人間の“生命の実相”というものが、
その人を生長させるための智慧と愛と生命、そして供給を、
一切叶えようと準備の状態にあるという真理を、
この男はまだ知らないのであって、
「実相が独在する」という大真理は
本当に人類救済の真理であるにしても、
伝道には時間がかかるのである。
マン女子のような指導者が
まだまだ少ないからである。
(祈りの科学 谷口雅春)
【この男はまだ本当に神の存在を知らなかったし、祈りや希望をききたまう所の何か偉大な目に見えざる存在があるということも知らなかった。そこでマン女子はいった。
「それではあなたは種の中に自分の欲する目的に生長して行くために地面や日光や、空気や水等から、その必要なものを吸収するために働いている力があるということを信ずることができますね?」
「無論」とその男は、さも当然のことだと云わんばかりにいった。
「無論のこと種の中には牛や鶏が食物を求めてそれを食べるようなそれと同じような智慧が宿っているということは知っていますよ。どんな家畜だって自分が生きて、だんだん生長して鶏は鶏になり、牛は牛となるというにはどうしたらいいかということを知っていますよ。植物だって同じことですよ。」
「では」とマン女子はいった。「小麦や牝鶏(めんどり)や仔牛が生きて行くに必要な智慧をもっているそれと同じだけの智慧を人間がもっているということを信じませんか?」
その男は極めて静かではあったが、一寸笑って、そして言った。
「あんなものでもどうすれば生きるかと知っているなら、人間たる私がもっともっとよく知っている筈だとあんたはおっしゃるんでしょう。しかし現実の問題として、私には職業がないんです。どうしたらいいか私は知らないのです。」】