥?」
このプリントにまつわる記憶が脳裏に浮かぶ。
あたし達が蛍光ペンでチェックした過去問じゃない?海が居た時の‥
どうして直美さんが自分のコピーを持ってるの‥?
まず感じたのは、そんな違和感だった。
しかしそのプリントの紙片を見れば見るほど、別の違和感が広がって行く。
「あれ‥?これって‥」
典はゴミ箱に手を入れ、別の紙片を何枚か取り出し、その全てに目を通した。
感じた違和感が、だんだんとある確証へと変わって行く。
「やっぱり、直美さんの字じゃない!」
それが違和感の根源だった。
これは、直美さんの字じゃない。
となると、別の人間が持っていた物ということになる。
「え、どういうこと?ありえないんだけど」
紙片をめくる手が、微かに震えていた。
心の中にある直美の姿が、だんだんとぼやけていく。
「そんな人だったの?」
ビリビリに破かれたプリントのように、直美への信頼が千切れて行く。
そして今まさに起こったこの出来事は、雪が仕掛けた勝負の結末だった。
時々ジャックポット‥大当たりが出ることもある。
勿論、それが全ての人に該当するわけじゃない。
同じ頃、河村亮は電話を受けているところだった。
社長吉川は、濁声を響かせながら亮に向かって釘を刺す。
「コンクールの準備は順調か?つーかその賞金って鼻クソ程度なんだってなぁ。
あぁ、冗談だよ。俺ぁお前と一緒に行くことにしたからよ、お前の金には手は出さねぇよ」
私達はいつも
亮の視線の先には、ピアノの鍵盤があった。
昔は夢も希望もその全てがそこにあり、その先に未来が広がっていた。
「お前が一体どうやって金稼げるってんだよ?俺と一緒に行くしかねぇだろ?
ヒッヒッヒッ‥」
無謀な勝負をしたことを後悔する時があり、
挑戦すらせずに未練が残る場合もあるから
低い声が、ビリビリとノイズを鳴らす。
亮は電話を切ると、ただその場で沈黙した。
「‥‥‥‥」
同じくあの人も、あの時は‥
現れたジャックポット。
笑うのは、一体誰?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<Jackpot>でした。
遂に犯人が明らかに‥!
そして直美はなぜ学校で捨てたのか‥。ツメが甘すぎますね
次回は<無茶な要求>です。
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雪ちゃんの策略ドンピシャだけれど、皆に噂流れたあたりからなんだかなあって…
昔の直球な雪ちゃんが懐かしいです。
亮さんの茫然とした背中がせつない。
前途洋々だった高校時代、あの事件さえなければこんなことには…
先輩がこんなにも亮を排除しようとするのは、雪ちゃんを取られたくないと同時に、好意を仇で返された恨みと自分がした仕打ちの罪悪感を見たくらいからなのかと思うけど、それなら殴りあいするより腹を割って話し合って欲しかった…
もう和解の糸口はみあたらないですかね…
事件の引き金になったと思うチクリもこれから何か事が起こるのも静香が引き金な気がする…
盗んだ犯人を放置したくはないとはいえ、雪ちゃんたら、面倒な人を駒にしたんじゃないかしら・・・。
静香からは置いていかれるんじゃないか、変わりたいけど変われないという焦りみたいなものを感じました。
亮が自分から離れていかないように必死な感じが苦しいです。
たった一人の肉親ですしね・・・。
でも自立して欲しい・・・。
全てが自身の選択であり、その責任は自身にある。
どうなるか分からない未来にどうすべきかのマニュアルはない・・・。
「賭け」から続く雪ちゃんのモノローグが、亮にも静香にも蓮にも直美にも典にも
皆の行動にヒタヒタと迫ってくる、凄い雰囲気です。
自分の行動の責任は自分にあると、多分、みんなそれなりに“判って”いるのでしょうけど、
蓮と静香と、特に典さんにはその覚悟が見えなくて、
行動の責任を自身のものと思わない思慮の浅さがまた面倒なことを起こしそうで・・・。
淳くんの出番が待ち遠しいです。
まとまらず失礼しました。
せめて学校のシュレッダー
典ちゃんはグッドチョイスですね
ある程度口が軽い人に言わないと効果ないですから
そこで情報ストップじゃ今回の場合その後動かなくなりますからね
どんぐりさんは典ちゃん何かすると考えます?
何かは勿論するでしょうが物語を動かす駒の一つかなーくらいしか思ってなかったです
雪ちゃんにとっては、雪ちゃんが考えていたよりも大きく効果・影響が出ちゃうのではないかなーと。
先輩のようにクールに美しくはいかないと予想(期待?)しています。(^^ゞ
明日はもう大晦日ですねぇ~
師匠!皆さん、良いお年を!
直美さんの器の小ささが顕著になってしまった回ですよね~。
でもそう仕向けた雪ちゃんは本当先輩に似て来たな‥と思います。。
淳と亮はもう和解は無理そうですよね~‥。
亮の左手事件も、静香がキーを握ってそうです。早く真相が知りたいですね~
どんぐりさん
雪のモノローグは、雪以外は皆どこか「他人事」に思っているんじゃないか?と私も思いました。自分がこうなったのはあの人のせい、世間のせい、環境のせい‥。
そうやって甘えてるんですよね。
いや~チートラって、身につまされる話ですよね‥。
しかしもう明日は大晦日‥!(白目)
どんぐりさんも良いお年をお迎え下さい!!
むくげさん
どうして大学で捨てたんでしょうねホント‥。ちょっとご都合主義が垣間見えた直美の行動‥。