晴れのち曇り、時々パリ

もう、これ以上、黙っていられない! 人が、社会が、日本全体が、壊れかかっている。

仏「地球物理学者」が、福島第2原発事故に関しての『東電』の重大な責任に言及/仏TV<Fr2>

2011-04-08 11:13:39 | 社会問題
ほぼ1ヶ月が過ぎようとする本日、4月8日フランスのテレビ<France 2>の、朝のノンストップ・ニュース番組『TELEMATIN(テレマタン)』の一つのコーナー<Les 4 Vérités(レ・キャトル・ヴェリテ)>に於いて、福島原発の事故の総括をしていた。

このコーナーは、毎日「各界」の著名人を招いての、インタヴュー形式での時事分析のコーナーで、およそ10分弱の時間が割かれている。

本日のゲストは、『フランス地球物理学研究所』所長のクロード・ダレーグル氏。

彼は、ミッテラン政権時、リオネル・ジョスパン首相の下で『教育、科学発展相』を務めた人物である。

元々「地球物理学」の学位を持つ学者で、主な専門は『アイソトープ』『マグマ』『地殻』に関する分野である。

現大統領ニコラ・サルコジーは、彼に閣僚のイスを提示したが、断って研究職に戻っている。

ちなみにこのサルコジー大統領は、ばりばりのネオコンで、フランス保守政界に有っても「突き破っている」所があり、与党内でも賛否の拮抗する大統領であるが、外相と青年文化相に「社会党」から人材を登用し、欧州委員会中央銀行総裁にも、社会党の大物を送り込んだ、「開明」的政治家である。

ところで、このニコラ・ダルグレーは、『地球温暖化論』に<反対>の立場を取っている事でも、知られている。



本日の『レ・キャトル・ヴェリテ(4つの真理)』のテーマは、『原子力に対して恐怖心を持つべきか』であった。

冒頭に、司会者からこのテーマを振られたアルグレーの第一声は『ノン』。
「ただし、平和利用原子力に限っての事だが」と、注釈を付けた。


「20~30年もたてば、必ずや新しいエネルギー技術が確立している筈だが、今、今日の時点では<原発>廃棄は無理であろう。」


このあたりは、87%の電力を原発に頼っているフランスの知識人ならでは、と言う所。

彼は、原発に対する自分の立場を、次の様に語った。


「イタリアやギリシャ等、地震国にたいしては、別に考え方が必要、との主張をしてきた。」

「原発の危険性は、<原子力>そのものでは無く、<建屋>にあるのだ。イタリアでも類似の事件があり、地震により屋根部分が崩壊した事が有った。」



「今回の日本の場合、福島を始め各原発は<地震>に堪えた。しかし、<津波>には耐えられなかった。」

「この事を考えると、日本を始めとして、『フィリピン』や『シンガポール』その他、<地震と津波>との、両方のリスクに曝されている国は、これまでの考え方をそのまま維持する訳には行かなくなった筈だ。」

「幸い、福島第2原発の場合、大事故であるが、まだ<カタストロフィー(大惨事/破局)>では無い。」



「しかし、日本の原発はフランスのそれと比べると、脆弱である。フランスの『加圧水型原子炉』の場合は、冷却回路が二重になって居り、格納容器が壊れた時にも、汚染されている<一次>冷却水は、<閉鎖回路>であるから外に漏れない。日本に多い『沸騰水型軽水炉』は、低価格で建設コストは切り詰められるが、冷却回路が一重なので、平常時でも冷却水は、その冷却の為外に出る。事故になると<汚染水>は直接外に出てしまう。」


司会者の、フランスの原発に危険性に関して聞かれた彼は、このように語り、更に続けた。


「フランスも地震発生国である。しかし幸いな事にマグニチュード9はおろか、7でさえも起こる条件が(地殻的に)無い。」

「原発は、原子炉を冷却する為に、多量の水を要する。常に冷やし続ける必要があるのだ。フランスには<大河>があるので、2・3の例外を除いて、原発は皆内陸に有る。従って<津波>の危険は無い。」

「日本は<大河>が無いので、原発は海岸に作られている。これが、津波の被害から逃れられない要因で、かつ事故の際に「汚染水」や「放射性物質」が海に流れ出てしまう事になる。」


福島の今後似ついての見方を聞かれて、答えて曰く。


「今回の『福島』の事故は、東電に総ての責任があると思われる。」
「東電の経営者は、経費の最小化を求めた。つまり、可能な限り金をかけない様に建設し、運用して来ている。」

