今夏の米不足騒ぎ。猛暑や豪雨などの異常気象のせいらしいですが、もしそうだとすると今後しばらくは稲作も不安定になるのかもしれません。
ところで稲の収穫には、日本ではコンバインが多用されます。コンバインは稲を刈り取り、内部で回転するドラム(脱穀用の爪が付いた筒)で脱穀すると同時に、ドラムの回転で生じる風で未熟籾や土などの軽いゴミを吹き飛ばし、稲籾だけを収穫する機械です。刈り取りと脱穀を同時に済ませ、また、設定にもよりますが、脱穀した後の稲わらを細かく切り刻んで田に散布できたりもするので、すごく便利です。
最近はアフリカでも便利な農業機械が普及しつつあるようです。
ですが、私が赴任していた頃のケニヤではコンバインはまだまだ珍しく、多くの農家は鎌で刈り取った稲を数日間乾燥させた後、穂首の部分を岩に打ちつけて籾を落としておりました。
束にして持った稲を足元にある岩に叩きつけるんです。穂を打ち付けるのではなく、岩の角で穂首を折る、むち打ち脱穀法。このくらいの稲束であれば、だいたい4回くらい打ちつければほとんどの稔実籾は脱穀できます。
脱粒しやすいインディカ種の稲だからこそできる脱穀方法です。日本の品種(ジャポニカ種)は脱粒性が低く、岩に打ちつけたくらいでは脱穀できません。
インディカ種の中でも脱粒性は品種によって違うので、農家にはより脱穀しやすい品種が好まれるようになります。3回で脱穀完了する品種を作ってよー、などと農家に言われたこともありましたっけ。そんなに脱粒性が高い品種を育種して作ったところで、今度は収穫前に吹く風程度の刺激で簡単に籾が落ちてしまい、収量は激減してしまうでしょう。
モザンビークでの脱穀方法は、収穫した稲穂を棒で打つ方法です。
刈り取って積み上げた稲藁を長い棒で叩きます。なんかもう力任せ。コレデモカ! という勢いで何度も何度もぶっ叩きます。この方法でももちろん脱穀できますが、籾は稲わらの中に落ちて行くので、経過が目視できません。なので、すでに脱穀が完了しているのに叩き続ける、なんて、非効率的な作業にもなりかねません。
大変そうだなぁ、疲れるだろうなぁ、と思い、傍らにあった岩を設置してケニヤ式脱穀法をデモンストレーションしたら、おお、こいつぁいいぜ、と大人気。周囲の農家みんなが真似し始めました。
お礼のつもりでしょうか、傍らにいた農家の娘さんが手のひらを差し出して「良いもの見せてあげる」。
え? なになに? なに見せてくれんの?
覗き込んでみたらネズミの赤ちゃんでした。
「さっき稲わらの中で捕まえたの。生まれたてみたい。柔らかくておいしいわよ」
せっかく見せてくれたので「おおっ! こりゃあうまそうだね!」と、ノリノリで褒めておきましたが、正直言ってあまり食欲は感じない。
7年前のおハナシです。