喜劇な日々

名古屋の劇作家、鹿目由紀のほんの少しだけ喜劇的な毎日を、綴ります。

ぼくを探しに

2007-03-05 00:36:48 | 読んだ本のこと
今、書いているホンの参考資料として『ぼくを探しに』を探しに行った。
ラシックの旭屋書店には丁度在庫がなくて、代わりに続編『ビッグ・オーとの出会い』を購入。
『ぼくを探しに』は高校の時に読んで、大好きになった童話。
続編の存在と内容は薄々知っていたが、きちんと読んでみるとこれもまた、大好きだ。
倉橋由美子の訳がまた、すうっと心に入ってくる。
今の歳になってから読むと、染みてくる箇所がまた違う気がする。
下手すると深く染み入りすぎて、ヒリヒリします。それだけひずんできたのか、私。
シルヴァスタインの他の本が欲しくなりました。
訳者あとがきで、倉橋さんは「この本は男と女を表していると捉えられる」と書いている。
そう思って読むとそれはそれで楽しく、でもって「あららぁ…そうよねぇ」と思ったりもする。
『大人のための童話』と記されているのも納得。いや正確には『大人の中の子どものための童話』。
参考資料としてより、我が癒しとして、これから末永く助けてくれそうな、ありがたい本。

読書と安定

2007-02-04 01:06:51 | 読んだ本のこと
一人であれやこれや考えていたら、どうしても他の物に触れたい欲求が高まった。
そういう時に必要なのは、私の場合は本か映画である。
かといって、映画を観に行くような暇は、あらすじを書き上げなければ、ない。
かといって、書くために、何かに触れたいわけであり。
ということになると手っ取り早いのは、本である。
ちなみに、『マリー・アントワネット』と『愛の流刑地』は観たいです。
キルスティン・ダンストと寺島しのぶが大好きなので。

近所の小さい本屋で物色。品揃えは良くない。
良くないくらいの方が、迷わず選べるので好きだったりする。
購入したのは、向田邦子『思い出トランプ』と松本清張『渡された時間』。
どちらも好きな作家。
向田邦子の方は短編なので、気分転換に一つ、二つ読む。
この人の書く文章には、本当にドキッとさせられる。
葬式の席などでの夫が妻の話をすることに関して。

「本当は気の弱い亭主が、こういう席では見すかされまいとして、大きく羽を広げた物言いをすることもある。やましい男が人前でわざと女房を持ち上げて、罪ほろぼしをすることもある。」

向田邦子が好きなのは、残酷な捉え方をしつつも、そんな人間のダメさを愛しているから。
色んな人と出会い、恋愛し、生活し、それらを糧にして作品を生み出す力に尊敬を抱く。
欲している類の本を読むと、あちらこちらに傾いていた心が安定する気がする。
今日は、向田さんを欲していた模様。

ところで、今日(昨日)の夕方。
『舞台・中学生日記』演出の神谷さんと台本について少しお話しする機会あり。
「あなたらしいホン」というお言葉。はい。納得です。直球です。
他に、劇王の事や演出の事、役者の事などについて、色々。
神谷さんのお話には、いつも沢山の刺激を受ける。
『かぼちゃ』の稽古の最中は、役者として聞きながらも。
帰宅してお風呂に浸かりながら「これを劇団に置き換えてやるとすると…」などと、つい考える自分あり。
演出として、自分なりに取り込んで、劇団に還元したいものだ。

はてさて、そろそろ仕事に戻らねばなりますまい。

恋愛関係の類型論

2007-01-19 00:39:27 | 読んだ本のこと
以前買った雑誌を風呂で何となく読み返したら『恋愛関係の類型論』と言うのがあった。
買った時は流して読んでいたので、改めて読むと興味深い内容。
ある心理学者による研究で、恋愛関係は6つの類型に分ける事が出来るというもの。
簡単に言うとこんな感じ。

○ルダス型
恋愛をゲームとして捉え、楽しむことを大切にする。交際相手に執着はしないので、嫉妬や独占欲を示すことはあまりなく、複数の相手とも交際することができる。いずれの相手とも距離をとってつき合い、自分のプライバシーに踏み込まれる事を好まない。

○プラグマ型
恋愛を地位の上昇など恋愛以外の目的を達成するための手段と考え、社会的に高い地位に就きたいとか、よい家庭を持ちたいとか、さまざまな目的にそって恋愛相手を選ぼうとする型。

○ストーゲイ型
穏やかな、友情的な恋愛。長い時間をかけて知らず知らずのうちに愛が育まれるタイプ。自分たちも恋愛しているのに気付かないまま時が経ち、気付くと「結婚するならこの人しかいない」と思い当たるような恋愛。仲間意識に近いので、激しい嫉妬や不安はない。