「アメリカとフランスとが、直後から<技術支援>を申し出ていたのに、東電は拒否した。フランスは放射線被害の有る、人間がアクセス出来無い所で作業する<専門ロボット>を持って居り、その提供を申し出たが、東電は断った。」

「東電に対する、政府の管理が行き届いていない。」

「原子炉のタイプの選択から、建設、運営に、最大限の注意を払っていない。原発の日常の監視と危機管理体制が、ほとんど無く、それらに対する政府の干渉がない。」

「したがって、今回の福島原発の事故は、『東電』に重大な責任があると考える。」

「ただ、まだ破滅的事態では無い。」


その後、上記した様な理由で、フランスは「目下の所」は<原発>に対して、危機を抱く必要は無い、と話を締めくくった。


クロード・アレーグルは、12日にも同じ番組に招かれて居り、その時点で「死者は1000名にも登るものと思われる」というニュースのリードに対して、「これだけの地震と津波の複合災害である以上、被害者は3万人は免れないだろう」と予見していた事が、思い返される。


その他、各メディアは昨日7日の強度な余震について、報道が続いているが、「女川原発の漏水」も触れている物の、それ程「大げさな」報道ぶりは、幸い今回は見られない。


▶どのように援助出来るか?(ル・モンド見出し)

>3月11日の地震と、それに続いた津波による犠牲者の数は、4月3日現在の数字で「死者1万2千人」「行方不明者1万5千4百人」(合計でおよそ2万8千名)にも上っている。

>「大惨事」から一月が過ぎようとしているが、義援金を贈る事を通じて、日本の人達を助ける事が可能です。

>義援金は、次の様な送り先がある。

☆Médecins du monde(世界の医師団) (ネットで送金可)
☆Le Secours chatrique(カトリック救援会)
☆La Fondation de France(フランス基金)
☆Le Secours populaire(人民救助)
☆La Croix-Rouge(赤十字)

>また、チャリティーの芸術行動も予定されている。

☆津波、日本へのイメージ(Give2Asia)
☆クエークぶっく(赤十字)

>この記事に、ご遠慮なく多くのコメントをお寄せ下さって、記事を膨らませて下さる様に期待します。

>次の記事参照『フランスの、まだまだ『慎ましく遠慮がちな』日本の被災者への援助』
【ル・モンド/4月7日14時49分配信】



▶エール・フランスは日本への直行便を金曜日から再開(AP通信見出し)

>エール・フランス航空は、一ヶ月の中断をへて、金曜日からパリ成田直行便を再開する。

>同社は、毎日成田行き2便、大阪関空行き1便を運行しているが、乗務員の「東京宿泊」を避ける為、これまでソウル・インチョン空港経由の臨時措置を取っていた。
【AP通信/4月7日16時54分配信】



まだまだ、問題は終わらない。。。

特に、<『東電』の存続と「原発政策推進」の意志>で動きつつある「菅直人一味政権」である以上。
そして、経団連の「なりふり構わぬ」原発推進政策サポートを見ると。

財界は、金を稼ぐ事に血道を上げる代物である以上、原発推進を言うのは、当然かもしれない。
私としては、彼等に「人間性」を求める事は、最早止めている。

しかし、それを押さえるのが、政治と言う物の筈だろう。
子々孫々に問題を押し付ける、盲目政治に、怒りを覚える。


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11 コメント

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東電の行動と今後 (fkuro27)
2011-04-08 21:06:49
 はじめまして。フランスの知識人の方のオピニオンがよく分かるように解説されており、大変参考になりました。ありがとうございます。
 しかし東電はなぜ支援を断ったのか?現場を見ない人間が判断したのか?金なのか?最初から支援をうけたのと現状がどれだけ違うかは言えませんが、最善を尽くして欲しかったですね。自分の能力を謙虚に考えてもらいたいです。
 今後はどうなるのですかね。原子炉格納容器についてははっきりしたことは向こう何年もはっきりしないと思います。土壌汚染があればその土地では農業はできないでしょう。今後についても情報教えてください。また寄らせていただきます。
 
 
 
 
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占領軍と霞ヶ関 (Unknown)
2011-04-08 21:34:31
「即時内閣交代し救国竹原信一内閣を組織せよ」

