新約聖書「ヨハネによる福音書」新共同訳
１章 神の子羊
１章 神の子羊
３０ 『わたしの後から一人の人が来られる。その方はわたしにまさる。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この方のことである。
吾等は自己表現の場を求めて、
表現の場をさらに進歩向上できる場へと、
変えてゆくものと考えられる。
けれども「実相」なるものが本体であるという構図は、
不変だと考えられるから、
真理の把握は何はともあれ必要である。
真理しかないのであるから。
・此の世界なる「現世」は、生命の目的なるところの「自己表現」に対して十全なる機会を提供していないのである。
・吾等は愈々さらに自己表現を進めて行かねばならない。
（心と運命 谷口雅春）
【併しながら、人間が此の世界に於いて終には永遠に不死であると云おうとするのであるならば、自分はそれを信ずることは出来ないのである。自分はそれに就いて論ずるのを馬鹿馬鹿しくさえ思う。吾等は変化流動の世界に住む実体であるのある。此の世界なる「現世」は、生命の目的なるところの「自己表現」に対して十全なる機会を提供していないのである。吾等は愈々さらに自己表現を進めて行かねばならない。併しながら吾等は、恐らく肉体をば普通の腐敗分解の過程を経ずして他界へ移行する方法を知るに到るであろう。肉体それ自身は、「生命」即ち「心」の無意識的表現であるのである。換言すれば肉体は「想念の波」が霊魂の室として様式に顕現したものである。エリヤ、エノク及びイエスの如き地上に高く聳ゆる霊魂は、此の肉体なる「生命の無意識的皮袋」をば単純なる原質に還元して、肉体を地上に残さずして、霊的なる体を身に装う方法を知っていたかのように思われるのである。吾等人類のすべてが斯かる高き程度の力を有ち得るようになるか否かは自分は知らない。唯ここに確かなる一事は、いずれの場合にせよ「体」が全然変化すると云うことである。そして自分をして云わしむれば、吾等が肉体をば酸素、水素並びにその元素として空気中に残そうとも、或いはまた所謂る「死体」として地上にそれを残そうとも、それは吾等にとっては何等重大なことではないのである。いずれの場合にせよ、それは「様式」の死であって、「霊魂」の死ではないのである。】
死は霊魂の新世界への出生にすぎない。
別に死者が消滅しわけでもない。
吾等の愛した人達は、
他界で生きていると思えば、
死者について特別悲しむ理由なんてないのではないか。
（心と運命 谷口雅春）
【かくの如く「様式」に変化の起こるべきことは避けがたきことであって、大なる冒険を求めて向上の一路を辿る霊魂にとっては、此の「様式」の変化は寧ろ好ましきことなのである。併しながら、其れ故にとて「死」が苦痛なものであらねばならぬと云う理由はないのである。大多数の人々の場合に於いては、「死」それ自身は安易なるものであって、「死」に伴うところの苦痛も、それが心的であるにせよ、はたまた肉体的であるにせよ、その死を引き起こすに到った病気の進行中にその人が甞めたところの苦痛に較ぶれば実に物の数にも入らないのである。然らば恐らく「死」は単に絶大なる平和と甘美とを備えて人体を見舞うかも知れないのである。そして、将来の日に於いては、吾等は死のために充分なる準備を調えて、嫌がる霊魂をば、激しい辛い思いをさせて迄も地上に一日でも長く存（なが）らえさせておこうとしてビクビクしたり歎き悲しんだりする代わりに、嬉々として、愛と自己表現との他界へ移行する霊魂を見送るようになるであろう。斯様にして最早「死の床」は奪われの場面ではなく引き出物の場面となり、吾等は愛する者が分解の最後の過程に入りつつあるのだとは考えずに、霊魂の新世界への出生に最初の一歩を今ぞ踏み出したのだと考えるに到るであろう。吾等の眼の前には生命の美しき濫觴（らんしょう）が出来つつあるのである。パウロはいう。「されば兄弟よ、肉と地とは神の国を嗣ぐこと能わず・・・録されたる言葉は実となるべし。死は勝利の狼火（のろし）のうちにその姿を隠さん。オオ墓よ、汝の勝利はいづくにかあらん。オオ死よ、汝の棘はいずくにかあらん。」】