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『天皇の軍隊と日中戦争』

2007-04-24 20:27:41 | 
 2003年2月26日に急逝された藤原彰先生の晩年の論文集と追悼をまとめた著書。藤原先生は、日本軍事史研究の先駆者でもあり、歴史学者として稀有の仕事を残された。私は大学時代に日本経済史のゼミで落ちこぼれた学生として、藤原先生の名前と研究に触れることができて傑出した歴史家として心から尊敬しています。
 緻密な論理と確かな史実に裏付けられた歴史書を読むことは、目からウロコをはがすことができる至福の時間です。

 藤原彰先生は、陸軍士官学校を卒業、日本帝国陸軍の将校として4年間、小隊長・中隊長として戦闘を体験したあと、本土決戦のための機動師団の大隊長として敗戦を迎えた。その後、「四年間の戦場生活で、戦争の矛盾とくに戦争が中国の人民を苦しめる以外の何ものでもないことを痛切に感じ、また日本の戦争遂行が、過誤にみち、国民と兵士の無駄な犠牲を強要するものだったことを感じたからである。そして、このような誤った戦争を、何故おこしたのか、その原因を究明したいと考えて、歴史を学ぶことにしたのである」(本書186ページ)。

 陸軍で将校として戦闘を4年も実体験するとともに、「東京大学で歴史研究の方法について正当な修練をつまれたうえで、それを戦争史・軍事史と仕上げれらていった」(本書254ページ・「藤原彰氏を悼む」江口圭一氏)
 
 軍の幹部としての日中戦争の実体験と大学での正当な歴史研究の方法を結びつけた藤原史学は、本書でも、「天皇の軍隊の特色 虐殺と性暴力の原因」「南京攻略戦の展開」「戦後補償」「捕虜虐殺」「三光作戦」など誰にも否定できない事実の積み重ねと精緻な論理で誰もを納得させずにはおかない。
 「日本の右傾化」がすすみ右翼の妄言がネットや書店、マスコミまで跋扈する今こそ藤原彰先生の研究は不滅の光を放っている。