直ちに竹原信一氏を民主党衆議院比例代表名簿筆頭に据えて比例代表議員一人と交代させ、国会を開催して内閣不信任案可決して総辞職させ同時に首相指名選挙を行いただ一人立候補した竹原信一氏を無投票首相指名し、天皇認証を省略して救国内閣を即日発足させ直後から不眠不休国会を開催せよ。
冒頭で地位協定を破棄決議する。そのうえで思いやり予算を全額被災地救援に当て、在日米軍に原発周辺国民を米軍基地に緊急避難収容する救援活動を緊急要請する。断れば貸与している米軍基地をすべて日本政府が接収し直ちに在日米軍全員の即時撤退帰国を米国と国連安保理に要請する。
被災地への物資人員輸送大型特殊車両営業車両の高速道路通行料を全国一律無料とする。一般自家用車両は距離に応じて加算される有料通行とし収入を高速道路補修費に充てる。
被災者証をすべての被災者へ個別に発行し免税や公共料金支払い免除等および福祉給付や一時金給付を確実に実効的に行う。
等々。

要は、占領軍と霞ヶ関を事故原発処理と一体で廃棄処理せよということに尽きる。
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fkuro27様。 (時々パリ)
2011-04-08 22:35:31
初めまして。
コメントありがとう御座いました。
>しかし東電はなぜ支援を断ったのか?
一つには、日本人特有の「助けを求める事」に対する拒否感(ましてや外国に)の様な潔癖性があるでしょう。
そして、自分達でやれる、と言う自己過信と自惚れ。
さらに、色々ヤバい<奥>を他人(しかも外国人達)に曝したくない、というてらいと恐れ。
だろうと思います。
要するに、自信過剰の馬鹿ですね。
「自分の能力を知る」事は、エライ人程、大企業ほど、官僚的組織ほど、無いのが現実です。
情けない世の中です。
今後も、宜しくお付き合い下さい。
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地震より (scotti)
2011-04-09 11:00:31
今の世の中、地震よりテロが怖いです。
韓国も、お隣北朝鮮の軽水炉核施設の脅威を再認識しています。
一度の失敗で永遠を失うのに等しいのですから。
原発推進派の人たちは元の汚染されていない状態に戻すことが出来ますか?
汚染水の対応に海洋投棄を選択しているのが精一杯でしょう。
福島原発のウラン放射能汚染は広島原爆の1000倍以上だそうです。
30日に東電株4000万株買ったのは誰でしょう?
この時期にこの投資、政府のインサイダー情報無しには考えられません。
国家危機を利権に利用している疑いの強いスッカラ菅政権です。
国が原発事故の補償に税金を投入するなら絶対に東電は100%減資が必要です。
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とはいえ、とはいえ (K.T.)
2011-04-09 15:56:44
ダレーグル氏のお話は納得できる部分が多いと思いました。
ただ、日本でも現行原子炉54基中24基は加圧水型だそうですが、配管等がより複雑で、大地震がくればより脆弱との意見もあります。
いくら対策を講じても、氏の言の如く所詮地震国で原子力発電はあまりにもリスキーなのでしょうね。

とはいえ、電力は必要。
誰も言ってくれませんが、震災前の福島県は、日本一の電力生産県でした。
全国の8~9%を生産し、首都圏需要の1/3を賄っていました。
今回の計画停電を東電側の脅しのように言う方もいますが、絶対量の不足は事実です。
実際には、原発のほか東電広野火力発電所(原発の近くです)の壊滅もありました。
気が付かれていない方も多いでしょうが、県内の数多の水力発電所のうち首都圏に送電される分が、電源開発(奥只見、田子倉の巨大ダム発電所を有します)分を含めると最大出力269万kwほどもあります。それらの発電所が地震被害で14箇所以上一時停止しました。
隣県の東電の水力発電所でも同様のことが起こりました。
何時も東電様をお助けする東北電力も今回は余力無しです。
幸い、10日余りで殆どの水力発電所が元通りになり、更に、取水制限緩和措置によって
フル稼働し始めたため、気温の上昇とあいまって何とかなっているだけなのは本当です。

福島県は、いわば東京の命綱を握っていたからこそ、佐藤栄佐久知事の事件が起こったのかもしれません。

自然エネルギーの分野でも、福島県内には単一ユニットで日本一の柳津西山地熱発電所があり、風力も布引高原に国内最大のものがあります。
とはいえ、単純計算ですが、たとえば広野火力発電所只一つ分の代替に西山規模の地熱発電所が50基、風力なら布引高原同等の環境で風車が千数百基必要で、いくら広い福島県でもご勘弁下さいと言いたくなります。

低出力発電についても県は取り組んできたようですが、まだ、実験かお遊びのようなもの。
道は遠しです。
なんか、お国自慢になってしまいましたが、電力問題は、「とはいえ、とはいえ」なんです。
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アレバ社は? (猫大好き母)
2011-04-09 19:19:28
パリ様こんにちは。

まだまだ危機は去らずどころかますます酷くなっているような気がします。 
 ところで、日本から支援要請があって駆けつけたアレバ社の事ですが、どうしているんでしょうか? その後、とんと報道されていませんよね。私が見逃しているのか、意図的に報道されていないのか・・。遠隔操作できるロボットとか使えてないんでしょうか?フランス社会でも報道されていないでしょうか? 
 
