箱根は東京から2時間以内に行ける観光地です。小田急のロマンスカーだけでなく新幹線の小田原駅乗換えで湯本や強羅に簡単に行けます。湯本から芦ノ湖、仙石原、宮ノ下、大涌谷などなどへは頻繁にバスやケーブルカーが出ていて交通が至極便利に出来ています。勿論、車で行っても便利です。
自然の中の散策が好きなら芦ノ湖畔の遊歩道や仙石原の広大なススキ原があります。そして仙石原には魅力的な湿性植物園があります。
東海道の歴史に興味のある人のためには箱根の関所の建物が精巧に復元されています。往時の杉並木もあります。
芸術の好きな人のためには箱根彫刻の森美術館やポーラ美術館や成川美術館や岡田美術館があります。
ヨーロッパの香りがする工芸品の展示場として箱根ガラスの森美術館と箱根ラリック美術館もあります。
そして星の王子さまミュージアムもあります。
これら全てをご紹介するわけにはいきませんので、今日は気楽に楽しめる箱根ガラスの森美術館と箱根ラリック美術館だけを簡単にご紹介したいと思います。
この2つは近くにあります。共にヨーロッパの工芸品が展示してあります。敷地全体に散在する建物が古いヨーロッパの街のような雰囲気をかもしだしているのです。古い町を散歩しながら昔の工芸品を見て楽しめるのです。
箱根ガラスの森美術館はヴェネチアのガラス工芸の美を集めた美術館です。なにか世紀末の退廃への道行きを暗示するような展示物が丁寧に蒐集されてあります。
以前訪れた時の写真でまず箱根ガラスの森美術館の風景写真をお送りいたします。
1番目の写真は箱根ガラスの森美術館の園内の風景をカフェの階段の上から撮った風景です。向かいの建物はヨーロッパのガラス細工のお土産店です。
2番目の写真は園内の散歩道を3人の家族連れが楽しそうに歩いている風景です。
3番目の写真は園内にあるヴェネチアのガラス工芸品の展示場の建物です。
4番目の写真はヴェネチアのガラス工芸品の展示場の内部の様子です。愚妻が楽しそうにしています。
次に箱根ラリック美術館をご紹介します。
ルネ・ラリックは20世紀初頭に活躍したフランスのガラス工芸家です。
日常使うガラス食器や花瓶から装身具、室内装飾用のガラス壁の彫刻など、その作品は多種多様です。そのどれもが藝術性を感じさせます。
それらの作品を集めたのが箱根ラリック美術館です。
その上、ルネ・ラリック・ミュージアムにはオリエント急行の車両もあります。
ルネ・ラリックが作った室内の装飾用のガラス壁が見事です。その壁や電燈の笠を展示するために車両ごと日本へ運んで来たのです。
車両内ではコーヒー・紅茶とケーキを楽しみながら寛げます。1929年製の車両でパリとニースの間を1990年まで走っていた車両です。毎月1回はトルコのイスタンブールまで行っていたそうです。
この一輌だけを輸入して船で運んで来ました。下に、サロンカーの写真をお送り致します。
5番目の写真はパリとニースの間を1990年まで走っていた車両です。
鉄道ファンには興味深い車両ではないでしょうか?
