植物を観察していると名前のわからない花に遭遇することはしばしばであるが、ほとんどの場合がそれは知識不足の無知がもたらすものである。しかし、そんな何だかわからない花の中に、時として本当にとんでもない未知のものが混ざっていることがある。
数年前に八ヶ岳を訪れた時のことである。草地の中で背丈の低いラン科の植物を見つけた。一見すればアオチドリだが、それにしては色も背丈もおかしい。写真を撮って来て下山後に調べたがとうとう正体がわからなかった。図鑑で見る限りでは最も近いものはタカネ・アオ・チドリであろうが、自分の持つ複数の図鑑で調べてもこの花は南アルプスの特産と記されていたのだ。そんな花が八ヶ岳にあるはずが無いという先入観にとらわれて、結局は正体がわからずに数年が過ぎた。ところが、先日某植物の観察会に参加した際に、植物に詳しい方が八ヶ岳にタカネ・アオ・チドリがあったと話しているのを聞いた。話に割り込んでひょっとしてその場所は・・・と聞いてみると、まさに私がこの花を見つけたのと同じ場所だったのだ。ようやくこの花の正体が判明した。そして、図鑑に書かれていることが全て正しいというわけでは無いということを思い知った。
こちらは三つ峠で見つけた普通のアオチドリ。
唇弁が3裂しているのが特徴。
こちらが八ヶ岳で見つけた正体不明だったチドリの仲間。
アオチドリと同様に唇弁が3裂しており、チドリの仲間だろうというところまでは判別したが、とうとう正体がわからなかった。
こちらは嶺朋クラブのメンバーが撮影してきて送ってもらった別の花。
数は極めて少ないが、山岳連盟の稀少植物調査の対象には入っていないタカネ・サギ・ソウ。唇弁は割れない。今年はこの花を見に行ってみたい。
今年再調査に行った某所のコバイモであるが、これもこの場所で咲くのはカイコバイモしか有り得ないという先入観を持っていた。しかし、花の詳しい方に画像を見てもらったところ、花弁が細長くて先がやや尖っており、別のコバイモではないかという話になった。確かにそう言われてみれば、昨年撮影したこの花は全てが先細りでカイコバイモとは違う形のように見える。そこで今年も確認に出かけたわけだが結果はやはりカイコバイモだった。しかし一歩間違えば新種のコバイモだったかも知れないわけで、最初から先入観を持って花の名前を決めつけてしまうのは危険であることを思い知った。
昨年某所で見つけたコバイモ。生育場所から見てカイコバイモと決めつけていたが・・・
先細りでおちょぼ口、別のコバイモのように見える。
今年再訪してみると、正体はやはりカイコバイモだった。
昨年は花が少し痛み始めて、左の株のようにうなだれていただけだった。
今年のうちに決着を着けたい花がある。某沢に別の花を探しに行った時に偶然出会った正体不明のシロカネソウの仲間である。改めて葉を見てみると、いつも見ているツルシロカネソウとは明らかに葉の形が違う。しかしこの花を見たのは花期を過ぎた遅咲きの9月に咲いていたものである。おそらく本来は5月ごろに咲くはずのものなので、花期に訪れるとまた違う姿をしている可能性もある。しかし、この葉を見る限りでは山梨県では存在が確認されていない(と思う)ハコネシロカネソウに最も近そうである。
こちらは5月に毛無山で見たツルシロカネソウ。
葉は浅く何裂にも切れ込み、先端はやや尖る。
こちらが某沢で出会ったシロカネソウの仲間。
葉の切れ込みは少なく、先端は丸みを帯びている。葉だけ見ればハコネシロカネソウに最も近そうだ。
未知の場所に行くと未知の花に出会うことがしばしばあるが、無知と先入観のために正確な花の名前がわからないことがしばしばである。しかし、そんな花との出会いの中に全く知られていなかったものや、新しい種類のものに出会える日が来るかも知れない。いつまでもチャレンジャー精神を忘れずに花探しに挑みたいと思う。
数年前に八ヶ岳を訪れた時のことである。草地の中で背丈の低いラン科の植物を見つけた。一見すればアオチドリだが、それにしては色も背丈もおかしい。写真を撮って来て下山後に調べたがとうとう正体がわからなかった。図鑑で見る限りでは最も近いものはタカネ・アオ・チドリであろうが、自分の持つ複数の図鑑で調べてもこの花は南アルプスの特産と記されていたのだ。そんな花が八ヶ岳にあるはずが無いという先入観にとらわれて、結局は正体がわからずに数年が過ぎた。ところが、先日某植物の観察会に参加した際に、植物に詳しい方が八ヶ岳にタカネ・アオ・チドリがあったと話しているのを聞いた。話に割り込んでひょっとしてその場所は・・・と聞いてみると、まさに私がこの花を見つけたのと同じ場所だったのだ。ようやくこの花の正体が判明した。そして、図鑑に書かれていることが全て正しいというわけでは無いということを思い知った。
こちらは三つ峠で見つけた普通のアオチドリ。
唇弁が3裂しているのが特徴。
こちらが八ヶ岳で見つけた正体不明だったチドリの仲間。
アオチドリと同様に唇弁が3裂しており、チドリの仲間だろうというところまでは判別したが、とうとう正体がわからなかった。
こちらは嶺朋クラブのメンバーが撮影してきて送ってもらった別の花。
数は極めて少ないが、山岳連盟の稀少植物調査の対象には入っていないタカネ・サギ・ソウ。唇弁は割れない。今年はこの花を見に行ってみたい。
今年再調査に行った某所のコバイモであるが、これもこの場所で咲くのはカイコバイモしか有り得ないという先入観を持っていた。しかし、花の詳しい方に画像を見てもらったところ、花弁が細長くて先がやや尖っており、別のコバイモではないかという話になった。確かにそう言われてみれば、昨年撮影したこの花は全てが先細りでカイコバイモとは違う形のように見える。そこで今年も確認に出かけたわけだが結果はやはりカイコバイモだった。しかし一歩間違えば新種のコバイモだったかも知れないわけで、最初から先入観を持って花の名前を決めつけてしまうのは危険であることを思い知った。
昨年某所で見つけたコバイモ。生育場所から見てカイコバイモと決めつけていたが・・・
先細りでおちょぼ口、別のコバイモのように見える。
今年再訪してみると、正体はやはりカイコバイモだった。
昨年は花が少し痛み始めて、左の株のようにうなだれていただけだった。
今年のうちに決着を着けたい花がある。某沢に別の花を探しに行った時に偶然出会った正体不明のシロカネソウの仲間である。改めて葉を見てみると、いつも見ているツルシロカネソウとは明らかに葉の形が違う。しかしこの花を見たのは花期を過ぎた遅咲きの9月に咲いていたものである。おそらく本来は5月ごろに咲くはずのものなので、花期に訪れるとまた違う姿をしている可能性もある。しかし、この葉を見る限りでは山梨県では存在が確認されていない(と思う)ハコネシロカネソウに最も近そうである。
こちらは5月に毛無山で見たツルシロカネソウ。
葉は浅く何裂にも切れ込み、先端はやや尖る。
こちらが某沢で出会ったシロカネソウの仲間。
葉の切れ込みは少なく、先端は丸みを帯びている。葉だけ見ればハコネシロカネソウに最も近そうだ。
未知の場所に行くと未知の花に出会うことがしばしばあるが、無知と先入観のために正確な花の名前がわからないことがしばしばである。しかし、そんな花との出会いの中に全く知られていなかったものや、新しい種類のものに出会える日が来るかも知れない。いつまでもチャレンジャー精神を忘れずに花探しに挑みたいと思う。