○アガペ型
相手の利益を考え、相手の為なら自分自身を犠牲にすることも厭わない愛。嫉妬をしないで相手に気を遣い、自分のすることに見返りを求めない。お返しに自分を愛してくれることさえも求めない愛。

○エロス型
恋人の外見に強烈な反応を起こす恋愛。きわめて強いひとめ惚れを起こす。胸がときめき、張り裂けそうな感じになる。恋人の中に自分の理想の外見を見つけだし、相手の外見の美しさを褒め讃え、人にも話す。恋愛を至上のものと考え、ロマンティックな行動をとる。

○マニア型
激しい感情を持つ愛。独占欲が強く、憑執、悲哀などの激しい感情を持つ。強迫的で嫉妬深く、熱中し、愛されている事を繰り返し確かめたがる。相手が他の異性の話をするだけで嫉妬心に駆られ、相手の誠実さに疑いを持ったりする。不安が起こると、食欲が落ちたり、腹痛を起こしたり、身体症状が現れることがある。

いやぁ、的確な分類だと感心。
これらにも更に、『位置関係』があるそうな。
この型同士は絶対に理解し合えないとか。
自分はどれだろうと考えたが、一つの型には分類出来なさそう。
プラグマ型以外は、どれもちょっとずつ、思い当たりますな。

稽古の事を書こうと思ったけど、また今度書きます。

秋が始まり、稽古も始まる

2006-09-04 23:13:33 | 読んだ本のこと
リレー台本が先週書き上がり、稽古も始まっている。
カルマツイ『恋愛耐湿』以来の役者。大丈夫かな、私。
初のリレー方式。作家各々の色が如実に表れている。
それを一つの芝居にするわけなので。演る方はドキドキします。

川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』と安部公房『無関係な死・時の崖』を読む。
前者はニシノユキヒコと交情があった10人の女性が彼について語る話。
かなり不埒な男なのに、読んだら何故か彼が好きになってしまった。
女たちの心理にも頷いたがニシノユキヒコにも共感した。
と言うよりむしろ、いつも川上弘美の『感覚』に生理的に共感する。
安部公房は『砂の女』を大学の授業で学んだ。
その授業は好きで、熱心に聴いた。
『箱男』も面白い。しかし『無関係な死』を読んで、あまりの面白さに唸ってしまった。
ぜひとも、ご一読を。

つらつらと

2006-07-10 17:04:53 | 読んだ本のこと
 近況。
 土曜日。長い稽古。
 読み中心。とはいえ、台詞が半分までは何となく入ってる模様。
 二人の間の壁を取り払うことから始める。
 だんだんと、大久保さんが色んな手を繰り出してくる。
 山中も少しずつ調子づいて来た。
 とにかくまだ始まったばかりなのだ。

 その夜。加藤裕子嬢と飲み。
 これで1月号の女優陣と、何故かすべてサシで飲んだことに。
 この言い方で良いのか分からないが、彼女は結構天然で楽しい。
 美しくて天然ってなかなか、なかなかですよ。うん。
 明るい夜はあっという間に過ぎる。

 日曜日。
 掃除して、あれしてこれして。
 せわしい昼もあっという間に過ぎる。
 夜。思い付いた事をノートに書き留める。

 月曜日。即ち今日。
 本、雑誌を数冊購入。

 ○クイックジャパン
 ○せりふの時代 夏号
 ○桜の園(チェーホフ/岩波)
 ○点と線(松本清張/新潮)

 最初のは『劇団ひとり特集』に惹かれて。
 次のは永井愛さんの新作に惹かれて。
 『桜の園』は新潮版しか持っていなかったので。
 『点と線』は、興味と書き物の参考を兼ねて。

 本のことを書いていて思い出したが、以前想さんからいただいた筒井康隆の『銀齢の果て』が結構面白かった。

 夜は、あおきりみかんの稽古。
 実に久々で、ちょっとドキドキする。

人間を書くのだ

2006-07-04 04:09:43 | 読んだ本のこと
 江戸川乱歩、松本清張共著の『推理小説作法』を読む。
 推理小説の歴史やトリックの種類、推理小説のエチケットなど、推理小説を書くのに参考になりそうなことが、丁寧に挙げ連ねてある。
 特に唸ったのは松本清張の『推理小説の発想』。
 「“推理小説”を書くということは、まず“小説”を書くということでなければなりません」と記す清張が大切にしたのは、動機。
 人間が起こす事件には必ずその動機があり、それが人間の隠れた性格なり本質なりを表す。
 だから動機を大切に描くことが重要だと言うのだ。
 トリックばかりを描き過ぎた『推理小説』ではなく、人間をきちんと描いた『小説』を書かなければならないというのが前述の意味。
 推理小説という一見奇抜な発想で勝負しなければならない土俵でこそ、文章をリアルに書くことが重要だと清張は言う。
 これは小説のみならず、台本にも通じることだなぁと感心。
 奇抜な発想をひとつの形にするには、リアルな台詞の積み重ねが大切だったりするわけで。