6番目の写真はサロンカーの内部です。室内の部屋を仕切る壁にはめ込んだすりガラスの板がラリックの作品です。
7番目の写真はこの車両で使われていた食器です。座席に座り注文するとこんな感じの食器で紅茶とケーキが出て来ます。アガサ・クリスティの映画、「オリエント急行殺人事件」の場面を思い出しながらゆっくり紅茶を喫します。
8番目の写真は手持ちの信号灯です。中にランプの火を入れた当時の実用品です。
このように19世紀末から20世紀初頭にかかてのヨーロッパの文化を楽しめるのが箱根ラリック美術館なのです。
ヨーロッパの香りがする箱根ガラスの森美術館と箱根ラリック美術館の両方を見ることをお薦めします。2つは近くにある美術館です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
エミール・ガレ(1846-1904)やドーム兄弟の独創的なガラス器の作品を700点も収蔵、展示してあるのが諏訪湖のほとりにある北澤美術館です。
その展示品はフランスのアール・ヌーヴォー期のガラス工芸品です。芸術的な工芸品です。
バルブ製造会社で財をなした北澤利男氏が設立し、1983年に開館したのです。
隣にはやはり北澤利男氏が設立したサンリツ服部美術館があります。
エミール・ガレやドーム兄弟はガラス工芸の新しい技法を次々と創作していったことが素晴らしいと思うのです。深い芸術性を感じるのです。
今日は北澤美術館に展示してあるエミール・ガレやドーム兄弟の作品をご紹介いたします。
1番目の写真は一夜茸というキノコを模した作品です。高さ83cmの大きなものです。北澤美術館で非常に大切にしていて、貸し出し厳禁の展示品です。北澤利男氏が一夜茸のガレの作品が飾ってあうるパリのエッフェル塔にあるレストランに5年間通い、店主を口説き、やっと入手したガレの晩年の傑作です。一夜茸とは一晩だけ10cmくらいに成長して翌朝には朽ちて土に帰るキノコです。
2番目は何やらバラの蕾のようなものが貼り付けてあります。さかさまになっているのが異様に感じました。
3番目は花瓶に貼り付けてあるカトレアの立体的な飾りが何故か私にはその美しさが不気味に感じるられるのです。
4番目は電気スタンドの傘の上に蝶々のような模様が貼り付けてあります。
色彩も構図も普通でありません。しかし優れた芸術性が感じられます。
5番目の写真はドーム兄弟の1900年頃の作品です。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%85%84%E5%BC%9F )
これらの作品はアール・ヌーヴォー期のものと言われています。そこでアール・ヌーヴォーについて少しだけ説明します。
幕末の開国と共に海を渡った浮世絵や焼きものなど精緻をつくした日本の工芸は、ヨーロッパに強い衝撃を与えました。各地で日本ブームがおこりました。
あでやかな色使いや大胆な構図は、印象派や世紀末の工芸改革運動「アール・ヌーヴォー」に深い影響を与えました。
「アール・ヌーヴォー」とはこの新しい芸術改革運動のことなのです。ニューアートのことです。
そして「ジャポニスム」という言葉も生まれました。
こうした現象は、「アール・ヌーヴォー」の旗手、フランス北東部の都市ナンシーに生まれたガラス工芸家エミール・ガレ(1846-1904)の作品にも表れています。
色とりどりの草花が咲き乱れ、バッタやトンボの飛び交う独特の作品世界、そして自然を手本に、四季折々の風景を刻み込んだガラス作品は「ガレ様式」と呼ばれています。日本の美に注がれたガレの熱いまなざしが感じられるのです。
さて美しいガラス作品の展示場としては箱根にルネ・ラリック展示館とガラスの森の2つがあります。
ルネ・ラリックは実用性を重視し販売目的でオリエント急行の車内の装飾や美しいガラスの器やガラス壁から香水瓶、婦人用装飾品を多種多様作りました。すべて実用品ですが芸術性が感じられるのです。
ガラスの森の方はベネチア・ガラスを主にシャンデリアや花瓶や大きなガラスの器が展示してあります。古い時代のヨーロッパの絢爛豪華な品が展示してあります。
これらの展示場を見て回ると芸術には創造力と卓越した職人技が欠かせないことがしみじみと理解出来るのです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