さすがにフランス知識人は的確に責任の所在を分かってらっしゃるようですが、どこか対岸の火事と考えてらっしゃるような気がします。日本でも「チェルノブイリのような事はありえない」と関係者は豪語していたんですが、このざまですよね。日本で原発を始めてから40年。その間どれ程の金を費やしてきたのか、それを代替エネルギーの研究・開発につぎ込んでいたらとっくに効率のいい自然エネルギーが開発されていたのではないかと返す返すも残念ですね。それでも先日、低レベル汚染水を海に廃棄した事に対して地元の漁協が抗議したニュースにはほっとしました。もっと漁師さんを大勢引き連れて東電の前で声をあげればよかったのに。明日のデモには一緒に参加して欲しいですね。 
取り留めもない事を長々と失礼いたしました。


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とにかく逃げて生き延びて (通りがけ)
2011-04-10 08:06:05
「いまこそヒバクシャの声を聞くとき」

広島長崎市民第五福竜丸乗員日本原発作業員東海村JCO社員周辺住民ビキニ諸島島民スリーマイル住民ネバダ州住民チェルノブイリ住民・・・

アメリカが日本に原爆投下して以来初めて地球上に誕生したヒバクシャはその後地球上の各地で各国政府によって大量に生み出され続けたあげくその政府によってことごとく棄民されつづけている。

ヒバクシャからの聞くべき最も重要なメッセージがここで語られている。

>「マンズロヴァ: 出来るだけ早く逃げて下さい。待たないで下さい。自分自身を助けそして政府に頼らない様にして下さい。何故なら政府は嘘をつくからです。彼等は貴方に真実を知って欲しくないのです。何故なら原子力業界は本当に権力を持っているからです。」
>>http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-2648.html#more2648より転載
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scotti様。 (時々パリ)
2011-04-12 02:12:07
コメントありがとう御座いました。
世界的傾向で見ますと、テロは怖いです。
しかし、日本で「世界」でしょっちゅう見聞きしているレベルのテロは、余り心配しなくとも良い様な気もします。
それこそ、『オウム』の様な、異常な者共が出てくれば別ですが、某大陸国や某半島国、或は別の某国が、日本で「原発」にテロをやっても、メリットは余り無い様な気がします。
それより、それこそ「東電株」をいつの間にか買い占めるとか、日本の基幹産業やライフラインに、実質的支配権を及ぼせる様な「攻撃」の方が、ずっと実効的で有効では無いでしょうか。
やはり日本の原発は、電力オペレーターや監督官庁、政府或は財界の「驕り」や「高ぶり」による「自己崩壊」が、一番現実性のある『不安』の様な気がします。
甘いでしょうかね。
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K.T.様。 (時々パリ)
2011-04-12 02:21:14
コメントありがとう御座いました。
早い話が、『原発』と言う物は恐ろしく危険な物なのですね。
車なら、暴走しても「被害者」の数は二桁で留まるでしょうが、原発が暴走したら、未来にまで影響を残す、人間の力で「後始末」が出来ないレベルの分野ですから。
「とはいえ」は理解致しました。
しかし、一県にそこまでの負担を負わせて居た現実は、これを機会に改める必要が有りますね。
風力でも、福島県に「原発分総て」の量をカバーするだけの風車を立てる、なんて事は勿論、論外です。
電気は必要です。
しかし、日本人はこれを機会に、電力に対する依存のシステム、生活パターンを含んで総ての「哲学」の変更が求められていると信じます。
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猫大好き母さま。 (時々パリ)
2011-04-12 02:27:53
コメントありがとう御座いました。
『アレバ社』に関しては、実は私は何も期待していません。
菅直人の「ジェスチャー」の一つでフランスにも救援を求めた、だけであり、実質的作業は『米軍』とべったりでやっていく徒思います。
フランスの技術者に全面的に頼って依存し、全権を与えて任せるのならともかく、
数名の専門家が行って、少しのロボットだけを持って行っても、「東電」事態が協力的では内と思いますし、実質的に何もやれないのでは、と想像しています。
>代替エネルギーの研究・開発につぎ込んでいたらとっくに効率のいい自然エネルギーが開発されていたのではないかと…
「代替」エネルギーには、利権はほとんど無いでしょうから!
美味しい話でないと、霞ヶ関も、経団連も、永田町も積極的に動いたりはしない事は明白です。
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