ども。
Joseph E. Stiglitz の「The Price of Inequality」を読む。もちろん日本語でだ。
邦訳には「世界の99%を貧困にする経済」(徳間書店)という題名がつけられている。
スティグリッツは、1993年アメリカ・クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、95年に委員長に就任。97年には世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストに就任。2001年には「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞を受賞。現在は、コロンビア大学教授。行動する経済学者として著名である。
私は仕事の関係で興味を持って読み始めた。
この本で著者は、アメリカの1%の超富裕層近年の所得増を独り占めし、その結果不平等が拡大し、中下層の人々が今世紀の初めより苦しい生活を強いられていることを、事実を示し証拠立てる。そして、その所得増はスティグリッツが「レント・シーキング」と呼ぶ富裕層が残りの人々を食い物にする手法によりもたらされたことを告発する。
そして、レント・シーキングを成立させるために、富裕層は、民主主義をゆがめ、大衆の認識を操作し、お金を払える人のために司法を操り、中央政府と中央銀行の政策をつくり上げてきたことを豊富な実例で暴いている。
また、この本はスティグリッツが経済学者として、中央政府に多大な影響をもってきた「サプライサイドエコノミクス」「マネタリスト」「インフレターゲット論」などへの鋭い批判の書でもある。
アメリカと言う国は、「社会主義」「共産主義」「階級闘争」という言葉はタブーらしく、スティグリッツは注意深くこうレッテルを貼られることを避けながら、現在の政策と異なる政策を取るならば、経済的不平等から脱出した「今と違う世界」は可能だと処方箋を描く。
アメリカという「資本主義の大国」で、不平等が極限にまで広がり、1%の富裕層が政治・経済を操っていることを厳しく告発しながら、政治・経済のシステムに改革を加えるならば、「希望の灯火はゆらゆらと消えなずんでいる」と言うスティグリッツのこの本は、アメリカの政策のモノマネでこの国に働く人々を苦しめている日本でこそもっと読まれるべきである。私は、アメリカの描写を日本に置き換えながらこの本を読んだ。
税制改革では特に、増税といえば消費税増税しかないように描く日本の政治家と大マスコミに対して、「累進課税の徹底、所得税と法人税の累進性を高め、税制の抜け穴をふさぐ」というスティグリッツの主張こそよく聞いていただきたいと思うのだ。