箱根に行くと必ず「彫刻の森」という近代彫刻の野外展示場を訪問します。起伏のある緑の芝生の上に大きな彫刻が展示してあります。作品群が周囲の山々の風景と響き合って作品の美いさを引き立てています。
それでは私どもが撮った写真でこの「彫刻の森」をご紹介致します。
1番目の写真は「彫刻の森」に入場してすぐにある芝生の広場です。西洋の有名な近代彫刻家の作品が点々と展示されています。このような展示場が山の斜面を上手に利用して、他にも数ケ所あります。そしてピカソの作品だけを展示した「ピカソ館」やステンドグラスの塔や特別展示をしている本館ギャラリーもあります。その全体をご紹介するわけにいきませんので、下に私が気に入った6点の近代彫刻の写真を示します。
2番目の写真はイギリス人のヘンリ-・ムーア(1898年ー1986年)の1970年作の「横たえる像:アーチ状の足」というブロンズ彫刻です。
3番目の写真はフランス人のエミール・アントワーヌ・ブルーデル(1861年ー1929年)の1918年から1922年作の巨大なブロンズ彫刻です。右から「雄弁ー大」、「自由ー大」、「勝利ー大」、「力ー大」という題の彫刻です。
4番目の写真は同じくフランス人のエミール・アントワーヌ・ブールデル(1861年ー1929年)の1909年作の「弓をひくヘラクレス」と題するブロンズ彫刻です。
5番目の写真はスウェーデン人のカール・ミレス(1875年ー1955年)の1949年作の「人とペガサス」という題のブロンズ彫刻です。
6番目の写真はイタリア人のジュリアーニ・ヴァンジ(1931年生まれ)の2004年作の「偉大な物語」という彫刻です。
7番目の写真はフランス人のオーギュスト・ロダン(1840年ー1917年)の1898年作の文豪バルザックのブロンズ彫刻です。
彫刻の森に展示されている作品は膨大です。その作品一点、一点の詳しい紹介は、https://www.hakone-oam.or.jp/permanent/?id=2 に掲載されています。
例えばヘンリ-・ムーアについて以下のように書いてあります。
「ムーアは彫刻を野外に展示することを好みました。そして、「彫刻の置かれる背景として空以上にふさわしいものはない」と語っています。彫刻の森美術館の緑陰広場の庭園には、ムーアの彫刻作品11体のコレクションがゆっくりと時間を刻んでいます。
四季を通じて、彫刻の堅固な形態とその空間が作り出すコントラストはとても魅力的です。」
そして1970年作の「横たえる像:アーチ状の足」については以下のような解説があります。
「・・・人体の基本となるポーズが3つある。まず立っているもの、次に坐っているもの、そして横たわっているものである。3つのポーズのうちで、横たわる人体像は、最も自由がきき、構成しやすく、また空間性を持っている。坐っている人体像には腰掛けるためのものが何か必要になる。彫刻を台座から解放してやることができない。横たわる人体像はどんな床面にも横たえることが可能だ。自由がきくと同時に安定性もある。・・・」
一般に大型の彫刻作品は、風景の良い屋外に展示したほうが良く見えると思います。そして「横たえる像:アーチ状の足」というブロンズ像の前にしばらく立っていると何とも自然なやすらぎを感じます。
そしてバルザックの像については次のような説明があります。
「ロダンは文芸家協会から、小説家オノレ・ド・バルザック(1799-1850)の記念像の制作を依頼され、肖像写真をもとにして制作した。1898年のサロンにガウンをまとった石膏像を発表したが、これが雪だるま、溶岩、異教神などと言われ、「フランスが誇る偉大な作家を侮辱した」と、協会から作品の引き取りを拒否された。
ロダンは石膏像を引き取り、終生外に出さなかった。彼の死後、1939年になってパリ市内に設置、除幕された。
ガウンによって写実的なディテールが覆われ、大胆に要約された形態は、ロダンの作品の中でも最も現代に通じるものである。」
この解説を読んで初めてこの彫刻の意味が分かるのです。しかしこの像の前に立つと人間の苦悩の深さと、それを克服しようとする人間の勇気を感じます。
さて、彫刻の森美術館と言えば思い出すことがあります。
西洋の彫刻を見ながら、家内は日本の彫刻家の高村光太郎や舟越保武の作品をも説明してくれます。萩原碌山の魅力も私に説明してくれます。
それはさておき箱根の「彫刻の森」は間違いなく素晴らしい美術館です。その姉妹館が「美ケ原高原美術館」です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)