 他にも、ネタを思い付く場所(混み合った電車が良いそうな)やネタ帳の書き方など、興味深いこと満載。
 サービス精神旺盛な松本清張先生。素敵。

 話は変わるが、本日ある決断をした。
 動機はある。人間ですからね。
 下半期、無事にくぐり抜けられるのを祈るばかりです。

誰しも松子になるのだ

2006-06-22 08:51:49 | 読んだ本のこと
 『嫌われ松子の一生』上下巻を読んだ。
 それで怖くなったのだ。
 女は誰しも松子になる可能性を持っている。
 彼女はただ幸せになりたかっただけなのだ。
 結果、ああいう人生になっただけなのだ。
 読み進めるごとに松子という女が凄く愛らしくて女らしくて、頭は良いくせにバカで、男にぶんぶん振り回されていて。
 だけどそれが、そうたいしたことではないと思わせてくれる魅力が彼女にはあった。
 松子の一人称の語りにおける思考の飛び方が非常に『女』で、男性作家ながらあっぱれと思った。
 もうひとつの視点である甥の笙(しょう)の語りは至極今時の男の思考回路であり、その対比が気持ち良かった。
 時たま垣間見える教訓めいた部分を除いては、非常に魅力的な話だった。
 映画は中谷美紀が主演。
 松子をどう演じているのか気になる。
 劇団ひとりが、どの男を演じているのかも気になる。
 『純情きらり』の先生役が物凄く男前だったので。

自分の言葉で

2006-02-13 13:25:02 | 読んだ本のこと
 永井愛(劇作家協会)会長の『ら抜きの殺意』を、ようやく読んだ。
 どうしても、小説から先に手をつけてしまうのだ。
 で、これがまた「おぉ」と唸る作品だった。
 一番「おぉ」と唸ったのが、『女性の言葉』についてのくだり。
 『カサブランカ』を引き合いに出しての考察は笑ったし、他人事とは思えなかった。
 そうそう、わかるわかる。
 やはり、本音でつき合おうと思ったら『自分の言葉』で話さなければ。
 自分をうまく出せずに失敗した経験を思い出した。
 そうそう。可愛い子ぶってはいけない。
 もしくは、可愛い子ぶってもそこに自分が出せるようにならなければいけない。
 かなり高度だけど。
 しかし、私の場合。究極に自分を出そうとするなら会津弁で話せば良いのか。
 無理ですね。それは。

どうしようもない、魅力

2006-02-12 19:36:51 | 読んだ本のこと
 川上弘美さんの『古道具 中野商店』を読んだ。
 この人の文体や思考は、私に馴染む感じ。
 中野商店の店主、中野さんは魅力的な人物だがちょっとした所でどうしようもない。
 スケールが小さい。だけどそれがまた、魅力。
 こういう男には少し弱い。
 そこでバイトするヒトミ(語り手)の、バイト仲間タケオに対しての心模様は、鈍く胸に響く。
 中野さんの姉マサヨ、中野さんの愛人サキ子の女っぷりの良さに胸がすっとする。
 読んだ後、ぼんやりと身近な人々のことを考える。
 呼吸をするように自然と考えてしまう。そんな力を持った川上さん特有の『人の表し方』。
 人、もしくは人づきあいの『揺らぎ』の魅力を再認識した。

これして、あれして

2006-01-31 14:28:10 | 読んだ本のこと
 昨日は、溜まっていた事を片づけた。
 とは言っても、片づけ切れてはいない。まだ序の口。
 本屋に行ったら、どうしても本が買いたくなった。
 購入したのは、2冊。
 『竹内銃一郎戯曲集2』と、永井愛さんの『ら抜きの殺意』。
 小説を取ろうとしていた手を、えいやっと戯曲に向けた。
 強い意志を持たないと、まだまだ戯曲は購入できないのである。
 寝る前に、竹内さんの『あの大鴉、さえも』を一気に読む。
 面白い。スルスルと言葉が入ってくる。
 面白いものを読むと、頭の中のモヤが晴れていく感覚がする。
 上演とは全然関係なく、1本ホンを書いている。
 読んでから、そのホンの事を思った。
 書きたい物を書けばいいのだ。ただそれだけなのだ。
 近頃、気付いたことである。